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【発明の名称】 農作業車における接地ローラの浄化構造
【発明者】 【氏名】武智 貫太

【要約】 【課題】移植機には、植付け後の苗まわりに土を寄せつけて押さえ込むための覆土・鎮圧ローラが設けられている。しかし、このローラ外周面に土が付着すると、この覆土・鎮圧ローラが回転不良を起こし、畝上面で土塊を押して引きずり状態にし、畝を荒らしてしまうということがあった。これを解消する。

【解決手段】覆土・鎮圧ローラ2において、ローラ本体3の外周面に溝状の凹部9を設けると共に、このローラ本体3に対してゴム等によって形成した可撓輪体4を外嵌させた構成とする。この覆土・鎮圧ローラ3は、回転に伴って可撓輪体4の凹部9に対応する部分が振動するようになるので、付着土は剥離される。従って、ローラ外周面はいつも浄化された状態に保たれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 農作業車(1)における接地ローラ(2)の浄化構造において、上記接地ローラ(2)は、外周面に凹部(9)が設けられたローラ本体(3)と、該ローラ本体(3)の外周面に凹部(9)を覆う状態で装着される可撓体(4)とを有していることを特徴とする農作業車における接地ローラの浄化構造。
【請求項2】 前記ローラ本体(3)を保持する回転支軸(6)が水平方向から上下に傾斜した状態で車体に設けられており、ローラ本体(3)がその外周面を接地面(7a)へ平行に当接すべく円錐状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の農作業車における接地ローラの浄化構造。
【請求項3】 前記ローラ本体(3)は、回転駆動装置(14)によって強制回転可能になされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の農作業車における接地ローラの浄化構造。
【請求項4】 前記ローラ本体(3)の回転周部に前記可撓体(4)が巻回装着された輪体とされており、該可撓輪体(4)に近接乃至摺接状態でスクレーパ(18)が設けられていることを特徴とする請求項3記載の農作業車における接地ローラの浄化構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する利用分野】本発明は、移植機等の農作業車が具備する接地ローラを浄化可能にした構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】移植機には、駆動輪とされる後輪や、舵取り輪等とされる前輪の他に、畝高さの検出や整地、或いは覆土や鎮圧等を行うための各種の接地ローラが、それぞれ各別又は兼用的に設けられている。このような接地ローラは、一般には無駆動のまま回転自在に保持されており、畝に接地した状態で、移植機の走行に伴って転動するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような接地ローラにおいて、降雨後の作業時や含水率の高い土壌での作業時等には、そのローラ外周面に土が付着することがあった。接地ローラの外周面に土が付着すると、接地ローラが円滑に回転しないようになり、やがては全く回転しない状態に陥ることがあり、このようになると、接地ローラが畝上で土塊を後押しするようになって土塊の引きずり状態が発生し、畝面を荒らしてしまうということがあった。
【0004】そのため、苗姿勢の乱れや倒れを誘発し、苗の成育に悪影響が及ぶことになっていた。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、移植機等の農作業車が具備する接地ローラを自動的に浄化可能なものとして、畝等の土壌面を荒らすことがないようにし、もって苗の成育不良等を防止できるようにした農作業車における接地ローラの浄化構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。即ち、本発明に係る農作業車における接地ローラの浄化構造では、接地ローラとして、外周面に凹部が設けられたローラ本体と、このローラ本体の外周面に対して凹部を覆う状態で装着される可撓体とを有した構造になっている。
【0006】なお、ローラ本体に対して設けられる凹部は、周方向に連続した1本又は複数本の溝として形成してもよいし、周方向や軸方向に分割されて点在する複数の小型凹部の集合として形成してもよく、可撓体は凹部を覆うのであれば、輪体とする必要はないけれども、望ましくは、巻回装着される輪体が有利である。このような接地ローラを具備する構成であると、接地ローラが回転するのに合わせて、その可撓体又は可撓輪体がローラ本体の凹部を覆っている部分で振動するようになる。
【0007】すなわち、可撓体において接地面(畝上面等)へ向けられている部位では、踏力に対して接地面から受ける反力により、当該可撓体がローラ本体の凹部内へ入り込むように湾曲し、またこの湾曲部分が接地面を離れて上側へ向かうときには、当該可撓体が凹部内から出て元の状態に戻ろうと、上記とは逆向きの湾曲を起こすことになる。
【0008】また更に、可撓体は、上記湾曲の余韻や走行振動等により、ローラ本体の凹部に対する出入りを伴った湾曲を何度か繰り返すことになる。このようにして可撓体には振動が生じるものである。従って、仮に接地ローラの外周面(即ち、可撓体の外面)に土等が付着したとしても、この付着土等は、接地ローラの回転に伴って生じる上記可撓体の振動により自動的に剥離され、落下することになる。
【0009】ローラ本体を保持する回転支軸を水平方向から上方又は下方へ傾斜させた状態で車体に設けた場合、ローラ本体は、その外周面を接地面へ平行に当接させるために円錐状にする必要がある。従って、ローラ本体は、軸方向の内側と外側とで直径が異なり、それらの外周面相互間には、回転時の周速差が生じることになる。
【0010】そして、このような周速差は、当然のことながら可撓体を輪体と構成して巻回装着したときは、可撓輪体についても同様に生じ、この可撓輪体に生じる周速差が、当該可撓輪体自体に対して振動を促すべく好適に作用することになる。すなわち、これにより、可撓輪体による付着土等の剥離作用が活発化される。ローラ本体を、回転駆動装置によって強制回転可能にすることで、付着土等の剥離作用を更に一層、良好にさせることができる。
【0011】ローラ本体の回転周部に対し、可撓輪体に近接させた状態でスクレーパを設けるようにすれば、なお好適である。なお、万が一、可撓体又は可撓輪体からの剥離を免れた頑固な付着異物があったとして、この異物が可撓輪体とスクレーパとの間へ噛み込まれそうになったとしても、ローラ本体に設けられた凹部が可撓輪体の逃げ場となるため、異物が可撓輪体を傷つけたり、異物によって可撓輪体とスクレーパとの間が詰まったりすることはない、といった利点がある。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図3は乗用型移植機としての農作業車1を示しており、この農作業車1における後部の車体下部に、図4に示すように覆土作用及び鎮圧作用に兼用される覆土・鎮圧ローラとしての接地ローラ2が設けられている。
【0013】図1及び図2は、上記接地ローラ2に対して本発明に係る浄化構造を適用した場合を示したもので、この接地ローラ2は、ローラ本体3とその外周面に巻回装着される可撓輪体4とを有している。なお、接地ローラ2は、農作業車1の車体に対して斜め下方へ傾斜して設けられた回転支軸6により、回転自在に保持されるようになっている。従って、ローラ本体3は、その外周面を畝7の上面等の接地面7aに対して略平行に当接させるために、その外形が、軸方向の外側(車幅方向の外側)を径小とする円錐状に形成されている。
【0014】ローラ本体3には、その外周面の軸方向中央部に、外周を1周する溝状の凹部9が形成されている。可撓体4は、ゴム、軟質樹脂、合成布等の可撓性を有した材料によって形成されたもので、凹部9を覆うように装着されており、本図示例ではローラ本体3に外嵌可能な輪形状を有している。勿論、ローラ本体3が円錐状望ましくは円錐台状をしていることに伴って、可撓体4の輪形状も、幅方向(ローラ本体3の軸方向に同じ)一端側が径小で他端側が径大となるテーパを有したものとなっている。
【0015】この可撓体4は、豊富な可撓性乃至弾性が得られるようにするため、耐磨耗性や耐破断性等に悪影響が生じない範囲で材料硬度の柔軟なものを用い、また肉厚があまり分厚くならないようにしてある。なお、ローラ本体3の凹部9内へ土等が入り込むのを防止するのが好ましく、そのためには、ローラ本体3における軸方向の両側縁部と、可撓輪体4の幅方向両側縁部とを、焼き付けその他の適宜接着方法によって固着しておけばよい。
【0016】このような構成であるため、接地ローラ2が回転するときには、可撓輪体4においてローラ本体3の凹部9を覆っている部分に振動が生じるようになる。すなわち、可撓輪体4の接地部分では、接地面7aから踏力の反力を受けて凹部9内へ入り込むように湾曲する(図1中の二点鎖線参照)が、この可撓輪体4における湾曲部分が接地面7aを離れて上記踏力反力が解消されると、元の状態に戻ろうと逆向きの湾曲を起こし、凹部9内から出るようになる。
【0017】そして、このような湾曲の繰り返しによる余韻に、更に走行振動等も加わって、可撓輪体4には、上記凹部9への出入りを伴った湾曲が何度か繰り返されることになり、これが振動となるものである。従って、仮に接地ローラ2の外周面(即ち、可撓輪体4の外面)に土等が付着したとしても、この付着土等は上記可撓輪体4の振動で弾き落とされ、接地ローラ2は常に浄化されるものである。
【0018】なお、ローラ本体3は円錐台状をしているため、その回転には、軸方向の内側と外側との外周面間で周速差が生じる。このような周速差は、可撓輪体4における幅方向内側と外側とで、その固有振動数を異ならせることになり、その結果、可撓輪体4に生じる振動が促進される効果を誘うものとなる。従って、それだけ凹部9内へ出入りする湾曲が大きく且つ頻繁化する傾向となり、可撓輪体4による付着土等の剥離作用が活発化されるものである。
【0019】ローラ本体3において、その外周面に設ける凹部9は、図示は省略するが軸方向で区画された複数本の周溝として形成することも可能である。また、図5に示すように周方向に分断して点在させた小型凹部の集合とすることも可能であるし、更に図6に示すように周方向だけでなく軸方向にも分断して点在させた小型凹部の集合とすることもできる。
【0020】また、図7に示すように、接地ローラ2として農作業車1の車体から水平に突出した回転支軸6によって保持するようにもできるものであり、この場合のローラ本体3は、軸方向の内側と外側とで直径が同じ短小円柱状となり、また可撓輪体4は円筒状となる。図8に示すように農作業車1において、接地ローラ2の近傍へ、エンジン(図3に示すボンネット12内に収納されている)から伝動軸13を介して動力を受ける回転駆動装置14を設け、この回転駆動装置14により、チェン等の伝動手段15を介して接地ローラ2を強制回転可能にすることも可能である。
【0021】このようにすることで、可撓輪体4における振動発生を更に確実且つ大きなものにできるため、それだけ付着土等の剥離効果も高くできる。また、農作業車1の走行に関係なく接地ローラ2を回転させることができるため、農作業車1を停車させたまま、接地ローラ2の浄化を行わせることもできるという利点がある。
【0022】接地ローラ2としては、農作業車1の前部側等に設けられて畝高さの検出や整地等を行うローラ(図8中の符号16参照)をも含んだものであり、このローラ16の場合も、回転駆動装置14により伝動手段15を介して強制回転可能にできる。なお、回転駆動装置14の構造や伝動手段15の種類等は何ら限定されるものではなく、例えばエンジン自体に回転駆動装置14としての構成を兼用させることも可能である。
【0023】図9に示すように、ローラ本体3の回転周部に対し、可撓輪体2に近接させた状態でスクレーパ18を設けるようにすると、付着土等に対する剥離性は一層良好となることは言うまでもないが、このスクレーパ18を、図8に示した回転駆動装置14によって接地ローラ2を強制回転させる構成のもとで併用させると、それらの相乗効果として特に顕著な効果を得ることができる。
【0024】なお、万が一、可撓輪体2とスクレーパ18との間へ土その他の異物が噛み込まれ、この異物によって可撓輪体4が局部的に凹まされるようなことがあっても、ローラ本体3に設けられた凹部9が可撓輪体4の凹み変形を許容する逃げ場となるため、異物が可撓輪体4を傷つけたり、異物によって可撓輪体4とスクレーパ18との間が詰まったりすることはないという、副次的効果もある。
【0025】以上、説明したところから明らかなように、本発明における細部にわたる構成・構造、部材形状、組み合わせ等は、実施の形態に応じて適宜変更可能なものであり、また図10に示したような歩行型移植機をはじめ、その他各種の農作業車1において適用可能であるし、可撓体4はこれを輪状とするのが望ましいが、凹部9がローラ本体3の外周部に図5で示すように分散されたときは、個々の凹部9を覆うようにしても良いが、望ましくは個々の凹部9の全部を一挙に覆う輪体とするのが有利となる。
【0026】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明に係る農作業車における接地ローラの浄化構造では、外周面に凹部が設けられたローラ本体と、このローラ本体の外周面に装着される可撓体とを有した接地ローラを具備する構成であるので、この接地ローラが回転すれば、ローラ本体の凹部に対応する部分で可撓体が振動し、この振動によって付着土等が自動的に剥離されることになる。そして、その結果、接地ローラは常に浄化された状態を維持するものとなる。
【0027】従って、畝等の土壌面を荒らすことがなく、苗の成育不良等を防止できるものである。ローラ本体を円錐台状にすると、ローラ本体の外周面には、軸方向の内側と外側とで外周面相互間に周速差が生じ、従って可撓体を輪体としたときはこの可撓輪体にも同様に周速差が生じることになるので、可撓輪体には振動が生じ易くなり、その結果、可撓輪体による付着土等の剥離作用を活発化できる利点がある。
【0028】ローラ本体を、回転駆動装置によって強制回転可能にしたり、可撓輪体に近接させてスクレーパを設けたりすることで、付着土等の剥離作用を更に一層、良好にさせることができる。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成9年(1997)12月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
【公開番号】 特開平11−155314
【公開日】 平成11年(1999)6月15日
【出願番号】 特願平9−333197