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【発明の名称】 乗用田植機のトランスミッション
【発明者】 【氏名】咲川 薫徳

【氏名】大橋 良太

【氏名】荒木 進吾

【要約】 【課題】従来の田植機の機体及びミッションケースは、部品点数が多く、組立工数も多くなってコストアップとなっていた。

【解決手段】エンジン9の動力を左右の前車軸79と左右の後車軸99の各々へ伝動する走行伝動系、並びに、植付部2へ伝動する作業伝動系を収容したミッションケース11を機体左右方向へ分離可能な二つのケース半部を接合して構成し、この各々のケース半部の前部と後部にそれぞれ前記前車軸と後車軸を装着して支持させると共に、一方のケース半部の外壁に、正逆転切換自在な第一変速装置31を装着して、前記走行伝動系と作業伝動系に対して共通するミッション入力軸と連動連結させた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン動力を左右の前車軸と左右の後車軸の各々へ伝動する走行伝動系、並びに、植付部へ伝動する作業伝動系を収容したミッションケースを機体左右方向へ分離可能な二つのケース半部を接合して構成し、この各々のケース半部の前部と後部にそれぞれ前記前車軸と後車軸を装着して支持させると共に、一方のケース半部の外壁に、正逆転切換自在な第一変速装置を装着して、前記走行伝動系と作業伝動系に対して共通するミッション入力軸と連動連結させたことを特徴とする乗用田植機のトランスミッション。
【請求項2】 請求項1記載の前記第一変速装置が静油圧式無段変速装置であることを特徴とする乗用田植機のトランスミッション。
【請求項3】 請求項1記載の前記作業伝動系に、ミッション入力軸が機体前進方向に回転するときにのみ係合して前記植付部を駆動する一方向クラッチを備えることを特徴とする乗用田植機のトランスミッション。
【請求項4】 請求項1記載の第一変速装置を収容する変速ケース内に、前記ミッション入力軸に連結する出力軸と、エンジン動力を受け入れる入力軸とを、機体左右方向に沿わせて平行に支持させたことを特徴とする乗用田植機のトランスミッション。
【請求項5】 請求項4記載の入力軸に連結する原動軸を前記ケース半部の各々に支持させ、該原動軸の動力受け入れ端を他方のケース半部の外壁より外方へ延伸させたことを特徴とする乗用田植機のトランスミッション。
【請求項6】 請求項4記載の入力軸と前記出力軸とを機体前後方向に並列させたことを特徴とする乗用田植機のトランスミッション。
【請求項7】 請求項1記載の前車軸とこれに平行する前記ミッション入力軸との間にファイナル軸を配置し、該ファイナル軸の前記ケース半部の合わせ面付近に、前車軸に対し差動回転を付与する手段に結合する出力歯車と、後車軸に対し差動回転を付与する手段に結合する出力スプロケットとを並設するとともに、他方のケース半部において機体左右軸長方向に沿う膨出部を形成し、該膨出部内に位置する、前記ミッション入力軸とファイナル軸との間に第二変速装置を構成してあることを特徴とする乗用田植機のトランスミッション。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用田植機用のトランスミッションに関し、特に、エンジンからの動力を、左右の前車軸と左右の後車軸、並びに、植付装置へ変速して伝動する伝達手段を一つのミッションケースに配置する構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の乗用田植機は、機体フレームの前部上にエンジンを配置し、機体フレームの中央にミッションケースを配置して、フロントアクスルケースは機体フレームの前部に支持され、該フロントアクスルケースは両端側から下方へ延設して、下部より前車軸を突出して前輪を支持して駆動する構成としていた。また、前記ミッションケースの後部両側にはリアアクスルケースが固設され、該リアアクスルケースはミッションケースの両側面より外側方へ伝動パイプを突出し、その端部より後下方へ左右伝動チェーンケースを突出して、その各伝動チェーンケース後部に後車軸の各々を軸支して、後車軸に後輪を支持して駆動する構成としていた。また、ミッションケースの後部からPTO軸が突出され、ユニバーサルジョイントや伝動軸をを介して植付部に動力を伝達していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記のように田植機の駆動力を伝達するためには、ミッションケースからフロントアクスルケースやリアアクスルケースや伝動ケース等を介して前車軸及び後車軸に動力が伝えられる構成としていたので、部品点数が多く、組立工数も多くなってコストアップとなっていた。また、これら伝動系に加えて機体フレームで剛体を構成して機体を支持する構成としていたので、コンパクト化は難しく、大きな構成となっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。即ち、請求項1においては、エンジン動力を左右の前車軸と左右の後車軸の各々へ伝動する走行伝動系、並びに、植付部へ伝動する作業伝動系を収容したミッションケースを機体左右方向へ分離可能な二つのケース半部を接合して構成し、この各々のケース半部の前部と後部にそれぞれ前記前車軸と後車軸を装着して支持させると共に、一方のケース半部の外壁に、正逆転切換自在な第一変速装置を装着して、前記走行伝動系と作業伝動系に対して共通するミッション入力軸と連動連結させたものである。
【0005】請求項2においては、前記第一変速装置が静油圧式無段変速装置としたものである。請求項3においては、前記作業伝動系に、ミッション入力軸が機体前進方向に回転するときにのみ係合して前記植付部を駆動する一方向クラッチを設けたものである。請求項4においては、前記第一変速装置を収容する変速ケース内に、前記ミッション入力軸に連結する出力軸と、エンジン動力を受け入れる入力軸とを、機体左右方向に沿わせて平行に支持させものである。
【0006】請求項5においては、前記入力軸に連結する原動軸を前記ケース半部の各々に支持させ、該原動軸の動力受け入れ端を他方のケース半部の外壁より外方へ延伸させたものである。請求項6においては、前記入力軸と前記出力軸とを機体前後方向に並列させたものである。
【0007】請求項7においては、前記前車軸とこれに平行する前記ミッション入力軸との間にファイナル軸を配置し、該ファイナル軸の前記ケース半部の合わせ面付近に、前車軸に対し差動回転を付与する手段に結合する出力歯車と、後車軸に対し差動回転を付与する手段に結合する出力スプロケットとを並設するとともに、他方のケース半部において機体左右方向に沿う膨出部を形成し、該膨出部内に位置する、前記ミッション入力軸とファイナル軸との間に第二変速装置を構成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明のトランスミッションを装備した乗用田植機の全体側面図、図2はトランスミッションの平面図、図3は片側のケース半部を外した側面図、図4はミッションケースの平面展開断面図、図5はミッションケース前部の平面展開断面図、図6は第一変速装置の平面断面図、図7は一側のフロントスアクスルケースの後面断面図、図8はミッションケース後部の平面展開断面図、図9はミッションケース前部の側面断面図、図10は油圧回路図である。
【0009】まず、乗用田植機の全体構成を図1より説明する。田植機は前部の走行部1と後部に配置した植付部2よりなり、走行部1は機体フレーム10の前部上にエンジン9が載置され、該エンジン9はボンネット3により覆われ、該ボンネット3の後部上面に配したハンドルポスト5より上方に操向ハンドル4を配置している。機体フレーム1を車体カバー6で覆い、その上に座席7を配置し、前記車体カバー6と前記ボンネット3両側及び座席7前部のステップ8は合成樹脂にて一体的に構成されている。
【0010】そして、本発明のミッションケース11は機体フレーム10の前後中央下部より機体フレーム10の後下方まで延出され、側面視において前高後低に配されて、前後方向に長く形成されている。該ミッションケース11の前部左右両側にフロントアクスルケース12を介して前輪13が支持され、前記ミッションケース11の後部より左右両側に後車軸99を突出して後輪15を支持している。
【0011】また、前記植付部2は走行部1の後部に油圧式昇降装置17を介して対地昇降自在に装着されており、機体フレーム10後部とミッションケース11後部の間に連結した支持フレーム16に油圧式昇降装置17が支持され、該油圧式昇降装置17の前部と機体フレーム10の間には油圧シリンダー19が介装されて、該油圧シリンダー19を伸縮させることで植付部2を昇降可能としている。
【0012】前記油圧式昇降装置17の後部に装着された植付部2は通例の如く、植付ケース20上に苗載台21を左右往復動可能に配置し、下方にフロート22を吊設し、後部には伝動ケース23を突出して、該伝動ケース23にクランク機構を介して植付爪24を装着している。
【0013】そして、前記ミッションケース11前部上より後方にへ突出したPTO軸25にユニバーサルジョイントや伝動軸等を介して前記植付ケース20に動力を伝えて、苗載台21や植付爪24を駆動し、走行しながら苗載台21から苗を植付爪24によって取り出し、走行中に連続的に苗植え作業を行うように構成している。
【0014】次に、本発明のトランスミッションの構成を図2〜図9より説明する。該トランスミッションを収容するミッションケース11は左右分離可能な左右半割り型のケース半部11L・11Rから構成されている。該ミッションケース11内の前部に原動軸34、ミッション入力軸35、ファイナル軸60が平行に横架され、該原動軸34はミッションケース11の左側面より貫通して外方へ突出し、その端部上に入力プーリー30が固設されている。該入力プーリー30にはベルト33を介して前記エンジン9から動力が入力される。ミッションケース11の右側面前部には主変速装置となる第一変速装置31が付設され、該第一変速装置31は、ミッションケース11の左側面に露出させた前記原動軸34の端面に入力軸26が連結され、また、同様にミッションケース11の左側面に露出させた前記ミッション入力軸35の端面に出力軸27が連結され、それぞれ変速ケース36内に機体左右方向に沿わせて互いに平行に横架されている。
【0015】前記第一変速装置31はギア式などの有段変速装置でも良いが、本実施例では図5、図6に示すように、操作性の良い可変容積型の油圧ポンプ40と固定容量型の油圧モータ41からなる静油圧式無段変速装置を用いている。この変速装置は変速ケース36とセンタセクション37によって区画された空間内に収納され、該センタセクション37内側面にはポンプ付設面とモータ付設面が形成されている。このポンプ付設面とモータ付設面と反対側のセンタセクション37は前記ミッションケース11の右ケース半部11Rの前外側面に固定されている。
【0016】前記センタセクション37と変速ケース36とに回転自在に支持された入力軸26上にシリンダブロック42の回転軸心部が相対回転不能に係止され、前記ポンプ付設面に回転摺動自在に配置されている。該シリンダブロック42の複数のシリンダ孔内に、付勢バネを介してピストン43・43・・・が往復動自在に嵌合され、該ピストン43・43・・・の頭部は可動斜板44のスラストベアリング44aに当接され、該可動斜板44の中央開口に入力軸26が貫通されている。このようにしてアキシャルピストンタイプの油圧ポンプ40が構成されている。
【0017】前記可動斜板44のピストン接当面をシリンダブロック42の回転軸芯に対して傾動操作することで、油圧ポンプ40の油の吐出量及び吐出方向を変更できるようにしており、この可動斜板44は通例の如く左右のトラニオン軸39に連結されて、ケース外に延びる一方のトラニオン軸39に固定した図示しない変速アームを回動することにより、可動斜板44の傾動操作ができるようにしている。
【0018】また、前記センタセクション37と変速ケース36との間に回転自在に横架された出力軸27上にシリンダブロック52の回転軸心部が相対回転不能に係止され、前記モータ付設面に回転摺動自在に配置されている。該シリンダブロック52の複数のシリンダ孔内に、付勢バネを介してピストン53・53・・・が往復動自在に嵌合され、該ピストン53・53・・・の頭部は固定斜板54のスラストベアリング54aに当接され、該固定斜板54の中央開口に出力軸27が貫通されている。このようにしてアキシャルピストンタイプの油圧モータ41が構成されている。
【0019】そして、前記油圧ポンプ40と油圧モータ41の各々の吸入部と吐出部は図示しないセンタセクション37に設けた油路によって流体接続されて閉回路を構成し、原動軸34に動力が伝えられると、入力軸26が回転されて油圧ポンプ40が駆動され、このとき可動斜板44を傾動操作して、圧油を油圧モータ41へ送ることによって出力軸27、ミッション入力軸35を無段に回転駆動し、その回転方向及び回転数は可動斜板44の傾動操作によって変更できるものである。このようにして静油圧式無段変速装置が構成されるのである。
【0020】また、前記入力軸26の右端は変速ケース36右側面を貫通してバルブケース45内に延伸して、バルブケース45内の油圧ポンプ46を駆動し、該バルブケース45には更に昇降切換バルブ47、リリーフバルブ48、絞り49、ロードチェックバルブ50等が配設されている。そして、図6、図10に示すように、油圧ポンプ46は配管55を介してミッションケース11内の潤滑油兼作動油を吸入できるようにしている。図3、図9に示すFはその吸入油をろ過するための油フィルタである。油圧ポンプ46から吐出した圧油はロードチェックバルブ50を介して配管57より植付部2を昇降するための油圧シリンダー19に連通され、座席7側部に配置した植付昇降レバーを操作して昇降切換バルブ47を切り換えることによって、油圧シリンダー19を伸縮して植付部2を昇降できるようにしている。
【0021】また、前記油圧シリンダー19からの戻り油またはリリーフバルブ48からリリーフした圧油が配管56及びラインフィルタを介してセンタセクション37内へ導入され、前記静油圧式無段変速装置の閉回路にチェックバルブを介して連通し、設定チャージ油圧となるように圧油を調整して、閉回路内の作動油を補給するようにしている。
【0022】次に、図4、図5、図7を用いて、前記ミッションケース11内の走行伝動系における前輪の動力伝達構成について説明する。前記第一変速装置31を設置した右ケース半部11Rとは反対側の左ケース半部11Lの前部には左側方(伝動軸34及びミッション入力軸35の軸方向)へ膨らんだ膨出部11aが形成され、該膨出部11a内に第二変速装置32が収納されている。即ち、前記ミッション入力軸35上に大径の歯車67と幅広の小径歯車68とが固設され、また、前記ミッション入力軸35と平行でその下方にファイナル軸60がミッションケース11内に横架され、該ファイナル軸60上には前記歯車67・68に噛合可能な二連の変速歯車63が軸方向摺動自在にスプライン嵌合され、更に、出力スプロケット65と出力歯車66が固設されている。
【0023】前記変速歯車63は座席7の側部に設けた副変速レバーの操作でファイナル軸60上を軸方向に摺動して、前記大径歯車67と小径歯車68の何れか一方と噛合させて高低2段の変速回転をファイナル軸60に得ることができるのである。そして、前記出力歯車66は、ファイナル軸60の前方に配置したデフギア装置69(差動回転を付与する手段)の入力ギア70と常時噛合し、該フロントデフギア装置69は左右両側の前輪駆動軸71L・71Rを差動的に結合している。72はデフロック装置である。
【0024】そして、図7に示すように、左右ケース半部11L・11Rの外側面に装着されて前記前輪駆動軸71L・71Rを収容するフロントアクスルケース12L・12R内にはベベルギア73が支持されて、前輪駆動軸71L・71Rの端部に結合している。また、該フロントアクスルケース12L・12R内には略上下方向に沿わせるようにキングピン軸75が支持されて下方へ突出し、該キングピン軸75の下部は回動ケース76内に延伸して回動自在に軸支され、該キングピン軸75の上端にはベベルギア74が固設されて前記ベベルギア73と噛合され、キングピン軸75の下端にはベベルギア77が固設されて、回動ケース76下部に水平に横架した前車軸79L・79Rに固設したベベルギア78と噛合している。該前車軸79L・79Rの外端に前輪13・13が固定される。
【0025】また、前記回動ケース76の上面には図2に示すように、ナックルアーム59が固設され、該ナックルアーム59は図外のタイロッドを介し前記操向ハンドル4と連動連結されて、操向ハンドル4の回動によって前輪13・13を左右に操舵できるようにしている。
【0026】次に、作業伝動系の動力伝達構成を説明する。前記ファイナル軸60上で変速歯車63とスプロケット65との間には、2連のPTO伝動歯車64a・64bが軸方向移動不能に遊嵌設置されている。また、前記膨出部11aの後部上には、図5、図9に示すように、第一カウンター軸61と第二カウンター62が左ケース半部11Lの左内側面に回転自在に支持され、該第一カウンター軸61上には一方向クラッチ80を介して歯車81が外嵌され、該歯車81は前記ファイナル軸60上に固設したPTO伝動歯車64aと常時噛合している。該PTO伝動歯車64bは前記ミッション入力軸35上の小径歯車68と常時噛合している。前記一方向クラッチ80は、ミッション入力軸35が機体前進方向に回転するときにのみ前記歯車81を第一カウンター軸61に係合させるよう作動してミッション入力軸35の動力を第一カウンター軸61、即ち、植付部2側へ伝える。そして、前記第一カウンター軸61は左ケース半部11Lの左側面より外側に突出して株間変速用の歯車82が着脱自在に固設され、該歯車82は同様に左ケース半部11Lの左側面より外側に突出した第二カウンター軸62上に着脱自在に固設した歯車83と噛合し、歯車82・83は左ケース半部11Lの左側面に着脱自在に装着したカバーによって覆われている。前記第二カウンター軸62のミッションケース11内にはベベルギア84が固設され、PTOクラッチ軸86上に固設したベベルギア85と噛合させている。
【0027】該PTOクラッチ軸86は左右ケース半部11L・11Rの合わせ面の箇所で前後方向に横架されて、PTOクラッチ軸86後端で同一軸心上に前記PTO軸25を回転自在に配置している。該PTOクラッチ軸86とPTO軸25との間にはPTOクラッチ90とトルクリミッター91が配置されている。PTOクラッチ90は、PTOクラッチ軸86上の前部にクラッチ爪92を固設し、後部に中空軸93を回転自在に外嵌し、該中空軸93上に摺動爪94を軸方向に摺動自在にスプライン嵌合し、前記クラッチ爪92と係脱可能に配置している。該摺動爪94は右ケース半部11Rの右側面に軸支したPTO操作軸95を回動することによって摺動され、該PTO操作軸95にはリンクやワイヤー等を介して座席7側部の植付操作レバーと接続され、該植付操作レバーを「入」位置とすることによってクラッチ爪92に摺動爪94が係合して植付部2を駆動することができる。
【0028】そして、中空軸93の後部とPTO軸25との間に爪クラッチ式のトルクリミッター91が配置され、該トルクリミッター91を介してPTO軸25に動力を伝え、植付部2側に過負荷がかかると、トルクリミッター91でPTO軸25が空回りするように構成して、作業伝動系の伝動部品の破損を防止している。91aは設定トルクを規定するスプリングである。前記PTO軸25は前記ミッションケース11の前上部の膨出部11aより後方へ突出されており、ユニバーサルジョイントや伝動軸を介して植付部2に動力を伝える構成としている。
【0029】次に、後輪の動力伝達構成について説明する。ミッションケース11の後部には図8に示すように、サイドクラッチ軸97と減速軸98と後車軸99L・99Rが平行に回転自在に支持されており、前記サイドクラッチ軸97の左右中央にスプロケット100が固設され、該スプロケット100と前記ファイナル軸60上に固定した出力スプロケット65との間にチェーン101が巻回されて、ファイナル軸60の動力が後輪15へ伝達されるようにしている。100b・100bはチェーン101の上部、下部に配したチェーン張りである。
【0030】前記サイドクラッチ軸97上のスプロケット100の両側にはサイドギア102L・102Rが回転自在かつ軸方向摺動自在に外嵌され、スプロケット100の両側に設けた内歯100a・100aと係脱可能としてサイドクラッチ111L・111R(差動回転を付与する手段)が構成されている。また、サイドギア102L・102Rと各左右ケース半部11L・11Rには摩擦板がそれぞれ係止されて重合され、更に、サイドギア102L・102Rの外周部には鍔状の押圧体を形成して、サイドブレーキ103L・103Rが構成されている。そして、前記サイドギア102L・102Rはサイドクラッチアーム104L・104Rを回動することによって摺動され、該サイドクラッチアーム104L・104Rはミッションケース11外に設けたアーム106L・106R(図2)にリンク等を介して運転部のステップ上に設けた左右サイドブレーキペダルの各々と連動連係され、一方のサイドブレーキペダルを踏むことによって、サイドギア102を摺動してサイドクラッチ111L又は111Rを切って旋回内側の後輪の駆動力を断って緩旋回でき、更にサイドブレーキ103L・103Rを制動させることによって急旋回できるようにしている。
【0031】また、前記サイドギア102L・102Rの各々は減速軸98上に設置した二連の減速歯車105L・105Rの大径歯車と噛合され、該減速歯車105L・105Rの小径歯車は後車軸99L・99Rの内端部上に固設した歯車107L・107Rと噛合され、該後車軸99L・99Rの外側端上に後輪15・15が装着されている。該後輪15・15は、ミッションケース11の後部の両側より突出した後車軸99L・99Rに装着されるので、減速装置を収納するリアアクスルケースは不要となり、コンパクトな構成とできるのである。このようにして、第一変速装置31及び第二変速装置32で変速された後の動力が、出力スプロケット65、チェーン101、スプロケット100、サイドクラッチ装置111L・111R、サイドブレーキ103L・103Rを介して後車軸99に差動回転が伝えられて、後輪15が駆動される。
【0032】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したので、次のような効果を奏するのである。即ち、請求項1に記載するように、エンジン動力を左右の前車軸と左右の後車軸の各々へ伝動する走行伝動系、並びに、植付部へ伝動する作業伝動系を収容したミッションケースを機体左右方向へ分離可能な二つのケース半部を接合して構成したので、一つのミッションケースに走行伝動系及び作業伝動系を収納してコンパクトな構成とすることができ、半割り構成なので分解、組立も簡単に行えるのである。また、左右のケース半部の前部と後部にそれぞれ前記前車軸と後車軸を装着するので、前後のアクスルケースを一体的に構成することができて、車軸の支持構成も簡単でコンパクトに構成することができ、コスト低減化も図れる。また、一方のケース半部の外壁に、正逆転切換自在な第一変速装置を装着したので、第一変速装置のみ外してメンテナンスすることが可能である。そして、該第一変速装置は前記走行伝動系と作業伝動系に対し共通するミッション入力軸と連結させたので、走行伝動系に同期する動力が作業伝動系に伝えられて、変速装置を簡略化でき、走行速度に同期して植付部を駆動することができる。
【0033】また、請求項2記載の如く、前記第一変速装置を静油圧式無段変速装置としたので、走行変速及び作業変速が無段階に行えるようになり、所望の速度に合わせ易くなり、操作性及び作業能率が向上する。
【0034】また、請求項3記載の如く、前記作業伝動系に、ミッション入力軸が機体前進方向に回転するときにのみ係合して前記植付部を駆動する一方向クラッチを設けたので、前進しているときのみ植付部を駆動することができて、植付部が逆駆動されて、植付位置や苗載台の位置が変わったり、他の部品を破損することがなく、また、後進する度に作業伝動系への動力伝達を切る手間を省くことができる。
【0035】また、請求項4記載の如く、第一変速装置を収容する変速ケース内に、前記ミッション入力軸に連結する出力軸と、エンジン動力を受け入れる入力軸とを、機体左右方向に沿わせて平行に支持させたので、ミッションケースの外側壁上に位置する第一変速装置の左右幅を圧縮してトランスミッション全体のコンパクト化を図ることができる。
【0036】また、請求項5記載の如く、変速入力軸に連結する原動軸を前記ケース半部の各々に支持させ、該原動軸の動力受け入れ端を他方のケース半部の外壁より外方へ延伸させたので、エンジンと原動軸とをベルト伝動機構を用いて連結する場合原動軸に固定するプーリーはケース半部の軸支部近傍に配置することができて、ベルト張力によるモーメントを小さくでき、原動軸のたわみを極力抑制して耐久性を向上させることができる。
【0037】また、請求項6記載の如く、入力軸と出力軸とを機体前後方向に並列させたので、ミッションケースの上下方向の高さを短くできて地上高を上げることができる。
【0038】また、請求項7記載の如く、前車軸とこれに平行する前記ミッション入力軸との間にファイナル軸を配置し、該ファイナル軸の前記ケース半部の合わせ面付近に、前車軸に対し差動回転を付与する手段に結合する出力歯車と、後車軸に対し差動回転を付与する手段に結合する出力スプロケットとを並設したので、前後の車軸に同一のファイナル軸より出力することができて容易に同期回転が得られる。また、前車軸寄りに変速装置の重量を作用させることができ、植付部の重量が作用する後車軸に対し前後重量バランスが向上する。また、他方のケース半部において機体左右方向に沿う膨出部を形成し、該膨出部内に位置する、前記ミッション入力軸とファイナル軸との間に第二変速装置を構成したので、機体中心に対して、第一変速装置と第二変速装置を左右に振り分け配置することができて、左右の重量バランスを向上させ安定した走行を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
【識別番号】000006851
【氏名又は名称】ヤンマー農機株式会社
【出願日】 平成10年(1998)1月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
【公開番号】 特開平11−196627
【公開日】 平成11年(1999)7月27日
【出願番号】 特願平10−6540