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【発明の名称】 水稲マルチ栽培紙シート及びその製造方法
【発明者】 【氏名】佐藤 行男

【要約】 【課題】水田に被覆しても籾が脱落することなく、かつ製造の容易な水稲マルチ栽培紙シート及びその製造方法を提供する。

【解決手段】紙製のシート1には、上下方向に略連続する切れ目11が設けられており、シート1の裏面には目の粗い不織布製のテープを籾Rを包むように軸線に沿って丸めるようにして形成した紐状の籾袋2が非水溶性の接着剤により、切れ目11に沿って接着されている。籾袋2には籾Rが一定の間隔で一粒ずつ充填されている。この水稲マルチ栽培紙シートを水田に被覆すると、籾Rが発芽出根し、芽及び根が籾袋2を通って伸び、芽は切れ目11を通してシート1の上方に伸びることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数箇所に籾が配置されており、水田の表面を被覆する水稲マルチ栽培紙シートにおいて、紙製であって、少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔が設けられたシートと、中に充填された籾が発芽出根する際の芽及び根の成長を妨げない複数の間隙を有する材料で構成され、前記出芽孔に籾が充填された部分が重畳するように前記シートの裏面に接着された連続する籾袋とからなることを特徴とする水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項2】 前記シートは、再生紙製である請求項1に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項3】 前記連続する籾袋は、不織布製のテープを籾を包むように軸線に沿って丸めるようにして形成した紐状の籾袋である請求項1に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項4】 前記不織布は、セルロースを主原料とする請求項3に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項5】 前記紐状の籾袋には、略一定の間隔で籾を一粒ずつ充填されており、前記出芽孔は、長手方向に略連続して前記シートに設けられた略連続する出芽孔であって、前記紐状の籾袋を前記略連続する出芽孔に沿って接着した請求項3に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項6】 前記略連続する出芽孔は、長手方向に略連続して前記シートに形成された切れ目である請求項5に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項7】 前記切れ目は、所定の間隔を空けて平行に2列形成された請求項6に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項8】 前記紐状の籾袋には、略一定の間隔で複数の籾が長手方向に一列に並んで充填されている請求項3に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項9】 前記連続する籾袋は、平板なテープ状であって、籾の充填されている部分と籾の充填されていない部分とをそれぞれ交互に設けてなり、前記籾の充填されている部分が前記出芽孔に重畳し、前記籾の充填されていない部分において前記連続する籾袋が前記シートに接着されている請求項1に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項10】 前記連続する籾袋の表面材及び/または裏面材は、セルロースを主原料とする不織布製である請求項9に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項11】 前記連続する籾袋の表面材及び/または裏面材は、紙製である請求項9に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項12】 前記連続する籾袋の前記籾の充填されている部分には、それぞれ複数の籾が充填されている請求項9に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項13】 前記出芽孔は、前記シートの籾を配置すべき箇所のみに穿設された丸孔である請求項1に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項14】 複数箇所に籾が配置されており、水田の表面を被覆する水稲マルチ栽培紙シートにおいて、紙製であって、少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔が設けられたシートと、中に充填された籾が出根する際の根の成長を妨げない複数の間隙を有する材料で構成され、前記出芽孔に重畳するように前記シートの裏面に接着され、前記シートとの間に籾が充填される籾カバーとからなることを特徴とする水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項15】 前記シートは、再生紙製である請求項14に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項16】 前記籾カバーは、セルロースを主原料とする不織布製である請求項15に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項17】 前記籾カバーは、少なくとも出芽孔に重畳する部分に複数の小さな丸孔群が空けられた紙製である請求項14に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項18】 前記出芽孔は、前記シートの籾を配置すべき箇所にのみ穿設された複数の小さな丸孔群である請求項14に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項19】 前記複数の小さな丸孔群は、前記シートを長手方向に延びる折線に沿って折り曲げ、重畳部分を穿設して複数群を同時に形成する請求項18に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項20】 前記籾カバーは、連続する籾カバーである請求項14に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項21】 それぞれ連続するテープ状であって、籾が発芽出根する際の芽及び根の成長を妨げない複数の間隙をそれぞれ有する表面材と裏面材とにより、それぞれ籾の充填された籾袋が長手方向に並んで形成された籾袋テープを製造する籾袋テープ製造過程と、少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔が設けられた紙製のシートの裏面に、前記出芽孔を覆うように籾袋を接着する籾袋接着過程とからなることを特徴とする水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項22】 前記籾袋テープ製造過程の後には、前記籾袋テープを巻き取る籾袋テープ巻取過程を含む請求項21に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項23】 前記籾袋接着過程は、前記シートの裏面に前記籾袋テープのままで前記籾袋を接着する請求項21に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項24】 前記籾袋接着過程は、前記シートの裏面に前記籾袋テープから切り離して前記籾袋を接着する請求項21に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項25】 前記籾袋製造過程は、前記表面材と前記裏面材とを、それぞれの一方の面が近接して対向するように配置する合流過程と、籾充填方向である一方の側方側が開口した複数のポケットを前記表面材と前記裏面材との間に長手方向に並んで形成するように前記表面材と前記裏面材との対向する面同士の一部をシールする底部シール過程と、前記籾充填方向から前記各ポケットに籾を充填する籾充填過程と、前記表面材と前記裏面材との間の前記各ポケットの開口を封止して籾の充填された複数の前記籾袋を長手方向に並んで形成するように前記表面材と前記裏面材との対向する面同士の一部をシールする口部シール過程とを含み、前記籾袋接着過程は、前記シートの籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔をそれぞれ設ける孔空け過程と、前記籾袋テープの先端部分を前記出芽孔の近くの前記シートの裏面に接着する先端接着過程と、前記籾袋テープの先端から先頭の籾袋と次の籾袋との間を切断して前記籾袋テープから前記先頭の籾袋を切り離す切断過程と、前記籾袋が前記出芽孔を覆うように、前記出芽孔の周辺において前記シートの裏面に先端部分が接着された前記籾袋の周縁部分を前記シートの裏面に接着する残部接着過程とを含む請求項24に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項26】 前記表面材と裏面材とは一体の不織布テープであって、前記合流過程においては前記不織布テープの中心軸線に沿って前記不織布テープを折り畳む請求項25に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項27】 前記表面材は複数の小孔の穿設された紙テープであり、前記裏面材は前記紙テープと略同じ幅を有する不織布テープであって、前記合流過程においては前記紙テープと前記不織布テープとをそれぞれの側縁が一致するように重畳する請求項25に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項28】 前記不織布テープはホットメルト接着剤の被覆を有しており、前記底部シール過程及び前記口部シール過程においてはそれぞれ前記ポケットを形成し、または前記ポケットの開口を封止するように前記不織布テープの一部をそれぞれ加熱する請求項26または27に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項29】 前記表面材と裏面材とは複数の小孔の穿設された一体の紙テープであって、前記合流過程においては前記紙テープの中心軸線に沿って前記紙テープを折り畳む請求項25に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項30】 前記籾充填過程における前記表面材と前記裏面材とは、各面が略垂直の姿勢であり、前記籾充填方向は上方から下方に向かう方向である請求項25に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項31】 前記孔空け過程と前記先端接着過程との間には、前記出芽孔の周囲の前記シートの裏面にホットメルト接着剤を塗布する接着剤塗布過程を含み、前記先端接着過程及び前記残部接着過程においてはそれぞれ前記籾袋テープの先端部分を前記シートの裏面に接着し、または前記出芽孔を覆うように前記籾袋の周縁部分を前記シートの裏面に接着するように前記シートの裏面の一部をそれぞれ加熱する請求項25に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項32】 不織布製の連続するテープを軸線に沿って丸めて籾を包んだ籾袋を、少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔が設けられた紙製のシートの裏面に、前記籾袋の籾が前記出芽孔と重畳するように籾袋を接着することを特徴とする水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項33】 前記籾袋には、略一定の間隔で一粒ずつ籾が充填されており、前記出芽孔は、長手方向に略連続して前記シートに設けられた略連続する出芽孔であって、前記連続する籾袋を前記略連続する出芽孔に沿って接着する請求項32に記載の水稲マルチ栽培紙シート。
【請求項34】 前記出芽孔は、前記シートの長手方向に沿って略連続して形成された切れ目である請求項33に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項35】 前記籾袋には、略一定の間隔で複数の籾が長手方向に一列に並んで充填されており、前記出芽孔は、少なくとも前記籾袋の籾を充填した間隔と同じ間隔で設けられており、前記シートの裏面に、前記籾袋を籾が前記出芽孔と重畳するように接着する請求項34に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項36】 前記籾袋の籾を充填した部分を検知して、籾を充填していない部分が接する前記シートの裏面に接着剤を塗布する接着剤塗布過程と、前記籾袋と前記シートの裏面とを接着する接着過程と、前記接着剤を冷却する冷却過程とを含んでなる請求項35に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項37】 紙製のシートに少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔を穿設する穿設過程と、前記シートの裏面に、籾が発芽する際の芽の成長を妨げない複数の間隙を有する表面材を前記出芽孔を覆うように配置する表面材配置過程と、前記表面材の裏面の少なくとも前記出芽孔に重畳する位置に籾を配置する籾配置過程と、前記シートの裏面及び/または前記表面材の裏面に、籾が出根する際の根の成長を妨げない複数の間隙を有する裏面材を前記籾を覆うように接着する裏面材接着過程とを含むことを特徴とする水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項38】 前記表面材及び裏面材は、それぞれ連続するテープ状である請求項37に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項39】 前記表面材及び裏面材は、それぞれ少なくとも前記出芽孔を覆う位置に複数の小孔群の穿設された紙製である請求項37に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項40】 前記表面材配置過程と前記籾配置過程との間に、少なくとも前記籾を配置する位置の前記表面材の裏面に水溶性の接着剤を塗布する水溶性接着剤塗布過程を含む請求項37に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項41】 前記裏面材には、ホットメルト接着剤の被覆が施されており、前記裏面材接着過程においてはヒートシールにより接着がなされる請求項37に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項42】 前記出芽孔は丸孔である請求項37に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項43】 紙製のシートの少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに籾が通過することのない出芽孔を穿設する穿設過程と、前記シートの裏面の、少なくとも前記出芽孔に重畳する位置に籾を配置する籾配置過程と、前記シートの裏面に、前記籾を覆うように、籾が出根する際の根の成長を妨げない複数の間隙を有する籾カバーを接着する籾カバー接着過程とを含むことを特徴とする水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項44】 前記出芽孔は、前記シートの籾を配置すべき箇所のみに穿設された複数の小さな丸孔群である請求項43に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項45】 前記穿設過程以前に前記シートを長手方向の折線に沿って折り曲げる折り曲げ過程と、前記穿設過程と前記籾配置過程との間に折り曲げられた前記シートを折り戻す折り戻し過程とを含み、前記穿設過程においては折り曲げられたシートの重畳部分を穿設して2群以上を同時に形成する請求項44に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項46】 前記穿設過程と前記籾配置過程との間に、少なくとも前記籾を配置する位置の前記シートの裏面に水溶性の接着剤を塗布する水溶性接着剤塗布過程を含む請求項43に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【請求項47】 前記籾カバーには、ホットメルト接着剤の被覆が施されており、前記籾カバー接着過程においてはヒートシールにより接着がなされる請求項43に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水稲のマルチ栽培に利用するための水稲マルチ栽培紙シートに関し、特に、実用可能で製造過程が自動化しやすい水稲マルチ栽培紙シート及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】水稲の栽培において、紙シートを水田の表面に被覆しておき、紙シートに孔を空けると同時に各穴に苗を植え付けるマルチ栽培法が行われている。このような水稲マルチ栽培については例えば特開平5−276839に開示されており、有機米や無農薬米の栽培に有利で、除草のための労力が軽減され、農薬も少なくて済むという優れた雑草繁茂抑制効果が既に実証されている。
【0003】大きなメリットを有する水稲マルチ栽培法であるが、紙シートを水田の表面に被覆して苗の植え付けを行うために、特開平5−276839に示されているような特殊な田植え機を必要とし、また田植え機への紙シートロールの取り付けに労力を要するなどの事情から、従来の栽培方法よりも栽培コストが高くなるという難点があり、大規模な普及の妨げとなっている。これらの難点を取り除くことを目的に、苗代を使わずに水田に籾を直接播種する「水田直播方式マルチ栽培」の試験が既に行われている。水田直播方式マルチ栽培によれば、従来の通常の栽培における水田への植え付け以前の苗代開設や苗移植の作業が省けるので、紙シートを水田の表面に被覆するための機械を必要とするものの、その機械は特開平5−276839に示されているような複雑なものではなく安価に製造できることとあいまって、マルチ栽培が実用可能なコスト範囲に入るものと推測されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】直播方式のマルチ栽培は、従来より野菜や果実の畑作において、孔をあけた黒いビニールシートで畝を被覆し、その孔に種子を落とす方法で行なわれている。しかしながら、水稲においては籾がシートから脱落すると、流されて移動してしまい、シートに覆われて発芽できず、あるいは水田から流出してしまう。従って籾をシートに固定する必要があるが、一般的な水溶性の接着剤は利用できず、また非水溶性の接着剤を使っても、胚乳部分が接着剤で覆われてしまい、発芽の確率が芳しくなく、加えて畑に比べて作付け面積の単位が大きい水田では、長いシートを敷いている間に籾がシートから脱落しやすい。従って、試験段階ではシートに非水溶性の接着剤で胚乳部分を避けて籾を一粒づつ貼り付け、狭い実験用水田に人手で被覆することで十分だったが、実用段階ではこのような構成はコストや労力の面から実施不可能である。また、ビニールシートは公害の原因になるので、シートはできれば40日程度で適当に自然分解し、しかも経済性を考慮すると安価な材料製であることが望ましい。他の材料も同じく水田を汚染することなく、できれば自然分解し、また籾の発芽の障害とならないものを使用することが望ましい。
【0005】よって本発明の主たる目的は、水田に被覆しても籾が脱落せず、かつ製造過程を自動化しやすい構造の水稲マルチ栽培紙シート、及びその製造方法を提供することにある。
【0006】本発明の他の目的は、適当に自然分解しやすく、しかも安価な紙を使用した水稲マルチ栽培紙シートを提供することにある。
【0007】本発明のさらに他の目的は、シート以外の材料も自然分解しやすく、籾の発芽出根を妨げることのない水稲マルチ栽培紙シートを提供することにある。
【0008】本発明のさらに他の目的は、籾の種類、シートの分解時期等の品質にバリエーションを加えやすい水稲マルチ栽培紙シート及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、複数箇所に籾が配置されており、水田の表面を被覆する水稲マルチ栽培紙シートにおいて、紙製であって、少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔が設けられたシートと、中に充填された籾が発芽出根する際の芽及び根の成長を妨げない複数の間隙を有する材料で構成され、前記出芽孔に籾が充填された部分が重畳するように前記シートの裏面に接着された連続する籾袋とから水稲マルチ栽培紙シートを構成した。
【0010】請求項1に記載の発明に係る水稲マルチ栽培紙シートによると、シートを水田の表面に被覆すると、シートの裏面に接着された連続する籾袋の中に充填された籾が発芽出根し、出芽孔を通してシート上方に芽が伸び、かつシート下方に根が伸び、稲の株が発生する水稲マルチ栽培を行うことができる。籾はシートに直接貼り付けるのではなく、連続する籾袋の中に充填され、連続する籾袋をシートに接着するようにしたので、水稲マルチ栽培紙シートを水田の面に被覆する作業中に籾が脱落するようなこともない。このような水稲マルチ栽培によると、水田の他の部分は紙シートに覆われているので雑草の成育が阻害され、また病虫害や鳥害をも避けられるなどの効果があることが立証されている。
【0011】シートは適当な時間が経過すると(通常40日程度、田植え時期や地温等に応じて調節されたものが選択できる)、自然分解し、紙なので水田を汚染しない。このシートは、安価で分解しやすいことを考慮すると、請求項2に記載のように好ましくは再生紙製である。再生紙は、例えば段ボール用中芯材に使用されるものと同質の故紙100パーセント無漂白のものである。
【0012】連続する籾袋は、中に充填された籾が発芽出根する際の芽及び根の成長を妨げない複数の間隙を有する材料で構成され、例えば粗い網目を有するガーゼなどの編物や織物、粗い不織布、籾が脱落しない程度の複数の小孔が空けられた紙などが好ましく、また水田を汚染しないように、自然分解するものが望ましい。典型的には請求項4、10に記載のように連続する籾袋はセルロースを主原料とする不織布製であり、あるいは請求項11に記載のように紙製である。また連続する籾袋は、請求項3に記載のように不織布製のテープを籾を包むように軸線に沿って丸めた紐状であり、あるいは請求項9に記載のように籾の充填されている部分と籾の充填されていない部分とをそれぞれ交互に設けてなる平板なテープ状である。紐状の籾袋の場合、請求項5に記載のように略一定の間隔で籾を一粒ずつ充填しても、請求項8に記載のように略一定の間隔で複数の籾を長手方向に一列に並べて充填してもよい。この場合、一粒ずつ充填する場合の方が間隔が短いことはいうまでもなく、例えば一粒づつ充填する場合には3cm間隔、複数(5粒)並べて充填する場合には15cm間隔である。いずれの場合にも、連続する籾袋は籾の充填されていない部分でシートの裏面に接着するようにすると、接着剤が籾に付着して発芽率に影響することがない。籾は籾の成育や刈り取りや田の手入れ等に適した間隔で配置されていることが好ましく、例えば隣り合う条の間が30cmであるが、これに限定されるものではない。但し条は直線になるように揃えた方が刈り取り時等に有利である。籾の成育や収穫量に関しては、例えば条間隔30cm、株間15cmとして複数の籾が播種された場合、そのうち最低1個の籾が出芽すれば足りると言われている。単位面積あたりの籾の数は、籾の発芽率(通常60%以上)などに応じて調整される。
【0013】出芽孔は、シートに形成された孔・切れ目・裂け目であり、例えば籾が一粒づつ充填された紐状の籾袋の場合には請求項6に記載のように長手方向に略連続してシートに形成された切れ目であり、さらに好ましくは請求項7に記載のように所定の間隔を空けて平行に2列形成された切れ目である。このような切れ目によると、製造工程が簡単で作業能率が向上するとともに、ほとんどの籾が切れ目に重畳するので発芽率も良好である。複数の籾が間隔を空けて一列に充填された紐状の籾袋の場合にも、出芽孔は切れ目とすることが好ましい。出芽孔を切れ目とすると、上空を飛ぶ鳥から籾が見えにくいため、鳥害に対して有効である。平板なテープ状の連続する籾袋の場合には請求項13に記載のように出芽孔は丸孔であり、例えば丸孔は直径27mm、条ごとの間隔が15cm、条の間の間隔が30cmで穿設される。孔の形状を円形としたのは、打ち抜き作業が容易なためである。その他、出芽孔の形状やサイズや間隔は、籾の発芽能力、紙の強度、雑草の発生の度合い、泥の上がりやすさなどを考慮して調整される。出芽孔の形状は例えば方形の孔、十字形の切れ目、一本の縦の切れ目に複数の横の切れ目を交差させたもの等さまざまである。
【0014】テープ状の籾袋は、籾が充填されている部分を出芽穴に重畳させ、籾の充填されていない部分をシートに接着すると、接着作業が簡単であり、しかも接着剤等により籾が悪影響を受けることがない。短い間隔で籾を充填した紐状の籾袋の場合には接着剤の影響を受けやすいが、上述のように条間隔30cm、株間15cmの場合最低1個の籾が発芽すれば足りるとされているから、籾袋の製造工程や接着作業の容易さを考慮すると、接着剤による悪影響を補うだけの利点を得られる。但し、前述のように出芽孔は長手方向に略連続して設けられた切れ目であり、どの籾が出芽しても芽を伸ばすことができるようにしておくことが好ましく、またこれにより条が直線状に揃った株が形成される。この場合、籾を配置すべき箇所は、条をなす直線に沿った不特定の箇所になる。
【0015】請求項14に記載の発明は、複数箇所に籾が配置されており、水田の表面を被覆する水稲のマルチ栽培紙シートにおいて、紙製であって、少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔が設けられたシートと、中に充填された籾が出根する際の根の成長を妨げない複数の間隙を有するシート状の材料で構成され、前記出芽孔に重畳するように前記シートの裏面に接着され、前記シートとの間に籾が充填される籾カバーとから水稲マルチ栽培紙シートを構成した。
【0016】請求項14に記載の発明に係る水稲マルチ栽培紙シートによると、シートを水田の表面に被覆すると、シートの裏面に接着された籾カバーとシートとの間に充填された籾が発芽出根し、出芽孔を通してシート上方に芽が伸び、籾カバーを通して下方に根が伸び、出芽孔、すなわち所定の間隔を空けた複数箇所に稲の株が発生する水稲マルチ栽培を行うことができる。籾はシートに直接貼り付けるのではなく、シート裏面に接着された籾カバーとシートとの間に充填したので、水稲マルチ栽培紙シートを水田の面に被覆する作業中に籾が脱落するようなこともない。ここで所定の間隔とは、刈り取りや田の手入れ等に適した間隔であり、例えば隣り合う条の間が30cmで、一つの条の隣り合う株の間が15cmである。籾袋の中に充填されている籾の数は限定されないが、通常は一つの出芽孔に対して複数であり、典型的には5粒である。このような水稲マルチ栽培によると、水田の他の部分は紙シートに覆われているので雑草の成育が阻害され、また病虫害や鳥害をも避けられるなどの効果があることが立証されている。
【0017】シートは適当な時間が経過すると(通常40日程度、田植え時期や地温等に応じて調節されたものが選択できる)、自然分解し、紙なので水田を汚染しない。このシートは、安価で分解しやすいことを考慮すると、請求項15に記載のように好ましくは再生紙製である。再生紙は例えば段ボール用中芯材に使用されるものと同質の故紙100パーセント無漂白のものである。
【0018】籾カバーは、充填された籾が出根する際の根の成長を妨げないように、複数の間隙を有する材料で構成されている。例えば、粗い網目を有するガーゼなどの編物や織物、粗い不織布、複数の小孔が空けられた紙などが好ましく、また水田を汚染しない。典型的には籾カバーは、請求項16に記載のようにセルロースを主原料とする不織布製であり、あるいは請求項17に記載のように複数の小孔が空けられた紙製である。
【0019】出芽孔は、シートに形成された孔・切れ目・裂け目であり、好ましくは請求項18に記載のように複数の小さな丸孔群で、例えば直径2.8mm程度の小さな丸孔を直径約27mm円形の範囲に35〜50個程度、典型的には37個を約1mm間隔で並べた丸孔群である。しかし出芽孔の形状は特に限定するものではなく、籾の出芽を妨げることなく、かつ充填された籾が脱落しないような大きさ・形状であればよい。請求項19に記載のように、複数の小さな丸孔群は、シート長手方向に延びる折線に沿って折り曲げ、重畳部分を穿設して2群以上を同時に形成する。通常、広幅の紙にこのような複数の小さな丸孔群を空けることは、孔空け装置の上下の噛み合わせが微妙で、かつ針(直径約2.8mm)の数が多く狂いやすいので、広幅シートの側縁から離れた箇所での穿設が非常に困難であった。そこでシートを折り曲げて、側縁からの距離を短くして2群以上を同時に形成することとした。典型的には、130cm幅のシートの両側から35cm内側の折線に沿って折り曲げ、折線から15cmの箇所に丸孔群を2層一度に空け、シートを広げると、30cm間隔で4列の丸孔群を形成することができる。籾カバーは、請求項20に記載のように連続するものでも、各出芽孔ごとに一つ一つ切り離されたものでもよいが、連続するものの方が製造工程を単純にできる。
【0020】請求項21に記載の発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法は、それぞれ連続するテープ状であって、籾が発芽出根する際の芽及び根の成長を妨げない複数の間隙をそれぞれ有する表面材と裏面材とにより、それぞれ籾の充填された籾袋が長手方向に並んで形成された籾袋テープを製造する籾袋テープ製造過程と、少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔が設けられた紙製のシートの裏面に、前記出芽孔を覆うように籾袋を接着する籾袋接着過程とからなる。
【0021】以上のような水稲マルチ栽培紙シートの製造方法によると複数箇所に所定の間隔を空けて籾が配置された水稲マルチ栽培紙シートが自動的に製造可能である。また、籾袋テープの製造過程と籾袋接着過程とはほぼ一連のラインにして一度に製造するようにしてもよく、別々のラインにして製造時期や製造場所を変えて製造してもよい。従って、米作農家個々の事情やその年の気候等に応じて、籾の品種や紙の分解時期などにバリエーションを加えやすい。
【0022】籾袋テープの製造過程と籾袋接着過程とを別々のラインとした場合、請求項22に記載のように、籾袋テープ製造過程と籾袋接着過程との間には、籾袋テープを巻き取ってロール状にする籾袋テープ巻取過程を挿入して、籾袋テープの搬送や保管に便利な状態にすることができる。請求項23、24に記載のように、籾袋テープはそのままシートに接着してもよく、籾袋テープから籾袋を切り離して接着してもよい。
【0023】請求項25に記載の発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法においては、籾袋テープ製造過程は、それぞれ連続するテープ状であって、籾が発芽出根する際の芽及び根の成長を妨げない複数の間隙をそれぞれ有する表面材と裏面材とを、それぞれの一方の面が近接して対向するように配置する合流過程と、籾充填方向である一方の側方側が開口した複数のポケットを表面材と裏面材との間に長手方向に並んで形成するように表面材と裏面材との対向する面同士の一部をシールする底部シール過程と、籾充填方向から各ポケットに籾を充填する籾充填過程と、表面材と裏面材との間の各ポケットの開口を封止して籾の充填された複数の籾袋を長手方向に並んで形成するように表面材と裏面材との対向する面同士の一部をシールする口部シール過程とを含む。
【0024】まず合流過程においては表面材と裏面材それぞれの一方の面を近接して対向させる。次に底部シール過程において、表面材と裏面材との対向する面同士の一部をシールして長手方向に並んだ複数のポケットを形成する。ポケットの形状は、例えば弦部分が開口した半円や120度の円弧状、あるいはコの字形である。これらの形状のポケットは、例えば表面材と裏面材との少なくとも一方の対向する面にホットメルト接着剤の層を設けておき、円弧やコの字の形状にヒートシールすることにより形成される。各ポケットの開口は、テープ状の表面材と裏面材との一方の側方側を向いている。次に籾充填過程において、籾がポケットに充填される。籾充填は、一方の側方側からポケットの開口を通じてなされる。充填される籾の数は、例えば5個である。最後に口部シール過程において籾が充填された各ポケットの開口が封止される。例えばポケットが円弧状であれば残りの円弧をシールして円形の袋を形成する。ポケットがコの字形であれば袋は方形である。これにより、長手方向に複数並んだ籾袋を有する籾袋テープが構成される。
【0025】籾袋接着過程は、紙製のシートの籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔をそれぞれ設ける孔空け過程と、籾袋テープ製造過程により得られた籾袋テープの先端部分を出芽孔の近くのシートの面に接着する先端接着過程と、籾袋テープの先端から先頭の籾袋と次の籾袋との間を切断して籾袋テープから先頭の籾袋を切り離す切断過程と、籾袋が出芽孔を覆うように、出芽孔の周辺においてシートの面に先端部分が接着された籾袋の周縁部分を前記シートの面に接着する残部接着過程とを含む。
【0026】まず穿設過程において、紙製のシートの籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔がそれぞれ設けられる。次に先端接着過程において、籾袋テープの先端部分が出芽孔の近くのシートの面に接着される。次に切断過程において、先頭の籾袋と次の籾袋との間が切断され、籾袋テープから先頭の籾袋が切り離される。最後に残部接着過程において、先端だけが接着されている籾袋の周縁部分が出芽孔の周辺のシート面に接着される。これにより、各籾袋が各出芽孔を覆うように接着された水稲マルチ栽培紙シートが製造される。
【0027】表面材と裏面材とを一体の不織布テープとした場合には、請求項26に記載のように合流過程においては不織布テープの中心軸線に沿って不織布テープが折り畳まれる。このように表面材と裏面材とを一体とすると、構成部材の数が少なくて済み、また中心軸線に沿って折り畳むだけで合流させることができる。表面材を複数の小孔の穿設された紙テープとし、裏面材は紙テープと同じ幅サイズを有する不織布テープとした場合には、請求項27に記載のように合流過程においては紙テープと不織布テープとをそれぞれの側縁が一致するように重畳する。請求項29に記載のように、一体の紙テープを請求項26と同様に合流させることもできる。材料を紙にすることにより、先端接着過程等における籾袋テープの取り扱いが容易になる。請求項28に記載のように、不織布テープがホットメルト接着剤の被覆を有している場合、底部シール過程及び口部シール過程においてはそれぞれポケットを形成し、またはポケットの開口を封止するように不織布テープの一部をそれぞれ加熱することにより容易に加工可能である。
【0028】また、請求項30に記載のように、籾充填過程における表面材と裏面材とは、各面が略垂直の姿勢であり、籾充填方向は上方から下方に向かう方向であるようにすると、籾が充填しやすく、かつ充填した籾がポケットからこぼれ落ちることがない。さらに、請求項31に記載のように、穿設過程と先端接着過程との間には、出芽孔の周囲のシートの面にホットメルト接着剤を塗布する接着剤塗布過程を含み、先端接着過程及び残部接着過程においては、まず籾袋テープの先端部分をシートの面に接着し、次に出芽孔を覆うように籾袋の周縁部分をシートの面に接着するようにすると、容易に籾袋をシートに接着することができる。
【0029】請求項32に記載の発明は、不織布製の連続するテープを軸線に沿って丸めて籾を包んだ籾袋を、少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔が設けられた紙製のシートの裏面に、前記籾袋の籾が前記出芽孔と重畳するように籾袋を接着して水稲マルチ栽培紙シートの製造方法を構成した。
【0030】籾袋には、請求項33に記載のように略一定の間隔で一粒づつ籾が充填されていても、請求項35に記載のように略一定の間隔で複数の籾が長手方向に一列に並んで充填されていてもよく、一粒ずつの場合には出芽孔は、シートの長手方向に略連続して設けられており、好ましくは連続して形成された切れ目である。複数の籾が充填されている場合には、少なくとも籾を充填した間隔と同じ間隔で出芽孔が設けられている。また、請求項36に記載の発明のように、籾袋の籾を充填した部分が出芽孔に重畳し、かつ籾を充填しない部分でシートに接着するために、籾袋の籾を充填した部分を検知して、籾を充填していない部分が接するシートの裏面に接着剤を塗布する接着剤塗布過程と、籾袋とシートの裏面を接着する接着過程と、接着剤を冷却する冷却過程を含むことができる。
【0031】請求項37に記載の発明は、紙製のシートに少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに出芽孔を穿設する穿設過程と、前記シートの裏面に、籾が発芽する際の芽の成長を妨げない複数の間隙を有する表面材を前記出芽孔を覆うように配置する表面材配置過程と、前記表面材の裏面の少なくとも前記出芽孔に重畳する位置に籾を配置する籾配置過程と、前記シートの裏面及び/または前記表面材の裏面に、裏面材を前記籾を覆うように接着する裏面材接着過程とを含んで水稲マルチ栽培紙シートの製造方法を構成した。
【0032】請求項37に記載の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法によると、紙製のシートの裏面に表面材と裏面材とからなり、籾が充填された籾袋が接着された水稲マルチ栽培紙シートを製造することができる。表面材及び裏面材は、請求項38に記載のようにそれぞれ連続するテープ状にすると表面材配置過程及び裏面材接着過程を単純にすることができる。表面材は籾が発芽する際の芽の成長を妨げない複数の間隙を有し、裏面材は籾が出根する際の根の成長を妨げない複数の間隙を有する。表面材及び裏面材はそれぞれ典型的には、請求項39に記載のように少なくとも出芽孔を覆う位置に複数の小孔群の穿設された紙製であり、さらに製造過程を単純化するためには、表面材及び裏面材の全体に小孔が穿設されていてもよい。小孔は例えば直径2.8mmである。
【0033】また請求項40に記載のように、表面材配置過程と籾配置過程との間に少なくとも籾を配置する位置の表面材の裏面に水溶性の接着剤を塗布することにより、籾が所定の位置から脱落しないようにすることが好ましい。接着剤は水溶性であるから、田に水稲マルチ栽培紙シートを敷設した後は溶け、籾の発芽出根に悪影響を及ぼすことはない。裏面材の接着方法は限定されないが、最も単純にはヒートシールであり、そのため裏面材には請求項41に記載のように予めホットメルト接着剤の被覆を施しておくことが好ましい。出芽孔の形状は、打ち抜き作業のしやすさを考慮すると請求項42に記載のように丸孔であり、例えば直径27mmの丸孔である。
【0034】請求項43に記載の発明は、紙製のシートの少なくとも籾を配置すべき箇所それぞれに籾が通過することのない出芽孔を穿設する穿設過程と、前記シートの裏面の、少なくとも前記出芽孔に重畳する位置に籾を配置する籾配置過程と、前記シートの裏面に、前記籾を覆うように、籾が出根する際の根の成長を妨げない複数の間隙を有する籾カバーを接着する籾カバー接着過程とを含んで水稲マルチ栽培紙シートの製造方法を構成した。
【0035】請求項43に記載の発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法によると、紙製のシートの出芽孔が穿設された部分と籾カバーとの間に籾が充填された水稲マルチ栽培紙シートを製造することができる。出芽孔は、請求項44に記載のようにシートの籾を配置すべき箇所にのみ穿設された複数の小さな丸孔群とすることができ、丸孔の直径は例えば2.8mmである。このような丸孔群は、請求項45に記載のように穿設の前に折り曲げ過程において前記シートを長手方向の折線に沿って折り曲げ、穿設過程においては折り曲げられたシートの重畳部分を穿設して2群以上を同時に形成し、その後に折り戻し過程においてシートを折り戻すようにすると穿設が容易で設備も簡単になる。また請求項46に記載のように穿設過程と籾配置過程との間に、少なくとも籾を配置する位置のシートの裏面に水溶性の接着剤を塗布しておくと配置された籾が脱落することがない。籾カバーの接着は、請求項47に記載のように籾カバーにホットメルト接着剤の被覆を施しておき、ヒートシールにより接着すると簡単である。
【0036】
【発明の実施の形態】以下図示の実施の形態について説明する。
【0037】[第1の水稲マルチ栽培紙シートの実施の形態]図1(a)は、図2に示した本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法の第1の実施の形態に従って製造された水稲マルチ栽培紙シートの一部を示す平面図であり、図1(b)(c)はそれぞれ図1(a)の水稲マルチ栽培紙シートのさらに一部を拡大した平面図、及びc−c断面図である。図1(c)は説明のために各部材の幅を厚くして示してある。
【0038】各図において、シート1は再生紙製で、段ボール用中芯材に利用されるものと同質の故紙100パーセント無漂白のものであって、図視上下方向に連続する幅160cmのロール紙である。シート1を構成する再生紙は、水田の面に被覆されて水に浸けられた後、約40日で自然分解する。分解までの期間は耐水剤等による加工などにより調整可能で、地域や年ごとの地温の変化や品種に対応して分解までの期間を選択できる。シート1を構成する再生紙は、水に浮かず、また水がなくなった時に籾が乾かないように、親水性である方が好ましい。
【0039】シート1には、籾が出芽するための出芽孔として、左右方向に5列に並んで上下方向にほぼ連続する2本ずつの平行な切れ目11が設けられている。切れ目11の長さはそれぞれ7cm、各列の間隔はそれぞれ30cm、同列の切れ目11の間隔は1.4cmである。このような長さ及び間隔の2本の平行な切れ目11である出芽孔は、発芽のしやすさ、鳥害の受けにくさ、泥の上がりにくさ、雑草の発生の度合い、シート1の強度等を考慮して決定されている。またこのような切れ目11に沿って30cm間隔の直線状に稲が発生することにより、稲の手入れや刈り取りが容易である。
【0040】籾袋2は、セルロースを主原料とする目の粗い不織布テープを籾Rを包むように軸線に沿って丸めるようにして形成された紐状である。充填されている籾Rが発芽する際には、芽及び根が不織布の目を通って伸びることができる。またセルロースを主原料としているので自然分解しやすく、田を汚染したり刈り取り機にからみついたりすることもない。籾Rは一粒ずつ3cm間隔で充填されている。この間隔は調整可能であるが、籾が切れ目11のない部分に重畳したり籾に接着剤が付着したりすることにより、通常の発芽率(60%程度)よりも発芽率が悪化する可能性があり、これを考慮して籾Rの密度が決定される。籾袋2はホットメルト接着剤によりシート1の裏面に接着されるが、ホットメルト接着剤はシート1の裏面の切れ目11の間に塗布されて接着される。ホットメルト接着剤は非水溶性であり、マルチ栽培紙シートが水田の水に浸されても籾袋2がシート1から脱落することはないが、生分解性であり、水中あるいは土中での接着力が20日程度維持できるものである。このような籾袋2は東京都目黒区の日本プラントシーダー株式会社より入手可能である。
【0041】このような水稲マルチ栽培紙シートは、水田の面に被覆される。その際、シートに直接籾を貼付したものに比べて、籾が脱落することがなく、各切れ目11の列に沿って発芽する。他の部分はシートに覆われているので雑草の繁茂が抑制され、よって除草剤が不要もしくは最小限で済む。再生紙製のシート1は40日程度で自然分解するので水田を汚染することがなく、土壌に還元される。籾袋2もセルロースを主原料とするので、シート1よりも遅いが自然分解される。分解されずに残っていたとしても、土壌に悪影響を与えたり刈り取り器に絡みついたりすることはない。
【0042】[第1の水稲マルチ栽培紙シートの実施の形態の製造装置]図2は、本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの第1の実施の形態が適用された図1に示した水稲マルチ栽培紙シートの製造装置を示す。
【0043】図2において籾袋テープ製造装置は、連続する紐状の籾袋2が巻かれているボビン7と、ボビン7から供給された籾袋2を搬送するコンベア81と、図示しないロールから供給されたシート1に切れ目11を形成するタテメス83と、シート1の裏面にホットメルト接着剤Bを塗布するためのホットメルト塗布装置84と、シート1と籾袋2とを合流させて相互に接着する接着ローラ85と、ホットメルト接着剤Bを冷却するための冷風吹き付け器86及び冷却ローラ87、88とを含む。ボビン7やタテメス83は奥行き方向に5連に設けられている。その他のガイドローラやガイドについては説明を省略する。
【0044】このような装置において、シート1はまずタテメス83により、図1に示したようなそれぞれ2本の平行な切れ目11を5列、連続して形成される。ホットメルト塗布装置84はタテメス83と連動しており、切れ目11の途切れた部分にホットメルト接着剤Bを塗布する。シート1と籾袋2との合流においては、両者は特に同調されることなく、接着ローラ85により略連続する5列の切れ目11に沿って5本の籾袋2がそれぞれ接着される。このとき、籾Rが切れ目11のない部分に重畳したりホットメルト接着剤Bに籾が接着したりする可能性があり、その籾は発芽しない可能性があるが、上述のように籾は発芽しないものも計算に含んで一定の間隔(3cm間隔)で配置されているので、製造工程の単純さ及び作業能率を考慮すると、経済的により有利である。また連続する籾袋2を連続的にシート1に貼り付けるので、独立した籾袋を接着する場合に比較して、シート1及び籾袋2の進行を止めることなく製造することができ、生産効率が高い。
【0045】[第2の水稲マルチ栽培紙シートの実施の形態]図3(a)は、図4に示した本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法の第1の実施の形態に従って製造された水稲マルチ栽培紙シートの一部を示す平面図であり、図3(b)(c)はそれぞれ図3(a)の水稲マルチ栽培紙シートのさらに一部を拡大した平面図、及びc−c断面図である。図3(c)は説明のために各部材の幅を厚くして示してある。図3において、図1に示した部材と同様の部材には、同じ符号を付して示してある。
【0046】シート1には、籾が出芽するための出芽孔として、左右方向に5列に並んで上下方向に間隔を置いて2本ずつの平行な切れ目11が設けられている。切れ目11の長さはそれぞれ10cm、各列の間隔はそれぞれ30cm、同列の切れ目11の間隔は5cmである。
【0047】籾袋2はセルロースを主原料とする目の粗い不織布テープを籾Rを包むように軸線に沿って丸めるようにして形成された紐状で、籾Rが発芽する際には、芽及び根が不織布の目を通って伸びることができ、自然分解しやすく、田を汚染したり刈り取り機にからみついたりすることもない。籾Rは5粒ずつ、長手方向に一列に並べて充填されている。5粒の籾Rは約4cmの範囲内に一列にまとめられており、5粒の籾群の中心と上下方向に隣り合う籾群の中心との間隔は、15cmである。籾袋2を接着するためのホットメルト接着剤はシート1の裏面の切れ目11の間に塗布されて接着される。ホットメルト接着剤は非水溶性であるのは図1の実施の態様と同様である。この籾袋2も東京都目黒区の日本プラントシーダー株式会社より入手可能である。
【0048】[第2の水稲マルチ栽培紙シートの実施の形態の製造装置]図4は、本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの第2の実施の形態が適用された図3に示した水稲マルチ栽培紙シートの製造装置を示す。図4において、図2に示した部材と同様の部材には、同じ符号を付して示してある。
【0049】籾袋テープ製造装置は、連続する紐状の籾袋2が巻かれているボビン7と、コンベア81と、タテメス83と、ホットメルト塗布装置84と、接着ローラ85と、冷風吹き付け器86及び冷却ローラ87、88とを含み、さらに籾袋2の籾Rの位置を検知するリミットスイッチ82を備える。タテメス83はリミットスイッチ82からの信号を受け取り、リミットスイッチ82により検知される籾Rの充填された部分に重畳するように切れ目11を形成し、さらにホットメルト塗布装置84はタテメス83と連動して、切れ目11の途切れた部分にホットメルト接着剤Bを塗布する。これにより、籾Rの充填された部分は切れ目11に重畳するように接着され、しかもホットメルト接着剤Bが籾に付着して発芽出根に悪影響を与えることがない。
【0050】[第3の水稲マルチ栽培紙シートの実施の形態]図5(a)は、図6に示した本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法の第3の実施の形態に従って製造された水稲マルチ栽培紙シートの一部を示す平面図であり、図5(b)(c)はそれぞれ図5(a)の水稲マルチ栽培紙シートのさらに一部を拡大した平面図、及びc−c断面図である。図5(c)は説明のために各部材の幅を厚くして示してある。図5において、図1に示した部材と同様の部材には、同じ符号を付して示してある。
【0051】幅160cmの再生紙製であるシート1には、籾Rが出芽するための出芽孔として、左右方向に5列に並んで上下方向に間隔を置いて丸孔11が穿設されている。丸孔11の直径はそれぞれ27mm、各列の間隔はそれぞれ30cm、同列の丸孔11の間隔は15cmである。籾袋2は、いずれもセルロースを主原料とする目の粗い不織布テープである表面材21と裏面材22とを相互に接着し、間に籾Rを充填した連続するテープ状の籾袋で、籾Rが発芽する際には、芽及び根が不織布の目を通って伸びることができる。籾Rは5粒ずつ充填されている。表面材21及び裏面材22には、それぞれホットメルト接着剤が被覆されている。表面材21及び裏面材22は、全体に小さな丸孔(例えば直径2.8mm)が多数空けられた紙テープで構成してもよい。
【0052】[第3の水稲マルチ栽培紙シートの実施の形態の製造装置]図6は、本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの第3の実施の形態が適用された図5に示した水稲マルチ栽培紙シートの製造装置を示す。籾袋テープ製造装置はシート1の巻かれたロールが設置される原紙台41と、段差ロール411と、丸孔11を空けるための丸孔空け機42と、丸孔空け機42により空けられた丸孔11のかすを吸引するかす取り機421と、各丸孔11の列に重畳するように配置される裏面材22を供給するロール72と、シート1の下方から光軸を発する光電管73により検知される丸孔11に重畳する裏面材22上に水溶性の接着剤を噴霧する水溶性接着剤噴霧器74と、籾Rを5粒づつ丸孔11に重畳する裏面材22上に落下させる籾供給装置75と、籾Rを覆って裏面材22に重畳するように配置される表面材21を供給するロール71と、各丸孔11の周囲をヒートシールするヒートシーラー76と、ホットメルト接着剤を冷却する冷却器77と、段差ロール48と、完成した水稲マルチ栽培紙シートを巻き取る巻取機49とからなる。
【0053】このような水稲マルチ栽培紙シート製造装置において、巻取機49が駆動すると、シート1が図示右方向から左方向へと搬送される。シート1には、まず丸孔空け機42により、図5(a)に示すような丸孔11が5列空けられる。丸孔11の各列に沿って、5本の裏面材22がそれぞれ配置される。この時点では裏面材22をシート1に接着しておく必要はない。光電管73は上方へ向かって光軸を発しており、丸孔11の空けられた箇所が光電管73の直上に達すると、不織布である裏面材22を通って光軸が通り、上方でこれを検知した水溶性接着剤噴霧器74は裏面材22の丸孔11に重畳する部分に水溶性接着剤を噴霧する。籾供給装置75は、水溶性接着剤噴霧器74の位置から一定の位置、例えば同列の丸孔11の間隔(15cm)と同じ間隔を空けて下流側に配置されており、光電管73の光軸が通ると籾Rを5粒落下させる。このとき、丸孔11に重畳する部分の裏面材22には水溶性接着剤が塗布されているので、籾Rは位置がずれたり脱落したりすることなく丸孔11に重畳して配置される。次に表面材21が裏面材22と一致するように5本配置され、ヒートシーラー76によりヒートシールされる。ヒートシーラー76は、図示していないが、下面に丸孔11とほぼ同じサイズの凹陥部を有しており、凹陥部が丸孔11の周縁と一致するようにヒートシールされる。これにより籾Rが潰れたり接着剤が付着したりすることを防止することができる。前述のように表面材21及び裏面材22はホットメルト接着剤が被覆されており、よって表面材21、裏面材22及びシート1は相互に接着される。ヒートシールの後、冷却器77により冷風が吹きつけられ、巻取器49により巻き取られる。これにより、結果的にはシート1に連続するテープ状の籾袋2が接着された形の図5に示した水稲マルチ栽培紙シートが製造される。
【0054】[第4の水稲マルチ栽培紙シートの実施の形態]図7(a)は、図8に示した本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法の第4の実施の形態に従って製造された水稲マルチ栽培紙シートの一部を示す平面図であり、図7(b)(c)はそれぞれ図7(a)の水稲マルチ栽培紙シートのさらに一部を拡大した平面図、及びc−c断面図である。図7(c)は説明のために各部材の幅を厚くして示してある。図7において、図1に示した部材と同様の部材には、同じ符号を付して示してある。
【0055】紙製のシート1には、複数の小さな丸孔11が群をなして形成されており、丸孔群が適当な間隔を空けられて配置されている。丸孔群は、直径約2.5cmの範囲に籾Rが脱落することのない大きさである直径2.8mmの丸孔11を37個配してなる。シート1の裏面には、丸孔群に重畳して連続するテープ状の籾カバー9が接着されている。籾カバー9はセルロースを主原料とする不織布製であり、籾カバー9とシート1との間には、それぞれ5粒の籾Rが充填されている。籾カバー9にはホットメルト接着剤が塗布されている。シート1の幅は130cmであり、上下方向の各丸孔群の中心と中心との間隔は15cm、丸孔群の列と列との間は30cmである。
【0056】[第4の水稲マルチ栽培紙シートの実施の形態の製造装置]図8は、本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの第4の実施の形態が適用された図7に示した水稲マルチ栽培紙シートの製造装置を示す。図8において、図6に示した部材と同様の部材には、同じ符号を付して示してある。籾袋テープ製造装置は原紙台41と、段差ロール411と、図7(a)に示した折線91に沿ってシート1を折り曲げる折り曲げ装置(図示していない)と、丸孔11を空けるための丸孔空け機42と、折り曲げ装置により折り曲げられたシート1を折り戻して広げる折り戻し装置(図示していない)と、かす取り機421と、シート1の下方から光軸を発する光電管73により検知される丸孔11の部分に水溶性の接着剤を噴霧する水溶性接着剤噴霧器74と、籾Rを5粒づつ丸孔11上に落下させる籾供給装置75と、籾Rを覆うように配置される籾カバー9を供給するロール71と、ヒートシーラー76と、冷却器77と、段差ロール48と、巻取機49とからなる。図7(a)に示すように、丸孔11の上下方向の列は4列なので、上記した他の実施の形態に係る装置とは異なり、水溶性接着剤噴霧器74や籾供給装置75等は4連に設けられている。
【0057】このような水稲マルチ栽培紙シート製造装置において、巻取機49が駆動すると、シート1は折り曲げ装置により側縁から30cm内側の折線91に沿って折り曲げられる。折線91は各丸孔11の左右二組の列の中間に仮想的に配置されている。丸孔空け機42は2連に設けられており、折り曲げることにより重畳した部分に2箇所丸孔11を空けることにより、図7(a)に示すような丸孔11が4箇所空けられ、4列の丸孔11の列が形成される。丸孔11が空けられたシートは折り戻し装置により元のように広げられる。通常、広幅の紙にこのような複数の小さな丸孔群を空けることは、丸孔空け機42のの上下のかみ合わせが微妙で、かつ針(直径約2.8mm)の数が多く狂いやすいので、広幅のシート1の側縁から離れた箇所に穿設することは非常に困難であった。そこで折り曲げ装置によりシート1を折り曲げて、側縁からの距離を短くして2群以上を同時に形成することとした。次に水溶性接着剤噴霧器74はシート1の丸孔11が空いた部分に水溶性接着剤を噴霧し、籾供給装置75は同じ箇所に籾Rを5粒落下させる。次に籾カバー9が丸孔11の各列に一致するように4本配置され、ヒートシーラー76によりヒートシールされる。ヒートシーラー76は、図6で説明したものと同様の形状である。これにより籾カバー9とシート1とは相互に接着され、冷却器77により冷風が吹きつけられ、巻取器49により巻き取られる。
【0058】[第5の水稲マルチ栽培紙シートの製造方法の実施の形態]図9(a)は、図10に示した本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法の第5の実施の形態に従って製造された水稲マルチ栽培紙シートを示す平面図であり、図9(b)(c)はそれぞれ図9(a)の水稲マルチ栽培紙シートの一部を拡大した平面図、及びc−c断面図である。図9(c)は説明のために各部材の幅を厚くして示してある。図1に示したものと同様の部材には、同じ符号を付して示してある。
【0059】シート1は160cm幅の再生紙製であり、籾が出芽するための出芽孔として左右方向に5列に並んで丸孔11が穿設されている。隣接する丸孔11それぞれの中心の間隔は、隣り合う条の間隔である左右方向がそれぞれ30cm、一つの条の隣り合う株の間隔である上下方向がそれぞれ15cmである。これは、マルチ栽培紙シートが水田に被覆された後、丸孔11には稲株が発生するが、その際に手入れや刈り取り機による刈り取りが行いやすいような間隔である。各丸孔11の直径は約2.7cmである。丸孔11を円形としたのは、打ち抜き作業が他の形よりも容易だからである。
【0060】籾袋2は全体が平坦な方形であって、表裏とも同じセルロースを主原料とする目の粗い不織布製である。従って充填されている籾Rが発芽する際には、芽及び根が不織布の目を通って伸びることができる。またセルロースを主原料としているので自然分解しやすく、田を汚染したり刈り取り機にからみついたりすることもない。
【0061】不織布には全面に予めホットメルト接着剤が線状にコートされている。籾Rを挟んで、2つに折り畳んだ状態で、丸孔11に一致する円形の部分を残して周辺部分を加熱することにより、対向する面が溶着し、図9(c)に示すような袋を形成することができる。形成された籾袋2はシート1の裏面に丸孔11を覆うようにして配置しておき、丸孔11の周辺部分を加熱することにより接着される。籾袋が紙製であってシート1に接する面にホットメルト接着剤が塗布されていない場合には、シート1の裏面の丸孔11の周辺部分にホットメルト接着剤を塗布しておき、籾袋2を丸孔11を覆うようにして配置しておいて丸孔11の周辺部分を加熱することにより接着される。不織布と紙とによりなる籾袋の場合も同様にして不織布の紙の周縁を超えてはみ出した部分を加熱することにより接着される。これらのホットメルト接着剤はもちろん非水溶性で、マルチ栽培紙シートが水田の水に浸されても籾袋2が開いたりシート1から脱落したりすることがないようにしている。但し、水中あるいは土中での接着力が20日程度維持できる生分解性のものである。なお、籾袋2に充填される籾Rは、通常5個である。
【0062】このような水稲マルチ栽培紙シートは、水田の面に被覆される。その際、シートに直接籾を貼付したものに比べて、籾が脱落することがなく、各丸孔11の設けられている箇所で確実に発芽する。他の部分はシートに覆われているので雑草の繁茂が抑制され、よって除草剤が不要もしくは最小限で済む。再生紙製のシート1は2〜3か月で自然分解するので水田を汚染することがなく、土壌に還元される。籾袋2もセルロースを主原料とするので、シート1よりも遅いが自然分解される。分解されずに残っていたとしても、土壌に悪影響を与えたり刈り取り器に絡みついたりすることはない。
【0063】図10、11は、本発明にかかる水稲マルチ栽培紙シートの第5の実施の形態が適用され、図9に示した水稲マルチ栽培紙シートの製造装置を示す。図10は籾袋テープ製造装置、図11は籾袋接着装置をそれぞれ示す正面図である。
【0064】図10の籾袋テープ製造装置は、籾の充填された籾袋2が長手方向に連続して並んだ籾袋テープを製造する装置である。なお、図にはその要部のみが示されており、籾袋テープを挟持して案内するガイドローラやフレーム等は除いて示してある。また予めホットメルト接着剤の塗布がなされていない不織布または紙を使用する場合には、図の過程の前にホットメルト塗布工程を設ける必要がある。
【0065】図10において、籾袋テープ製造装置3は、上流側から順に合流過程a、底部シール過程b、籾充填過程c、口部シール過程d、籾袋テープ巻取過程eを経て籾袋テープを製造する。口部シール過程dと籾袋テープ巻取過程eとの間にはクランプシリンダ31が設けられており、1対のクランプ311により籾袋テープ2aを表裏面から挟んで1ピッチ(250mm)ずつ籾袋テープ2aを引き出し、1ピッチごとに各過程における作業を行わせる。
【0066】籾袋テープ2aの表裏面を構成する不織布2a(混乱を避けるため籾袋テープと同じ符号を付す)は、セルロースを主原料とし、10cm幅で、予めホットメルト接着剤が線状コートされている。不織布2aは水平姿勢でロールから引き出され、上流側に向かって下縁にテーパのつけられた方形の中タテ板32に上面の中心が当接するように案内される。中タテ板32の下流側には、垂直の軸線回りに回動し、間に2つ折りされた不織布2aを挟む一対のガイドローラが配置されている(図示していない)。よって不織布2aは中タテ板32のテーパのつけられた下縁により、中心軸線に沿って2つ折りされ、左右両縁が重ねられて上縁となり、中心軸線が下縁となる。すなわち不織布2aの2つ折りされた一方側が籾袋2の表面に、他方が籾袋2の裏面となる。これで合流過程aが終了する。
【0067】次に底部シール過程bにおいては、単に2つ折りされているだけの不織布2aの対向する面の一部をヒートシールし、ポケットを構成する。ヒートシール板33は、それぞれの中心が50mm離れ、上部に開口した直径27mm、120度の円弧形状のヒートシール部331を5個、上下流方向に並べて成る。よって、ヒートシール板33により、予めホットメルト接着剤がコートされている不織布2aのヒートシールを行うと、ヒートシール部331の形状と同じ部分がヒートシールされ、対向する面の間に上方が開口した120度の円弧形状のポケットが5つ形成される。不織布2aのポケットが形成されたピッチは直ちに冷却板34に挟持されて冷却され、シールされた部分が固められる。冷却板34は両端近くに形成された孔341、342を通じて水を送る水冷式で、不織布2aを挟む面は平板である。
【0068】次に籾充填過程cにおいて、一定数の籾が充填される。ここでは5粒である。挿入管35は50mm間隔で5本配置されており、不織布2aが1ピッチ送られて停止した時にそれぞれの下端がポケットの直上に位置するようになっている。各挿入管35の上端は、それぞれ籾を5粒づつ供給する自動計量装置に接続されている(図示していない)。これにより、各ポケットには5粒ずつの籾が充填される。なお、籾が挿入管35内に落ちずに残ることを防止するために、不織布2aを軽く叩く詰り防止装置を設けてもよい。
【0069】次に口部シール過程dにおいて、籾の充填されたポケットの開口した口部が閉じられる。ヒートシール板36は、5つの直径27mmの円形を除いた平板状であり、ヒートシール板36でヒートシールすることにより底部シール過程bにおいて形成したポケットを含む円形の充填部の周囲が溶着され、5つの籾袋2が形成される。籾袋2が形成されたピッチは直ちに冷却板37に挟持されて冷却される。冷却板37の籾袋テープ2aを挟む面はヒートシール板36と同じく5つの円形を除いた平板状である。
【0070】このようにして形成された籾袋テープ2aは、巻取過程eにおいて90度ねじられて水平姿勢とされた後に巻き取られ、保管や搬送や次過程での取り扱いに便利なロール状とされる。
【0071】図11は籾袋接着装置を示す正面図であり、図10と同じくガイドローラの一部やフレームを除いて示してある。
【0072】図11において、籾袋接着装置4は穿設過程f、接着剤塗布過程g、先端接着過程h、切断過程i、残部接着過程j、巻取過程kを経て図9に示すような水稲マルチ栽培紙シートを製造する。
【0073】160cm幅のシート1は原紙台41に長尺巻きロール紙としてセットされ、段差ロール411を経て供給される。図9に示すように、シート1には5列の丸孔11が空けられるので、まず最初に穿設過程fにおいて、図示奥行き方向に5連の約27mmエアー式の孔空け装置42により、5個の孔が30cm間隔に同時に穿設される。なお、以下の過程において説明する各装置の多くは奥行き方向に5連に設けられている。紙抜きカスはシート1下方に配置されたブロア421により吸い取られる。
【0074】シート1は引出装置43により引き出される。引出装置43は、シート1を1ピッチ150mmずつ引き出すが、孔空け装置42の上流には、シート1の下方荷光電管431が配置されており、光電管431は上方に向かって光軸Lを発している。シート1の丸孔11を検知する。引出装置43は光電管431からの信号を受け取って正確に1ピッチずつの引き出しを行うようになっている。
【0075】次に接着剤塗布過程gにおいて各丸孔11の周囲にホットメルト接着剤が塗布される。これは、5連のホットメルト接着剤吹き付け器(図示していない)によりなされる。吹き付けられて塗布されたホットメルト接着剤は冷却エアー吐出器により直ちに冷却される。この工程は紙製の籾袋であってその表面のシート1に接する部分にホットメルト接着剤が塗布されていない場合に使用される。
【0076】次に先端接着過程hにおいて、籾袋テープ2aの先端が丸孔11近くに接着される。籾袋テープ2aは5連のロールから供給され、籾袋テープ供給ローラ451により籾袋テープ2aの先端がほぼ線状のヒートシール面を有するヒートシール板45の直下に位置するように配置される。丸孔11は、籾袋テープ2aの先端近くの下流にあり、籾の充填された袋部分と丸孔11とがほぼ重なる位置にある。ヒートシール板45により籾袋テープ2aの先端がシート1の上面に接着される。
【0077】次に切断過程iにおいて先頭の籾袋2が切り離される。籾袋テープ2aはカッター46を介して供給されており、籾袋テープ2aの先端がシート1の上面に接着された状態では、連続する籾袋の先端の籾袋とその次の籾袋との間にカッター46の切断部が位置するようになっている。この状態でカッター46を作動させることにより、先頭の籾袋2が切り離される。
【0078】次に残部接着過程jにおいて、丸孔11の周囲の残りの部分で籾袋2とシート1の上面とが接着される。ヒートシール板47は、籾袋2の袋部分が凹陥部となった形、すなわち直径約27mmの凹陥部を有する平板状で、これにより籾袋2の袋部分以外の部分がシート1の上面に接着される。接着剤は冷却エアー吐出器471により直ちに冷却される。
【0079】以上のようにして完成した水稲マルチ栽培紙シートは段差ロール48を経て巻取器49に送られ、ロール状の製品となる。
【0080】以上のような製造過程によると、直播方式の水稲マルチ栽培に実用可能な図9に示す水稲マルチ栽培紙シートを自動的に製造することができる。また籾袋テープ製造過程と籾袋接着過程とを別ラインとすることもでき、その場合には、米作農家の事情やその年の地温等に応じて、籾の種類、紙の種類の組み合わせのバリエーションに富んだ水稲マルチ栽培紙シートを得ることができる。
【0081】以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能であることは言うまでもない。
【0082】
【発明の効果】本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートによると、作業中や被覆後に籾がシートから脱落することなく、製造過程が自動化でき、よって経済的にも実用的にも有用な水稲マルチ栽培を行うことができる。
【0083】また本発明に係る水稲マルチ栽培紙シートの製造方法によると、水稲マルチ栽培紙シートが自動的に製造できる。また籾袋テープ製造過程と籾袋接着過程とに製造過程を分けることができ、これによりバリエーションに富んだ製品を造り出すことができる。
【出願人】 【識別番号】592073813
【氏名又は名称】佐藤産業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)1月29日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】網野 誠 (外2名)
【公開番号】 特開平11−127617
【公開日】 平成11年(1999)5月18日
【出願番号】 特願平10−30393