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【発明の名称】 水田作業機
【発明者】 【氏名】木村 浩人

【要約】 【課題】機体がピッチングしても苗植付装置の対圃場面高さを目標とする高さに維持し得る田植機を合理的に構成する。

【解決手段】接地フロート18を前部及び後部とも上下変位自在となるよう苗植付装置に支持すると共に、この接地フロート18の前後方向での中間を下方に向けて押し下げる感知バネ47と、この接地フロート18の前後方向の中間において植付爪の作動軌跡と重複する作業位置における接地フロート18と苗植付装置との相対高さを計測するフロートセンサ41とを備え、このフロートセンサ41の計測値を目標値と合致する方向に苗植付装置の昇降を行う制御装置51を備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行機体に対して昇降自在に対地作業装置を連結し、この対地作業装置に変位自在に接地フロートを備え、この接地フロートの変位に基づいて計測される対地作業装置の対圃場面高さを目標高さに維持するよう対地作業装置を昇降作動させる制御装置を備えた水田作業機であって、前記接地フロートを前部及び後部とも上下変位自在となるよう対地作業装置に支持すると共に、この接地フロートの前後方向での中間を下方に向けて押し下げる付勢機構を設け、この接地フロートの前後方向の中間位置に設定された作業位置の対地作業装置に対する上下高さを目標高さに維持するよう前記制御装置の制御動作を設定してある水田作業機。
【請求項2】 前記接地フロートの作業位置の上下変位を計測するフロートセンサを備え、このフロートセンサからの信号と目標高さ設定器からの信号とが合致する方向に対地作業装置の昇降を行うよう前記制御装置の制御動作が設定されると共に、前記付勢機構がバネで構成され、このバネの付勢力を調節する感度調節手段を備えている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】 前記感度調節手段がバネの付勢力を調節する電動モータを備えて構成されると共に、この電動モータによるバネの付勢力を設定する人為操作具を備えている請求項2記載の水田作業機。
【請求項4】 前記対地作業装置が、植付爪の作動によって圃場面に対して苗の移植を行うよう構成されると共に、側面視でこの植付爪の作動軌跡と接地フロートとが重複する位置を前記作業位置に設定してある請求項1記載の水田作業機。
【請求項5】 前記対地作業装置が、接地フロートの底面に下方側に突出する形態の作溝板を備えて構成されると共に、側面視で作溝板の上方側から前記バネの付勢力が接地フロートに作用するよう、前記バネの付勢力が作用する位置を設定してある請求項2〜4のいずれか1項に記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行機体に対して昇降自在に対地作業装置を連結し、この対地作業装置に変位自在に接地フロートを備え、この接地フロートの変位に基づいて計測される対地作業装置の対圃場面高さを目標高さに維持するよう対地作業装置を昇降作動させる制御装置を備えた水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記のように構成された水田作業機として田植機を例に挙げると、特開平6‐105606号公報に示されるもののように、接地フロートの後部位置を苗植付装置に対して横向き姿勢の軸芯周りで揺動自在に支持すると共に、この接地フロートの前部をバネで下方に向けて付勢して感知荷重を設定し、又、この接地フロートの前部位置の上下方向への変位量を電気的に計測するフロートセンサと、苗植付装置の目標対圃場面高さを設定する感度設定器とを備え、作業時には制御装置がフロートセンサの計測結果と感度設定器とからの信号が合致する方向に苗植付装置を昇降させるものが存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来例のように接地フロートを目標姿勢に維持する方向に苗植付装置の昇降を行うものでは、例えば、耕盤の凹部に前車輪が落ち込んだ場合のように、機体の傾斜にともなって前部が下がる傾斜姿勢で苗植付装置が持ち上げられた際には、下降制御が行われるものの、接地フロートが目標姿勢に達し下降制御が停止しても苗植付装置の後部が持ち上がった状態にあり浮き苗の発生に繋がるものであった。これとは逆に、耕盤の凸部に前車輪が乗り上げた場合のように、機体の傾斜にともなって前部が上がる傾斜姿勢で苗植付装置が下降した際には、上昇制御が行われるものの、接地フロートが目標姿勢に達し上昇制御が停止しても苗植付装置の後部が圃場面に沈み込んだ状態にあり苗の深植えの発生に繋がっていた。
【0004】このように、接地フロートの姿勢に基づいて対地作業装置の昇降を行うものでは、機体の前後傾斜(ピッチング)時に対地作業装置の対圃場面高さを目標高さに維持できないこともあり改善の余地がある。
【0005】本発明の目的は、機体がピッチングしても対地作業装置の対圃場面高さを目標とする高さに維持し得る水田作業機を合理的に構成する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の特徴(請求項1)は冒頭に記載したように、走行機体に対して昇降自在に対地作業装置を連結し、この対地作業装置に変位自在に接地フロートを備え、この接地フロートの変位に基づいて計測される対地作業装置の対圃場面高さを目標高さに維持するよう対地作業装置を昇降作動させる制御装置を備えた水田作業機において、前記接地フロートを前部及び後部とも上下変位自在となるよう対地作業装置に支持すると共に、この接地フロートの前後方向での中間を下方に向けて押し下げる付勢機構を設け、この接地フロートの前後方向の中間位置に設定された作業位置の対地作業装置に対する上下高さを目標高さに維持するよう前記制御装置の制御動作を設定してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0007】本発明の第2の特徴(請求項2)は請求項1において、前記接地フロートの作業位置の上下変位を計測するフロートセンサを備え、このフロートセンサからの信号と目標高さ設定器からの信号とが合致する方向に対地作業装置の昇降を行うよう前記制御装置の制御動作が設定されると共に、前記付勢機構がバネで構成され、このバネの付勢力を調節する感度調節手段を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0008】本発明の第3の特徴(請求項3)は請求項2において、前記感度調節手段がバネの付勢力を調節する電動モータを備えて構成されると共に、この電動モータによるバネの付勢力を設定する人為操作具を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0009】本発明の第4の特徴(請求項4)は請求項1において、前記対地作業装置が、植付爪の作動によって圃場面に対して苗の移植を行うよう構成されると共に、側面視でこの植付爪の作動軌跡と接地フロートとが重複する位置を前記作業位置に設定してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0010】本発明の第5の特徴(請求項5)は請求項2〜4において、前記対地作業装置が、接地フロートの底面に下方側に突出する形態の作溝板を備えて構成されると共に、側面視で作溝板の上方側から前記バネの付勢力が接地フロートに作用するよう、前記バネの付勢力が作用する位置を設定してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0011】〔作用〕上記第1の特徴によると、接地フロートの中間位置に対して付勢機構からの付勢力が作用しているので、例えば、後部が持ち上がる方向に走行機体がピッチングした場合でも、対地作業装置の下降作動が行われた後には、この位置を揺動支点として接地フロートの前部が持ち上がると同時に後部が下がる姿勢となるだけで接地フロートは圃場面に対して傾斜せず、この結果、接地フロートに作用する付勢力が変化することなく、接地フロートの中間位置の対圃場面高さも変化しない。
【0012】上記第2の特徴によると、接地フロートの接地圧が変化して接地フロートが上下方向に変位した場合には、この変位量をフロートセンサが電気的に計測し、この計測結果と目標高さ設定器からの電気信号とが合致する方向に対地作業装置の昇降が行われるので、ワイヤやリンク機構を介して昇降制御を行うものと比較して昇降制御系の構造が簡単となり、この昇降制御の感度を調節する際にも接地フロートの姿勢を変化させることなくバネの付勢力を調節することで済み、従来例のように感度調節時に接地フロートの姿勢を変更するものと比較して対地作業装置の対圃場面高さが変化することもない。
【0013】上記第3の特徴によると、人為操作具の操作により電動モータを介してバネの付勢力を調節することで、作業者がバネ荷重を直接調節する如き手間を省き、労力を軽減して接地フロートの感知荷重を容易に変更することが可能となる。
【0014】上記第4の特徴によると、植付爪が圃場面に苗を移植する位置の圃場面に対する高さを計測して、この対圃場面高さを維持する制御が行われるので、圃場面に対する苗の移植深さを精度高く維持できるものとなる。
【0015】上記第5の特徴によると、作溝板の部位にバネの荷重が作用するので、走行時に泥土からの圧力が作溝板に作用して、この部位を持ち上げる方向に力が作用した場合でも、接地フロートの浮き上がりが抑制されると共に、この持ち上げ力で接地フロートを前後方向に傾斜させることもない。
【0016】〔発明の効果〕従って、走行機体がピッチングしても、感知荷重を変化させることがなく圃場面に対して良好な感知感度で追従する昇降制御を行って対地作業装置の作業位置を目標とする対圃場面高さに維持し得る水田作業機が構成されたのである(請求項1)。又、電気式に構成される簡単な構造で昇降制御を可能にすると共に、接地フロートの姿勢の影響を受けずに感知荷重の調節を行えるものとなり(請求項2)、作業者の楽な操作で容易に感知荷重を調節できるものとなり(請求項3)、深植えや浮き苗を発生させることなく苗の移植深さを所望の値に維持するものとなり(請求項4)、施肥作業や播種作業を行う場合のように作溝板を用いた作業時にも浮き上がり防止用の特別な機構を用いずとも接地フロートの浮き上がりを抑制して、対地作業装置を所望の対地高さに維持して作業を行い得るものとなった(請求項5)。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ステアリング操作される駆動型の前車輪1、及び、駆動型の後車輪2を備えた走行機体3の前部にエンジン4を搭載すると共に、この走行機体3の後部にエンジン4からの動力が伝えられる静油圧式の無段変速装置5、及び、ミッションケース6を配置し、又、走行機体3の中央部に運転座席7を配置し、走行機体3の後端部に対し油圧シリンダ8で駆動昇降するリンク機構9を介して対地作業装置としての苗植付装置Aを連結して水田作業機としての乗用型の田植機を構成する。
【0018】前記運転座席7の右側部に苗植付装置Aの昇降制御と植付クラッチ(図示せず)の入り切り操作とを行う昇降レバー10を備え、又、機体前部位置にはステアリングハンドル11とメータパネル12とを備えている。尚、前記植付クラッチは、前記ミッションケース6に内蔵されている。
【0019】苗植付装置Aはマット状苗Wを載置する苗載せ台13、走行機体3からの動力が伝えられる伝動ケース14、この伝動ケース14からチェーンケース15を介して伝えられる動力で回転するロータリケース16、このロータリケース16に一対ずつ備えられた植付アーム17、複数の接地フロート18夫々を備えて8条植用に構成されると共に、該苗植付装置Aの後端位置には施肥装置Bを備え、作業時には苗載せ台13に載置されたマット状苗Wの下端から苗を植付アーム17が1株ずつ切出して圃場面Sに植え付けると同時に、植付けた苗の近傍の圃場面下に施肥装置Bで肥料を供給するよう構成されている。尚、施肥装置Bはホッパー19に貯留された肥料を繰出し機構20で繰出し、ホース21、作溝板22の後部に連結された作溝器23を介して圃場面下に供給できるように構成されている。
【0020】前記複数の接地フロート18のうち左右方向での中央位置の1つを苗植付装置Aの対圃場面高さを計測するために用いている。この接地フロート18は、図2〜図4に示すように、前部位置を前部リンクLFを介して、後部位置を後部リンクLRを介して夫々苗植付装置Aに対して支持することで前部位置と後部位置とが昇降自在に苗植付装置Aに支持されている。つまり、前部リンクLFは、苗植付装置Aのフレーム26と接地フロート18の前部ブラケット27との間に横向き姿勢の軸芯周りで屈伸自在に構成された一対のリンク部材28,29で構成され、後部リンクはLR、植付深さ調節レバー30によって回動操作される横向き姿勢の植付深さ調節軸31に一体形成されたアーム32の後端と、接地フロート18の後部ブラケット33との間に対して横向き姿勢の芯周りで揺動自在に支持したリンク部材34で構成されている。又、植付深さ調節レバー30はレバーガイド35に係止保持されることでアーム32の姿勢を維持して植付けアーム17に備えた植付爪17Aの作動軌跡Tと圃場面Sとの上下方向での相対距離を変更し苗の移植深さを調節するものとなっている。
【0021】又、苗植付装置Aの側に固設された板状の支持部材38に対して平行四連型に作動するリンク片39,39を介して上下変位自在にプレート40を支持し、このプレート40に対して横向き姿勢の軸芯周りで回動操作される操作アーム41Aを有したポテンショメータ型のフロートセンサ41を備えている。前記アーム32と、フロートセンサ41を支持するリンク片39とをリンク部材42で連係することにより植付深さ調節軸31の回動操作時にはアーム32の揺動と連係してプレート40が上下変位することによりプレート40と接地フロート18との上下方向での相対距離を一定に維持するよう構成されている。
【0022】又、側面視で前記植付爪17Aの先端の作動軌跡Tと接地フロート18とが重複する位置に支持片43を備え、この支持片43と前記フロートセンサ41の操作アーム41Aの端部との間に操作ロッド44を介装してあり、この操作ロッド44に外嵌する筒状のネジ軸45を配置してある。このネジ軸45はプレートに対して上下変位不能に固設され、このネジ軸45に螺合するナット部材46と操作ロッド44の下端部との間に付勢機構としての感知バネ4が操作ロッド44と同軸芯を備えられている。このナット部材46の外周にはギヤ46Aが形成され、このギヤ46Aと螺合するピニオンギヤ48Aを駆動する電動モータ48(感度調節手段の一例)がプレート40に備えられている。
【0023】図5に示すように、該田植機の制御系が構成され、この制御系ではマイクロプロセッサ(図示せず)を備えた制御装置51に対して前記昇降レバー10の基端に備えたレバーセンサ52からの信号、前記メータパネル12に備えられたダイヤル53で操作されるポテンショメータ型の高さ設定器54からの信号、メータパネル12に備えられたダイヤル55(人為操作具の一例)で操作されるポテンショメータ型の感度設定器56からの信号、前記フロートセンサ41からの信号夫々が入力する系が形成されると共に、前記油圧シリンダ8を制御する電磁弁57、前記電動モータ48夫々を制御する出力系が形成されている。又、電磁弁57はソレノイドに供給される電流値の値を増大させるほど該弁の開度を大きくする電磁比例型のものが用いられている。
【0024】前記制御装置51は、昇降レバー10が苗植付装置Aを下降させる側の操作端に操作された際において接地フロート18の圃場面Sに対する接地圧に基づいて苗植付装置Aを昇降させる自動昇降制御を行うよう制御動作が設定され、この自動昇降制御時には、高さ設定器54で設定された制御目標を基準にして上昇側、下降側夫々に不感帯を設定し、フロートセンサ41からの検出値が不感帯内にあれば、苗植付装置Aを昇降を停止し、フロートセンサ41からの検出値が不感帯を越えて接地フロート18が上昇する側へ変化した場合には制御目標とフロートセンサ41からの検出値との偏差に比例した開度となるよう電磁弁57を制御して苗植付装置Aの上昇制御を行い、これとは逆に、フロートセンサ41からの検出値が不感帯を越えて接地フロート18が下降する側へ変化した場合には制御目標とフロートセンサ41からの検出値との偏差に比例した開度となるよう電磁弁57を制御して苗植付装置Aの下降制御を行うものとなっている。更に、この自動昇降制御時において、感度設定器56を「敏」の側に操作した場合には操作量に対応した量だけ電動モータ48を駆動して感知バネ47を弛緩させて接地フロート18から圃場面Sに作用する圧力、即ち、感知圧を軽減することで圃場面の凹凸に対する接地フロート17の上下変位を敏感に行わせて敏感な昇降制御を可能にするものとなっており、「鈍」の側に操作した場合には操作量に対応した量だけ電動モータ48を駆動して感知バネ47を緊張させて接地フロート18から圃場面Sに作用する圧力、即ち、感知圧を高めることで圃場面の凹凸に対する接地フロート18の上下変位を鈍くして鈍感な昇降制御を可能にするものとなっている。
【0025】このように本発明では、接地フロート18の前部位置と後部位置とが上下方向に変位自在に支持され、この接地フロート18の前後方向での中間位置に感知圧が作用し、この位置の対圃場面高さを維持する昇降制御を行うよう構成されているるので、走行機体3のピッチングに伴って接地フロート18の姿勢が変化しても感知圧を変化させないばかりか、苗の移植深さも変化させないものとなっており、又、高さ設定器54で苗植付装置Aに対する接地フロート18の相対高さを設定した後には、圃場面Sの泥土の硬軟に対応して感度設定器56を操作するだけで、従来例のように圃場面Sに対する苗植付装置Aの相対高さを変化させることなく、接地フロート18の感知荷重を変更して圃場面Sの状態に対応した最適な感知圧で苗植付装置Aの昇降制御を行えるものとなっている。尚、苗の苗植付深さは植付深調節レバー30と、高さ設定器54との何れによっても調節可能であるが、高さ設定器54を操作した場合には感知バネ47の付勢力が変化するので、この高さ設定器54は作業開始前に必要な値に設定しておき、作業時に植付深さを調節する際には植付深調節レバー30を用いることになる。
【0026】〔別実施の形態〕本発明は上記実施の形態以外に、図6に示すように、作溝器23を支持するため接地フロート18の底面に備えた作溝板22の上方側に位置を設定して感知バネ47の付勢力を作用させるよう構成することで、この付勢力によって作溝板22に作用する泥圧による接地フロート18の持ち上がりを抑制するよう構成することも可能である(実施の形態と同じ機能を有するものには実施の形態と共通の番号符号を附している)。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成10年(1998)3月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開平11−266631
【公開日】 平成11年(1999)10月5日
【出願番号】 特願平10−78815