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【発明の名称】 育苗シートおよび育苗箱
【発明者】 【氏名】藤浦 洋二

【氏名】糟谷 和宏

【氏名】藤田 浩史

【要約】 【課題】育苗期間中、灌水作業を低減し、育苗箱の取扱いを容易にし、さらに水稲田移植後に、除草剤による土壌への影響、人体への影響、取扱い条件の煩わしさがなく、人的労働力が低減された雑草の駆除が可能な育苗シートを得る。

【解決手段】バクテリアおよび真菌から選ばれる1種以上の除草効果のある微生物が存在してなる育苗シートまたは育苗箱。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 バクテリアおよび真菌から選ばれる1種以上の除草効果のある微生物(A)を存在させてなる育苗シートまたは育苗箱。
【請求項2】 該育苗シートが(A)と透水性シート(D)からなり、(A)が少なくとも1枚の(D)の表面および/または内部に存在してなる請求項1記載の育苗シート。
【請求項3】 (A)が バクテリアおよび真菌から選ばれる1種以上の除草効果のある微生物と必要により担体、培地、酵素からなる請求項1または2記載の育苗シート。
【請求項4】 さらに、吸水性樹脂(B)が少なくとも1枚の(D)に存在してなる請求項2または3記載の育苗シート。
【請求項5】 さらに、フィラー(C)が少なくとも1枚の(D)に存在してなる請求項2〜4記載の育苗シート。
【請求項6】 (A)、(B)、(C)および必要により水溶性有機化合物(E)とが、2枚以上の(D)間に存在してなる請求項1記載の育苗シート。
【請求項7】 (A)が108 個/g〜1011個/gのバチルス属のバクテリアおよび約106 個/g〜約1010個/gの乳酸菌を含有する請求項1〜6のいずれか記載の育苗シートまたは育苗箱。
【請求項8】 (D)がセルロース質の紙及び/又は布である請求項2〜7のいずれか記載の育苗シート。
【請求項9】 該育苗箱内に請求項2〜8のいずれか記載の育苗シートが施設されてなる育苗箱。
【請求項10】 (A)が土に混合されたものである請求項1記載の育苗箱または請求項1〜8のいずれか記載の育苗シート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水稲の育苗に用いられる育苗シートおよび育苗箱に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、移植機械の発達により、水稲の育苗技術として箱育苗が普及し、多種多様の育苗技術が提案され実用に供されてきた。しかしながら、従来の育苗箱を利用した育苗方法は、常に培土の水分状態を管理し、少なくとも日に数回潅水する必要があること、田植え時の育苗箱の質量が通常約5〜8.5kgとなり重いことなど、取扱いに多大な手間と労力を要している。また、一般に水稲の移植栽培では、雑草による減収を防止するために数回の除草剤の散布が行われているが、除草剤による土壌汚染、作物に蓄積された除草剤の人体への影響等が問題となってきており、一方、除草剤を用いなければ、雑草駆除を人的労働力に頼らざるをえず、コストの高いものとなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、育苗期間中、潅水の回数及び育苗箱の質量を低減させることで人的労働力を低減させ、水稲田生育期間中、除草剤による土壌への影響、人体への影響、取扱い条件の煩わしさがなく、人的労働力をほとんど必要とせずに雑草を駆除できる育苗シートおよび育苗箱を提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題について鋭意研究した結果、特定の微生物を用いることにより、上記目的が達成されることを見い出し本発明に到達した。すなわち本発明は、バクテリアおよび真菌から選ばれる1種以上の除草効果のある微生物(A)が存在してなる育苗シートまたは育苗箱である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の育苗シートまたは育苗箱において、微生物(A)は、バクテリア、真菌から選ばれる1種以上の除草効果のある微生物ある。本発明の除草効果のある微生物としては、例えばバチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エンテロバクター属(Enterobacter)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、ニトロバクター属(Nitrobacter)、セルロモナス属(Cellulomonas)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)等のバクテリア;リゾープス属(Rhizopus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、酵母(Yeast)等の真菌が挙げられる。これらの微生物は1種または2種以上併用することができる。
【0006】上記微生物の中で好ましくは、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus),ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、ニトロバクター属(Nitrobacter)、リゾープス属(Rhizopus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)の微生物であり、これらが育苗シートから移植された場所の土壌の性質を変え、その結果として雑草を駆除する能力が大きい。更に好ましくは、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)の微生物である。また、これらの微生物を併用することによって、同一環境下で共存して共同的に作用して(役割分担して)移植された場所の土壌を変え、その結果として雑草の駆除に効果的に作用する場合が多い。特にバチルス属のバクテリアと、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)およびエンテロコッカス属(Enterococcus)からなる乳酸菌との併用系が最も好ましい。
【0007】上記(A)の菌種としては、例えば下記のものが挙げられる。
(1)バチルス属(Bacillus)
バチルス・ズブチリス[IFO(Institute for Fermentation Osaka :財団法人発酵研究所、以下同様)13719]、バチルス・ナットウ(IFO3013)、バチルス・リケニフォルミス(IFO12200)、バチルス・コアギュランス(IFO12583)、バチルス・マセランス(IFO3490)、バチルス・メガテリウム(IFO1208),バチルス・ポリミキサ(IFO13003)など。
(2)ラクトバチルス属(Lactobacillus)
ラクトバチルス・カセイ(IFO12521)、ラクトバチルス・アシドフィルス(IFO13951)、ラクトバチルス・デルブリュッキ(IFO3202)、など。
(3)ストレプトコッカス属(Streptococcus)
ストレプトコッカス・フェカリス(IFO3971)、ストレプトコッカス・クレモリス(IFO3427)、ストレプトコッカス・ラクチス(IFO12007)、ストレプトコッカス・サリバリウス(IFO13956)、ストレプトコッカス・サーモフィリス(IFO13957)、ストレプトコッカス・フェシアム(IFO12256)など。
【0008】(4)エンテロコッカス属(Enterococcus)
エンテロコッカス・フェカリス(IFO3971、IFO3989)、エンテルコッカス・フェシアム(IFO3128、IFO3535)など。
(5)エンテロバクター属(Enterobacter)
エンテロバクター・アエロジニス(IFO12010、IFO13534)など。
(6)ニトロソモナス属(Nitrosomonas)
ニトロソモナス・ユーロパエア(IFO14298)など。
(7)ニトロバクター属(Nitrobacter)
ニトロバクター・アギリス(IFO14297)など。
(8)セルロモナス属(Cellulomonas)
セルロモナス・フラビゲナ(IFO3754)、セルロモナス・ビアゾテア(IFO12680)、セルロモナス・セラセア(IFO3748)、セルロモナス・ウダ(IFO3747)、セルロモナス・ゲリダ(IFO3748)など。
(9)シュードモナス属(Pseudomonas)
シュードモナス・プチダ(IFO14164)、シュードモナス・ニトロレデューセンス(IFO12694)など。
(10)アグロバクテリウム(Agrobacterium)
アグロバクテリウム・テュメファシエンス(IFO3058、IFO12667)など。
【0009】(11)リゾープス属(Rhizopus)
リゾープス・オリザエ(IFO4706)、リゾープス・フォルモサエンシス(IFO4732)、リゾープス・ジャポニカス(IFO4732)、リゾープス・デレマール(IFO4746)など。
(12)アスペルギルス属(Aspergillus)
アスペルギルス・オリザエ(IFO30104)、アスペルギルス・ニガー(IFO31125)、アスペルギルス・ウサミイ(IFO4388)、アスペルギルス・ソーヤ(IFO4391)、アスペルギルス・テレウス(IFO31217)など。
(13)サッカロマイセス属(Saccharomyces)
サッカロマイセス・セレビシエ(IFO10217)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(IFO1167)など。
【0010】微生物の除草効果の確認試験方法は後述するように各種雑草の種子を混合した植壌土に、微生物を含有させた培土で育てた水稲幼苗を移植し微生物の除草効果を確認する。(A)にさらに必要により担体、培地、酵素を使用して用いることが出来る。この場合には微生物の含有量は、通常5〜100質量%、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%である。必要により用いられる担体としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、珪藻土、ゼオライト、オガクズなどの無機系または有機系粉末が使用できる。担体の含有量は通常0〜95質量%、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜80%である。また、必要により使用される培地としては、魚粉、油カス、フスマ、麦汁など農水産物およびその廃棄物が使用できる。必要に応じ任意の量が使用出来る。
【0011】(A)中には僅かの酵素が自然に(添加しなくても)含まれる。これは、例えば、上記の微生物(1種以上)、担体および培地の適当量を水の中に加えて混合し、25〜50℃の温度で24〜72hrs程度培養した後、例えばスプレードライ法で真空乾燥して粉末化(水分約5%)して製造できるが、この様にして得られる(A)中には、通常培養中微生物により作られたプロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼなどの酵素が含まれる。本発明においては、雑草の駆除性能を更に高めるために、上記以外の酵素を(A)に添加することもできるし、上記と同じ酵素を後添加することもできる。
【0012】(A)は液状〜固状であり、担体等を使用した場合には、好ましくは粉末状または粒状である。(A)が含有された粉末状のものが製品の保存安定性が良好であるので好ましい。粉末状態での水分含有量は約5質量%以下となるため、(A)の微生物は休眠(不活性)状態にあり保存安定性が良くなる。
【0013】(A)は市販品を使用出来る。また、担体等を使用して製造する際に、必要により少量の水溶性有機化合物(E)を併用することが出来る。このことにより、(A)の潅水した水および水稲田の水中への溶解性を高めることができる。付随効果としては、(A)を含んだ混合物が粉末状の場合、(E)で湿ることにより飛散性が小さくなって、後記のように粉末性状の(A)の混合物を育苗箱に直接投入する際や透水性シート(D)に入れる際に、微粉が舞わないので作業環境が改善される。
【0014】(E)としては、常温(20℃)で液状で、水(20℃)に対する溶解度が20以上の低揮発性有機化合物を挙げることができ、その具体的な化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール(e−1);グリセリン、ジグリセリンなどの炭素数3〜10の多価アルコール(e−2);炭素数4〜30の一価アルコール、炭素数6〜30のフェノール系化合物、前記のアルキレングリコール(e−1)、前記の多価アルコール(e−2)、エチレンジアミン、ジエチレンポリアミン等の炭素数2〜6のポリアミン(窒素原子数2〜4)などからなる活性水素含有化合物にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを付加した水溶性液状アルキレンオキシド付加物(エチレンオキシドのモル数:1〜10)(e−3);高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキシド付加物硫酸エステル塩などの水溶性液状アニオン界面活性剤(e−4);第4級アンモニウム塩、第3級アミン塩などの水溶性液状カチオン系界面活性剤(e−5);アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤などの水溶性液状両性界面活性剤(e−6)等が挙げられる。
【0015】これらの中では、(e−1)、(e−3)が、少量の使用量で(A)を低飛散性にする効果が大きい点で好ましい。(E)を用いる場合の使用量は、(A)の混合物に対し、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは3〜7質量%である。(E)が1質量%以上であると、微粉末を含む(A)を低飛散性にしやすく、10質量%以下であると生成物の粉体流動性が良好である。(A)に必要により上記の他の成分を混合する方法としては、特に限定されないが各成分を混合槽に入れた後、均一に撹拌、混合してもよく、あるいは先ず(A)の混合物の粉末状の成分を、例えばナウターミキサーなどの粉体混合槽に入れた後、(E)を入れて均一になるまで撹拌、混合してもよい。混合時間は通常5〜120分程度である。このようにして得られる粉末状の微生物混合物中の生菌数(単位:個/g)は、例えば標準寒天培地などの通常の培地を用いて、培養条件を適当に選択して(例えば35℃×24〜72時間)混和平面培養法などの公知の方法に準拠して測定できる。
【0016】(A)に必要により混合する場合の、混合物1g中に含まれる微生物の全生菌数は、好ましくは108 〜1011程度であるが、混合物中におけるそれぞれの微生物の生菌数は、雑草の駆除を効率よく行う観点から微生物を単独で用いる場合は次の範囲にあるのが好ましい。すなわち、 (1)バチルス属(Bacillus subtilis)の場合 :108〜1011/g (2)ラクトバチルス属(Lactobacillus)の場合 :106〜1010/g (3)ストレプトコッカス属(Streptococcus)の場合 :106〜1010/g (4)エンテロコッカス属(Enterococcus)の場合 :106〜109/g (5)エンテロバクター属(Enterobacter)の場合 :106〜109/g (6)ニトロソモナス属(Nitrosomonas)の場合 :106〜109/g (7)ニトロバクター属(Nitrobacter)の場合 :106〜109/g (8)セルロモナス属(Cellulomonas)の場合 :106〜109/g (9)シュードモナス属(Pseudomonas)の場合 :106〜108/g (10)アグロバクテリウム属(Agrobacterium)の場合 :106〜108/g (11)リゾープス属(Rhizopus)の場合 :106〜109/g (12)アスペルギルス属(Aspergillus)の場合 :106〜109/g (13)サッカロマイセス属(Saccharomyces)の場合 :106〜108/g 併用で用いる場合は108 個/g〜1011個/gのバチルス属のバクテリアおよび約106 個/g〜約1010個/gの乳酸菌を含有するのが好ましい。
又、(A)またはその混合物の育苗シートおよび育苗箱に占める質量は、除草効果、製造コストの面から育苗箱・育苗シートの単位体積(m2)当たり、好ましくは0.1〜20g、特に好ましくは0.3〜10gである。
【0017】本発明において吸水性樹脂(B)としては、デンプンまたはセルロースとカルボキシル基、スルホン酸基などの親水基を含有する水溶性単量体及び/又は加水分解により水溶性となる単量体と、架橋剤とを必須成分として重合させ、必要により加水分解を行うことにより得られる吸水性樹脂が挙げられる。この吸水性樹脂の製造法及び具体例は、特開昭52−25886号、特公昭53−46199号、特公昭53−46200号及び特公昭55−21041号公報に記載されている。(B)の他の例としては、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合物の加水分解物、カルボキシメチルセルロースの架橋物、架橋ポリアクリルアミドの部分加水分解物、架橋されたアクリル酸−アクリルアミド共重合体、架橋されたスルホン化ポリスチレン、特開昭52−14689号及び特開昭52−27455号公報で開示されているビニルエステル−不飽和カルボン酸共重合体ケン化物、架橋されたポリアクリル酸(塩)、架橋されたアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、架橋されたイソブチレン−無水マレイン酸共重合体及び架橋されたカルボン酸変性ポリビニルアルコール、自己架橋型ポリアクリル酸塩などが挙げられる。又、以上例示した吸水性樹脂は2種以上併用してもよい。
【0018】(B)を後述する透水性シート(D)に内包した後、育苗箱に敷設し、これに培土を入れ、潅水すると、シート内の吸水性樹脂が吸水膨潤し、水の粒子として吸水樹脂内に保持される。このため培土が乾燥してきても、水を吸収した吸水性樹脂から水が徐々に放出され、培土中に水分を補給するため乾燥しにくくなる。この現象は、以下の効果を生み出す。まず、潅水間隔をのばすことができ、潅水の省力化ができる。又、(B)の保水量が大きく、蒸発しにくいため培土の量を通常の半量まで減らせることができ、更に根に十分な水分を供給するとともに、根腐れの心配もなく根張り(マット形成)が良くなる。(B)の質量に対する水(脱イオン水)の吸水倍率は、好ましくは10〜1500倍であり、より好ましくは100〜1000倍である。又、(B)の形状は、好ましくは粉末状又は粒状であり、その平均粒径は空隙率の点およびシートを形成する点から、好ましくは150〜1700μmであり、より好ましくは300〜800μmである。
【0019】吸水性樹脂の吸水倍率は次に示す方法により測定して得られる値とする。<吸水性樹脂の吸水倍率>ナイロン製の網袋(250メッシュ)に吸水性樹脂の試料(サンプル量;Xg)を入れ、これを袋ごと過剰の水に浸した。浸漬60分後に袋ごと空中に引き上げ、静置して15分間水切りした後、質量(Yg)を測定して下式より吸収倍率を求めた。[網袋のみを用いて上記と同様の操作を行い、この分の質量(Zg)をブランクとして差し引いた。]
吸収倍率=(Y−Z)/X(B)の添加量、いかなる吸水倍率のものを選ぶかに関しては、必要とする保水量に応じて決められる。(B)の添加量としては、発芽性、保水性より、育苗シートの単位体積(m2)当たり、好ましくは1〜100g、より好ましくは5〜80gである。
【0020】本発明においてフィラー(C)としては、好ましくは粉末状、粒状、繊維状および綿状のフィラーである。(C)としては、種子の発芽生育を阻害しないように、適度な通気性を有するもの、地面に取り付けた際に土壌に悪影響を与えないもの及び/又は土壌表面若しくは内部において分解され易い性質を有しているものが好ましく、例えば、パーライト、バーミキュライト、ロックファイバー等の無機多孔質、木屑、モミガラ、ソバカス、米ヌカ、木綿、ワラ、草炭、羊毛、オガクズ、パルプ、紙屑等が挙げられる。(C)の添加量としては、通気性および厚さを確保するため、育苗シートの単位面積(m2)当たり、好ましくは5〜200g、より好ましくは50〜150gである。
【0021】本発明の(D)としては、育苗シートに成形後の厚みが0.01〜9mmになるものが好ましく、0.1〜3mmとなるものがより好ましい。また、(D)の透水性の程度としては、JIS L 1096に記載の吸水速度A法において、5分以下の吸水速度を有するものが好ましい。(D)の質量は、育苗シートの単位体積(m2)当たり、育苗シートの保形性、厚さを確保するため、好ましくは5〜150g、より好ましくは20〜100gである。又、種子の発芽生育を阻害しないように、適度な通気性、及びシートを地面に取り付けた際に、土壌表面若しくは内部において分解され易い性質を有していることが好ましく、例えば、セルロース系繊維の織編物(布)や不織布(紙または布)、新聞紙などの紙、水溶性ポリビニルアルコール系繊維織編物やフィルム、板紙等が挙げられる。これらの中ではセルロース質の紙及び又は布が好ましい。本発明において、必要によりさらに肥料、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート化剤(金属補足剤)等の添加剤を(D)に内包し使用できる。
【0022】本発明の育苗シートは(A)と(D)とからなり、(A)が少なくとも1枚の(D)の表面または内部に存在してなる育苗シートである。この育苗シートには更に(B)、更に(C)が少なくとも1枚の(D)に存在することが出来る。育苗シートに(D)を2枚以上用いる場合は、全体として少なくとも1枚の(D)の表面または内部に(A)が存在していればよい。2枚以上用いる育苗シートの例としては、例えば、(D)の層、(B)と(C)の層、(D)の層、(A)と(C)と(E)の層および(D)の層からなる5層構造を有するもの、(D)の層が2層、(A)〜(E)の混合された層および(D)の層からなる4層構造を有するものなどが挙げられる。
【0023】本発明において、育苗シートの製造方法としては、通常の方法、例えば(D)を(A)〜(C)の混合物に浸漬するか、(D)の表面に塗布する方法等が挙げられる。(D)を2枚用いる場合は上記と同じ方法で作成して2枚重ねる方法の他に、例えば次の2つの方法が挙げられる。
■一方の(D)上に(A)〜(C)を混合したものを均一に散布した後、他方の(D)を重ね合わせ、更にエンボス加工等の加圧成形をしたもの。
■一方の(D)上に(A)〜(C)を混合したものを適当な結合材(F)に加えたものを塗工し、他の透水性シート(D)を重ね合わせ加工成形した後、乾燥したもの。(D)が3枚以上の場合は、上記の方法の1枚の場合と2枚の場合の両方の単独の方法の組み合わせや2枚の場合と同じ方法で処理することも考えられる。本発明において、育苗シートの形態としては、一般に市場に流布されている育苗箱(プラスチック容器)の大きさ以内であれば、長さ,幅,厚みは制限されないが、取扱いの点から、長さ600cm,幅300cm以内が好ましい。又、育苗シートの厚みは、流通コスト、製造の点から、できる限り薄いものが好ましく、一般に0.5mm〜20mmの厚さが好ましい。より好ましくは1mm〜8mmである。育苗箱の中に育苗シートを施設する場合、特に制限はないが、通常育苗箱の底部に育苗シート1枚である。
【0024】上記(F)としては天然高分子、合成樹脂、天然および合成ゴムなどが挙げられる。天然高分子としては、デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ソーダ、グアーガム、キサンタンガム、ビーンガム、カラギーナン、グルテンなどが挙げられる。合成樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン共重合体樹脂などが挙げられる。天然および合成ゴムとしては、天然ゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独、もしくは2種類以上混合して用いることができる。これらのうち好ましいものは合成樹脂系結合材である。
【0025】(A)は、後記の育苗工程を経て(詳しくは潅水された時点で微生物が休眠から目覚め、活動を開始する)、育苗箱中で増殖し、移植後の水稲田に速やかに定着し土壌を変え、その結果として除草を効果的に行う。通常、田植機で植えられる苗は、育苗箱と呼ばれる箱の中で育てられる。育苗箱中には育苗シートが施設されているか、(A)が混合された土が存在してなるものである。ここで土とは好ましくは水稲などの植物用肥料の入った土のことであり、特に好ましくは床土や覆土である。床土や覆土とは山土、水用土等の自然土や、この自然土を素材として肥料の有無、含有量、PH,透水性、通気性を調整したものをいう。後述する[2]試験方法の5に具体的に記載してある通りであり。育苗工程は例えば、以下のような工程で行われる。すなわち、1)種子の予備措置■種モミ選別:消毒の後、塩水選により浮モミを除去し、水洗の後乾燥する。
■浸種:5日間浸水して、種モミの吸水を均一にする。その間、毎日の水替えと、水切りにより酸素補給を繰り返す。
■催芽:酸素補給の後、32℃の温湯で10時間浸種してハト胸状態にする。
2)床土の調整通気性と水はけのよい団粒構造の土を選び、PH5に調整する。元肥を配合する。
3)土入れ育苗箱に床土を入れ鎮圧し平面にする。
4)播種苗床に均一にまいて潅水し、種モミの腹を落付かせる。まきムラを手直しする。
【0026】5)覆土5mm厚に土を入れ、均し平面にする。
6)育苗器による出芽そろえ32℃で2日間で鞘葉長1.2cmくらいに仕立てる。
7)予備緑化酸素補給、潅水の後育苗箱でチラチラ光線を当て、25℃で1日、20℃で1日管理する。
8)緑化ハウス内で昼間30℃、夜間12℃で8日間、毎日数回、十分潅水を繰り返して2.5葉を展開させる。
9)硬化昼間20℃、夜間10℃の管理で10日間、自然条件になじむ3.5葉令の苗に徐々に育てる。
【0027】本発明の育苗シートは、土入れ:3)前の育苗箱の内部に設置される。設置の場所、方法は任意でよいが通常底部に設置される。又、(A)を単体で使用する場合は培土例えば床土及び/又は覆土に混ぜ合わせて投入しても良いし、床土の調整:3)の後から5)の間、更に5)終了後のいずれかに添加しても良い。6)〜9)の期間育苗シート中の微生物は、潅水により休眠状態から目覚め、活動を開始し、育苗箱の中で増殖する。一般に移植前の水稲田には、土着の微生物が生息しており、そこに少量の他の微生物を植え付けても土着の微生物の勢力に負け、定着できない。本発明では、育苗箱中で定着させるべき微生物を増殖し、土着の微生物に対抗できるものとした。更に育苗箱で増殖した微生物を田植機を使用し水稲田に均一に移植されるため、移植後の水稲田に速やかに定着し土壌を変え、その結果として除草を効果的に行うものと考えられる。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、%は質量%を示す。はじめに、実施例および比較例で用いた原料資材の組成、試験方法を示す。
【0029】[1]原料資材の組成1.微生物(A)
下記微生物はそのままか、または水溶性有機化合物と混合して使用する。
(1)微生物(A1)
担体(炭酸カルシウム)を約50%含み、微生物としてバチルス・ズブチリス(IFO13719)8×109 /g、バチルス・リケニフォルミス(IFO12200)1×109 /g、エンテロコッカス・フェカリス(IFO3971)6×108 /g、リゾープス・オリザエ(IFO4706)3×107 /gの4属・種を含有する微生物混合物(2)微生物(A2)
担体(炭酸カルシウム)を約50%含み、微生物としてバチルス・ズブチリス(IFO13719)5×109 /g、バチルス・リケニフォルミス(IFO12200)1×109 /g、バチルス・ポリミキサ(IFO3020)1×109 /gの3属・種を含有する微生物混合物粉末(3)水溶性有機化合物(E)
■ E1 :プロピレングリコール■ E2 :プルロニック型非イオン活性剤(分子量1700のポリプロピレングリコールにエチレンオキシドを付加した分子量2200のポリオキシアルキレングリコール;HLB 6.2)
2.吸水性樹脂(B)
サンフレッシュST−500D:アクリル系吸水性樹脂、平均粒径500μm、吸水倍率約400g/g、三洋化成工業(株)製3.フィラー(C) 粉砕パルプ4.透水性シート(D) テッシュ:580mm×280mm 2枚【0030】[2]試験方法1.供試品種:ヒノヒカリ2.育苗箱:内のり面積580×280mm/箱3.育苗シート:面積580×280mm/枚4.播種:5月20日捲き、180g/箱(乾籾換算)
5.床土・覆土:由土;ビートモス=3:1(容積比)
■実施例1〜3、比較例1には、2.9kg/箱、追肥を行い、肥料成分は1箱当たりN成分として1.6g、P25成分として0.9g、K2O として0.8g■比較例2には、4.5kg/箱、追肥を行い、肥料成分は1箱当たりN成分として1.2g、P25成分として1.8g、K2O として1.5g6.薬剤処理:催芽前の種子消毒はベンレートT水和剤20(デポン社製)の2 00倍希釈水溶液で48時間処理7.出芽処理:積み重ね方式、加温出芽(32℃×2日間)
8.緑化処理:ビニールハウス畑育苗9.水稲田移植:6月17日植え、4条田植機使用10.除草剤散布:■実施例1〜5には育苗期間及び本田移植後の除草剤の散布なし■比較例1,2には本田移植後20日目に雑草の発生を確認したので、除草剤(フロアブルタイプ)を施用11.施肥:田植えと同時に元肥を側条施肥、10a当たりN成分として6.9kg、P25成分として6.9kg、K2Oとして6.9kg【0031】[3]微生物の除草効果の確認試験方法1/5000アールのポットに水田土壌(植壌土)を充填して表層にノエビ、広葉雑草(キガシグサ、アナゼ)およびコナギの各種雑草の種子を均一に混合して播種し、下記の方法で育てた2〜3葉期の水稲幼苗10本を2cmの深さに移植し水を加えて3cmの潅水状態にした。移植して3週間後に各供試微生物資材の除草効果を調査した。その結果を表−1に示す。
5:完全枯死 4:大害 3:虫害 2:小害 1:僅小害 0:無害(正常発育)
水稲幼苗:上記の[2]の本田試験方法の微育苗シートの代わりに新聞紙を使用した以外は、同じ操作で水稲幼苗を作成した。
【0032】
【表1】

【0033】実施例1〜7;比較例1,2表2記載の配合処方で本発明の育苗シートを作成し、育苗状態、本田移植後の除草効果及び稲の生育状況を対照サンプル(比較例1,2)と比較した。その結果を表2、表3に示す。
【0034】
【表2】

【0035】【表3【0036】表2から、吸水性樹脂(B)を含有したシート(実施例3〜7、比較例1)は、従来の新聞紙(比較例2)に比べ、通常の培土量を半減近くにしても良好な苗を生育でき、又根張り、マット形成の良好な苗が得られた。表3から明らかなように、微生物(A)を含有した育苗シート、育苗箱(実施例1〜7)は、(A)を含有しない育苗シート(比較例1,2)に比べ、明らかに除草効果があることが判る。又表2,表3から明らかなように、(A)を使用しても、稲の生育、収量に悪影響を及ぼさない。
【0036】
【発明の効果】本発明の育苗シート、育苗箱を用いることにより、以下の効果が得られる。第1は、従来の育苗期間中の潅水回数を低減でき、又従来の培土量を半減近くにできることから、即ち潅水後の育苗箱の重量を約30%低減でき、取扱いの大幅な改善ができる。第2は、育苗期間中の根張り、マット形成が良好なので移植に際して移植精度が向上し、水稲田への良好な活着が得られることである。第3は移植と同時に生育全期にわたっての除草が可能である。即ち化学的な除草剤を使用しないで除草効果を持つことから土壌への汚染、人体への除草剤の影響がなく、人的労働力も低減させることができることから今後の水稲栽培の用途に有用で、実用価値が高い。
【表3】

【出願人】 【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)9月3日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−206241
【公開日】 平成11年(1999)8月3日
【出願番号】 特願平10−267273