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【発明の名称】 移動農機におけるPTO軸の駆動機構
【発明者】 【氏名】田中 周二

【氏名】佐々木 克

【要約】 【課題】トルクリミッタを備えたPTO軸を提供することを課題としている。

【解決手段】移動農機に、走行機体1側に昇降自在に連結された作業機3に駆動力を伝動するPTO軸19と、PTO軸19に所定以上の負荷が発生するとPTO軸19への伝動を切断するトルクリミッタ機構30を内装してPTO軸19にエンジンからの駆動力を伝動するギヤケースとを設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 作業機(3)を昇降自在に連結した走行機体(1)側に作業機(3)側に駆動力を伝動するPTO軸(19)を設け、該PTO軸(19)をエンジン(6)側から駆動力が入力される動力取出し用のギヤケース(12)から突出させ、該ギヤケース(12)を介してPTO軸(19)に駆動力が伝動されてなる移動農機において、上記ギヤケース(12)内に、PTO軸(19)に所定以上の負荷が発生するとPTO軸(19)への伝動を切断するトルクリミッタ機構(30)を設けた移動農機におけるPTO軸の駆動機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は水田管理作業車等の移動農機におけるPTO軸の駆動機構に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来水田管理作業車等の移動農機として、走行機体の後部に設けられる昇降リンク機構に、上昇位置で作業を行う液剤散布機等の作業機や、下降位置で作業を行う植付作業機等の作業機を着脱自在に選択的に装着することが可能に構成され、上記走行機体側に植付作業機に駆動力を伝動せしめる第1PTO軸と液状散布機等の植付作業機以外の作業機に駆動力を伝動する第2PTO軸とが備えられているものが知られている。しかし一般的に上記第2PTO軸にはトルクリミッタ等が設けられておらず、第2PTO軸側に過負荷がかかると該第2PTO軸側に必要以上に負担がかかり、駆動力の伝動部分等が破損する場合があるという欠点があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するための本発明のPTO軸の駆動機構は、作業機3を昇降自在に連結した走行機体1側に作業機3側に駆動力を伝動するPTO軸19を設け、該PTO軸19をエンジン6側から駆動力が入力される動力取出し用のギヤケース12から突出させ、該ギヤケース12を介してPTO軸19に駆動力が伝動されてなる移動農機において、上記ギヤケース12内に、PTO軸19に所定以上の負荷が発生するとPTO軸19への伝動を切断するトルクリミッタ機構30を設けたことを特徴としている。
【0004】
【発明の実施の形態】本発明の1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を応用した乗用型水田管理作業車の側面図であり、該乗用型水田管理作業車は従来同様アッパリンク2a及びロアリンク2bにより構成されて走行機体1の後部に設けられる昇降リンク機構2に、図1に示されるように上昇位置で作業を行う液剤散布機3等の作業機や、図2に示されるように下降位置で作業を行う植付作業機4等の作業機を着脱自在に選択的に装着することが可能に構成されている。
【0005】そして走行機体1の前部にはエンジン6が搭載されており、該エンジン6の動力はトランスミッション(トランスミッションケース)に入力され、該トランスミッションケースにおいては、前記動力を走行動力と植付け動力とに分配し、分配された走行動力がリヤアクスルケース7及びフロントアクスルケースに伝動され、一方植付け動力が植付伝動軸を介して走行機体1の後端の第1PTO軸に伝動される。そして上記第1PTO軸は植付作業機4の入力軸に連結軸を介して接続され、植付作業機4の下降時に上記植付け動力が植付作業機4に伝動される構造となっている。
【0006】一方エンジン6の下方位置には左右方向を向いてポンプ駆動軸8が軸支されているが、該ポンプ駆動軸8の左端部にエンジン6側から第一伝動ベルト9を介して動力が入力される入力プーリ11が、右端部に作業機(昇降リンク機構2)の昇降用のリフトシリンダ等を油圧作動させる油圧ポンプ(共に図示せず)がそれぞれ連結されている。このとき前記入力プーリ11には、上昇位置で作業を行う作業機(液剤散布機3)用の動力となる第2PTO動力を取り出すための動力取出プーリ11aが一体的に形成されている。
【0007】すなわち前記動力取出プーリ11aの前方下方位置には第2PTO動力用のギヤケース12が配設されているとともに、該ギヤケース12に入力プーリ13が設けられており、該入力プーリ13と動力取出プーリ11aとが第2伝動ベルト14を介して連結され、エンジン6側(ポンプ駆動軸8)からギヤケース12に駆動力が入力され、ギヤケース12に突設された出力軸16から第2PTO動力が出力される構造となっている。
【0008】そして上記出力軸16がジョイント17及び動力中継用のシャフト18を経由して走行機体1後端の第2PTO軸19に連結され、ギヤケース12からの出力動力(第2PTO動力)が上記第2PTO軸19に伝動される。これにより第2PTO軸19と液剤散布機3の入力軸21とを連結軸22を介して接続することで、液剤散布機3の上昇時に第2PTO動力が液剤散布機3に伝動される構造となっている。
【0009】一方図3に示されるように上記ギヤケース12は前記出力軸16と入力プーリ21が取り付けられている入力軸23とを互いに略直交するように軸支しており、ギヤケース12内において入力軸23と出力軸16とをベベルギヤ24,26により構成される伝動部を介して連結している。このとき出力軸16に軸支されているベベルギヤ26はボス26a側の端面に噛合用の爪部27が突設されており、出力軸16に自由回転自在に軸支されている。
【0010】また出力軸16におけるベベルギヤ26のボスに対向する位置には、上記爪部27と噛合可能に相対するクラッチ爪29が突設された噛合クラッチ28が、出力軸16と一体回転するように出力軸16の軸心方向にスライド自在に軸支されているが、該噛合クラッチ28はスプリング31によりベベルギヤ26方向(爪部27とクラッチ爪29が噛合する方向)に付勢されており、該スプリング31の付勢力によって噛合クラッチ28とベベルギヤ26(爪部27とクラッチ爪29)が噛合することで入力軸23に入力された動力が出力軸16に伝動される構造となっている。
【0011】このため例えば液剤散布機3の送風抵抗による負荷アップや前記シャフト18やジョイント17への異物混入等により第2PTO軸19側に所定以上の負荷(過負荷)がかかると、スプリング31の付勢力に抗して噛合クラッチ28とベベルギヤ26との噛合が解除され、第2PTO軸19側への駆動力の伝動が遮断される。なお噛合クラッチ28とベベルギヤ26との噛合が解除される負荷の大きさはスプリング31の付勢力の設定等により容易に変更することができる。
【0012】これにより第2PTO軸19等の各軸や上記伝動部(ベベルギヤ24,26等)にかかる負担が必要以上に大きくなることがなく、第2PTO軸19側への過負荷により伝動部分(ベベルギヤ24,26の噛合部分)がロックする等の不都合が防止され、上記過負荷に起因する各ベルトのスリップや、各軸やギヤの破損等が少なくなる。つまりスプリング31,ベベルギヤ24,26,噛合クラッチ28等により第2PTO軸19のトルクリミッタ機構30が構成されている。
【0013】このとき上記トルクリミッタ機構30は上記のように第2PTO軸19の駆動に必要であるギヤケース12内に設けられており、第2PTO軸19側へのトルクリミッタ機構30の取り付けを省スペースで行うことができ、上記トルクリミッタ機構30の取り付けが容易である他、ギヤケース12内のべベルギヤ24,26を利用してトルクリミッタ機構30が構成されており構造が比較的シンプルであるため、作動がより確実なトルクリミッタを比較的安価に構成することができる。
【0014】なお出力軸16側のベベルギヤ26が噛合クラッチ28を介さずに常に出力軸16と一体回転する構造を有するギヤケースを設け、このギヤケースと上記トルクリミッタ機構30付きのギヤケース12を選択的に走行機体1側に取り付け可能な構造とし、上記トルクリミッタ機構30を備えないギヤケースを走行機体1に取り付けることで、上昇位置で作業を行い、比較的大きな駆動力が必要となる作業機をトルクリミッタ機構30の影響なしに駆動することができる。
【0015】また第2PTO軸19を主に液剤散布機3等の植付作業機4以外の比較的小さな駆動力でよい作業機の駆動用に、第1PTO軸を主に植付作業機4等の比較的大きな駆動力を必要とする作業機用に使用するように設定してもよく、さらにいずれの作業機もギヤケース12から伝動されるPTO駆動力により駆動し、比較的大きな駆動力を必要とする植付作業機4等の作業機を使用する場合はトルクリミッタ機構30を持たないギヤケースを使用し、比較的小さな駆動力でよい液剤散布機3等の植付作業機以外の作業機を使用する場合はトルクリミッタ機構30を備えた上記ギヤケース12を使用するように構成してもよい。
【0016】一方走行機体1におけるリヤアクスルケース7の上方には図4,図5に示されるように乗用型水田管理作業車のバランスを確保するためにウエイト(バランスウエイト)32を着脱自在に取り付ける必要があるが、本実施形態においては上記バランスウエイト32の取付けブラケット33が図6に示されるように、上方側に設けられた比較的大径な円柱形状の棒又はパイプ34からなる支持部36と、該支持部36の下方に設けられ、前後方向に並列に配置された比較的小径な円柱形状の棒又はパイプ37からなる位置決め部38の両端が支持部材39に支持された構造となっている。
【0017】これにより図7に示されるようにバランスウエイト32を傾斜せしめて支持部36に挿入し、その後略垂直にして位置決め部38に挿入することで、上記バランスウエイト32を走行機体1に対して概ね垂直(上下方向)に取り付けることができ、このためリヤアクスルケース7と、該リヤアクスルケース7上方のカバー1aとの間等の上下の間隔が比較的小さい部分にもバランスウエイト32を容易に且つ安定して取り付けることができる。
【0018】なお本実施形態においては図1,図2に示されるように走行機体1の前方にもバランスウエイト32の取付けブラケット35を設けており、たとえば通常作業時(作業機の重量が比較的大きく、特に作業時の駆動トルクが大きい場合には反力が発生するため後方側に荷重が偏る)には前方の取付けブラケット35にバランスウエイト32を取り付けて重量バランスを保ち、一方作業機を取り外して走行する場合等のように前方側に荷重が偏る場合には後方側の取付けブラケット33にバランスウエイト32を取り付けて重量バランスを保つようにすることができる構造となっている。このとき取付ブラケット35を上記構造の取付ブラケット33と同様の構成又は取付けブラケット33を略90度傾斜させてバランスウエイト32を前方側から前後方向に取り付けることができる構成としてもよい。
【0019】また前述の昇降リンク機構2と作業機(液剤散布機3)とは従来同様ヒッチ41を介して連結されているが、昇降リンク機構2とヒッチ41とは図8(a)に示されるように、アッパーリンク2aのボス40がヒッチ41のフレーム(ヒッチフレーム)41aに挟持された状態で、ヒッチフレーム41aに端部がボルト45により固定された連結(枢支)ピン46を介して枢支されており、該枢支ピン46とボス40とはグリス潤滑されるように構成されている。
【0020】このとき上記枢支ピン46にグリスを溜めるための凹状部42が形成されているとともに、ボス40に上記凹状部42にグリスを注入するための注入口47が凹状部42に連通するように穿設されており、上記注入口47には通常(グリスの注入作業時以外)グリスニップル48(栓)が螺合して取り付けられている。そしてグリス注入時はグリスニップル48を取り外してグリスを凹状部42に注入することができるように構成されている。
【0021】そして図8(b)に示されるようにグリスニップル48を取り外し、注入口47のねじ部を利用して注入口47にボルト49を取り付け、ボルト49の先端を凹状部42底面に付き当て、枢支ピン46の回り止めを行い、枢支ピン46とヒッチフレーム41aを固定しているボルト45を緩めることで、ヒッチフレーム41a,アッパリンク2a,枢支ピン46を容易に分解することができ、メンテナンス等を容易に行うことができる。
【0022】
【発明の効果】以上のように構成される本発明の構造によれば、PTO軸に駆動力を伝動するギヤケース内にトルクリミッタが設けられているため、PTO軸に所定以上の負荷(過負荷)がかかった場合、PTO軸への駆動力の伝動がカットされ、PTO軸やギヤケース内のギヤ等にかかる負担が必要以上に大きくなることがないが、上記トルクリミッタがPTO軸の駆動に必ず必要となるギヤケース内に設けられているので、トルクリミッタの取り付けを省スペースで行うことができるという利点がある。
【0023】またギヤケースの交換が容易となるように構成することができるため、PTO軸に比較的大きな駆動力が必要な作業機の場合は、ギヤケースをトルクリミッタが備えられていないものに交換することで容易に対応することができるという利点もある。
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
【公開番号】 特開平11−299313
【公開日】 平成11年(1999)11月2日
【出願番号】 特願平10−124250