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【発明の名称】 水田作業車
【発明者】 【氏名】藤井 健次

【要約】 【課題】走行機体が傾斜した場合には、単に警報を発して操縦者に注意を喚起するに止まらず、その状況に対する対策を施すことができる制御手段を備えた水田作業機を提供する点にある。

【解決手段】大小二つの設定角β1,β2を設定し、小設定角β1に走行機体3の傾斜角α1が至った場合には、まず、ブザー32を鳴らし、その状態からさらに傾斜角α1が大設定角β2に至ったならば苗植付装置Aを下降させるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 作業装置を昇降自在に備えた走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の設定角以上の検出結果に基づいて前記作業装置を下降作動させる制御手段を設けてある水田作業車。
【請求項2】 走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の設定角以上の検出結果に基づいて走行機体に対する主クラッチを切り作動させる制御手段を設けてある水田作業車。
【請求項3】 走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の設定角以上の検出結果に基づいて走行機体に対するエンジンを停止させる制御手段を設けてある水田作業車。
【請求項4】 走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の設定角以上の検出結果に基づいて走行機体に対する走行変速装置を最低速に変速する制御手段を設けてある水田作業車。
【請求項5】 作業装置を昇降自在に備えた走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の第1設定角以上の検出結果に基づいて警報装置を作動させ、前記検出手段が前記第1設定角より大きな第2設定角以上の角度を検出すると前記作業装置を下降作動させる制御手段を設けてある水田作業車。
【請求項6】 走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の第1設定角以上の検出結果に基づいて警報装置を作動させ、前記検出手段が前記第1設定角より大きな第2設定角以上の角度を検出すると前記走行機体に対する主クラッチを切り作動させる制御手段を設けてある水田作業車。
【請求項7】 走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の第1設定角以上の検出結果に基づいて警報装置を作動させ、前記検出手段が前記第1設定角より大きな第2設定角以上の角度を検出すると前記走行機体に対するエンジンを停止させる制御手段を設けてある水田作業車。
【請求項8】 走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の第1設定角以上の検出結果に基づいて警報装置を作動させ、前記検出手段が前記第1設定角より大きな第2設定角以上の角度を検出すると前記走行機体に対する走行変速装置を最低速に変速する制御手段を設けてある水田作業車。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水田作業車に関する。
【0002】
【従来の技術】水田作業車においては、作業の終了後次の圃場に向かう場合等に畦を登って移動する場合があるが、この場合には作業装置を上昇させておりかつ畦面も荒れていることが多く機体姿勢が特に不安定になり易い。このように機体が不安定になり易い状況においては、転倒に至る前に適切な対応を採ることができれば有効である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような対応策として警報装置等を作動させるのが一般的であるが、警報装置の作動を受けて機体を立て直す為には咄嗟に対応する必要があるところから慌てた操作に成りやすく、そのような慌てた操作では操縦者の対応に適切さを欠くこともあり、予め対応策を講ずる必要がある。本発明の目的は、操縦者の対応をまつことなく、適切で迅速な対応を行うことのできる水田作業車を提供する点にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】〔構成〕請求項1にかかる発明による特徴構成は、作業装置を昇降自在に備えた走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の設定角以上の検出結果に基づいて前記作業装置を下降作動させる制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0005】〔作用〕つまり、走行機体が左右傾斜してその傾斜角が設定角を越えると、上昇状態にある作業装置が下降する。そうすると、水田作業車としての重心位置が下降し、走行姿勢が安定する。
【0006】〔効果〕これによって、操縦者が作業装置を下降させる対応策に気がついてなくても、作業装置の下降作動が行われ、転倒に至る状況が緩和されることになる。
【0007】請求項2にかかる発明の目的は、請求項1と同様である。
〔構成〕請求項2にかかる発明による特徴構成は、走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の設定角以上の検出結果に基づいて走行機体に対する主クラッチを切り作動させる制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0008】〔作用効果〕主クラッチの切りによって、走行機体が停止することになるので、走行機体がさらに移動を継続することによって、より転倒し易い状態に至ることを未然に防止できる。したがって、操縦者は一旦止まった状態から進行方向を変更する等の対応を落ち着いて採ることができる。
【0009】〔構成〕請求項3にかかる発明による特徴構成は、走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の設定角以上の検出結果に基づいて走行機体に対するエンジンを停止させる制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】〔作用効果〕エンジンの切りによって、走行機体が停止することになるので、走行機体がさらに移動を継続することによって、より転倒し易い状態に至ることを未然に防止できる。したがって、操縦者は一旦止まった状態から進行方向を変更する等の対応を落ち着いて採ることができる。しかも、エンジンが作動することによる走行機体自体の振動も抑えることができ、転倒を引き起こす要因となるものを極力排除することができる。
【0011】〔構成〕請求項4にかかる発明による特徴構成は、走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の設定角以上の検出結果に基づいて走行機体に対する走行変速装置を最低速に変速する制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】〔作用効果〕走行速度が低下するので、急激に転倒し易い状態に移行することを抑制できながら、完全に機体が停止する場合に比べて、再起動等の煩わしい操作を必要とすることなく、操縦者が落ち着いて機体の進路変更等の操作を行うことができ、転倒に至る状態を脱出することが可能となる。
【0013】〔構成〕請求項5にかかる発明による特徴構成は、作業装置を昇降自在に備えた走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の第1設定角以上の検出結果に基づいて警報装置を作動させ、前記検出手段が前記第1設定角より大きな第2設定角以上の角度を検出すると前記作業装置を下降作動させる制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】〔作用効果〕請求項1に対応する作用の項で述べたように、作業装置を下降作動させることによって、転倒を回避し易いのであるが、本項においては、作業装置を下降作動させる前に警報を発っすることによって、作業装置を下降作動させる等の走行状態を大きく変化させる策を採ることなく、例えば進路変更等の迅速な他の対応策を採ることができる。
【0015】〔構成〕請求項6にかかる発明による特徴構成は、走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の第1設定角以上の検出結果に基づいて警報装置を作動させ、前記検出手段が前記第1設定角より大きな第2設定角以上の角度を検出すると前記走行機体に対する主クラッチを切り作動させる制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】〔作用効果〕請求項2に対応する作用の項で述べたように、走行機体を停止させることによって、転倒を回避し易いのであるが、本項においては、走行機体を停止させる前に警報を発っすることによって、操縦者に転倒に対する注意を促すことができ、転倒に対する注意を払いながらの運転が可能になる。
【0017】〔構成〕請求項7にかかる発明による特徴構成は、走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の第1設定角以上の検出結果に基づいて警報装置を作動させ、前記検出手段が前記第1設定角より大きな第2設定角以上の角度を検出すると前記走行機体に対するエンジンを停止させる制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0018】〔作用効果〕請求項3に対応する作用の項で述べたように、エンジンを停止させることによって、転倒を回避し易いのであるが、本項においては、エンジンを停止させる前に警報を発っすることによって、操縦者に転倒に対する注意を促すことができ、転倒に対する注意を払いながらの運転が可能になる。
【0019】〔構成〕請求項8にかかる発明による特徴構成は、走行機体の左右傾斜角を検出する検出手段を設けるとともに前記検出手段の第1設定角以上の検出結果に基づいて警報装置を作動させ、前記検出手段が前記第1設定角より大きな第2設定角以上の角度を検出すると前記走行機体に対する走行変速装置を最低速に変速する制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0020】〔作用効果〕請求項4に対応する作用の項で述べたように、走行状態を最低速に切り換えることによって、転倒を回避し易いのであるが、本項においては、最低速に落とす前に警報を発っすることによって、走行速度を落とすことなく、転倒に対する注意を払いながらの運転が可能になる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ステアリング操作される駆動型の前輪1、及び、駆動型の後輪2を備えた走行機体3の前部にエンジン4を搭載すると共に、走行機体3の中央部にステアリングハンドル5、操縦席6を配置し、走行機体3の後端部に対しリフトシリンダ7で駆動昇降する平行四連リンク機構8を介して苗植付装置Aを連結して水田作業車としての田植機を構成する。苗植付装置Aは苗載せ台9に載置されたマット状苗Wを機体の走行速度と同期して回転するロータリケース10に備えた植付アーム11によって切出して圃場面に植え付ける作動を行う系を備えると共に、下部に複数の整地フロート12を備えて4条植え用に構成されている。
【0022】水田作業車の走行操作構造について説明する。図1に示すように、機体中間位置の操縦席6右横部分に植付クラッチレバー13、左横部分に副変速レバー14を設けてある。図3に示すように、植付クラッチレバー13は、リフトシリンダ7に対する制御バルブ15及び植付クラッチ26に対する植付クラッチモータ16を後記する制御装置34を介して駆動操作する。副変速レバー14は、走行変速装置としてのベルト式無段変速装置17を変速操作する変速用のアクチュエータ18で制御装置34を介して駆動する。ここに、ベルト式無段変速装置17は、エンジン4の出力プーリ19とミッションケース20の入力プーリ21とに亘って掛張されたベルト22からなり、両プーリ19,20を、ベルト溝幅を変更可能な割りプーリ式のものに形成して、両プーリ19,20のベルト溝幅を背反的に拡大縮小して変速するように構成してある。両プーリ溝幅を背反的、つまり、一方の溝幅を広くすると他方の溝幅を狭くするように、プーリ溝幅を切り換えるシフトフォークをアクチュエータ18で駆動する。植付クラッチレバー13と副変速レバー14には、操作位置を検出するポテンショメータ13A,14Aを設け、ポテンショメータ13A,14Aで検出した値を制御装置34に投入してアクチュエータ18等を駆動するようにする。
【0023】操縦席6の前方左下方に主クラッチペダル23を配置するとともに、主クラッチ35と機械的に連係し、踏み込み操作によってクラッチ切り状態に操作可能に構成し、主クラッチモータ24によって強制的にクラッチペダル23を操作可能にしてある。また、エンジン4のエンジン制御装置25として、ディーゼルエンジンであれば燃料供給をカットするソレノイドを設け、ガソリンエンジンであれば点火回路に対する停止回路を設けることになる。その他、ハンドルポスト26の左側面に主変速レバー27、右側に苗植付装置Aを人為的に昇降操作することのできる強制昇降操作具28を配置してある。
【0024】次に、走行機体3の転倒を回避する制御構造について説明する。図2に示すように、メインフレーム29の嵩高部分の上端部に操縦席6を取り付けるとともに、操縦席6の下方で左右のメインフレーム29,29同士を連結する継ぎフレーム30上に、走行機体3の左右傾斜角を検出する傾斜角検出手段としての重錘式の左右傾斜センサ31を取り付けてある。転倒を回避する制御を行う為の制御機器として、転倒を回避させる為の警報音を発生させるブザー(警報装置の一例)32を設けるとともに、左右傾斜センサ31の検出結果が一定角度を越えた場合に、ブザー32を鳴らすことにするが、前記した一定角度を設定する傾斜角設定器33を設けて、任意に操縦者が設定できるようにする。傾斜角設定器33としては、ポテンショメータ式のものが使用される。警報装置としてはブザーを鳴らすようにしてあるが、鳴らし方としては連続音だけでなく間欠的に鳴らすものでもよい。それから、ブザーだけでなく、操縦部の操作パネルに文字や図柄を表示するものを警報装置としてもよく、さらに、ブザーと表示とを併用するものを纏めて警報装置としてもよい。以上のように、各種センサ、操作具等からの信号は制御手段としての制御装置34に伝達されて処理される。
【0025】田植機において、左右傾斜が大きくなって転倒に至る時点での走行機体3の左右傾斜角つまり転倒角が30度以内のものについては、警報装置を作動させる等の何らかの措置を採ることが要求されているが、ここでは15度を設定角として15度を越える場合には操縦者に注意を喚起すべく下記のような制御を行うこととする。ここでの制御においては、傾斜角の度合いによって二段階の制御を行うこととする為に、大小二つの設定角β1,β2を設定する。ここで、設定器33としては、二つの設定器で行う。
【0026】図4に示すように、傾斜角検出手段31の傾斜角αと傾斜角設定器33の設定角β1とを制御装置34で比較して、傾斜角αが設定角β1を越えると、警報装置32を作動させる(#1〜#4)。この警報装置32を作動させても尚傾斜状態がきつくなる場合は、傾斜角αが設定角β1より大きな設定角β2を越えた時点において、#6で示す制御を行う(#5,#6)。この#6で行う制御は次のようなものである。
■ 苗植付装置Aを下降させる。このように、苗植付装置Aを下降させる場合には、所定位置まで下降させる方法と一定量または一定時間だけ下降させる方法が採られる。
■ 主クラッチを切り作動する。
■ ベルト無段変速装置17を最低速に切り換える。この場合には、副変速装置を最低速に切り換えることにしているが、同時に副変速装置とは別に設けられている主変速装置を最低速にすることにしてもよい。
■ エンジン4を停止させる。
これらの制御については、単独で行うことを前提としているが、事情が許せば■と■等のように、組み合わせて制御を行うこともできる。この場合には、苗植付装置Aの下降によって走行機体3の姿勢の安定化を図りながら、走行機体3の移動が阻止されるので、操縦者は慌てずに立て直しを図ることができる。
【0027】〔別実施の形態〕
■ 上記実施例においては、警報装置32を作動させた状態でその後#6のような制御を行うことにしているが、図5に示すように、警報装置32を作動させずに設定角β3を越えた場合には、前記した#6のような制御を行うことができる。
■ 傾斜センサ31としては、重錘と重錘の揺動角を検出するポテンショメータ、ロータリエンコーダ、ホール素子とを組み合わせたものでもよい。
■ 傾斜センサ31の設置位置としては、走行機体3に設定したが、その走行機体3に取り付けられた苗植付装置Aに設けてもよい。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成10年(1998)5月28日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開平11−332329
【公開日】 平成11年(1999)12月7日
【出願番号】 特願平10−146960