トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 有機性汚泥を利用した被覆材及びその形成方法、並びに固化処理済みの有機性汚泥粒
【発明者】 【氏名】岩田 隆雄

【要約】 【課題】撤去作業及び焼却作業が不要なことに加え、被覆作業の手間が少なくて済む、有機性汚泥を利用した被覆材を提供すること。

【解決手段】この有機性汚泥を利用した農業用被覆材1は、固化処理済みの有機性汚泥粒に有機性バインダ及び水分を添加してなる混合物を、施用面3に対して散布することにより層状に形成されたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】固化処理済みの有機性汚泥粒に有機性バインダ及び水分を添加してなる混合物を施用面に対して散布することにより層状に形成された、有機性汚泥を利用した被覆材。
【請求項2】固化処理済みの有機性汚泥粒に有機性バインダ及び水分を添加してなる混合物を施用面に対して散布することにより、その施用面を覆う層状の被覆材を形成することを特徴とする有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項3】前記固化処理済みの有機性汚泥粒は、有機性汚泥に固化剤及び水分を添加して攪拌を行う乾燥・造粒工程を経て作製されることを特徴とする請求項2に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項4】前記固化処理済みの有機性汚泥粒の含水率は40重量%以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項5】前記固化処理済みの有機性汚泥粒の平均粒径は5μm〜5mmであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項6】前記固化剤は生石灰であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項7】前記有機性汚泥または前記固化処理済みの有機性汚泥粒には、濃色系の着色料が添加されることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項8】前記有機性汚泥に添加される添加物のうち熱に弱いものは、前記生石灰を用いた前記乾燥・造粒工程の終了後に添加されることを特徴とする請求項6または7に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項9】前記有機性汚泥には、前記生石灰、前記水分及び前記着色料のほかに、さらに香料、肥料、耐水剤から選択される少なくとも1種が添加されることを特徴とする請求項8に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項10】前記混合物は噴射手段を用いて散布された後に自然乾燥されること特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項11】前記混合物は乾燥後における平均厚さが0.1mm〜50mmとなるように散布されることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法。
【請求項12】有機性汚泥に、生石灰、水分及び濃系色の着色料を添加するとともに、香料、肥料、耐水剤から選択される少なくとも1種を添加して攪拌を行う乾燥・造粒工程を経て作製された、固化処理済みの有機性汚泥粒。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機性汚泥を利用した被覆材及びその形成方法、並びに固化処理済みの有機性汚泥粒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、土壌の保湿、土壌中の養分の流出防止、雑草の生育阻害、植物の生育促進等を目的として用いられる農業用資材の一種として、いわゆるビニルマルチと呼ばれる被覆材が知られている。この種のビニルマルチは、通常、ロール状に巻き取られた製品形態で供給される。施用時にはマルチャという専用の機械を用いてビニルマルチを展開し、かつ畝全体を被覆する。この後、複数の透孔を等間隔にあけた後、そこから露出する土壌に植物の種子や苗等を移植する。そして、植物体の栽培・収穫が済むまでの一定期間、ビニルマルチによる被覆状態が維持されるようになっている。
【0003】ところで、植物の栽培・収穫が終了して不要となったビニルマルチは、その後に畝から撤去され、多くの場合は焼却処分に付されているのが現状である。しかしながら、このような撤去作業は極めて煩雑であり、より省力的な方法が望まれていた。また、焼却処分を行うと塩素ガスや炭酸ガス等の発生を伴うため、極力このような処分を要さないで済むものが望まれていた。
【0004】そこで、近年においては古紙からなる被覆材や、紙からなるシート材に粒状に固化処理された汚泥を混入してなる被覆材などが提案されるに至っている。なお、前者の例としては、例えば特開平7−231725号公報に開示された技術がある。後者の例としては、例えば特開平7−322776号公報に開示された技術がある。そして、これらの従来例によれば、最終的には被覆材の構成成分である紙や汚泥が肥料と化してしまうため、撤去作業及び焼却処分がともに不要になるという利点を備えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の2つの従来例を用いた場合でも、ロール状に巻き取られている被覆材を展開して施用する際の手間は、依然として残っている。即ち、施用時における被覆作業は、畝の大きさや形状等に影響を受けやすいため、専用の機械を用いて行ったとしても極めて煩雑かつ面倒だからである。ゆえに、被覆作業の手間が少なくて、よりいっそう省力化の可能な被覆材の登場が強く望まれていた。
【0006】本発明は上記の課題を解決するためなされたものであり、その主な目的は、撤去作業及び焼却作業が不要なことに加え、被覆作業の手間が少なくて済む、有機性汚泥を利用した被覆材を提供することにある。
【0007】また、本発明の別の目的は、上記の優れた被覆材を施用面に対して簡単にかつ確実に形成する方法を提供することにある。本発明のさらに別の目的は、上記の優れた被覆材を形成するにあたって極めて好適な固化処理済みの有機性汚泥粒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、固化処理済みの有機性汚泥粒に有機性バインダ及び水分を添加してなる混合物を施用面に対して散布することにより層状に形成された、有機性汚泥を利用した被覆材をその要旨とする。
【0009】請求項2に記載の発明は、固化処理済みの有機性汚泥粒に有機性バインダ及び水分を添加してなる混合物を施用面に対して散布することにより、その施用面を覆う層状の被覆材を形成することを特徴とする有機性汚泥を利用した被覆材の形成方法をその要旨とする。
【0010】請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記固化処理済みの有機性汚泥粒は、有機性汚泥に固化剤及び水分を添加して攪拌を行う乾燥・造粒工程を経て作製されることとした。
【0011】請求項4に記載の発明は、請求項2または3において、前記固化処理済みの有機性汚泥粒の含水率は40重量%以下であることとした。請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか1項において、前記固化処理済みの有機性汚泥粒の平均粒径は5μm〜5mmであるとした。
【0012】請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項において、前記固化剤は生石灰であることとした。請求項7に記載の発明は、請求項2乃至6のいずれか1項において、前記有機性汚泥または前記固化処理済みの有機性汚泥粒には、濃色系の着色料が添加されることとした。
【0013】請求項8に記載の発明は、請求項6または7において、前記有機性汚泥に添加される添加物のうち熱に弱いものは、前記生石灰を用いた前記乾燥・造粒工程の終了後に添加されることとした。
【0014】請求項9に記載の発明は、請求項8において、前記有機性汚泥には、前記生石灰、前記水分及び前記着色料のほかに、さらに香料、肥料、耐水剤から選択される少なくとも1種が添加されることとした。
【0015】請求項10に記載の発明は、請求項2乃至9のいずれか1項において、前記混合物は噴射手段を用いて散布された後に自然乾燥されることとした。請求項11に記載の発明は、請求項2乃至10のいずれか1項において、前記混合物は乾燥後における平均厚さが0.1mm〜50mmとなるように散布されることとした。
【0016】請求項12に記載の発明は、有機性汚泥に、生石灰、水分及び濃系色の着色料を添加するとともに、香料、肥料、耐水剤から選択される少なくとも1種を添加して攪拌を行う乾燥・造粒工程を経て作製された、固化処理済みの有機性汚泥粒をその要旨とする。
【0017】以下、本発明の「作用」を説明する。請求項1に記載の発明によると、被覆材の構成成分である有機性汚泥及び有機性バインダは、分解して最終的には肥料と化してしまう。このため、被覆剤の撤去作業及び焼却処分がともに不要になる。これに加えて、同被覆材は混合物の施用面に対する散布により層状に形成されるものであるため、ロール状に巻き取られたものを展開して被覆する必要のある従来品とは異なり、煩雑かつ面倒な被覆作業を要しない。従って、被覆作業の手間が少なくて済み、省略化に適している。
【0018】請求項2〜11に記載の発明によると、混合物の施用面に対する散布により被覆材を層状に形成する方法であるため、ロール状に巻かれたものを展開して被覆する必要のある従来法とは異なり、煩雑かつ面倒な被覆作業を要しない。従って、被覆作業の手間が少なくて済み、簡単にかつ確実に、しかも省略的に被覆材を形成することができる。
【0019】請求項3に記載の発明によると、有機性汚泥に固化剤及び水分を添加して攪拌することにより、有機性汚泥が乾燥した粒状になって固化するため、取扱性に優れた性状になる。また、このような固化処理を経ると、固化剤によって汚泥が被覆された状態になるため、汚泥特有の臭いも低減され、かつ汚泥中の有効成分の流出も防止される。
【0020】請求項4に記載の発明によると、固化処理済みの有機性汚泥粒の含水率を40重量%以下にすることにより、取扱性の向上、臭いの低減、有効成分の流出防止が確実に図られる。
【0021】請求項5に記載の発明によると、このような平均粒径の好適範囲内に設定することにより、噴射手段等を用いた場合でも混合物の散布に支障を来たすことなく、しかも施用面に混合物からなる均一な層を形成することができる。固化処理済みの有機性汚泥粒の平均粒径が5mmよりも大きいと、噴射手段等を用いた場合に粒がノズルに詰まりやすくなり、混合物の散布に支障を来たすことが予想される。また、有機性汚泥粒の粒子が粗くなると、施用面に均一な層が形成されにくくなるおそれがある。逆に、固化処理済みの有機性汚泥粒の平均粒径が5μmよりも小さいと、そもそも有機性汚泥粒の作製が困難になるおそれがある。
【0022】請求項6に記載の発明によると、生石灰は水分と反応することにより熱を生じるので、外部からの熱供給量が少なくても、有機性汚泥の乾燥・造粒工程を行うことができる。勿論、生石灰は最終的に良質な肥料になる点で有利である。
【0023】請求項7に記載の発明によると、有機性汚泥または固化処理済みの有機性汚泥粒に濃色系の着色料を添加することにより、形成される層状の被覆材が全体的にかつ均一に着色される。その結果、太陽光線のエネルギーをより効率よく吸収することができるようになり、施用面を保温する効果が向上する。
【0024】請求項8に記載の発明によると、有機性汚泥に添加される添加物のうち熱に弱いものの揮発、変性、失活、死滅等が未然に防止される。請求項9に記載の発明によると、香料、肥料、耐水剤から選択される少なくとも1種を添加することにより、被覆材の機能性をよりいっそう向上させることができる。具体的にいうと、香料を添加することにより、有機性汚泥の臭いがより効果的に低減される。肥料を添加することにより、植物体に供給される養分が多くなり、いっそうの生育促進を図ることができる。耐水剤を添加することにより、被覆材の分解時期が遅らされる結果、遅効性とすることができる。なお、a)香料、b)肥料、c)耐水剤は1種のみ添加されてもよいほか、a+b、a+c、b+c、a+b+cというように2種または3種の組み合わせで添加されてもよい。
【0025】請求項10に記載の発明によると、噴射手段を用いた混合物の噴射により施用面に前記混合物からなる層が形成され、後にその層は自然に乾燥して被覆材となる。そして、このような噴射手段を用いた被覆作業であれば、マルチャを用いた従来の被覆作業に比べて手間もかからず、施用面の大きさや形状等に左右されずに、比較的簡単にかつ省力的に被覆材を形成することができる。
【0026】請求項11に記載の発明によると、乾燥後における平均厚さをこのような好適範囲に設定することにより、コスト性や作業性の低下を伴わずに施用面を均一にかつ確実に被覆することができる。この平均厚さが0.1mmよりも薄いと、被覆材によって施用面を均一に被覆することが困難になり、部分的に施用面が露出する部分ができるおそれがある。逆にこの平均厚さが50mmを超えると、確実な被覆を達成することができる反面、コスト性や作業性の低下を招くおそれがある。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明を農業用被覆材に具体化した一実施形態を図1に基づき詳細に説明する。
【0028】本実施形態における農業用被覆材1は、固化処理済みの有機性汚泥粒、有機性バインダ、水分等を原料としている。ここで、まず固化処理済みの有機性汚泥粒の作製方法について述べる。
【0029】固化処理済みの有機性汚泥粒は、有機性汚泥に固化剤及び水分を添加することにより作製される。水分としては、普通の水道水を用いることができる。
【0030】有機性汚泥としては、各種食品工場等の廃水を処理した後に残る泥状の物や、各種食品等の製造工程において生じる泥状の物を用いるのが好適である。より具体的にいうと、豆腐製造工場や植物油製造工場に由来する大豆かすの汚泥、清酒工場に由来する酒かすの汚泥、焼酎工場に由来する焼酎かすの汚泥、ビール工場に由来するビールかすの汚泥、コーヒー飲料製造工場に由来するコーヒー豆かすの汚泥、製茶工場に由来する茶殻の汚泥、食肉加工工場に由来する肉汁等を含む汚泥、ブタやウシ等の屠殺場に由来する汚泥が挙げられる。
【0031】有機性の汚泥を選択した理由は、無機性の汚泥とは異なり多種の養分を含んでいるため植物体にバランスよく養分を供給することができ、しかも土壌中の微生物により最終的には分解されてしまうからである。また、これらの食品工場等に由来する汚泥を選択した理由は、元来食品として摂食可能なものに由来する汚泥であれば、植物体に対して施用したとしても(ひいては人間がそれを摂取したとしても)害は殆どないからである。
【0032】勿論、先に列挙した各種の汚泥は、1種類のみを用いてもよいほか、2種以上を組み合わせて用いても構わない。なお、上記の各種工場から採取された有機性汚泥は、通常、50重量%〜95重量%程度の水分を含んでいる。
【0033】上記の1種または2種以上の有機性汚泥は、例えばロータリーキルン等の攪拌装置内に、固化剤及び水分とともに投入される。有機性汚泥は添加された固化剤及び水分と均一に80℃前後の温度で攪拌される結果、乾燥した粒状となって固化し、最終的には固化処理済みの有機性汚泥粒と化す。
【0034】固化剤としては、例えば生石灰(酸化カルシウム,CaO)が使用されることが望ましい。生石灰は水分と反応することにより熱を生じるので、外部からの熱供給量が少なくても、有機性汚泥の乾燥・造粒工程を行うことができるからである。勿論、生石灰はカルシウム分を含むことから、被覆材1の分解後において最終的には良質な肥料になる点で有利である。
【0035】以上のような固化処理を経ると、汚泥は固化剤によって被覆された状態となる。その際、乾燥によって、固化処理済みの有機性汚泥粒の含水率が40重量%以下になることが、さらには30重量%〜40重量%になることが好ましい。有機性汚泥粒に含まれている水分が多すぎると軟質化することから、取扱性が悪くなったり、臭いが充分に低減されなかったり、有効成分の流出を確実に防止できなくなったりするおそれがあるからである。逆に有機性汚泥粒に含まれる水分を必要以上に少なくすることは無駄な労力であり、かえって高コスト化を招く原因になるおそれがある。
【0036】固化処理済みの有機性汚泥粒の平均粒径は5μm〜5mmであることがよく、さらには10μm〜1mmであることが好ましい。前記平均粒径が5mmよりも大きいと、噴射手段2を用いた場合に粒がノズルに詰まりやすくなり、混合物Mの散布に支障を来たすことが予想される。また、有機性汚泥粒の粒子が粗くなると、施用面3に均一な層が形成されにくくなるおそれがある。逆に前記平均粒径が5μmよりも小さいと、そもそも有機性汚泥粒の作製が困難になるおそれがある。
【0037】ところで、固化処理済みの有機性汚泥粒の作製過程においては、生石灰等の固化剤及び水分のほかに、有機性汚泥に対して各種の添加物(着色料、香料、肥料、耐水剤、活性剤、防虫・防菌剤等)を添加してもよい。なお、これらの添加物は1種のみ添加されてもよいほか、2種以上の任意の組み合わせで添加されてもよい。
【0038】着色料としては、人工着色料であるよりは、例えば植物系の顔料などのように天然着色料であるほうが好適である。また、着色料の色は、黒、濃灰、濃茶、濃青、濃緑などの濃色系であることが好ましく、中でも黒が最もよい。色の濃い被覆材1であると、太陽光線のエネルギーをより効率よく吸収することができるため、施用面3を保温する効果が向上するからである。もっとも、施用面3の保温を目的としない用途の被覆材1であれば、濃色系の着色剤ではなく淡色系の添加を用いたり、さらには着色料の添加自体を省略してもよい。
【0039】香料としては、人工的なものよりも天然のものが好ましい。香料を添加する理由は、有機性汚泥の臭いをより効果的に低減し、取扱性等を向上させるためである。
【0040】肥料としては、窒素、りん酸、カリウム等を含む液体または固形の肥料が用いられる。肥料を添加する理由は、植物体に供給される養分を多くし、いっそうの生育促進を図るためである。この場合の肥料は、原料として選択した有機性汚泥中に含まれている養分のうち足りないものを補填するような組成のものを用いることがよい。なお、前記の窒素、りん酸、カリウムという主要な3大養分ばかりでなく、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、ほう素等のミネラル分を含む肥料を用いても勿論よい。
【0041】耐水剤としては、人工的なものよりも天然のものが好ましく、1重量%〜10重量%程度添加されることがよい。なお、活性剤や防虫・防菌剤も人工的なものより天然のものが好ましい。耐水剤を添加する理由は、被覆材1の分解時期を遅らすことにより遅効性とし、ある程度長期間にわたって被覆材1の効果を維持するためである。また、耐水剤の量を多くすると分解が始まる時期を遅めに設定することができ、耐水剤の量を少なくすると分解が始まる時期を早めに設定することができる。
【0042】有機性汚泥に添加される上記の添加物のうち熱に弱いものは、生石灰を用いた乾燥・造粒工程の終了後に添加されることが望ましい。このようにすると、熱に弱い添加物の揮発、変性、失活、死滅等が未然に防止されるからである。例えば、前記添加物が植物の種子などである場合には、かかる種子は乾燥・造粒工程における80℃前後の熱の影響を受けて死滅してしまうため、これを防止する必要があるからである。添加される種子の例としては、畑に対するものの場合には各種の根菜類の種子や葉菜類の種子等があり、畑以外に対するものとしては芝の種子等が考えられる。また、熱に弱い添加剤としては、このほかにも土壌微生物等の菌体を含む土壌改良剤等が挙げられる。
【0043】次に、このようにして作製された固化処理済みの有機性汚泥粒に、有機性バインダ及び水分を添加してなる混合物Mを調製する。このような被覆材形成用の混合物Mとしては、あらかじめ調製したものを施用時まで保管しておいたものでもよいほか、施用直前に現場で調製したものであっても勿論よい。作業性等を考慮すると、通常は後者の方法が採用されることがよい。その場合、前記水分として、水道水のほか農業用水等も使用可能である。
【0044】固化処理済みの有機性汚泥粒に対して有機性バインダは、主として噴射手段2を用いて混合物Mを噴射させるのに適当な流動性を確保する量を添加されることがよい。混合物Mの含水量が多すぎると、混合物Mの流動性が大きくなる結果、施用後に混合物Mが施用面3から流出して崩れてしまうおそれがある。逆に混合物Mの含水量が少なすぎると、混合物Mの流動性が小さくなる結果、噴射手段2を用いた噴射が困難になり、かえって作業性を低下させるおそれがある。
【0045】ここで、有機性バインダを使用する理由は、有機物からなるものであれば土壌微生物の作用によって分解し、最終的には肥料と化してしまうからである。有機性バインダとしては、例えばでんぷん、膠、アルギン酸塩、CMC等の天然バインダや、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリマー、グリセリン等の合成バインダ等が使用される。これらのうちでも、特にでんぷん、アルギン酸塩(例えばアルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウム)等の天然バインダが好ましい。
【0046】ところで、混合物Mの調製過程において前記固化処理済みの有機性汚泥粒には、有機性バインダ及び水分のほかに、各種の添加物(着色料、香料、肥料、耐水剤、活性剤、防虫・防菌剤、種子等)を添加してもよい。なお、着色料、香料、肥料、耐水剤、活性剤、防虫・防菌剤、種子等については、先に詳述したものが使用される。
【0047】また、これらの添加物に加え、さらに木酢等の活性剤や、pH調整剤、土壌改良剤や、植物ホルモン等が添加されてもよい。かかる活性剤、pH調整剤、土壌改良剤、植物ホルモンとしては、人工的なものよりも天然のものが好ましい。なお、これらの添加物(着色料、香料、肥料、耐水剤、活性剤、防虫・防菌剤、種子、活性剤、pH調整剤、土壌改良剤、植物ホルモン等)は1種のみ添加されてもよいほか、2種以上の任意の組み合わせで添加されてもよい。
【0048】図1には、畑に複数の畝を形成した状態が示されている。各々の畝は、例えばリッジャ等によって断面略かまぼこ状に土を盛り上げることによって平行に形成される。本実施形態では畝表面が施用面3となる。
【0049】上記のようにして調製された混合物Mは、施用面3である畝表面に対して噴射手段2を使用することで均一に散布された後、自然乾燥される。その結果、施用面3である畝表面を覆う層状の農業用被覆材1が形成される。もっとも、混合物Mを散布後に強制的に乾燥させるという方式を採用しても差し支えない。
【0050】ここで散布に用いる噴射手段2としては、例えばスプレイガンやモルタルガン等のようなガンタイプの噴射手段2が好適であるほか、スラリーポンプ等を用いることも可能である。施用面3が狭い場合には人手により散布を行なってもよい。なお、前記のガンタイプの噴射手段2は、均一な被膜を効率よく形成できる点で有利であるといえる。
【0051】前記混合物Mは、本実施形態の用途では乾燥後における平均厚さが0.1mm〜50mmとなるように、さらには0.1mm〜1.0mmとなるように、特には0.1mm〜0.2mmとなるように散布されることが望ましい。この平均厚さが薄すぎると、被覆材1によって施用面3を均一に被覆することが困難になり、部分的に施用面3が露出する部分ができるおそれがある。逆にこの平均厚さが厚すぎると、確実な被覆を達成することができる反面、コスト性や作業性の低下を招くおそれがある。
【0052】以上のようにして形成された被覆材1の中央部には、図1に示されるように、等間隔にかつ一直線上に略円形状の透孔4が多数個形成される。その結果、被覆材1から土壌が露出し、そこには例えば苗5などの植物体が移植される。なお、植物体は苗5に限定されることはなく、種子や球根等であっても勿論よい。
【0053】そして、このような被覆材1による被覆状態で植物体の栽培が開始される。その結果、透孔4以外の部分についての雑草の生育が確実に阻害され、栽培期間中に除草作業を行う必要が殆どなくなる。なお、この被覆材1の場合には通気性や透水性は確保されている。ゆえに、収穫を目的とする植物体の根による水分の補給等が、被覆材1の被覆により阻害されるという心配はない。また、この被覆材1には耐水剤が添加されていることから、栽培及び収穫が終了するまでに分解が始まるように設定されている。この後、不要となった被覆材1は土にすき込まれ、次の栽培が開始されるまでに完全に分解されてしまう。
【0054】従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)この農業用被覆材1の主な構成成分である有機性汚泥及び有機性バインダは、土壌微生物の作用により分解して、最終的には良質な肥料と化してしまう。このため、従来のビニルマルチを使用するときとは異なり、被覆材1の撤去作業及び焼却処分がともに不要になっている。これに加えて、同被覆材1は混合物Mの施用面3に対する散布により層状に形成されるものであるため、ロール状に巻き取られたものを展開して被覆する必要のある従来品とは異なり、煩雑かつ面倒な被覆作業を要しない。従って、被覆作業の手間が少なくて済み、省略化に適している。また、焼却処分が不要になることによって、それに伴う塩素ガスや炭酸ガス等の発生がなくなり、自然に優しいものとすることができる。
【0055】(2)本実施形態では、固化処理済みの有機性汚泥粒を、有機性汚泥に固化剤及び水分などを添加して攪拌を行う乾燥・造粒工程を経て作製している。従って、有機性汚泥が取扱性に優れた性状になるとともに、汚泥特有の臭いも低減され、かつ汚泥中の有効成分の流出も防止することができる。このことは間接的に施用時の作業性の向上にも貢献している。
【0056】(3)本実施形態では、固化処理済みの有機性汚泥粒の含水率を40重量%以下という好適範囲内に設定している。そして、これにより取扱性の向上、臭いの低減、有効成分の流出防止が確実に図られている。
【0057】(4)本実施形態では、固化処理済みの有機性汚泥粒の平均粒径を上記の好適範囲内に設定している。従って、モルタルガン等のような噴射手段2を用いた場合でも混合物Mの散布に支障を来たすことがなく、しかも施用面3に混合物Mからなる均一な層を形成することができる。
【0058】(5)本実施形態では、固化剤として生石灰を用いているため、外部からの熱供給量が少なくても乾燥・造粒工程を行うことができ、経済的である。勿論、生石灰は最終的に良質な肥料になり、植物体の養分として利用されるという点で有利である。
【0059】(6)本実施形態では、必要に応じて、有機性汚泥または固化処理済みの有機性汚泥粒に濃色系の着色料を添加することとしている。このようにすると、形成される層状の被覆材1が全体的にかつ均一に着色される。その結果、太陽光線のエネルギーをより効率よく吸収することができるようになり、施用面3を保温する効果が向上する。従って、雑草の生育を阻害する効果が高くなるとともに、寒冷地においては植物体の根の生育促進が図られる。また、地温が高くなることにより土壌中の有害昆虫等が不活性化または死滅しやすくなり、ひいては健全な植物体を得ることができる。
【0060】(7)本実施形態では、有機性汚泥に添加される添加物のうち熱に弱いものを、生石灰を用いた乾燥・造粒工程の終了後に添加することにより、同添加物の揮発、変性、失活、死滅等を未然に防止している。従って、揮発、変性等を見越して添加物を余分に添加しておく必要もなく経済的である。
【0061】(8)本実施形態では、必要に応じて、香料、肥料、耐水剤、活性剤、防虫・防菌剤、種子、活性剤、pH調整剤、土壌改良剤、植物ホルモン等の1種または2種以上を添加することとしている。このようにすれば、被覆材1の機能性をよりいっそう向上させることができる。
【0062】(9)本実施形態では、噴射手段2を用いて混合物Mを噴射するという被覆作業により、施用面3に対して被覆材1を形成している。このような方法であると、マルチャを用いた従来のビニルマルチ被覆作業に比べて、手間もそれ程かからない。また、噴射手段2を用いた方法は、施用面3の大きさや形状等に左右されずに、比較的簡単にかつ省力的に被覆材1を形成することができる点で優れている。さらに、この方法であれば状況に応じて被覆厚さを任意に増減することも容易である。
【0063】(10)本実施形態では、混合物Mの乾燥後における平均厚さ(即ち被覆材1の平均厚さ)を上記の好適範囲内に設定している。従って、コスト性や作業性の低下を伴わずに、施用面3を均一にかつ確実に被覆することができる。
【0064】なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
◎ 実施形態において示した農業用被覆材1は、畑に形成された畝に限らず、例えば田、果樹園、花壇、プランタ等につき施用されても勿論よい。
【0065】◎ 被覆材1に着色料を添加することにより混合物Mの散布作業前に着色を行う実施形態の方法に代えて、散布作業終了後に着色料を散布・塗布等することで着色を行なう方法を採用することも可能である。ただし、省力化の観点からすると、実施形態の方法のほうがいくぶん有利である。
【0066】◎ 本発明の被覆材は、実施形態のような農業用の用途のみならず、例えば融雪用などといった別の用途にも応用されることが可能である。具体例として、ゴルフ場のグリーンに生育している芝を凍害から保護するために、芝生面を施用面3として被覆材1を形成すれば、芝の生育促進及び融雪の両方を達成することができる。勿論、植物体の生えていない面に対し、融雪のみを目的として被覆材1を形成することも許容される。なお、好適な融雪効果を得るためには、被覆材1は濃い色に着色されている必要がある。
【0067】◎ さらに本発明の被覆材は道路の法面に施用されてもよい。このような建設用の用途の場合には、前記混合物Mの乾燥後における平均厚さは10mm〜50mmとなるように、つまり農業用のときに比べて厚めに形成されることが望ましい。
【0068】◎ 本発明の固化処理済み有機性汚泥粒は、農業用、融雪用等の被覆材の材料として使用されるばかりでなく、そのまま粒状の性状で畑、田、果樹園、花壇、プランタ等に肥料ないし土壌改良材として散布、施与等されても構わない。
【0069】◎ ゴルフ場での用途を考えた場合、本発明の固化処理済み有機性汚泥粒をそのままの粒状の性状にし、かつそれを緑色に着色して、デポットの目砂として用いることもできる。このようにすると、芝と同色である点で見栄えがよくなることに加え、最終的には微生物により分解して良質な肥料と化して芝の生育促進に貢献することとなる。
【0070】◎ 本発明の固化処理済み有機性汚泥粒をそのままの粒状の性状で水洗したものは、例えば魚類(鯉、金魚、ウナギ、ハマチ等)、甲殻類(エビ、カニ、シャコ等)、貝類(アワビ、カキ、真珠貝等)などの飼料または餌として、即ち漁業の分野においても利用することが可能である。
【0071】◎ 本発明の固化処理済み有機性汚泥粒は、上記実施形態のように層状に形成した状態で使用したり、または上記別例のようにそのままの粒状の性状で使用したりするに止まらず、さらに下記のようにして使用することもできる。例えば、本発明の固化処理済み有機性汚泥粒をボンドで固めて、ゴルフ用ティーの形状に成形する。このようにして形成された有機性汚泥を利用したティーは、使用後に放置されても最終的には微生物により分解して良質な肥料と化し、芝の生育促進に貢献することとなる。勿論、前記固化処理済み有機性汚泥粒は、ゴルフ用ティーのような棒状ないし釘状に限定されることはなく、用途に応じてその他各種の形状に成形されることが可能である。
【0072】次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほか、前述した実施形態によって把握される技術的思想を、必要に応じその効果とともに以下に列挙する。
(1) 請求項1乃至12のいずれか1つにおいて、前記有機性汚泥は食品工場に由来すること。この技術的思想1に記載の発明によると、元来食品として摂食可能であったものゆえ、植物体等に対して無害である。
【0073】(2) 請求項7乃至12、技術的思想1のいずれか1つにおいて、前記有機性汚泥に対して添加される各種の添加物は全て天然のものであること。この技術的思想2に記載の発明によると、植物体等に対して無害である。
【0074】(3) 請求項7乃至12、技術的思想1,2のいずれか1つにおいて、前記着色剤は植物系の顔料であること。
(4) 請求項10,11において、前記噴射手段はガンタイプの噴射手段であること。
【0075】(5) 請求項8乃至11のいずれか1つにおいて、前記生石灰を用いた乾燥・造粒工程の後に添加される熱に弱い添加物は種子であること。
(6) 請求項9乃至12のいずれか1項において、前記耐水剤の添加量は1重量%〜10重量%であること。この技術的思想6に記載の発明によると、分解時期を遅らすことにより遅効性とし、ある程度長期間にわたって被覆効果を維持することができる。
【0076】(7) 請求項9乃至12のいずれか1項において、さらに活性剤を添加すること。この技術的思想7に記載の発明によると、植物体を活性化し、生育をより促進することができる。
【0077】(8) 請求項9乃至12、技術的思想7のいずれか1項において、さらに防虫・防菌剤を添加すること。この技術的思想8に記載の発明によると、害虫や病原菌による被害を低減でき、健全な植物体を育成できる。
【0078】(9) 請求項9乃至12のいずれか1項において、技術的思想7,8さらにpH調整剤を添加すること。この技術的思想9に記載の発明によると、植物体の生育に適したpHに土壌pHを調整できる。
【0079】(10) 請求項9乃至12、技術的思想7乃至9のいずれか1項において、さらに土壌改良剤を添加すること。この技術的思想10に記載の発明によると、植物体の生育に適した状態に土壌を改良できる。
【0080】(11) 請求項9乃至12、技術的思想7乃至10のいずれか1項において、さらに植物ホルモンを添加すること。この技術的思想11に記載の発明によると、植物体の成長度合いや開花時期等をある程度制御できる。
【0081】(12) 請求項2乃至11に記載された被覆材の形成方法により形成された被覆材を用いた植物体の栽培方法。
【0082】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、撤去作業及び焼却作業が不要なことに加え、被覆作業の手間が少なくて済む、有機性汚泥を利用した被覆材を提供することができる。
【0083】請求項2〜11に記載の発明によれば、上記の優れた被覆材を施用面に対して簡単にかつ確実に形成する方法を提供することができる。請求項3に記載の発明によれば、取扱性の向上、臭いの低減、有効成分の流出防止を図ることができる。
【0084】請求項4に記載の発明によれば、取扱性の向上、臭いの低減、有効成分の流出防止を確実に図ることができる。請求項5に記載の発明によれば、混合物の散布に支障を来たすことなく、施用面に混合物からなる均一な層を形成することができる。
【0085】請求項6に記載の発明によれば、有機性汚泥の乾燥・造粒工程を経済的に行うことができる。請求項7に記載の発明によれば、施用面を保温する効果を向上させることができる。
【0086】請求項8に記載の発明によれば、添加物のうち熱に弱いものを余分に添加しておく必要もなくなり、経済的なものとすることができる。請求項9に記載の発明によれば、被覆材の機能性をよりいっそう向上させることができる。
【0087】請求項10に記載の発明によれば、施用面の大きさや形状等に左右されずに、比較的簡単にかつ省力的に被覆材を形成することができる。請求項11に記載の発明によれば、コスト性や作業性の低下を伴わずに施用面を均一にかつ確実に被覆することができる。
【0088】請求項12に記載の発明によれば、上記の優れた被覆材を形成するにあたって極めて好適な固化処理済みの有機性汚泥粒を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】591140916
【氏名又は名称】岩田商事株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
【公開番号】 特開平11−262335
【公開日】 平成11年(1999)9月28日
【出願番号】 特願平10−66535