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【発明の名称】 苗床シートの製造方法
【発明者】 【氏名】桂川 元伸

【要約】 【課題】苗床シートの製造工程を簡素化し、生産性を向上させることができる苗床シートの製造方法を提供する。

【解決手段】主シート4に複数の開口部4aを穿設する工程と、開口部4aが穿設された部分の裏面に裏面保護シート5を重ね合わす工程と、主シート4の開口部4a内に種籾を装填する工程と、種籾が装填された主シート4に表面保護シート3を被覆する工程と、開口部4aの周囲の前記表面保護シート3、主シート4、及び裏面保護シート5を離脱不能となるようにステープル14で係止する工程とからなるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 主シートに複数の開口部を穿設する工程と、前記開口部が穿設された部分の裏面に裏面保護シートを重ね合わす工程と、前記主シートの前記開口部内に種籾を装填する工程と、種籾が装填された前記主シートに表面保護シートを被覆する工程と、前記開口部の周囲の前記表面保護シート、前記主シート、及び前記裏面保護シートを離脱不能となるようにステープルで係止する工程とからなることを特徴とする苗床シートの製造方法。
【請求項2】 前記主シートの前記開口部内に肥料を装填する工程を付加したことを特徴とする請求項1に記載の苗床シートの製造方法。
【請求項3】 前記主シートの前記開口部内に害虫除去剤を装填する工程を付加したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の苗床シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、苗床シートの製造方法に関するものであり、特に、苗床に敷設するだけで稲等を栽培できる苗床シートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、稲を育てるには、水田の粗かき作業、代かき作業、苗造り作業、田植作業、雑草除去作業、水管理作業、病害虫予防作業等の様々な工程を経て米の収穫に至っている。
【0003】苗を育てる作業としては、塩水選別、水選別等で選別した種籾を、パレットを利用して籾蒔きし、ハウス等で育てる方法と、苗作り用の水田(苗床)に籾蒔きをして育てる方法が一般的に用いられている。また、一部の地域においては、稲作用に準備された水田に直蒔きをして育て、収穫に至る方法を採っているところもある。田植作業は、直蒔きを除けば、苗床等で育てた苗を手作業、あるいは機械(田植機)を用いて植付けしている。
【0004】そして、稲作に必要な肥料撒き作業として、稲の発育に応じた基礎肥料、穂肥料等を散布している。また、害虫駆除作業として、苗の成長期に害虫による食害保護を目的とした害虫駆除剤を散布している。
【0005】しかし、上記のように、従来の稲を育てる方法では、苗造り作業のときに籾をまいて苗を育てたあと、田植作業にて苗を植付けなけらばならなかった。この田植作業は、手作業または機械によって行なっていたが、いずれにしても手間がかかっていた。
【0006】そこで、植物栽培地で腐敗、分解し得る材料からなる複数のシートを積層し、シート層の間に種籾を固定した苗床シートが開発されている。これによれば、苗造り作業及び田植作業の代わりに、この苗床シートを水田に敷設するだけで、作業が完了するため、田植作業に伴い苗を植えかえる必要がない。
【0007】そして、上記の苗床シートを製造する際、種籾をシートに固定するという作業と、積層されたシートどうしを接合するという作業が必要であり、これらの作業には粘着テープ等の接着固定手段が使われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のものは、種籾をシートの所定の場所に位置決めし、種籾の上から粘着テープを貼ったり、シートどうしをテープで接着させなければならないため、苗床シートを製造するにあたり、多くの時間がかかり生産性を上げることができなかった。
【0009】そこで、本発明は、苗床シートの製造工程を簡素化し、生産性を向上させることができる苗床シートの製造方法の提供を課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明にかかる苗床シートの製造方法は、主シートに複数の開口部を穿設する工程と、前記開口部が穿設された部分の裏面に裏面保護シートを重ね合わす工程と、前記主シートの前記開口部内に種籾を装填する工程と、種籾が装填された前記主シートに表面保護シートを被覆する工程と、前記開口部の周囲の前記表面保護シート、前記主シート、及び前記裏面保護シートを離脱不能となるようにステープルで係止する工程とからなるものである。
【0011】ここで、主シート、裏面保護シート、及び表面保護シートは、いずれも所定期間経過後に腐敗する材料からなり、更に、裏面保護シート及び表面保護シートは、種籾の発芽により容易に破れる材質からなる。なお、苗床シートの用途は、必ずしも稲の栽培に限定されるものではなく、その他の作物の栽培に応用しても構わない。つまり、収容部に収容する種籾を他の作物の種子に代えてもよい。
【0012】したがって、請求項1の発明の苗床シートの製造方法によれば、まず、最初の工程で主シートに複数の開口部が穿設される。この開口部により、種籾が収容される空間が形成される。その後、苗床シートの裏面に裏面保護シートが重ね合わされ、開口部の底側が閉塞される。なお、この状態では、主シートと裏面保護シートとは、単に重ねられているだけであり、固定されていない。
【0013】次に、主シートの開口部内に種籾が装填され、その後、主シートの上面に表面保護シートが被覆される。そして、最後に、積層された3つのシート、つまり、主シート、裏面保護シート、及び表面保護シートが離脱不能となるように、ステープルで係止される。
【0014】請求項2の発明にかかる苗床シートの製造方法は、請求項1の苗床シートの製造方法において、前記主シートの前記開口部内に肥料を装填する工程を付加したものである。
【0015】ここで、肥料を装填する工程は、主シートに裏面保護シートが重ねられてから、表面保護シートが被覆されるまでの間であれば、いつ行うようにしてもよい。すなわち、種籾を装填する工程の前に行うようにしてもよく、種籾を装填する工程の後で行うようにしてもよい。
【0016】したがって、請求項2の発明の苗床シートの製造方法によれば、請求項1の苗床シートの作用に加えて、開口部で形成される空間内に、種籾と一緒に肥料が装填される。ここで、肥料の種類はどのようなものでもよい。
【0017】請求項3の発明にかかる苗床シートの製造方法は、請求項1または請求項2のいずれかの苗床シートの製造方法において、前記主シートの前記開口部内に害虫除去剤を装填する工程を付加したものである。
【0018】ここで、害虫除去剤を装填する工程は、主シートに裏面保護シートが重ねられてから、表面保護シートが被覆されるまでの間であれば、いつ行うようにしてもよい。すなわち、種籾を装填する工程の前に行うようにしてもよく、種籾を装填する工程の後で行うようにしてもよい。
【0019】したがって、請求項3の発明の苗床シートの製造方法によれば、請求項1または請求項2のいずれかの苗床シートの作用に加えて、開口部で形成される空間内に、種籾と一緒に害虫除去剤が装填される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について説明をする。図1は本発明の一実施形態である苗床シートをロール状に巻いた状態を示す斜視図、図2は本発明の一実施形態である苗床シートの収容部を示す拡大断面図である。
【0021】図1及び図2に示すように、本実施形態の苗床シート1は、表面保護シート3、主シート4、裏面保護シート5の3層のシート構造により構成されている。
【0022】表面保護シート3及び裏面保護シート5は、紙等の腐食性で水が浸透できる材質からなり、所定幅で帯状のシートである。また、表面保護シート3及び裏面保護シート5は、種籾の発芽により容易に破れるものである。
【0023】主シート4も、表面保護シート3及び裏面保護シート5と同様に紙等の腐食性で水が浸透できる材質からなり、所定幅で帯状のシートであるが、表面保護シート3及び裏面保護シート5に比べて厚手である等、容易に破れないようなものである。また、主シート4には、田植作業において苗を植える場合と略等しい間隔で所定形状の開口部4aが複数穿設されている。
【0024】前記主シート4には、上面に表面保護シート3が、裏面に裏面保護シート5が重ね合わされている。つまり、表面保護シート3と裏面保護シート5との間に主シート4が介在した状態で一体化されている。そして、主シート4の開口部4aが穿設されている部分には、図2に示すような袋状の収容部2が形成され、この収容部2の内部には、肥料7、種籾6、害虫駆除剤8が各々収容されている。
【0025】このように構成された苗床シート1は、通常、図1に示すようにロール状に丸められている。しかし、図3に示すように、折畳んだ状態にしてもよい。図3は本発明の一実施形態である苗床シートを折畳んだ状態を示す斜視図である。
【0026】ここで、本実施形態の苗床シート1の製造工程について説明する。図4は本発明の一実施形態である苗床シートの製造工程を示す説明図である。
【0027】図4に示すように、本実施形態の苗床シート1は、主シート4に裏面保護シート5、表面保護シート3が順次重ね合わされ、矢印の方向に移動して行くが、途中で穿孔装置9、種籾装填装置10、肥料装填装置11、害虫駆除剤装填装置12、ペーパーファスナー13の各装置による工程を経て製造される。
【0028】まず、ロール状に巻かれた主シート4は、穿孔装置9によって開口部4aが穿設される。開口部4aの穿設が終了した部分の裏面には、裏面保護シート5が重ね合わされて種籾装填装置10へと移動する。
【0029】種籾装填装置10では、主シート4の開口部4aに種籾6が装填される。開口部4aに種籾6が装填された後、主シート4及び裏面保護シート5は肥料装填装置11へと移動する。
【0030】肥料装填装置11では、主シート4の開口部4aに、種籾6に引き続き肥料7が装填される。開口部4aに種籾6及び肥料7が装填された後、主シート4及び裏面保護シート5は害虫駆除剤装填装置12へと移動する。
【0031】害虫駆除剤装填装置12では、開口部4aに、種籾6及び肥料7に引き続き害虫駆除剤8が装填される。
【0032】上記のようにして、開口部4aが穿設され、裏面に裏面保護シート5が重ね合わされ、前記開口部4aに種籾6、肥料7及び害虫駆除剤8が装填された主シート4には、続いて上面が表面保護シート3で被覆され、最後にペーパーファスナー13によってステープル14で開口部4aの周囲を表面保護シート3、主シート4及び裏面保護シート5が離脱不能に係止される。
【0033】このように、本実施形態の苗床シート1は、穿孔装置9、種籾装填装置10、肥料装填装置11、害虫駆除剤装填装置12及びペーパーファスナー13の5つの装置による工程を経て形成される。
【0034】続いて、上記のように構成された苗床シート1の敷設作業について説明する。図5は本発明の一実施形態である苗床シートの敷設作業を示す説明図である。
【0035】図5に示すように、作業者24が操作する耕運機21には、苗床シート運搬用ボート23が牽引ロープ22によって結ばれている。なお、水田20は、予め、耕運機21によって耕しておき、このとき水田20は稲の生育に必要な沼状態であり、畦造り等稲の生育に必要な沼状態を維持するための防水対策も予め行っておく。
【0036】苗床シート運搬用ボート23は、車輪等を備えているものではなく、水田のような沼地の表面を滑り移動できるフロートのようなのもである。この苗床シート運搬用ボート23には、図3に示すように折畳まれた苗床シート1が載置されている。そして、水田20に苗床シート1を敷設するには、水田20の苗床シート1を敷設したい部分に沿って耕運機21を移動させる。そうすれば、苗床シート運搬用ボート23は、耕運機21の移動する軌跡に沿って移動し、苗床シート運搬用ボート23の後部より苗床シート1が順次引き出され、水田20へと敷設されていく。
【0037】上記のようにして敷設された苗床シート1は、従来の苗造り作業における苗床に相当するもので、上記の敷設作業により苗造り作業が終了する。また、苗床シート1に形成された種籾6等が収容されている収容部2の隣り合う間隔は、従来の田植作業における隣り合う苗の間隔に略等しいため、苗が育ってから植え変える必要がない。さらに、主シート4の開口部4a以外の部分は雑草の発育により貫通することができない程の強度を有しているため、結果的に稲の周囲に雑草が生えることはない。つまり、本実施形態の苗床シート1を使用しての稲の栽培では雑草除去作業が不要である。
【0038】このように、本実施形態の苗床シート1は、水田に敷設したとき雑草の成長により容易に破れない等雑草の成長を妨げることができるとともに所定期間経過後に腐敗し土に帰る材質からなり、所定間隔で複数の開口部4aが穿設された主シート4と、種籾6の発芽により容易に破れるとともに所定期間経過後に腐敗し土に帰る材質からなり、主シート4の上面を被覆する表面保護シート3と、種籾6の発芽により容易に破れるとともに所定期間経過後に腐敗し土に帰る材質からなり、主シート4の裏面に貼着された裏面保護シート5と、主シート4の開口部4aにおいて表面保護シート3と裏面保護シート5との間に介装された種籾6、肥料7及び害虫駆除剤8とを備えたものであり、所定幅で帯状に長くロール状に巻かれたもの、または折畳まれたものである。
【0039】したがって、本実施形態の苗床シート1は、水田20の粗かき作業、代かき作業が終了後、苗造り作業及び田植作業の代わりに、水田20に敷設するだけで作業が終了する。そのため、田植作業に伴い苗を植え変える必要がない。しかも、主シート4の開口部4a以外の部分は雑草の発育により貫通することができない程の強度を有しているため、結果的に稲の周囲に雑草が生えることはない。つまり、本実施形態の苗床シート1を使用しての稲の栽培では雑草除去作業が不要である。
【0040】また、本実施形態の苗床シート1の製造方法は、穿孔装置9、種籾装填装置10、肥料装填装置11、害虫除去剤装填装置12及びペーパファスナー13の5つの装置による一連の工程を経て苗床シート1を形成することができるため、作業の自動化が可能であり、生産性を大きく向上させることができる。また、主シート4に開口部4aを穿設させ、開口部4a内に種籾6を装填することにより、種籾6を苗床シート1の所定の位置に固定することができる。
【0041】ところで、上記実施形態の苗床シート1の製造方法では、肥料を装填する肥料装填装置11や、害虫除去剤を装填する害虫除去剤装填装置12を備えるものを示したが、特に必要がなければ備えなくてもよい。
【0042】また、上記説明では、表面保護シート3、主シート4及び裏面保護シート5の材質は、必ずしも紙である必要はなく、稲の収穫後、翌年の田植の時期までに、腐敗し土に帰る天然素材のものであれば、絹、綿、鉋くず等のどのようなものにしても構わない。ただし、表面保護シート3及び裏面保護シート5については、種籾6の発芽による芽及び根の成長により容易に破れるものでなければならない。また、主シート4については、雑草の発芽により容易に破れてはならない。
【0043】なお、苗床シート1の用途は、必ずしも稲の栽培に限定されるものではなく、その他の作物の栽培に応用しても構わない。つまり、収容部2に収容する種籾6を他の作物の種子に変えてもよい。
【0044】
【発明の効果】以上のように、請求項1の発明の苗床シートの製造方法は、主シートに開口部を穿設させ、開口部内に種籾を装填することにより、種籾を所定の位置に固定することができるため、従来のように粘着テープで種籾を固定するという煩わしい作業を必要としない。また、3枚のシートをステープルにより一体化させるため、従来のように粘着テープで貼り合わせるという煩わしい作業を必要としない。したがって、製造方法が簡素化でき生産性を向上させることができる。
【0045】請求項2の発明の苗床シートの製造方法は、請求項1の苗床シートの製造方法の効果に加えて、肥料は、種籾と一緒に主シートの開口部に装填されるため、肥料を備える苗床シートを容易に製造することができる。
【0046】請求項3の発明の苗床シートの製造方法は、請求項1または請求項2のいずれかの苗床シートの製造方法の効果に加えて、害虫駆除剤は、種籾と一緒に主シートの開口部に装填されるため、害虫駆除剤を備える苗床シートを容易に製造することができる。
【出願人】 【識別番号】396014337
【氏名又は名称】中部電子システム株式会社
【出願日】 平成8年(1996)7月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
【公開番号】 特開平11−192005
【公開日】 平成11年(1999)7月21日
【出願番号】 特願平10−302905