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【発明の名称】 田植機の水平制御装置
【発明者】 【氏名】井 上 輝 政

【要約】 【課題】油温の影響を受けない油圧シリンダを用いた植付部の水平制御を可能とさせる。

【解決手段】走行車(1)に装備する植付部(15)を水平に維持させる油圧水平シリンダ(63)を設けた田植機の水平制御装置において、水平シリンダ(63)に供給される油圧の油温を検出する油温センサ(79)を設け、油温に基づいて水平シリンダ(63)の作動速度を調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行車に装備する植付部を水平に維持させる油圧水平シリンダを設けた田植機の水平制御装置において、水平シリンダに供給される油圧の油温を検出する油温センサを設け、油温に基づいて水平シリンダの作動速度を調整するように設けたことを特徴とする田植機の水平制御装置。
【請求項2】 油温に基づいて水平シリンダを動作させる電磁バルブの駆動パルス巾を調整制御するように設けたことを特徴とする請求項1記載の田植機の水平制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は走行車に装備する植付部を水平に維持させる油圧水平シリンダを設けた田植機の水平制御装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】例えば油圧水平シリンダを動作させる電磁バルブの駆動パルス巾は油圧の油温に関係なく一定巾のため、作業場所の変更或いは気温の変化などで油温が上昇或いは下降したとき、油の粘性の変化によって、電磁バルブや水平シリンダでの油圧リーク量や流量が変化して、水平シリンダでの動作速度を適正に保つことが困難となって植付精度を低下させる不都合があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】したがって本発明は、走行車に装備する植付部を水平に維持させる油圧水平シリンダを設けた田植機の水平制御装置において、水平シリンダに供給される油圧の油温を検出する油温センサを設け、油温に基づいて水平シリンダの作動速度を調整して、作業場所の変更や気温の変化などで油温が大きく変化する場合にも、常に水平シリンダの動作速度を一定の適正速度を保つように調整して、植付部を速やかに水平姿勢に保って、植付精度を向上させるものである。
【0004】また、油温に基づいて水平シリンダを動作させる電磁バルブの駆動パルス巾を調整制御して、電磁バルブの駆動パルス巾を変更する簡単な制御手段で、油温に関係のない植付部の速やかな水平制御を可能とさせて、植付精度を向上させるものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1は乗用田植機の側面図、図2は同平面図を示し、図中(1)は作業者が搭乗する走行車であり、エンジン(2)を車体フレーム(3)前部上方に搭載させ、ミッションケース(4)前方にフロントアクスルケース(5)を介して水田走行用前輪(6)を支持させると共に、前記ミッションケース(4)の後部にリヤアクスルケース(7)を連設し、前記リヤアクスルケース(7)に水田走行用後輪(8)を支持させる。そして前記エンジン(2)等を覆うボンネット(9)両側に予備苗載台(10)を取付けると共に、乗降ステップ(11)を介して作業者が搭乗する車体カバー(12)によって前記ミッションケース(4)等を覆い、前記車体カバー(12)上部に運転席(13)を取付け、その運転席(13)の前方で前記ボンネット(9)後部に操向ハンドル(14)を設ける。
【0006】また、図中(15)は10条植え用の苗載台(16)並びに10条分の植付爪(17)などを具備する植付部であり、前高後低の合成樹脂製の前傾式苗載台(16)を下部レール(18)及びガイドレール(19)を介して植付ケース(20)に左右往復摺動自在に支持させると共に、一方向に等速回転させるロータリケース(21)を前記植付ケース(20)に支持させ、該ケース(21)の回転軸芯を中心に対称位置に一対の爪ケース(22)(22)を配設し、その爪ケース(22)(22)先端に植付爪(17)(17)を取付ける。また前記植付ケース(20)の前側に支持フレーム(23)を設け、該フレーム(23)をヒッチ機構(24)に連結させ、トップリンク(25)及びロワーリンク(26)を含むリンク機構(27)後部にヒッチ機構(24)を取付け、走行車(1)後側にリンク機構(27)を介して植付部(15)を連結させ、前記リンク機構(27)を介して植付部(15)を昇降させる昇降シリンダ(28)をロワーリンク(26)に連結させ、前記前後輪(6)(8)を走行駆動して移動すると同時に、左右に往復摺動させる苗載台(16)から一株分の苗を植付爪(17)によって取出し、連続的に苗植え作業を行うように構成する。
【0007】また、図中(29)は走行変速レバー、(30)は植付昇降兼作業走行変速用植付作業レバー、(31)は植付け感度調節レバー、(32)は主クラッチペダル、(33)(33)は左右ブレーキペダル、(34)は2条分均平用センターフロート、(35)は2条分均平用サイドフロート、(36)は10条用の側条施肥機である。
【0008】さらに、前記運転席(13)両側の車体カバー(12)両外側に左右補助デッキ(37)(37)を固定させ、該デッキ(37)(37)前部に前記乗降ステップ(11)(11)を固定させると共に、前記補助デッキ(37)(37)後部の機外側に左右サイドデッキ(38)(38)を起伏自在かつ脱着自在に連結させ、車体カバー(12)と補助デッキ(37)(37)とサイドデッキ(38)(38)とで、施肥機(36)及び苗載台(16)に肥料及び苗の補給などを行う作業用ステップを構成している。
【0009】さらに、6条用の中央施肥部(39)と、各2条用の左右施肥部(40)(40)とに、前記施肥機(36)を分割して構成し、右施肥部(40)機外側に送肥ブロワ(41)を配設させ、運転席(13)両側にレバー(29)(30)(31)取付け位置を隔てて左右施肥部(40)(40)を収納する一方、6条分の中央苗台(42)と各2条分の左右苗台(43)(43)とに苗載台(16)を分割して形成し、苗台支点軸(44)(44)回りに左右苗台(43)(43)を上昇させて中央苗台(42)上側に折畳み収納させ、また2条分の植付爪(17)…及びフロート(35)を備える左右植付ケース(20)(20)を中央苗台(42)後側にケース支点軸(45)回りに回動させて折畳み収納させるように構成している。
【0010】さらに、図4に示す如く、前記の左右一対の車体フレーム(3)(3)後端部上側に正面視門形のヒッチフレーム(46)を固定させ、前低後高に傾斜させて後端部をヒッチフレーム(46)中間に固定させる左右一対のサブフレーム(47)(47)の間に前記昇降シリンダ(28)を取付けると共に、車体フレーム(3)後端部に支軸(48)を介して前記ロワーリンク(26)前部を回転自在に取付け、またヒッチフレーム(46)中間のブラケット(49)に支軸(50)を介してトップリンク(25)前部を回転自在に取付けるもので、前記ロワーリンク(26)前端部の本機支持部に基板(51)を立設させ、基板(51)上端とロワーリンク(26)間にリンクフレーム(52)を側面視三角形に連結させて固定させ、前記三角形頂角の基板(51)とリンクフレーム(52)の連結固定部にピン(53)を介して昇降シリンダ(28)のピストンロッド(28a)を連結させている。
【0011】さらに、図4及び図5に示す如く、前記ロワーリンク(26)の後端二叉部間に支軸(54)を介して前ヒッチ(55)下端部を連結させ、前ヒッチ(55)の上下長さ中間に貫通させる支軸(56)両端部にトップリンク(25)後端二叉部を連結させると共に、前ヒッチ(55)下端部に受筒(57)を一体固定させ、ローリング支点軸(58)の前半部を受筒(57)に軸受ベアリングを介して回転自在に軸支させる一方、後ヒッチ(60)の下端部に受筒(61)を一体固定させ、該受筒(61)にローリング支点軸(58)の後半部を貫挿固定させる。
【0012】また、前ヒッチ(55)上端部に受枠(62)を固定させ、受枠(62)にボルト(62a)を介してローリング制御用の油圧水平シリンダ(63)を着脱自在に取付け、苗載台(16)を支える右側支柱フレーム(59)に結合フレーム(64)を介して油圧シリンダ(63)のピストンロッド(65)先端を連結させ、ピストンロッド(65)の進退動作制御によってローリング支点軸(58)回りに後ヒッチ(60)を左右に揺動させるもので、前後ヒッチ(55)(60)によってヒッチ機構(24)を形成する。また、後ヒッチ(60)下端部にクイックヒッチピン(66)を固定させ、後ヒッチ(60)上端部に上向き凹形のクイックヒッチフック(67)を固定させるもので、前記植付部(15)の中央植付ケース(20)前面部にブラケット(68)を介して前記ヒッチ台(23)下端部を固定させ、前向き凹形ノッチを有するノッチ板(69)をヒッチ台(23)下端部前面に固定させ、またヒッチ台(23)上端部にヒッチ軸(70)を横架させ、前記クイックヒッチピン(66)にノッチ板(69)を後方から嵌合させ、前記クイックヒッチフック(67)にヒッチ軸(70)を上方から嵌合させ、後ヒッチ(60)にヒッチ台(23)を着脱自在に連結させ、前記ローリング支点軸(58)回りにローリング自在に植付部(15)を取付け、前記油圧シリンダ(63)制御により植付部(15)の左右傾斜調節を行うと共に、前記車体フレーム(3)後部と植付ケース(20)の間に植付PTO軸(71)を着脱自在に架設し、ミッションケース(4)の植付駆動力を植付ケース(20)に伸縮自在なPTO軸(71)を介して伝えるように構成している。
【0013】さらに図6、図7に示す如く、複動型の前記水平シリンダ(63)に油圧を供給する油圧ポンプ(72)を設け、作動油タンクとしてリヤアクスルケース(7)の油溜部(73)などを利用し、水平シリンダ(63)に電磁バルブ(74)を介して油圧ポンプ(72)を接続させ、左傾及び右傾ソレノイド(75)(76)によって電磁バルブ(74)を切換えて、水平シリンダ(63)を作動させて植付部(15)を左右水平に維持させるように構成している。
【0014】そして図8に示す如く、植付ケース(20)に設けて植付部(15)の左右傾斜を検出する振子型傾斜センサ(77)と、走行車(1)に設けて走行車(1)の左右傾斜速度を検知するジャイロ型角速度センサ(78)と、前記油溜部(73)に設けて油溜部(73)の作動油温を検出する油温センサ(79)と、植付部(15)の水平など傾斜基準値を初期設定する傾斜設定器(80)と、前記ソレノイド(75)(76)の駆動パルス信号(パルス巾変調(PWN))の基準オン動作パルス巾(水平シリンダ(63)の基準速度)を設定するシリンダ速度設定器(81)とを水平コントローラ(82)に接続させると共に、前記左傾及び右傾ソレノイド(75)(76)に水平コントローラ(82)を接続させ、各センサ(77)(78)(79)の検出に基づいて植付部(15)の左右水平制御を行うように構成している。
【0015】而して図9のフローチャートに示す如く、植付作業中に油温センサ(79)が適温より以上或いは以下に変化することを検出するとき、前記ソレノイド(75)(76)の駆動パルス信号のオン動作パルス巾を小或いは大に補正して、傾斜センサ(77)と角速度センサ(78)に基づいた植付部(15)の水平制御が自動的に行われるもので、角速度センサ(78)で検出される角速度値が小(一定以下)となる走行車(1)の傾き速度が遅いときには、傾斜角設定器(80)の設定値(θ1)と傾斜センサ(77)の検出値(θ2)との差から求められる傾斜角偏差(△θ=θ1−θ2)と、傾斜センサ(77)の検出値(θ2)の時間当たりの変化量で表される傾斜角変化率(dθ=△θ2/△t)とのファジイルールデータに基づき、水平シリンダ(63)を駆動するための電磁バルブ(74)の左傾或いは右傾ソレノイド(75)(76)の駆動ファジイ出力を算出させ、該ファジイ出力に応じて算出される左傾或いは右傾パルス信号でもって水平シリンダ(63)を駆動制御して、目標の傾斜角となる設定値(θ1)を一定維持させるものである。
【0016】一方、角速度センサ(62)で検出される角速度値が大(一定以上)となる走行車(1)の傾き速度が速いときには、静止状態の角速度値(ω0)と角速度センサ(78)の検出値(ω1)との差から求められる角速度偏差(△ω=ω0−ω1)と、角速度センサ(78)の検出値(ω1)の時間当たりの変化量で表される角速度変化率(dω=△ω1/△t)との第1段階のファジイルールデータに基づき、角速度ファジイ出力(ωt)が算出され、次にこの角速度ファジイ出力(ωt)と前記傾斜角偏差(△θ=θ1−θ2)との第2段階のファジイルールデータに基づき水平シリンダ(63)を逸速く駆動するための電磁バルブ(74)の左傾或いは右傾ソレノイド(75)(76)の駆動ファジイ出力を算出させ、該ファジイ出力に応じて算出される左傾或いは右傾パルス信号でもって水平シリンダ(63)を駆動制御して、目標の傾斜角となる設定値(θ1)に植付部(15)を一定維持させるものである。
【0017】このように角速度が小となる機体が左右方向に緩やかに傾くときには、傾斜角センサ(77)の検出値のみに基づいたハンチングなどの発生を低減させた安定した植付部(15)の水平制御を行う一方、角速度が大となる機体が左右方向に急激に傾くときには、応答性の良い角速度センサ(78)の検出値を取入れて、追従性良好な植付部(15)の水平制御を行うものである。
【0018】また、前記水平シリンダ(63)に供給される作動油の油温が適温より以上或いは以下に上昇或いは下降して油の粘性が変化し、電磁バルブ(74)や水平シリンダ(63)での油圧リーク量や流量が変化してシリンダ速度が選定速度より速く或いは遅くなる状態のときには、これに応じ駆動パルス信号のオン動作パルス巾を小或いは大に補正変更して、油温の影響を受けない常に一定作動速度での高精度な植付部(15)の水平制御を行うものである。
【0019】
【発明の効果】以上実施例から明らかなように本発明は、走行車(1)に装備する植付部(15)を水平に維持させる油圧水平シリンダ(63)を設けた田植機の水平制御装置において、水平シリンダ(63)に供給される油圧の油温を検出する油温センサ(79)を設け、油温に基づいて水平シリンダ(63)の作動速度を調整するものであるから、作業場所の変更や気温の変化などで油温が大きく変化する場合にも、常に水平シリンダ(63)の動作速度を一定の適正速度を保つように調整して、植付部(15)を速やかに水平姿勢に保って、植付精度を向上させることができるものである。
【0020】また、油温に基づいて水平シリンダ(63)を動作させる電磁バルブ(74)の駆動パルス巾を調整制御して、電磁バルブ(74)の駆動パルス巾を変更する簡単な制御手段で、油温に関係のない植付部(15)の速やかな水平制御を可能とさせて、植付精度を向上させることができるものである。
【出願人】 【識別番号】000006851
【氏名又は名称】ヤンマー農機株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 忠治
【公開番号】 特開平11−308907
【公開日】 平成11年(1999)11月9日
【出願番号】 特願平10−134661