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【発明の名称】 農作業機の作業装置用昇降制御装置
【発明者】 【氏名】越智 竜児

【要約】 【課題】枕地での植付けの最終段階において、圃場の出口において畦を登りながら、圃場面内にある作業装置としての苗植付装置で圃場の隅に植付けを行った後に、圃場を退出し畦を昇る途中で苗植付装置を走行機体に対して上昇させる際に、機体の安定性を損なわずに上昇作動を行わせることのできる田植機を提供する点にある。

【解決手段】走行機体の前後傾斜を検出する機体前後傾斜検出センサを設け、機体前後傾斜検出センサが走行機体の前上がり傾斜を検出した場合に、苗植付装置の上昇操作指令があると、苗植付装置の上昇速度Vを低下させて緩速強制昇降速度V’に切り換える制御手段32を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た作業装置を、昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動自在に構成するとともに、前記走行機体の前後傾斜を検出する前後傾斜検出手段を設け、走行機体が機体前後方向に傾斜したことを前記前後傾斜検出手段が検出している状態においては、前記作業装置の強制昇降作動速度を低速に変更する制御手段を設けてある農作業機の作業装置用昇降制御装置。
【請求項2】 走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た作業装置を、昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動自在に構成するとともに、前記走行機体の前後傾斜を検出する前後傾斜検出手段を設け、走行機体が機体前後方向に傾斜したことを前記前後傾斜検出手段が検出している状態においては、前記作業装置の強制上昇作動速度を低速に変更する制御手段を設けてある農作業機の作業装置用昇降制御装置。
【請求項3】 走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た作業装置を、昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動自在に構成するとともに、前記走行機体の前後傾斜を検出する前後傾斜検出手段を設け、走行機体の前上がり傾斜が設定以上になったことを前記前後傾斜検出手段が検出している状態においては、前記作業装置の強制上昇作動速度を低速に変更する制御手段を設けてある農作業機の作業装置用昇降制御装置。
【請求項4】 走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た苗植付装置に対して接地センサを昇降自在に構成するとともに、接地センサの苗植付装置に対する高さを基準高さに維持するように苗植付装置を昇降制御する昇降制御手段と、苗植付装置を昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動する強制昇降駆動手段とを設け、前記走行機体の前後傾斜を検出する前後傾斜検出手段が機体の前後傾斜を検出している状態においては、昇降操作手段に対する人為操作指令があっても強制昇降駆動手段の作動を阻止するとともに、昇降制御手段の作動を維持するように制御する制御手段を設けてある農作業機の作業装置用昇降制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た作業装置を、昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動自在に構成する農作業機の作業装置用昇降制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、昇降操作手段が操作されると、決められた昇降速度で作業装置が昇降作動していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、枕地での植付けの最終段階において、圃場の出口において畦を登りながら、圃場面内にある作業装置としての苗植付装置で圃場の隅に植付けを行った後に、圃場を退出し畦を昇る途中で苗植付装置を走行機体に対して上昇させる。この場合には、走行機体が前上がり姿勢になっている状態でさらに苗植付装置を昇降させる際の振動等が発生することになるので、機体の姿勢安定性が低下するとともに走行性や操縦性等が低下することが考えられる。
【0004】本発明の目的は、走行機体の前後傾斜が大きくなっても、機体の安定性をできるだけ維持できる農作業機の作業装置用昇降制御装置を提供する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】〔構成〕請求項1にかかる発明による特徴構成は、走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た作業装置を、昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動自在に構成するとともに、前記走行機体の前後傾斜を検出する前後傾斜検出手段を設け、走行機体が機体前後方向に傾斜したことを前記前後傾斜検出手段が検出している状態においては、前記作業装置の強制昇降作動速度を低速に変更する制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0006】〔作用〕つまり、走行機体が傾斜した状態において、作業装置への昇降操作指令があった場合には、通常の昇降速度より低速の緩速度で昇降を行わせる。
【0007】〔効果〕これによって、作業装置を上昇退避させるという、作業形態を踏襲しながら、作業装置の昇降時の振動等を抑制して走行機体の姿勢安定性とともに走行性、操縦性等の向上を図ることができた。
【0008】請求項2にかかる発明の目的は、請求項1と同様である。
【0009】〔構成〕請求項2にかかる発明による特徴構成は、走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た作業装置を、昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動自在に構成するとともに、前記走行機体の前後傾斜を検出する前後傾斜検出手段を設け、走行機体が機体前後方向に傾斜したことを前記前後傾斜検出手段が検出している状態においては、前記作業装置の強制上昇作動速度を低速に変更する制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】〔作用効果〕この発明においては、作業装置を上昇作動させる場合のみに緩速制御を適用する。上昇時には機体重心が徐々に持ち上がるところから機体振動等に与える影響が大きくなるからであり、下降時には重心も低くなる方向であり、振動も収まる方向であると考えられるので、ここでは、作業装置の緩速制御は上昇時のみに限定する。
【0011】〔構成〕請求項3にかかる発明による特徴構成は、走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た作業装置を、昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動自在に構成するとともに、前記走行機体の前後傾斜を検出する前後傾斜検出手段を設け、走行機体の前上がり傾斜が設定以上になったことを前記前後傾斜検出手段が検出している状態においては、前記作業装置の強制上昇作動速度を低速に変更する制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】〔作用効果〕この発明においては、走行機体の前上がり傾斜が設定角度以上になった場合に作業装置の緩速上昇制御を適用する。このようにしたのは、多少の走行機体の傾斜においては傾斜のないものとみなすことができるからである。これによって、上昇時の振動の影響が大きく作用する場合のみに限って、緩速上昇制御を行う。
【0013】〔構成〕請求項4にかかる発明による特徴構成は、走行機体に昇降駆動手段によって昇降自在に取付た苗植付装置に対して接地センサを昇降自在に構成するとともに、接地センサの苗植付装置に対する高さを基準高さに維持するように苗植付装置を昇降制御する昇降制御手段と、苗植付装置を昇降操作手段に対する人為操作指令に基づいて強制昇降駆動する強制昇降駆動手段とを設け、前記走行機体の前後傾斜を検出する前後傾斜検出手段が機体の前後傾斜を検出している状態においては、昇降操作手段に対する人為操作指令があっても強制昇降駆動手段の作動を阻止するとともに、昇降制御手段の作動を維持するように制御する制御手段を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】〔作用効果〕田植機においては、昇降制御手段によって、接地センサの検出結果に基づいて接地センサの苗植付装置に対する基準高さ、つまり、苗植付装置の植付深さを一定に維持するように制御を行う。これを耕深制御と称している。この耕深制御中に、苗植付装置に対する強制昇降制御の指令が入った場合に、走行機体の傾斜角が検出されている場合には、作業装置の昇降制御を行わず、耕深制御を維持する。この耕深制御状態を維持することによって、例えば、畦を登る前上がり姿勢になっていても、接地センサ等で踏ん張りを効かすことができる。この耕深制御を維持しながら、走行機体の傾斜状態が解消された場合に、強制昇降操作状態が維持されているならば、そのときに苗植付装置の強制昇降を行なう。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)図1に示すように、ステアリング操作される駆動型の前車輪1、及び、駆動型の後車輪2を備えた走行機体3の前部にエンジン4を搭載すると共に、この走行機体3の後部にエンジン4からの動力が伝えられる静油圧式の無段変速装置5、及び、ミッションケース6を配置し、又、走行機体3の中央部にステアリングハンドル7、運転座席8を配置し、走行機体3の後端部に対し昇降駆動手段としてのリフトシリンダ9で駆動昇降するリンク機構10を介して作業装置としての苗植付装置Aを連結して水田作業機としての田植機を構成する。苗植付装置Aは苗載せ台11に載置されたマット状苗Wを機体の走行速度と同期して回転するロータリケース12に備えた植付アーム13によって切出して圃場面に植え付ける作動を行う系を備えると共に、下部に複数の接地フロートとしての整地フロート14を備えて8条植え用に構成されている。
【0016】図3に示すように、複数の整地フロート14のうち左右方向での中央位置の整地フロート(以下、感知フロート14Aと称する)は、植付深さ調節軸15に一体形成したアーム状部材16の揺動端に対して、後支点としての横向き姿勢の軸芯X周りで揺動自在に支持されると共に、その前部を下方に向けて付勢する感知圧設定用のバネ17を備えて接地センサとしての機能を有する。感知フロート14Aの後支点回りでの前端部の揺動量を検出するセンサを設け、このセンサをフロートセンサ19と称する。感知フロート14Aにブラケット18を取付け、ブラケット18とフロートセンサ19の操作アーム19Aとをロッド20を介して連係し、フロート14Aの揺動姿勢をフロートセンサ19で計測できるよう構成されている。
【0017】植付深さ調節軸15を回動操作した場合に感知圧設定用のバネ17の付勢力を維持するようバネ受け側の位置を維持し、かつ、該フロート14Aの姿勢をフロートセンサ19で正確に検出するようフロートセンサ19の操作アーム19Aの軸芯周りでのフロートセンサ19のケースの姿勢を補正する補正リンク21を備えている。感知フロート14Aは苗植付装置Aを圃場面Sの高さ変化に追従させて自動昇降する制御時(以下、自動昇降制御と称する)に圃場面Sに対する苗植付装置Aの高さを制御系にフィードバックする。
【0018】図1に示すように、前記運転座席7の右側部に苗植付装置Aの昇降制御とミッションケース6に内蔵された植付クラッチ(図示せず)の入り切り操作とを行う昇降レバー24を備えている。図5に示すように、この昇降レバー24を、ガイド25に形成された経路内の「下降」位置に設定することで苗植付装置Aを下降させる。「上昇」位置に設定すると苗植付装置Aを上昇させる。「中立」位置に設定すると苗植付装置Aをそのレベルに維持する。「入」位置に設定すると植付クラッチを入り操作すると共に、苗植付装置Aに備えた整地フロート14(感知フロート14A)が接地する状態で所定の対圃場高さを維持する自動昇降制御を行う。「切」位置に設定すると植付クラッチを切り操作する。昇降レバー24を「自動」位置に設定するとステアリングハンドル7の近傍に備えた強制昇降レバー26の操作に従って苗植付装置Aの昇降を許容すると同時に苗植付装置Aの上昇時には植付クラッチの自動的な切り操作を可能にするものとなっている。尚、この昇降レバー24の基端部には図2に示すように該昇降レバー24の操作位置を計測するポテンショメータ型のレバーセンサ27を備えている。ここに、昇降レバー24と強制昇降レバー26とを昇降操作手段と称する。
【0019】前記感知フロート14Aは前記バネ17で前部を押し下げる方向に付勢されることで、苗植付装置Aが圃場面Sを基準に上昇方向に相対的変位した場合には感知フロート14Aが前記軸芯X周りで前下がり姿勢に変化し、逆に、苗植付装置Aが圃場面Sを基準に下降方向に相対変位した場合には感知フロート14Aが前記軸芯X周りで前上がり姿勢に変化する。この姿勢変化をフロートセンサ19で計測し、フロートセンサ19からの信号に基づいて感知フロート14Aの姿勢を目標姿勢、つまり、後記する制御感度設定器28の設定値に対応した苗植付装置Aとの上下間隔Lを一定に維持するよう苗植付装置Aの昇降を行うことで圃場面Sに対する苗植付装置Aの高さを維持するよう前記自動昇降制御の制御動作が設定されている。図2に示すように、走行機体Aには感知フロート14Aの目標姿勢を設定する制御感度設定器28を備え、感知フロート14Aの目標姿勢を設定可能に構成してある。ここに、フロートセンサ19、感知フロート14A、制御感度設定器28等を苗植付装置Aの植付深さを制御する昇降制御手段と称する。
【0020】図2に示すように、走行機体3には苗植付装置Aの自動昇降制御を行うためマイクロプロセッサ(図示せず)を有した制御手段としての制御装置32を設ける。制御装置32に対して前記レバーセンサ27、前記制御感度設定器28、フロートセンサ19からの信号が入力する入力系を形成する。入力信号を受けてリフトシリンダ9を制御する電磁弁33に対する出力系を形成している。尚、この電磁弁33は非駆動状態で中立位置を保持し、その電磁ソレノイドに対する電力の供給によって上昇位置、下降位置夫々に操作自在に構成されると共に、電磁ソレノイドに供給する電力に比例して開度を変化させるよう構成されている。
【0021】次に、走行機体3の機体前後傾斜が所定角度以上になった場合の、昇降操作手段24,26による昇降制御について説明する。走行機体3に対して前後傾斜検出手段としてのポテンショメータ式の機体前後傾斜センサ22を設け、機体3の前後傾斜を検出する。傾斜が所定角度に到ったか否かの判断の基準となる前後傾斜設定器23を設ける。例えば、図4に示すように、畦際等において植付作業を行いながら畦を登り始め植え終えて圃場を退出する際において、苗植付装置Aの昇降制御指令があると、図6に示すように、走行機体3の機体前後方向における傾斜角度の絶対値θ3が設定角度より大きくなければ、昇降速度Vを通常の強制昇降速度V”に設定して昇降制御を行い、傾斜角度の絶対値θ3が設定角度より大きくなれば、昇降速度Vを緩速強制昇降速度V’に設定して昇降制御を行う。機体傾斜角θ3の絶対値を取り扱っているのは、機体の前後いずれの方向への傾斜についても本制御を適用する為である。
【0022】図6のフローチャートに示すように、まず昇降レバー24の操作位置を検出し、「植付」位置に設定してあれば、先に説明したフロートセンサ19からの検出角度θ1と制御感度設定器28からの設定角θ2とから、自動昇降制御を行う(#101〜#105)。自動昇降制御中における走行機体3の機体前後方向傾斜については考慮しない。昇降操作位置が「下降」あるいは「上昇」位置である場合には、前記したように、走行機体3の前後傾斜角θ3が設定角度θ4以上になれば、昇降速度Vを緩速強制昇降速度V’に設定する。前後傾斜角θ3が設定角度θ4以上になれば、昇降速度Vを通常強制昇降速度V”に設定する(#106〜#109)。昇降操作位置が「自動」位置で強制昇降レバー26への昇降操作があった場合には、走行機体3の前後傾斜角θ3が設定角θ4以上になれば、昇降速度Vを緩速強制昇降速度V’に設定する。前後傾斜角θ3が設定角度θ4に達しなければ、昇降速度Vを通常強制昇降速度V”に設定する(#110〜#114)。緩速強制昇降速度V’と通常強制昇降速度V”については、図7に示している。
【0023】(第2実施形態)第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点のみについて説明する。つまり、走行機体3の機体前後方向傾斜角θ3が設定角度θ4を越えた場合の取扱いについて異なる実施形態について説明する。耕深制御(#201)については、図6のフローチャートにおける#102〜#105において説明した通りである。この耕深制御を継続しながら畦際において植付作業をしている状態で圃場より脱出し畦を越えるべく、苗植付装置Aの上昇操作がかかった場合には、図8に示すように、機体傾斜角度θ3が設定角θ4以上であれば、上昇作動をさせずに耕深制御状態を維持する。機体傾斜角度θ3が設定角θ4を越えなければ、上昇作動をさせる。但し、苗植付装置Aの上昇操作がかかったにも拘らず苗植付装置Aの上昇作動が規制されている状態で、機体傾斜角度θ3が設定角θ4を越えない状態に戻った場合には、苗植付装置Aの上昇作動を行わせる(#201〜#204)。以上の制御については、図9に示すタイムチャートでも示している。
【0024】〔別実施の形態〕
■ 本発明は上記実施の形態において、走行機体3の前後傾斜角θ3が設定角度以上傾斜した場合に苗植付装置Aの昇降作動状態を変更することについて示したが、設定角度方式を採用せずに単に水平状態から走行機体3が傾斜したことだけを検出して上記制御を行ってもよい。
■ 本発明は上記実施の形態において、走行機体3の前後傾斜角θ3が設定角度以上傾斜した場合に苗植付装置Aの昇降作動状態を変更することについて示したが、走行機体3の前上がり傾斜のみに基づいて、上昇作動を規制する又は上昇速度を低下させる等の制御を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成9年(1997)12月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開平11−187717
【公開日】 平成11年(1999)7月13日
【出願番号】 特願平9−360804