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【発明の名称】 苗植付装置の伝動構造
【発明者】 【氏名】蔵野 淳次

【氏名】中村 正一

【要約】 【課題】入力部のボス部の軸芯方向長さを長くしてトルク伝達の安定化を図りながらも、トルクリミッタを軸芯方向でコンパクトなものにする。

【解決手段】複数の植付機構部それぞれへの伝動経路に、トルクリミッタ33を設けてある苗植付装置において、前記トルクリミッタ33の植付機構部への出力部41及びトルク設定用のコイルバネ42を入力部40のボス部40bの外周に配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の植付機構部それぞれへの伝動経路に、トルクリミッタを設けてある苗植付装置において、前記トルクリミッタの植付機構部への出力部及びトルク設定用のコイルバネを入力部のボス部の外周に配置してある苗植付装置の伝動構造。
【請求項2】 トルクリミッタが、周方向に間隔を隔てて配置した複数のボールの対応する係合凹部への係合により入力部から出力部にトルクを伝達するボール式ジャンプクラッチであって、周方向に隣合うボール間の位相差を互いに相違させてある請求項1記載の苗植付装置の伝動構造。
【請求項3】 出力部とボス部に軸芯方向位置決め状態に取り付けたストッパーとの間にコイルバネを介装してある請求項1又は2記載の苗植付装置の伝動構造。
【請求項4】 各別に操作される植付選択クラッチを介してトルクリミッタの入力部に伝動するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の苗植付装置の伝動構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、田植機などに装着される苗植付装置の伝動構造で、詳しくは、複数の植付機構部それぞれへの伝動経路に、トルクリミッタを設けてある構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来では、図7に示すように、前記トルクリミッタ33を構成するに、複数の植付機構部に動力を分配する駆動軸31の外周に、入力部40と出力部41とトルク設定用のコイルバネ42とを軸芯方向に並ぶ状態で配置していた。なお、32は、駆動軸31からトルクリミッタ33への動力の伝達を入り切りするための植付選択クラッチである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の技術によるときは、入力部と出力部とコイルバネとが軸芯方向に並ぶから、入力部のうち駆動軸に嵌合するボス部を軸芯方向で長いものにして、入力部の姿勢を安定化させることで入力部から出力部へのトルク伝達の安定化を図った場合、トルクリミッタの軸芯方向長さが長くなるという欠点があった。
【0004】本発明の目的は、入力部のボス部の軸芯方向長さを長くしてトルク伝達の安定化を図りながらも、トルクリミッタを軸芯方向でコンパクトなものにする点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る本第1発明の特徴、作用、効果は次の通りである。
【0006】〔特徴〕複数の植付機構部それぞれへの伝動経路に、トルクリミッタを設けてある苗植付装置において、前記トルクリミッタの植付機構部への出力部及びトルク設定用のコイルバネを入力部のボス部の外周に配置してある点にある。
【0007】〔作用〕本第1発明によるときは、出力部及びコイルバネをボス部の外周に配置して、出力部・コイルバネとボス部とを回転半径方向に並べてあるから、ボス部を長く構成しても、そのボス部と出力部・コイルバネとの軸芯方向位置をほぼ同じにでき、その結果、入力部の姿勢の安定性を優れたものにするためにボス部の軸芯方向長さを長くする割りには、トルクリミッタの軸芯方向長さを短くすることができる。
【0008】〔効果〕従って、本第1発明によれば、トルクリミッタを軸芯方向でコンパクトにしながらも、トルク伝達の安定化を図ることができるようになった。
【0009】請求項2に係る本第2発明の特徴、作用、効果は次の通りである。
【0010】〔特徴〕上記本第1発明の特徴において、トルクリミッタが、周方向に間隔を隔てて配置した複数のボールの対応する係合凹部への係合により入力部から出力部にトルクを伝達するボール式ジャンプクラッチであって、周方向に隣合うボール間の位相差を互いに相違させてある点にある。
【0011】〔作用〕本第2発明によるときは、複数のボールの対応する係合凹部への係合により入力部から出力部にトルクを伝達するようにするに、周方向に隣合うボール間の位相差を互いに相違させて、植付機構部に過負荷が作用することでボールの係合凹部への係合が解除されて出力部が入力部に対して相対回転するとき、一回転のうち全部のボールとそれらに対応する係合凹部とが合致したときには全部のボールが係合凹部に同時に係合するが、それ以外のときには、2個以上のボールが同時に係合凹部に係合しないようにしてあるから、複数のボールを用いるボール式ジャンプクラッチとしながらも、過負荷が掛かった場合におけるボールを係合解除させてのクラッチ切り時の入力部の出力部に対する回転時の抵抗を小さくすることができ、クラッチが切れるときのトルクを安定させることができる。
【0012】〔効果〕従って、本第2発明によれば、トルクリミッタを安定の良く作動させることができるようになった。
【0013】請求項3に係る本第3発明の特徴、作用、効果は次の通りである。
【0014】〔特徴〕上記本第1発明や本第2発明の特徴において、出力部とボス部に軸芯方向位置決め状態に取り付けたストッパーとの間にコイルバネを介装してある点にある。
【0015】〔作用〕本第3発明によるときは、コイルバネを出力部とストッパーとの間に介装することにより、コイルバネの弾性力がトルクリミッタのみに作用するようにして、コイルバネの弾性力がボスを装着する駆動軸に作用しないようにしてあるから、駆動軸に対する軸受けに不用なスラスト力を作用させることがない。
【0016】〔効果〕従って、本第3発明によれば、駆動軸の軸受けの耐久性を向上できるようになった。
【0017】請求項4に係る本第4発明の特徴、作用、効果は次の通りである。
【0018】〔特徴〕上記本第1発明や本第2発明、本第3発明の特徴において、各別に操作される植付選択クラッチを介してトルクリミッタの入力部に伝動するように構成されている点にある。
【0019】〔作用〕本第4発明によるときは、植付選択クラッチを入り切りすることにより、各植付機構部への動力伝達を各別に入り切りするようにしてあるから、各植付機構部を各別に作動並びに作動停止させることができる。
【0020】〔効果〕従って、本第4発明によれば、後述実施の形態で示すように、6条植え式で、各植付機構部が二つの植付機構からなる苗植付装置であれば、左側一つの植付選択クラッチのみの入り操作することにより、左側二つの植付機構のみを作動させての2条植えの畦際植えを行え、反対に、右側一つの植付選択クラッチのみを入り操作することにより、右側二つの植付機構のみを作動させての2条植えの畦際植えを行え、左側及び左右中央の植付選択クラッチのみを入り操作することにより、左側二つ及び左右中央二つの植付機構のみを作動させての4条植えの畦際植えを行え、右側及び左右中央の植付選択クラッチのみを入り操作することにより、右側二つ及び左右中央二つの植付機構のみを作動させての4条植えの畦際植えを行えるといった具合に、所定条数での畦際植えを行えるようになった。
【0021】
【発明の実施の形態】乗用型田植機は、図1に示すように、乗用型の自走機体1の後部にリンク機構2及び油圧シリンダ利用の昇降シリンダ3を介して苗植付装置4を昇降操作自在に連結し、自走機体1から苗植付装置4に動力を伝達するための伝動軸5を設け、施肥装置を設けて構成されている。
【0022】前記自走機体1は、左右一対の操舵用の駆動前輪6と左右一対の駆動後輪7とを備えた機体フレーム8に原動部9と搭乗運転部10とを搭載して構成されている。前記駆動前輪6は植付・走行ミッションケース11を介して機体フレーム8に支持されており、駆動後輪7は車軸ケース12を介して機体フレーム8に支持されている。前記搭乗運転部10は駆動前輪6を操舵するためのステアリングホイール13と運転座席14とを備えている。
【0023】前記苗植付装置4は、図2にも示すように、6条植え式のものであって、左右方向に設定ストロークで往復移動駆動される苗のせ台15と、載置苗の下端部を摺動自在に支持する摺動レール16に設定間隔を隔てて形成した6つの苗取出し口17のそれぞれから植付単位量の苗を取り出して圃場に植え付ける6つの回転式の植付機構18と、走行に伴って圃場面を滑走して植付予定面を整地する接地フロート19とを、前記リンク機構2及び昇降シリンダ3を介して自走機体1に昇降操作自在に連結された植付フレーム20に組み付けて構成されている。前記植付機構18は、苗のせ台15の移動に連動して植付爪21を苗取出し口17と植付予定面との間で循環作動させることにより、植付単位量の苗を苗のせ台15から取り出して植え付ける機構であって、左側二つのもの同士、左右中央の二つのもの同士、右側二つのもの同士がそれぞれ同時駆動されるようになっている。詳述すると、植付フレーム20に左右方向に間隔を隔てて支持させた三つの植付ミッションケース22L,22C,22Rのうち左側の植付ミッションケース22Lにより左側二つの植付機構18が駆動され、左右中央の植付ミッションケース22Cにより中央二つの植付機構18が駆動され、右側の植付ミッションケース22Rにより右側二つの植付機構18が駆動されるようになっており、左側二つの植付機構18、左右中央二つの植付機構18、右側二つの植付機構18のそれぞれが植付機構部23を構成している。
【0024】前記施肥装置は、図1に示すように、各植付条の脇それぞれに施肥用の溝を形成するとともに供給されてくる肥料を溝内に投入する6つの作溝器24を苗植付装置4に取付け、各作溝器24それぞれへの肥料繰り出し装置を有する肥料ホッパー25を自走機体1に取り付け、肥料ホッパー25から繰り出された肥料を各作溝器24に供給するための気流を発生させて供給ホース26を介して各作溝器24に供給する供給ファン27と、この供給ファン27を駆動する電動モータ28とを設けて構成されている。
【0025】そして、前記各植付機構部23それぞれへの伝動経路には、各植付機構部23への動力伝達を各別に入り切りするためのクラッチ機構Cが介装されている。
【0026】前記クラッチ機構Cは、図3,図4に詳しく示すように、前記伝動軸5から伝動ケース29に入力された動力を各植付機構部23へのチェーン伝動装置30に分配する駆動軸31と各チェーン伝動装置30との間に構成されており、伝動上手側の植付選択クラッチ32と伝動下手側のトルクリミッタ33とから構成されている。
【0027】前記植付選択クラッチ32は、駆動軸31と一体回転する状態でかつ駆動軸31に対して軸芯方向に移動自在に駆動軸31にスプライン嵌合させた入力回転体34と、駆動軸31に対して軸芯方向位置規制状態でかつ駆動軸31に対して回転自在に嵌合させた出力回転体35とを設け、入力回転体34の出力回転体35への接近移動により係合して出力回転体35を入力回転体34に連動させるとともに入力回転体34の出力回転体35からの離隔移動により係合を解除して出力回転体35の入力回転体34への連動を解除するクラッチ爪34a,35aを入力回転体34と出力回転体35とに装備させ、前記入力回転体34を接近方向、つまり、クラッチ入り方向に移動付勢するクラッチスプリング36を設け、前記搭乗運転部10に設けた3本のクラッチレバー32aのうち対応するもののクラッチ入り位置から切り位置への操作に伴い前記入力回転体34を接近したクラッチ入り位置から離隔したクラッチ切り位置にクラッチスプリング36の付勢力に抗して移動させるシフタ37を設けて構成されている。なお、図示はしないが、左側の植付機構部23に対応するクラッチレバー32aを入り切り操作すると、繰り出し装置のうち左側2条に対する繰り出し装置への伝動も入り切り操作され、左右中央の植付機構部23に対応するクラッチレバー32aを入り切り操作すると、繰り出し装置のうち左右中央2条に対する繰り出し装置への伝動も入り切り操作され、右側の植付機構部23に対応するクラッチレバー32aを入り切り操作すると、繰り出し装置のうち右側2条に対する繰り出し装置への伝動も入り切り操作されるようになっている。
【0028】前記トルクリミッタ33は、周方向に間隔を隔てて配置した複数のボール38の対応する係合凹部39への係合により入力部40から出力部41にトルクを伝達するとともにボール38が係合凹部39に係合するように出力部41を入力部40側に移動付勢するトルク設定用のコイルバネ42を備えたボール式ジャンプクラッチである。前記入力部40は、図5の(イ)(ロ)、図6にも示すように、前記植付選択クラッチ32の出力回転体35をもって兼用構成されており、円板部40aと駆動軸31に回転のみ自在に嵌合するボス部40bとを有する状態に一体形成されており、円板部40aに前記係合凹部39が形成されている。前記出力部41は、図6にも示すように、円板部41aとボス部41bと前記チェーン伝動装置30の入力スプロケット部41cとを有する状態に一体形成されており、円板部41aに前記ボール38を嵌合保持するボール穴43が形成されている。
【0029】そして、前記入力部40は、駆動軸31に形成したフランジ部44への当たりにより駆動軸31に対する植付選択クラッチ32の入力回転体34側への移動を規制されており、駆動軸31を回転自在に植付ミッションケース22に支持させるベアリング45へのボス部40bの当たりにより駆動軸31に対する反対側への移動を規制されている。
【0030】前記ボール38及びそれに対応する係合凹部39は、図5の(ロ)及び図6に示すように、周方向で隣合うボール38間の位相差α1〜α5が互いに相違するように配置されている。
【0031】そして、前記出力部41及びコイルバネ42は、前記入力部40のボス部40bの外周に配置されている。詳述すると、出力部41は、スリーブ46を介して回転並びに軸芯方向移動自在にボス部40bに嵌合保持されており、コイルバネ42は、入力部40のボス部40bに軸芯方向位置決め状態に取り付けたストッパーとしての止め輪47と出力部41との間に介装した圧縮コイルバネであり、大径バネと小径バネとからなり、一方は右巻きのバネであり、他方は左巻きのバネである。つまり、入力部40のボス部40bは、出力部41とコイルバネ42とを嵌合保持できる長さに構成されている。
【0032】また、前記出力部41の円板部41aは、前記シフタ37と一体に揺動する牽制アーム48に周部で接当することにより、植付機構18が設定回転姿勢にないときシフタ37のクラッチ切り方向への揺動を阻止する牽制具を兼用しており、周部には、植付機構18が設定回転姿勢にあるときのみシフタ37のクラッチ切り方向への揺動を許容する切り欠き49が形成されている。つまり、クラッチレバー32aをクラッチ切り位置に操作しても、植付機構18が設定回転姿勢になければ植付選択クラッチ32を切り作動できず、植付機構18が設定回転姿勢になったときに始めて植付選択クラッチ32を切り作動できるようになっており、植付機構18への伝動を植付選択クラッチ32で断って植付機構18を停止させる際、常に、設定回転姿勢で停止させるようになってい。
【0033】上記の構成によれば、植付機構18に過負荷が作用した場合、出力部41の回転数が入力部40の回転数よりも遅くなることでボール38が係合凹部39から押し出されて、入力部40から出力部41への伝動が断たれる。このとき、出力部41は入力部40に対して相対回転して、ボール38が係合凹部39に合致したとき、ボール38が係合凹部39に入るのであるが、ボール38間の位相差が互いに相違していることにより、一回転中、全部のボール38が対応する係合凹部39に合致したとき以外のときには、係合凹部39に入るボール38は一つだけで、二つ以上のボール38が係合凹部39に同時に入ることがない。その結果、入力部40から出力部41にトルクを伝達するときのトルク(作動トルク)が一定しており、トルクリミッタ33の作動が安定している。
【0034】〔別実施形態〕上記実施の形態では、隣合うボール38間の位相差を互いに相違させて実施したが、隣合うボール38間の位相差を同一にして実施しても良い。
【0035】上記実施の形態では、6条植え式の苗植付装置4への適用例を示したが、本発明は、3条植え式、4条植え式、5条植え式、7条以上の条数上式の苗植付装置4に適用することができる。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成10年(1998)3月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開平11−243734
【公開日】 平成11年(1999)9月14日
【出願番号】 特願平10−52180