| 【発明の名称】 |
イネの直播方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】西山 雄悟
【氏名】小林 陽子
|
| 【要約】 |
【課題】播種機によって、イネゲル被覆種子を精密点播することを可能とし、田圃が冠水してもイネの出芽、生育を促進させ、湛水状態でも発芽揃い良く、高発芽率を維持し、また、播種粒数の節約を可能とし、適正な密度でイネを生育させ、健全なイネを得る。
【解決手段】種籾をゲル化剤で被覆したイネゲル被覆種子8’を、過酸化水素水等の酸素発生剤に浸漬し、ゲル化剤中の種籾周囲に酸素12を富化させること共に催芽させ、乾田または湛水圃場に、目皿あるいはロール等の球状の種子を確実に1粒保持できる播種機によって精密点播を行う。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 種籾をゲル化剤で被覆したイネゲル被覆種子において、ゲル化剤中に酸素を富化し、該ゲル化剤で種籾を被覆したイネゲル被覆種子を、最適な栽培密度が得られるように田圃中に直接精密点播することを特徴とするイネの直播方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、田圃が冠水してもイネを出芽、生育させることができるイネゲル被覆種子を、播種機によって確実に点播し、健全なイネを得ることができるようにするための技術に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に稲作作業において、種籾は田圃に直播きされるか、または、予め苗床に播種して、ある程度まで育苗させた後に田圃に移植していた。前者は、湛水直播や乾田直播などの栽培方法であり、また後者は移植栽培による方法である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】前記移植栽培は、種籾を苗床に播種、育苗し、出来た苗を田圃に移植する方法であり、最も多く行われている。しかし、この方法では育苗と移植に多大な労力(稲作全体の労力の約半分)と時間が必要で、出来た製品もコスト高になってしまうのである。 【0004】また、前記湛水直播は、酸素富化剤としてカルパーでコーティングした種籾を、代掻きを行った湛水状態の田圃に直接播種する方法である。この方法ではカルパーコーティングは種子表面に均一な層を形成する必要があるので熟練が必要であり、カルパーコーティングした後の種籾はコート層が脆く剥がれ易く、また、球状でないので播種機での精密点播が不可能であり、散播、条播しかできないのが現状である。さらに発芽率も低いものであった。そのため、適度な空間がなく密植状態になり、病害が発生しやすい状態となる。さらに、徒長気味で根の張りが悪く、そして分けつも少なく、倒伏しやすい個体に成長するので、健全な個体が得にくく、その結果、イネの減収となり易い。また、カルパーコーティングによる酸素供給は短時間しか効果がないために、窒息防止のため覆土は浅くなり、これも倒伏の原因となる。 【0005】また、前記乾田直播は、種籾をそのまま乾田状態の田圃に播種機にて直接播種を行い、発芽したところで湛水状態にする方法である。この方法でも、種籾の形状が球でないため、播種機による播種は条播となり、精密点播は不可能である。このため乾田直播でも湛水直播と同様、密植となりやすいため病害が発生し易く、健全な個体が得にくいのである。さらに倒伏しやすく、その結果、イネの減収となり易い。また、播種後の雨等により田圃が湿潤もしくは湛水状態になると種籾が窒息して発芽率が大幅に低下する可能性もある。そのうえ機械による催芽もしくは芽だしした種子を播種することもできないのである。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決する為の手段を説明する。即ち、種籾をゲル化剤で被覆したイネゲル被覆種子を、過酸化水素水等の酸素発生剤に浸漬し、ゲル化剤中の種籾周囲に酸素を富化させること共に催芽させ、乾田または湛水圃場に、目皿あるいはロール等の球状の種子を確実に1粒保持できる播種機によって精密点播を行うことにより、湛水状態でも発芽揃い良く、高発芽率を維持し、また、播種粒数の節約を可能とし、適正な密度でイネを生育させ、健全なイネを得ることができるようにするものである。 【0007】 【発明の実施の形態】先ず、種子は植物の種類により発芽率を異にする場合が多いため、通常発芽促進のための前処理が行なわれる。この前処理法としては、発芽促進剤例えばジベレリン酸等の溶液に種子を浸漬する方法のほか、種皮磨傷法、高温処理又は低温処理法等を種子の特性に応じて適宜選択して行なう。 【0008】一方、水性ゲル化剤を純水に対し2〜10重量%の濃度になるように混合し、1〜2時間放置して十分に吸水膨潤させてから攪拌して強い粘性を有する均一な流体とする。ここに使用する水性ゲル化剤としては、このような性質を有する物質であれば特に限定されることなく、天然ゲル、合成有機質ゲル、無機質ゲル等の中から広範囲に選択使用できる。例えばアルギン酸のアルカリ塩、カルボキシメチルセルロースのアルカリ塩、ポリアクリル酸のアルカリ塩、カラギーナン、ゼラチン、カンテン等の植物体のみならず人体に対しても影響がなく安全に使用できるゲルが好ましい。 【0009】次に得られた水性ゲルに硝酸カリ、リン酸水素アンモニウム等の植物生育に必要な栄養物質(肥料)のほか、必要に応じ周知の殺菌剤、殺虫剤、動物忌避剤等を必要量を添加し、次工程の処理に適当な粘度に調節するが、この薬剤処理は以下の2通りの方法によることができる。すなわち、第1の方法はこれら薬剤を必要量直接コーティング用の水性ゲル中に添加する方法であり、第2の方法は種子とコーティングゲルの間の気泡空間に薬剤を封入するか、種子に予め粉衣させた上で封入する方法である。 【0010】次に、この水性ゲルを用いて種子を被覆する装置を簡単に説明する。図1はゲル加工ノズル装置の断面図である。図1において、バルブケース1内部に被覆剤(ゲル化剤)を収容するゲル収容室2が設けられ、該ゲル収容室2はチェックバルブ6を介してゲルタンクと接続されている。前記バルブケース1側部にノズルケース3が付設され、該ノズルケース3内に上下方向に貫通する挿入孔3aが開口され、該挿入孔3a内に円筒状のノズルプランジャ4が挿入される。該ノズルプランジャ4の外周には鍔部4aを構成して、その下面は受圧面として、その上面にはバネが受けられてノズルプランジャ4が下方へ付勢され、該ノズルプランジャ4の下端は弁部として挿入孔3a下端を閉じる構成としている。 【0011】前記ゲル収容室2からバルブケース1の外面に図示しない挿入孔が開口されて、該挿入孔に加圧プランジャが挿入され、該加圧プランジャの往復動によってゲル収容室2内のゲルが加圧・減圧されるようにしている。前記挿入孔3aとノズルプランジャ4の間の空間が前記ゲル収容室2と連通孔5を介して連通されている。 【0012】このような構成において、加圧プランジャをゲル収容室2内に進入させると、ゲル収容室2内の圧力が上昇され、ノズルプランジャ4の受圧面に圧力がかかりノズルプランジャ4は上昇され、弁部が開かれてゲルが下方へ流れ出て、このゲルが一定量吐出されると、ノズルプランジャ4はバネ力によって下降して弁部を閉じる。ノズルプランジャ4下端の開口部は落下した残りのゲルによって閉じられてゲル膜7aが形成される。そして、加圧プランジャを後退させると、ゲル収容室2内及びゲルの流路内の圧力が減圧され、チェックバルブ6が開きゲルタンクよりゲルが補充される。 【0013】これに同期して、ノズルプランジャ4の上方より種子9が供給されて、ノズルプランジャ4の軸心部に設けた通過孔4bに種子9が落下されて、種子9は前記ゲル膜7a上に載置される。そして、前記加圧プランジャを進入させると流出したゲルによって、種子9と気泡を包んで落下し、その落下時にゲルは表面張力によって球状化され、ゲル被覆種子8が硬化槽内に落下する。この硬化槽内の硬化剤に一定時間浸漬させて硬化させ、浄化されてゲル被覆種子が得られる。この操作が繰り返されてゲル被覆種子8が連続的に得られるのである。 【0014】また、前記した第2の方法、すなわち種子と被覆ゲルの間に栄養物質等の薬剤を封入する場合は、薬剤を種子と同時にまたは種子に粉衣した状態で上記と同様に行えばよい。 【0015】本発明は、こうして得られたゲル被覆種子8を過酸化水素水等の酸素発生剤に浸漬して、酸素を富化させると共に催芽させる。このイネゲル被覆種子8’は図2に示すように、ゲル7内において芽10及び初根11が数mm伸びて、イネゲル被覆種子8’の外膜を破らない程度に催芽させる。このようにして得られたゲル被覆種子は、発芽に必要な酸素はゲル内に包含されるので十分に供給され、さらに催芽はしているが球状を保ち形は崩れていないために、目皿あるいはロール等の確実に1粒保持できる播種機によって、間隔をあけて、1〜複数粒播種することができるのである。 【0016】〔実施例〕次に、具体的実施例を説明する。本実施例の種子には、イネの1品種であるヒノヒカリを用い、移植栽培と、乾燥したままの種籾の乾田直播と、種籾をゲル化剤で被覆したイネゲル被覆種子による精密点播乾田直播の、それぞれの収量、収穫物調査を行った。その結果を表1に示す。 【0017】 【表1】
【0018】次に、表2は、イネの1品種である日本晴を用い、0.5%過酸化水素水中に10分間浸漬処理して1日25°C中で催芽させたイネゲル被覆種子と、カルパーコーティング種子と、裸種子とを、平均17.8°Cのグロースチャンバー中にて湛水状態にしたバットに、播種したときの発芽率の推移を示したものである。 【0019】 【表2】
【0020】〔結果〕表1より、種籾をゲル化剤で球状に被覆し、播種機で1〜複数点播することにより、播種粒数も少なくすみ、倒伏しにくい健全なイネに成長し、籾の充実歩合や収量が増加した。また、移植栽培と比較して育苗の手間がかからないため、生産コストは半分となった。また、表1の試験の年は、気候が良く、どの試験区も倒伏した個体は見られなかった。例年の気候であれば茎長が長いほど倒伏が多くなり収穫できなくなる可能性が高くなるので、茎長の短いゲル被覆種子を用いた直播栽培の有効性は更に高くなる。 【0021】また、表2より、イネゲル被覆種子を過酸化水素水に浸漬し、催芽させることにより、湛水状態でも発芽揃い良く、高発芽率を維持することができた。 【0022】以上のようにして、種籾をゲル化剤で球状に被覆したイネゲル被覆種子を過酸化水素水等の酸素発生剤に浸漬し、ゲル化剤中の種籾周囲に酸素を富化させる共に催芽させ、乾田または湛水圃場に、目皿あるいはロール等の確実に1粒保持できる播種機によって精密点播を行うことにより、湛水状態でも発芽揃い良く、高発芽率を維持することができる。そして、イネは徒長、倒伏、病害を受けず、各個体が日に良く当たり、風通しが良く、根張りはよく、分げつが多い健全な個体となるのである。 【0023】 【発明の効果】以上のような構成により本発明は次のような効果が得られるのである。即ち、酸素富化処理や催芽を施し、発芽揃い、発芽率を高めたイネゲル被覆種子を、播種機によって精密点播を行うことにより、播種粒数の節約が可能となり、適正な密度でイネを生育させることが可能となり、健全なイネを得ることができる。また倒伏等の収量減を防止でき、充実度の高い米が従来の方法より多く収穫でき、さらに移植栽培のような育苗の苦労が無くなり、生産コスト低減を行うことができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】597041747 【氏名又は名称】アグリテクノ矢崎株式会社
|
| 【出願日】 |
平成9年(1997)12月10日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】矢野 寿一郎
|
| 【公開番号】 |
特開平11−168910 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)6月29日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−339685 |
|