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【発明の名称】 乗用型水田走行作業機
【発明者】 【氏名】藤井 治朗

【要約】 【課題】圃場への出入及びトラックへの積み降ろしは、降車位置で行うようにする。

【解決手段】運転操縦部8を有する走行車体4に、該運転操縦部8から離れた降車位置でクラッチの入り切り操作およびブレーキの入り切り操作が可能な操作具46を備え、該操作具46のグリップ46Bは、運転操縦部8を構成する操縦ハンドル6の近傍かつ下方に位置づけされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 運転操縦部(8)を有する走行車体(4)に、該運転操縦部(8)から離れた降車位置でクラッチの入り切り操作およびブレーキ操作が可能な操作具(46)を備え、該操作具(46)のグリップ(46B)は、運転操縦部(8)を構成する操縦ハンドル(6)の近傍かつ下方に位置づけされていることを特徴とする乗用型水田走行作業機。
【請求項2】 前記操作具(46)は人為操作可能なレバーで構成されていて、前記操縦ハンドル(6)の一側方に備えられていることを特徴とする請求項1記載の乗用型水田走行作業機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乗用型の田植機、湛水直播機等の乗用型水田走行作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、乗用型田植機において、エンジンからトランスミッションへの動力伝達は、テンション付与手段を有するベルト式変速装置(テンション式クラッチ)で行われており、操縦ハンドルの側方に配置した変速レバーでこのベルト変速・テンションクラッチを操作し、さらに操縦席左側に設けたクラッチペダルにてもテンションクラッチを入り切り操作できるようになっている。
【0003】また、操縦席右側には左右の後車輪のブレーキ操作を行うブレーキペダルが設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】乗用田植機は通常、田植作業及び移動等の路上走行は乗車したまま行うが、圃場への出入り及びトラックへの積み降ろし等を運転者が乗車したまま行うと不安感や恐怖感を与えることがある。これは、乗用田植機が圃場での回向半径を小さくするため前後車輪の軸間距離を狭めて構成されているため、機体が前後に大きく傾斜することがあるためである。
【0005】この為圃場への出入りやトラックへの積み降ろしを降車して行う方がやり易いことがある。しかしながら本来備えられているクラッチペダルやブレーキペダル等は、乗車位置にて操作しやすい位置に設けられているため、降車して操縦する場合には操作しにくく、操作が遅れて走行車体を他物に衝突させて損傷させてしまう恐れがある。
【0006】本発明は、乗車位置(操縦席に乗って操縦する)から操作するクラッチペダル、ブレーキペダル等とは別個に、降車位置からクラッチの入り切り及びブレーキを操作する操作具を設け、この操作具を降車位置から操作できるようにすると共に、この操作具の操作に際して、操縦ハンドルと該操作具のグリップに夫々手をかけた状態での操作を可能とすることで、前記従来技術の問題点を解決できるようにした乗用型水田走行作業機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明における課題解決のための具体的手段は、運転操縦部8を有する走行車体4に、該運転操縦部8から離れた降車位置でクラッチの入り切り操作およびブレーキ操作が可能な操作具46を備え、該操作具46のグリップ46Bは、運転操縦部8を構成する操縦ハンドル6の近傍かつ下方に位置づけされていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】また、本発明では、前記操作具46は人為操作可能なレバーで構成されていて、前記操縦ハンドル6の一側方に備えていることを特徴とするものである(請求項2)。
【0009】
【作用】本発明によると、乗用型水田走行作業機(以下、単に乗用型田植機という)1を畦越えさせたり、トラック等に積み降ろしを行う場合には、運転者は走行車体から降りた降車位置において、操作具46を操作することによって、クラッチの入り切り及びブレーキ操作を行う。
【0010】これ故、乗車状態での不安感や、恐怖感は解消されるのである。更に、操作具46の操作に際して、そのグリップ46Bを片手で他方の手は操作ハンドル6にかけた状態での操縦が可能となることから、確実な移動操作が行える。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図4において、1は乗用型水田走行作業機としての乗用型田植機であり、前輪2と後輪3とを装備した2軸4車輪形の走行車体4の前部にエンジン5が搭載されている。走行車体4の前後中間には、操縦ハンドル6および運転席7で構成されている操縦部8が備えられ、操縦部8の後方には、昇降シリンダ9及び昇降リンク機構10を介して苗植付装置11が昇降自在に連結されている。12はエンジン5を覆うボンネット、13は運転席7の左右側方の後輪フェンダをそれぞれ示している。
【0012】図1〜4に示す第1実施例において、エンジン5の出力軸15の動力は、副変速装置としての多段式ベルト変速装置16を介してミッションケース17の入力軸となっている伝動軸18に伝達され、ミッションケース17内の主変速装置等のトランスミッションを介して前輪2及び後輪3に伝達されると共に、苗植付装置11等にも伝達される。
【0013】前記多段式ベルト変速装置16はダブルテンション方式を示しており、エンジン5の出力軸15とミッションケース17の伝動軸18とにはそれぞれ2組のプーリ20、21が設けられており、プーリ20L、21Lとそれらに巻き掛けられたベルト22Lとは低速用であり、プーリ20H、21Hとそれらに巻き掛けられたベルト22Hとは高速用であり、各ベルト22L、22Hにはテンションプーリ23L、23Hが押し付け可能になっている。
【0014】各テンションプーリ23L、23Hを取り付けたテンションアーム26L、26Hは支持軸27に枢支されており、各テンションアーム26L、26Hには支持軸27の前後位置にピン28、29が突設されていて、各前ピン28には切り換えリンク30L、30Hの一端の長孔30Aが嵌合し、各後ピン29には戻しバネ31L、31Hとクラッチリンク32の各一端が連結されている。
【0015】前記各テンションプーリ23、テンションアーム26、戻しバネ31等によって、ベルト変速装置16のベルト22にテンションを付与するテンション付与手段24が構成されている。また、前記支持軸27には上部にグリップ35Aを有する変速レバー35も枢支されており、その長手方向中途には係合ピン36が設けられている。37は支軸38に枢支された切り換え具で、2本のピン39L、39Hを突設し、この2本のピン39L、39H間に長孔40が形成されており、この長孔40は変速レバー35の係合ピン36に嵌合している。前記2本のピン39L、39Hにはそれぞれ切り換えリンク30L、30Hの他端が連結されている。
【0016】図1は低速動力伝達状態を示しており、低速側テンションアーム26Lは戻しバネ31Lの引っ張り力によってテンションプーリ23Lを低速側ベルト22Lに押し付けている。この状態から変速レバー35を反時計方向(図1矢印A方向)に揺動すると、切り換え具37が支軸38を中心に回動して低速側切り換えリンク30Lを引き上げ、戻しバネ31Lに抗して低速側テンションアーム26Lを持ち上げ、ベルト22Lのテンションを減少して動力を切る。
【0017】これと同時に、高速側切り換えリンク30Hは下降可能になり、戻しバネ31Hによって高速側テンションアーム26Hは回動し、ベルト22Hにテンションプーリ23Hを押し付けることになり、ベルト22Hにはテンションが付与されて高速動力を伝達するようになる。クラッチリンク32の一端には高低両速のテンションアーム26の後ピン29に遊嵌した遊嵌部32Aが形成され、他端はクラッチペダル42と連動連結されている。
【0018】クラッチを入り切り操作するペダル42はステップ44の下方において走行車体4に固定の枢支軸43にその基部(ボス部)が踏込み自在として枢支され、ステップ44から上方へ突出しており、そのボス部から爪部42Aが突出している。また、枢支軸43にはリンク45が枢支され、その先端はクラッチリンク32に連結され、このリンク45に前記爪部42Aが上から係合可能になっている。
【0019】前記クラッチペダル42を踏み込むことにより、爪部42Aが回動してリンク45に上から係合し、クラッチリンク32を図1下方向Bに引っ張り、戻しバネ31に抗して低速側と高速側の両テンションアーム26を持ち上げ方向に回動して、高低速両方の動力を切ることができるようになっており、ここに、ベルト変速装置16は、エンジン動力をミッションに断続させるベルトテンション式のクラッチを構成している。
【0020】46は枢支軸43に枢支された操作具で、その上部のグリップ46Bは変速レバー35より充分に前側に位置し、降車した作業員(運転者)が容易に回動操作可能な位置に配置されている。すなわち、操作具46は前記ステップ44の前方位置でかつ乗降の障害とならない位置に、本実施の形態では降車位置にて人為操作可能なレバーで構成して備えられているとともに、グリップ46Bは操縦ハンドル6の近傍かつ下方に位置づけられている。
【0021】この操作具46は、上部にグリップ46Bを有し、基部のボス部には、クラッチペダル42と同様に爪部46Aが突出されており、この爪部46Aもリンク45に上方から係合して、クラッチリンク32を図1下方向に引っ張り、戻しバネ31に抗して低速側と高速側の両テンションアーム26を持ち上げ方向に回動して、高低速両方の動力を切ることが可能になっている。
【0022】すなわち、操作具46を手動(人為操作)にてクラッチ及びブレーキ(ブレーキについては後述)を操作するとき、一方の手をハンドル6に、他方の手はグリップ46Bにかけて下向回動操作によりクラッチ切り、ブレーキ作動としていることから、押さえつけ方向の操作となって操作し易くされているのである。また、クラッチ及びブレーキを降車位置にて操作する操作具46は、操縦ハンドル6から遠ざかる方向側への回動、実施例では図1の矢符Cで示す前方回動により、クラッチ切り、ブレーキ作動となるように構成されており、これによって、一方の手をハンドル6に他方の手を操作具46にかけて、相反する方向への操作でクラッチ切り、ブレーキ作動となるために確実な降車状態での操作ができるのである。
【0023】47は操作具46のガイド部材を示しており、ボンネット12等に固定されていて、人為操作可能なレバー構成した操作具46を各操作位置にて保持可能としている。前記持ち上げるテンションアーム26は、実際には、テンションプーリ23がベルト22を弾圧している入り側だけであり、テンションアーム26の持ち上げ量を調整することにより、テンションプーリ23によるベルト22の張り具合を変更できる。
【0024】操作具46を図3のガイド部材47の入り位置に配置(保持)していると、テンションアーム26はテンションプーリ23を正規の力でベルト22に弾圧して、低速又は高速の動力を正常に伝達可能にし、ガイド部材47の1位置に配置(保持)すると、テンションプーリ23によるベルト22を押圧する力が減少し、ベルト22の張りを緩めてスリップを生じさせることになり、同じくガイド部材47の2位置では更にベルト22の張りを緩めてスリップ率が多くなるようになっており、このスリップにより、ベルト変速装置16が伝達する動力が減少し、走行速度が変速レバー35で設定された速度より減速側に調整され、ここに、通常作業速度(例えば植付速度は0.4m/sec〜1.0m/secである)とは別に、圃場への出し入れ(畦越え)、トラックへの積み降ろし等の低速走行状態、例えば0.1m/secの速度が可能とされている。
【0025】更に、操作具46を切り位置まで回動すると、両テンションプーリ23はベルト22から離れ、クラッチペダル42を踏み込むのと同じように、ベルト変速装置16による動力伝達を切る状態が得られる。従って、乗用型田植機を圃場に出し入れするため、運転者が降車位置でベルト変速装置16を低速側にしてゆっくりと乗用型田植機を移動しているときに、操作具46を操作すると移動速度をさらに低速にしたり又は停止したりできるのであり、この降車位置での操作具46の操作は、そのグリップ46Bが操縦ハンドル6の下方位置に備えられていることから、一方の片手はグリップ46B、他方の片手は操縦ハンドル6に掛けた状態で田植機1を操縦(操向)しながらの畦越え作業等が安定した姿勢の下で実施できるのである。
【0026】図1,3,4には動力伝達系のブレーキ装置51が示されている。このブレーキ装置51はミッションケース17から後輪デフ装置52へ動力を伝達する回転軸53を制動するブレーキ手段54と、このブレーキ手段54を操作具46で操作する操作手段55とを有している。すなわち、乗車位置でクラッチを操作するペダル42と、降車位置で操作可能なクラッチ及びブレーキ51を操作する操作具46を設けており、この操作具46により操作されるブレーキ51を、クラッチペダル42の近くの動力を伝達する回転部(回転軸53)に設けており、これによってミッションケース内等のブレーキを利用することなく、簡単な連結構成にてブレーキを作動させて田植機1を停止できるのである。
【0027】具体的に説明すると、 前記ブレーキ手段54は走行車体4に取り付けられたバンドブレーキ又はディスクブレーキであり、その操作レバー56は操作手段55のボーデンワイヤ57で回動操作される。このボーデンワイヤ57のインナワイヤ57Aの一端は操作具46に固定の作動体58に挿通され、先端の掛止具59が作動体58と掛止可能になっている。
【0028】従って、操作具46をクラッチの切り位置以上に回動してブレーキ位置にすると(図3参照)、作動体58が掛止具59を介してインナワイヤ57Aを引っ張り、操作レバー56を介してブレーキ手段54を作動させ、回転軸53を制動することができ、降車位置で人為操作可能な操作具46で走行車体4の停止を行うことができるようになる。
【0029】図5は第2実施例を示しており、操作具46は変速レバー35と同様に支持軸27に枢支されており、この操作具46には係合体48が突出され、この係合体48は高低両テンションアーム26の後ピン29と係合可能であり、クラッチリンク32を介さずに高低両テンションアーム26の位置を変更して、ベルト22の張力を微調整し、走行車体4の変速操作をすることが可能になる。尚、この第2実施例でも前記ブレーキ装置51を併設することが可能である。
【0030】また、クラッチペダル42とクラッチ及びブレーキを操作する操作具46は、リンク45にそれぞれの爪部42A,46Aが上方から係合可能であることから、それぞれ操作するとき他方は連携しないように、爪部42A,46Aがリンク45に接当するのであり、それぞれを操作しても他方(ペダル又は操作具)が動かないため、不用意に操作具が動いて手を挟む危険はないのである。
【0031】また、ペダル42の近傍に操作具46を設けることによって、ペダル42によるクラッチ操作と、手動によるクラッチ切りの操作関係を連携しやすくなるのである。図6、7は第3実施例を示しており、この操作具46は支持軸27に枢支されていて、長手方向中途部に支持軸27を中心とする円弧状の板49が固着され、この円弧板49には係止孔49Aが形成されており、変速レバー35には係止孔49Aと係脱可能な係止ピン50が突設されている。この第3実施例の操作具46は若干左右に揺動可能であり、円弧板49を移動して係止孔49Aを係止ピン50に対向させかつ係合させると、操作具46を回動することにより変速レバー35を回動操作することができる。
【0032】即ち、降車位置から変速レバー35を操作するのと同様に、レバーで示す操作具46でベルト変速装置16を変速操作でき、しかも変速レバー35に手が届かない背の低い人でも容易に操作できる。図7に示すガイド部材47には、変速レバー35用のガイド溝47Aの他に操作具46用のガイド溝47Bが形成され、ガイド溝47Bにはガイド溝47Aと同様に高速、低速及び中立の各作用位置に保持可能であるとともに、、円弧板49を移動して係止孔49Aを係止ピン50に離脱させかつ離脱位置で退避させてこの位置で保持させておく退避位置が形成されている。
【0033】尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、ベルト変速装置16はベルト伝動手段が3組あるトリプルテンション型ベルト変速装置又は、割プーリを使ったベルト伝動手段が1組だけの無段変速型のベルト変速装置でも良い。
【0034】
【発明の効果】以上詳述した本発明によれば、降車位置でクラッチの入り切り操作及びブレーキを操作できる操作具を設けているので、乗用型水田走行作業機を圃場に出し入れするとき等に、不安感や恐怖感を感じずに確実な操縦が行える。又、操作具のグリップに片手をかけ他方の片手は操縦ハンドルにかけての操作が可能となって、操作性が向上できると共に、確実な移動操作が行える。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成4年(1992)8月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
【公開番号】 特開平11−146714
【公開日】 平成11年(1999)6月2日
【出願番号】 特願平10−264238