トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 土壌改質材
【発明者】 【氏名】谷山 陽一

【氏名】近藤 義和

【氏名】吉田 広治

【要約】 【課題】安定した保水性能及び吸水性能を有すると共に安定供給が可能で、壌土等に配合することにより適正な保水性、透水性を備えた培養土を作ることのできる土壌改質材を提供する。

【解決手段】繊維径6デニール、繊維長51mm、捲縮数8ヶ/インチのポリ乳酸系生分解性繊維の短繊維群が絡み合うことによって形成される、大きさ3〜8mmの丸形独立球状の繊維塊からなる土壌改質材を製造した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 多数の繊維が絡み合うことにより形成される繊維塊からなる土壌改質材。
【請求項2】 前記繊維塊の少なくとも一部が生分解性繊維によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の土壌改質材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、植物栽培用の培養土を構成する壌土等の天然土壌資材に配合することにより、優れた培養土を作ることのできる土壌改質材に関する。
【0002】
【従来の技術】園芸分野においては、一般的に成長の速度が遅く、外界の影響を受けやすい幼少期の植物をポット(プラスチック製の安価な鉢)によって集約的に管理する「育苗」が行われており、このようにして育てられた苗や苗木を、所定の土壌資材を人工的に配合した培養土に植え付けて栽培することが行われている。
【0003】この植え付けに当たっては、苗や苗木の生育に好適な環境、特に給排水についての配慮が重要となる。また、施設下で栽培されたり、鉢物容器内で栽培される植物では、降雨による水分供給が得られないので、不足した水分を人為的に補給する潅水管理が行われるが、苗や苗木を植え付ける培養土の保水力が小さすぎたり、透水力が大きすぎたりすると、潅水の回数が増え、効率的に植物栽培を行うことができないので、培養土の保水性、透水性は特に重要な要素となっている。
【0004】このため、苗や苗木を育てるための培養土は、保水性に優れたピートモスや透水性に優れた腐葉土を壌土に適度に配合することにより、保水性及び透水性を調整することが一般的に行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したピートモスは、湿地に生育している水苔が長期間堆積してできた有機物の土壌層であるため、脆く、搬送途中や壌土への混合操作、さらには植物栽培途中における分解等によって崩れてしまい安定的な保水性能を確保することができないといった問題がある。
【0006】また、上述した腐葉土は、樹種、分解の程度、小枝などの夾雑物の混入などのために品質が不均一であると共に安定的な供給が困難であり、さらに、白絹病、菌核病などの土壌病害に汚染されているおそれがあるといった問題がある。
【0007】そこで、この発明の課題は、安定した保水性能及び吸水性能を有すると共に安定供給が可能で、壌土等に配合することにより適正な保水性、透水性を備えた培養土を作ることのできる土壌改質材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明は、多数の繊維が絡み合うことにより形成される繊維塊からなる土壌改質材を提供するものである。
【0009】前記繊維塊の大きさは、混合する壌土等の粒径を考慮すると、2〜15mmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは2〜7mmである。
【0010】また、繊維塊を構成する繊維は、その繊維径が小さいほど保水性が向上するが、繊維径が2〜15デニール、繊維長が32〜64mmの範囲内にあると、繊維塊を壌土等の他の土壌資材と均一に混合し易い丸形独立球状に調整しやすいため望ましく、さらに好ましい範囲は、繊維径が3〜6デニール、繊維長が38〜51mmである。
【0011】また、壌土等の土壌資材との混合性を考慮すると、前記繊維塊は丸形独立球状体であることが望ましいが、非独立球状あるいはネップ状であってもよい。前記繊維塊を丸形独立球状体に形成するためには、繊維に6〜12ヶ/インチの捲縮を付与することが望ましく、さらに好ましい捲縮数は8〜10ヶ/インチである。
【0012】また、使用済みの培養土の廃棄処理等を考慮すると、前記繊維塊の少なくとも一部を構成する繊維として生分解性繊維を使用することが望ましい。ただし、生分解性繊維を使用する場合は、植物の栽培途中で分解しないように、栽培しようとする植物の寿命等を考慮して適切な生分解速度を有する生分解性繊維を適宜使用する必要がある。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明の繊維塊は、例えば、特公平3−30391号公報に記載の方法を用いて製造することができる。図1ないし図3は、同上の方法を実施するための装置を示しており、同図に基づいてこの土壌改質材の製造方法を説明する。
【0014】(土壌改質材の製造方法)一端に導入口2と他端に開閉蓋4を備えた排出口3とを有する密閉型の機室1内に、前記開閉蓋4により排出口3を閉じた状態で導入口2より所要量のポリ乳酸系生分解性繊維の短繊維群Aを順次導入し、その短繊維群Aを前記機室1内の一端に設けられた周面に多数の爪6が形成された爪ロール5と、この爪ロール5の外周に沿って配置された多数の爪8を有する固定爪板7との間の開繊部11内に送り込んで、複数本の繊維束を爪ロール5の爪6と固定爪板7の爪8とによって互いに引っ張ることによって、捲縮が付与されたカール状繊維束を形成する。
【0015】次に、開繊部11から送り出されたカール状繊維束を、同機室1内における爪ロール5後方の撹拌ロール9とその撹拌ロール9の外周に沿って配置された固定凹凸板10との間の摩擦部12内に送り込んでカール状繊維束の巻締めを行う。
【0016】そして、摩擦部12から送り出されたカール状繊維束を、閉じられた開閉蓋4の内側から機室1内の天井面に沿って爪ロール5の方向に送り戻して、再び、爪ロール5と撹拌ロール9とによるカール状繊維束の巻締めを行う。このようにして、機室1内での循環工程を所望時間繰り返すことにより、カール状繊維束の巻締めが強化された、互いに分離した繊維塊を形成し、この繊維塊を機室1の後方の開閉蓋4を開いて機室1の外へ排出する。このようにして得られた繊維塊が土壌改質材となる。
【0017】
【実施例】(実施例1)繊維径12デニール、繊維長51mm、捲縮数8ヶ/インチの短繊維群から、上記の方法によって、大きさ5〜10mmの丸形独立球状の繊維塊からなる土壌改質材を製造した。
【0018】(実施例2)繊維径3デニール、繊維長51mm、捲縮数8ヶ/インチの短繊維群から、上記の方法によって、大きさ5〜10mmのネップ状の繊維塊からなる土壌改質材を製造した。
【0019】(実施例3)繊維径6デニール、繊維長51mm、捲縮数8ヶ/インチの短繊維群から、上記の方法によって、大きさ5〜10mmの非独立球状の繊維塊からなる土壌改質材を製造した。なお、ここにいう「非独立球状」とは、完全な独立球状ではなく、「おたまじゃくし」のように、球状部分からしっぽ状のものが延びた形状のものをいう。
【0020】(実施例4)繊維径6デニール、繊維長51mm、捲縮数8ヶ/インチの短繊維群から、上記の方法によって、大きさ3〜8mmの丸形独立球状の繊維塊からなる土壌改質材を製造した。
【0021】実施例1〜3の土壌改質材及び市販のピートモスのそれぞれについて、以下に示す方法によって保水性能を測定し、その結果を表1に示した。
【0022】(保水性能の測定方法)50ccの容積を有する各土壌改質材及びピートモスをそれぞれ200ccのビーカに入れた状態で100ccの水を注ぎ入れ、24時間経過後に余剰水を取り除き、それぞれの土壌改質材及びピートモスに保持されている水の重量を測定した。なお、各土壌改質材、ピートモスをビーカに入れた状態では1g/cm2の荷重をかけており、その時の各土壌改質材及びピートモスの嵩密度は表1に示すとおりである。
【0023】
【表1】

【0024】表1から分かるように、本発明の繊維塊からなる土壌改質材は、ピートモスに比べて保水量は劣るもののある程度の保水量を確保することができ、しかも、繊維径が小さくなるほど保水量が大きくなるので、繊維塊を形成する繊維の径を調整することにより、保水性能をある程度の範囲で自由に調整することができる。従って、栽培しようとする植物に応じて最適の保水性能を設定することが可能となる。
【0025】次に、実施例4の土壌改質材と一部に繊維状のものを含む粒状のピートモスについて、以下に示すような方法によって、実際に壌土に混合した状態で保水性能を測定し、その結果を表2に示した。
【0026】(保水性能の測定方法)土壌改質材、ピートモスのそれぞれを同一容積の壌土と混合したものをビーカに入れ、これに100ccの水を注いで一昼夜放置することにより飽水させた後余剰水を除去し、それぞれの保水量が経時的にどのように変化するのかを調べた。
【0027】
【表2】

【0028】表2から分かるように、実施例4の土壌改質材の蒸散水分量はピートモスの蒸散水分量に比べて小さく、しかも、飽水状態から時間が経過する程、実施例4の土壌改質剤とピートモスの蒸散水分量の差が大きくなっており、初期の保水量は劣るものの潅水間隔に影響を与える保水量の経時的変化という観点からは、実施例4の土壌改質材のほうがピートモスに比べて優れているといえる。
【0029】また、実施例4の土壌改質材及びピートモスのそれぞれについて、以下に示す方法によって透水性能を測定し、その結果を表3に示した。
【0030】(透水性能の測定方法)土壌改質材及びピートモスを、嵩密度が略同一(約0.195g/cc)となるように、下端を50メッシュの織物で閉鎖した2本の透明パイプ(口径:1.26cm、全長:20cm)に10cmの長さにそれぞれ充填した後、それぞれのパイプに水を注いで、充填された土壌改質材、ピートモスをそれぞれ飽水状態にする。
【0031】このようにして飽水状態の土壌改質材及びピートモスがそれぞれ充填された透明パイプに、さらに水を10cmの高さまで注入して満杯の状態で、パイプの下端を閉塞している織物を取り除き、12.46ccの水が透水する時間を数回にわたって繰り返し測定した。
【0032】
【表3】

【0033】表3から分かるように、ピートモスは1回目の透水時間が1分15秒と本発明の繊維塊からなる土壌改質剤の45秒に比べてかなり劣っており、しかも、2回目、3回目と実験回数を重ねていくに従って透水性能が低下している。これに対して、本発明の繊維塊からなる土壌改質材は、ピートモスに比べて優れた透水性が安定した状態で維持されている。
【0034】以上のように、この発明の繊維塊からなる土壌改質材は、適度な保水性能と優れた透水性とを備えていると共に、繊維径を調整することで保水性能を自由に変化させることができるので、一定の配合量を保ちながら、栽培しようとする植物に応じた保水性及び透水性を備えた培養土を簡単に作ることができる。
【0035】また、上述したように、繊維塊を構成する繊維としてポリ乳酸系生分解性繊維を使用しているので、培養土を廃棄処理する場合においても環境を汚染することがない。
【0036】なお、この実施形態では、適度な生分解速度を有することから繊維塊の全てをポリ乳酸系生分解性繊維によって構成しているが、必ずしもポリ乳酸系生分解性繊維を使用する必要はなく、栽培しようとする植物の寿命と生分解期間等を考慮して、使用する生分解性繊維を適宜選定すればよい。また、繊維塊を構成する繊維の一部に生分解性繊維を使用することも可能である。
【0037】
【発明の効果】以上のように、この発明は、多数の繊維が絡み合うことにより形成される繊維塊によって土壌改質材を構成したため、均一な製品を安定的に供給することができ、この土壌改質材を壌土に配合することにより、従来から使用しているピートモスや腐葉土を使用することなく、栽培しようとする植物に応じた培養土の保水性や透水性を容易に調整することができると共に培養土を適正な状態で長期間維持することができる。
【出願人】 【識別番号】000000952
【氏名又は名称】鐘紡株式会社
【出願日】 平成9年(1997)11月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】西村 陽一 (外2名)
【公開番号】 特開平11−146727
【公開日】 平成11年(1999)6月2日
【出願番号】 特願平9−333485