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【発明の名称】 植物の成長促進方法
【発明者】 【氏名】大菅 康一

【要約】 【課題】植物の栽培において、従来より成長が速く栽培サイクルを短縮できて、しかも光の利用効率を高くできる植物の成長促進方法を提供する。特に長日植物においても暗期を短くしても抽だいや花芽分化による商品価値低下の問題のなく成長を促進できる方法を提供する。

【解決手段】植物の栽培において、一日のうちの連続した12時間を昼間、残りの12時間を夜間とするとき、一日につき12時間を超えて光を照射し、かつ夜間に照射する光強度を昼間の照射光強度以下とすることを特徴とする。特に好ましい実施態様として、ホウレンソウの人工照明下での栽培において終日15klx で照射し花芽分化前に収穫可能サイズにまで成長させる方法、或いは昼間12時間は15klx で照射し、夜間12時間は2klxで照射することにより光の利用効率を高めて成長促進する方法が挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物の栽培において、1日につき12時間を超えて光を照射し、かつ夜間に照射する光強度を昼間に照射する光強度以下にすること特徴とする植物の成長促進方法。
【請求項2】 昼間において照射する光強度を15〜100klx とすることを特徴とする請求項1記載の植物の成長促進方法。
【請求項3】 夜間において照射する光強度を2〜25klx とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の植物の成長促進方法。
【請求項4】 夜間において照射する光強度を2〜15klx とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の植物の成長促進方法。
【請求項5】 昼間において照射する光強度を15klx 、夜間において照射する光強度を2klx とすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の植物の成長促進方法。
【請求項6】 光強度15klx で終日照射することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の植物の成長促進方法。
【請求項7】 植物がホウレンソウであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の植物の成長促進方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は植物の栽培において、従来よりも成長が速く、光の利用効率が高くなる植物の成長促進方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に植物の栽培においては、光照射する時間が長ければそれだけ光合成も多く行われるため、植物の成長は促進される。栽培は土耕或いは水耕で行われるが、どちらも人工照明を用いれば照射時間を長くすることが可能である。しかし、人工照明を用いた場合にはコストやエネルギーを要する。そこで、投入(照射)した光エネルギーを植物に極力高効率に利用させることが課題であるが、これまでのところこの課題を解決する方法は知られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、光照射エネルギーを被照射植物に高効率で利用させることのできる方法を解決すべき第一の課題としている。ところで上記第一の課題を解決するときに考慮すべき点として、一般にホウレンソウ等の長日植物では、照射時間を長くすることにより暗期が一定以下(例えば約12時間以下)になると、抽だいや花芽分化が起こり商品価値が低下する、という問題がある。本発明は、このような長日植物においても適用できて、抽だいや花芽分化等がなく光照射エネルギーを高効率で利用させることのできる植物の成長促進方法を第二の課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する手段として本発明は、(1)植物の栽培において、1日につき12時間を超えて光を照射し、かつ夜間に照射する光強度を昼間に照射する光強度以下にすること特徴とする植物の成長促進方法、(2)昼間において照射する光強度を15〜100klx とすることを特徴とする上記(1) 記載の植物の成長促進方法、(3)夜間において照射する光強度を2〜25klx とすることを特徴とする上記(1) 又は(2) 記載の植物の成長促進方法、(4)夜間において照射する光強度を2〜15klx とすることを特徴とする上記(1) ないし(3) のいずれかに記載の植物の成長促進方法、(5)昼間において照射する光強度を15klx 、夜間において照射する光強度を2klx とすることを特徴とする上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の植物の成長促進方法、(6)光強度15klx で終日照射することを特徴とする上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の植物の成長促進方法、及び(7)植物がホウレンソウであることを特徴とする上記(1) ないし(6) のいずれかに記載の植物の成長促進方法、を提供するものである。なお、本発明においては昼間、夜間とは一日24時間を等分した各12時間ずつであり、昼間は連続した12時間、夜間とは残る12時間を意味する。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、長日植物の栽培において、人工照明を用いて光を照射する時間を通常の12時間より長く、かつ夜間に照射する光強度を昼間の光強度以下とすることにより、光合成を通常より活発にしかも効率良く行わせるものである。従来、光照射時間を延長して暗期を短くすると抽だいや花芽分化が起こると考えられていたが、照射する光の強度を特定の強度範囲内、すなわち昼間の光強度以下の適切な強度に設定することにより、照射時間を延長して光合成を活発に行わせて成長を著しく促進し、しかも抽だいや花芽分化が起こる前に通常収穫する成長量に達するようにできること、さらには夜間における照射強度を特に適切な値に設定すれば、積算照射光量に対する植物の成長の割合を最も高くすることができるという驚くべき知見を得て、本発明に到達した。すなわち、本発明によれば、従来のように例えば昼間12時間光照射し、夜間12時間は照射しない方法に比較して、抽だいや花芽分化を見ずに収穫までの期間を著しく短縮できるのである。
【0006】
【発明の実施の形態】ここで、延長して照射する光の照射時間及び強度であるが、後記する実施例に示すように、光強度又は照射時間に比例して光合成が多く行われ成長量は増加するので、連続して照射し、花芽分化や抽だいが起きる前に収穫可能サイズにまで成長させることが最も好ましい。しかし、とう立ちや花芽分化が起こる前に収穫する成長量に達すれば、必ずしも連続で照射する必要はないし、照射時の光強度や栽培期間中の光照射条件なども必ずしも常に一定である必要はなく、これらの条件を変えてもとう立ちや花芽分化が起こる前に収穫する成長量に到達すればよい。さらに本発明においては、同じ積算光照射量で比較した場合に、得られる成長量がこれまで昼間のみの照射や夜間の連続光照射による栽培で得られた成長量より大きければ、栽培しようとする植物の栽培方法や特徴に応じて照射時間と強度を設定すればよい。
【0007】本発明においては、昼間の照射光強度を15〜100klx とすることが特に好ましい。さらには、自然光照射の場合は昼間の照射光強度を100klx 以下で夜間は昼間の照射光強度以下とすること、人工照明下の栽培では昼間を15〜25klx で夜間は昼間の照射光強度以下とすることが挙げられる。また本発明においては、夜間の照射光強度を2〜25klx とすることが特に好ましく、2〜15klx とすることがとりわけ好ましい。後記の実施例に示すように、栽培植物としてホウレンソウを用いた場合、昼間は光強度15klx で、夜間は光強度が2〜15klx の範囲で照射することにより非常に成長が促進された。特に夜間15klx (昼間と同じ強度)で終日連続照射すると成長速度が速く花芽分化以前に収穫サイズに達した。また夜間は2klx で連続照射すると積算光照射量に対する植物の成長量を最も大きくできる、すなわち光エネルギの利用効率を最も高くして栽培できる。夜間に照射する光強度が2klx 未満では収穫サイズに達する前に抽だいや花芽分化が起き、一方15klx を超えると光エネルギの利用効率が低下するという不具合がみられた。
【0008】なお、本発明においては光照射時間を長くする、すなわち夜間にも照射することを除き、温度やCO2 濃度などの他の環境条件は従来と同様である。また、人工照明などにより光照射時間を長くすればよいので、露地(土耕)あるいは水耕栽培のどちらにも適用できる。
【0009】
【実施例】長日植物としてホウレンソウを水耕栽培した場合を例にとり、以下に実施例を説明する。
〔実施例1及び比較例1〕水耕栽培用ホウレンソウの種子をウレタンマットに5粒ずつ播種し、4日間暗所下に保管して発芽、育苗した。さらに一日間、およそ5Klxの明所で緑化し、得られた苗を水耕液に定植して栽培を開始した。水耕液は大塚ハウス肥料2号,同3号,同5号,同6号及び同7号(以上いずれも商品名、大塚化学株式会社製)の5種類を用い、1000リットル当たり同2号950g、3号810g、5号50g、6号500g、7号155gをそれぞれ溶解した処方のものを用いた。水耕液のpHは6.0〜6.5に、EC(電気伝導度)は2.2〜2.3(mS/cm)になるよう管理した。温度は昼間12時間(9:00〜21:00)が26℃、夜間12時間(21:00〜9:00)が21℃とした。光は光源として白色蛍光灯を用い、強度は昼夜連続して15klx とした(実施例1)なお、対照区として人工照明栽培で設定される通常の条件、すなわち光を昼間12時間(9:00〜21:00)が15klx 、夜間12時間(21:00〜9:00)は暗黒下とし、他の条件は実施例1と同じにして栽培した(比較例1)。
【0010】実施例1及び比較例1における、ホウレンソウの全長の経時的変化を図1に示し、ホウレンソウ一株当たりの平均湿重量(g/株)の経時的変化を図2にそれぞれ示す。昼夜連続して15klx の強度の光を照射して栽培すると、栽培開始から21日後には、大きさ及び1株の地上部の重量はともに通常収穫する成長量(全長約20cm、1株の湿重量約10g)に達した。なお、この時点では抽だいや花芽分化は起こらなかった。さらに連続して15klx の照射で栽培を続けると、およそ25〜26日後に抽だいや花芽分化が観察された。また、従来のように同じ光強度15klx で昼間12時間照射して夜は暗黒下の条件では、42日間の栽培期間中にとう立ちや花芽分化は起こらなかったが、収穫する成長量に達したのは栽培開始から42日後であった。以上のように、本発明に従い15klx の光強度で連続して光照射した場合には収穫する成長量へ達したのは21日後であったので、従来の42日後と比べて収穫する成長量へ達するまでの期間を1/2とすることができた。すなわち、成長速度は2倍となった。
【0011】〔実施例2,実施例3及び比較例2〕水耕栽培用ホウレンソウの種子をウレタンマットに5粒ずつ播種し、4日間暗所下で発芽、育苗した。さらに1日間、およそ15klx の明所で緑化し、得られた苗を水耕液に定植して栽培を開始した。水耕液は大塚ハウス肥料2号,同3号,同5号,同6号及び同7号(以上いずれも商品名、大塚化学株式会社製)の5種類を用い、1000リットル当たり同2号950g、同3号810g、同5号50g、同6号500g、同7号155gをそれぞれ溶解した処方を用いた。水耕液のpHは6.0〜6.5に、EC(電気伝導度)は2.2〜2.3(mS/cm)になるように管理した。温度は昼間12時間(6:00〜18:00)が26℃、夜間(18:00〜翌6:00)が21℃とした。光は光源として白色蛍光灯を用いた。光照射条件は、次の通り設定した。通常の栽培条件を対照区として昼間12時間(6:00〜18:00)が光強度を15klx 、夜間12時間(18:00〜6:00)は暗黒下に設定した(比較例2)。本発明による成長促進効果を調べる栽培として、昼間は対照区と同じで夜間12時間に光強度15klx (実施例2)及び、昼間は対照区と同じ15klx で照射し夜間は2klx (実施例3)の光照射条件をそれぞれ設定した。なお、光照射以外の条件はいずれも比較例2と同じである。
【0012】実施例2,3及び比較例2のホウレンソウの平均全長(cm)の経時的変化を図3に、ホウレンソウ一株当たりの平均湿重量(g/株)の経時的変化を図4に各々示す。図3及び図4からわかるように、比較例2(夜間は暗黒)では栽培開始から42日後、実施例2(夜間15klx 光照射)では21日後、実施例3(夜間2klx 照射)は28日後にそれぞれ通常収穫する成長量(全長約20cm、1株の湿重量約10g)に到達し、光の照射時間を長くすると成長速度が促進される。また、実施例2と実施例3の比較からわかるように、光照射時間を長くした場合には、同じ照射時間では光強度が大きいほど成長は促進される。
【0013】次に実施例2,3及び比較例2について、投入した光エネルギー量として光の照射時間と強度を掛けた値である積算光照射量に着目し、同じ積算光照射量で得られた成長量を平均全長(cm)及び一株当たりの平均湿重量(g/株)についてそれぞれ比較したものを、全長については図5に、湿重量については図6に示す。図5及び図6に示されるように、同じ積算光照射量で比較すると、比較例2(夜間暗黒)と実施例2(夜間15klx )の成長はほぼ同じであるが、実施例3(夜間2klx )では得られた成長量がより大きいことがわかる。すなわち、夜間2klx では比較例2より成長速度が速くなり、しかも投入した光エネルギー量に対して得られた成長量が比較例2や実施例2より増加しており、植物の光利用効率が高いことが分かる。
【0014】
【発明の効果】以上の実施例1〜3の結果に示されるように、本発明は1.収穫までの栽培期間を短縮できるので、同一場所での栽培回数を増やすことができる、2.収穫までの栽培期間を短縮できるので、生産性を向上できる、3.成長促進のために光照射時間を長くする或いは光強度を大きくするだけでよいため、特別な手段を新たに導入、追加する必要がない、という優れた効果を奏するものである。さらに実施例2及び3の結果に示されるように、本発明は4.投入した光エネルギーが有効に利用されるので、エネルギーのロスや照明に必要なコストが低減できる、という非常に優れた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 亮一 (外2名)
【公開番号】 特開平11−239417
【公開日】 平成11年(1999)9月7日
【出願番号】 特願平10−43416