| 【発明の名称】 |
ゲル被覆種子及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】滝口 清津子
【氏名】井戸 洋一
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| 【要約】 |
【課題】特殊な薬剤を用いることや、特殊な処理を行うことなく、長期保存が可能なゲル被覆種子を提供する。
【解決手段】被覆ゲル層の水分率が10重量%以上90重量%以下であるゲル被覆種子。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被覆ゲル層の水分率が10重量%以上90重量%以下であることを特徴とするゲル被覆種子。 【請求項2】 上記水分率が、70重量%以上90重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のゲル被覆種子。 【請求項3】 上記水分率が、70重量%以上85重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のゲル被覆種子。 【請求項4】 ゲル被覆種子の被覆ゲル層の水分率を10重量%以上90重量%以下に調整することを特徴とするゲル被覆種子の製造方法。 【請求項5】 上記水分率の調整を通風状態で行うことを特徴とする請求項4に記載のゲル被覆種子の製造方法。 【請求項6】 上記水分率の調整を35℃以上60℃以下で行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のゲル被覆種子の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ゲル被覆種子に関する。特に長期保存が可能なゲル被覆種子技術に関する。 【0002】 【従来の技術】植物種子を水性有機ゲルのマイクロカプセルに封ずる技術、即ち、種子のゲル被覆技術は、このゲル被覆中に含まれる水分による発芽率が向上し、従来機械播種に適さなかったような微少な種子或いは非球状種子等でも機械播種可能となり、或いは、ゲル層に各種薬品や肥料を加えることで作物の生育或いは収量が向上する等の著しい効果があるため、近年用いられるようになってきた。この中でも、金属イオンによって硬化される水性有機ゲルカプセルゲルによる被覆は、作製が容易であり、安価で、また種子の発芽に悪影響を及ぼすことが少ない等の理由で特に広く使われるようになっている。 【0003】しかし、ゲル被覆種子は種子周囲に水分率の非常に高いゲル層が配されていて発芽しやすく、そのため常温保存ができない。ここで冷蔵貯蔵が行われてきた。しかし、30日程度の長期保存を行うためには−2℃を維持しなければならず、5℃が一般的な通常の冷蔵庫では対応できず、設備にコストがかかった。他の保存方法として、被覆ゲル層を乾燥させ、播種直前に再度吸水させることによる解決が試みられてきた。すなわち、ゲル被覆種子中の水分を5重量%以下にすると発芽率が低下し、長期保存が可能となる。しかし、その後、吸水させる際に被覆ゲル層は水を含んで膨潤する過程でその表層が脱落してしまって滑らかさを失い、その結果、ゲルカプセル同士、或いは金属面や樹脂面等との摩擦力が大きくなる。このように表層が脱落したゲルカプセルの取り扱い性は著しく低く、移送時や、播種機等のホッパ内でつまりが生じると云った問題があった。本出願人は過去に特開平5−56707号公報などこれら問題解決に向けて技術的提案を行っているが、これは吸水性ポリマーをゲル成分に加える必要があり、加工コストが高くなるなど欠点を持ち、決定的な解決方法ではなかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、特殊な薬剤を用いることや、特殊な処理を行うことなく、長期保存が可能なゲル被覆種子を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明のゲル被覆種子は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、被覆ゲル層の水分率が10重量%以上90重量%以下である。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明のゲル被覆種子は公知の方法で作製されたゲル被覆種子の被覆ゲル層の水分率(以下、「ゲル被覆種子の被覆ゲル層の水分率」を「水分率」とも云う)を調整することにより得ることができる。例えば細管先端に種子被覆用水性ゲル形成性水溶液の液滴を形成し、この液滴中に細管を用いて種子を添加し、その後このゲル液滴をゲルを水に対して不溶化させる作用を有する金属イオンを含む溶液に滴下させることにより作成したゲル被覆種子を用いることができる。なお、水分率が85重量%以下のゲル被覆種子の場合、常温保存でも被覆ゲル層の腐敗やカビ発生は抑制されるが、90%付近の高い水分率ゲル被覆種子の場合、常温保存を考慮して被覆ゲル層の中に予め植物に無害な抗菌成分を添加することも可能である。また、本発明のゲル被覆種子に内包される植物種子は通常の種子の他、不定胚や多芽体などの植物組織培養物を用いることができる。 【0007】水分率の調整は、例えば熱風乾燥機などを用いて通風しながら行ってもよく、あるいは、乾燥剤を内容するデシケーターなどの容器内に静置することによっても達成できる。しかし、種子の発芽前に手早く調整する必要があるため、熱風乾燥機を用いて調整することが望ましい。熱風乾燥機などを用いて通風状態で水分率の調整を行う場合には例えば金網の上にゲル被覆種子を均一にかつ重ねずに置いて行うと、ばらつきの発生を抑制することができるので好ましい。ここで、ゲル被覆種子の乾燥度合いが異なると、保存可能な期間が異なってしまい、管理が困難になる。なお、金網を用いる場合、目の粗い金網を用いると種子の乾燥が早くなり、目の細かい金網を用いると乾燥が遅くなる。金網の代わりにざるや紙などを用いることもできる。紙を用いる場合、薄い紙を用いると乾燥が早くなり、厚い紙を用いると遅くなる。 【0008】なお、水分率調整の温度としては35℃以上60℃以下が望ましい。温度が高すぎると、種子を痛め、一方、低すぎると調整修了までの時間が長くなり、種子が発芽・成長してしまい、被覆ゲル層からの芽や根が出るいわゆる突出が生じる。なお50℃以上の温度で乾燥した場合、その後の常温保存においても被覆ゲル層にカビ発生が抑制され、その結果これらカビによる病害の発生がない。ゲル被覆種子において突出が生じると、これら突出した芽や根が機械播種の際に致命的な損傷を受ける可能性が非常に高い。そのため、これら突出が生じたゲル被覆種子は選別されて人手で播種されるか、あるいは、ロスを見込んで播種を行う。しかし前者では選別・播種に膨大な手間が掛かり、また後者では、無駄が発生すると共に、実際に有効な種子の数の管理が困難であると共に、場合によっては出芽後の間引き等の余分な作業が必要となる。 【0009】本発明において被覆ゲル層の水分率(以下、単に「水分率」とも云う)が90重量%以下であることが必要である。この水分に保つことにより、種子の成長・突出を抑制することができる。ここで、突出とは種子が発芽し、その芽あるいは根がゲル被覆層の外にまで達することを云う。本発明のゲル被覆種子において、その被覆ゲル層の水分率は10重量%以上であることが必要である。水分率が10重量%未満の被覆ゲル層は水に浸漬した場合の復元が不完全で、表層に剥離が発生し、ホッパつまり等の障害が多発して事実上機械播種ができなくなる。 【0010】なお、ゲル被覆種子に内包される種子および発芽した芽や根に酸素を供給するためにその内部に気泡を有するものもあるが、乾燥しすぎるとこの気泡が割れてしまい、種子に酸素が潤沢に供給されるため、むしろ生長が早くなってしまうことがあり、この場合には水分率を上記気泡が維持されるレベルに保つことが必要である。ここで、上記被覆ゲル層の水分率の好ましい範囲は70重量%以上90重量%以下である。この範囲では発芽・生長抑制効果及び被覆ゲル層の厚さが充分であるため、突出が生じにくく、保存可能期間が長くなり、また気泡を有するゲル被覆種子にも対応できる。なお、水分率の最適な範囲は70重量%以上85重量%以下である。 【0011】なお、本発明において、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の水分率は次のようにして測定したものである。すなわち、ゲル被覆種子からナイフなどを用いて種子を取り出し、被覆ゲル層を採取し、赤外線水分計によって測定する。本発明のゲル被覆種子の保存期間は、冷蔵すること、すなわち通常の冷蔵庫温度である5℃程度に保つことにより、さらに保存可能期間を長くすることが可能である。 【0012】本発明に係るゲル被覆種子は、保存後播種前に水に浸漬させることで吸水させて被覆ゲル層を復元し、通常のゲル被覆種子同様機械播種することができる。このとき、上記のように被覆ゲル層の水分率が10%以上であると、表層の脱落が生じず、なめらかに復元する。なお、水分率が70重量%以上90重量%のものは10分の浸漬で迅速に乾燥前の大きさに戻る。また、水分率が70重量%未満の場合には復元までの時間が若干長くなる。 【0013】 【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 〔ゲル被覆種子の作製〕まず、乾燥させる前のゲル被覆種子を以下のように指定作製した。トマト種子を外径8mmで内径6mmのガラス管を用いて3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液滴内に導入し、この液滴を10重量%塩化カルシウム水溶液中に滴下後、この塩化カルシウム水溶液と40秒間接触させて水に対して不溶化させて球状のゲル被覆種子A(被覆ゲル層(100個の平均値)、直径:0.73cm、重量:0.2g、水分率:94.3重量%)を作製した。なおこのものは内部に気泡があり、発芽後のトマトはこの内部の空気の酸素を呼吸して成長する。 【0014】〔水分率調整法の検討:熱風乾燥機による乾燥〕直径12cmのシャーレにゲル被覆種子A200個を入れた。このときほぼ2段程度に重なった。これら種子の被覆ゲル層の平均含水率が85重量%となるよう50℃の熱風乾燥機で乾燥し、その後のゲル被覆種子の直径及び重さのばらつき(最大値と最小値の差、及び、平均値)、及び被覆ゲル層の水分率のばらつきについて調べた(試験区α)。一方、同様にシャーレを用いて、ただし、シャーレ内に薄い紙を敷き、その上に50個のゲル被覆種子Aを入れて試験区α同様にして乾燥させた。このとき、ゲル被覆種子Aは互いに重なり合うことなく、1段となった(試験区β)。また、ざるに薄い紙を敷きその上にゲル被覆種子Aを1段になるよう入れたもの試験区γ、及び試験区γと同様にただしゲル被覆種子の上にさらに薄い紙を敷いた試験区δについても試験区αと同様に乾燥させ、その評価を行った。これらゲル被覆種子の直径及び重量のばらつきをそれぞれ表1及び表2に、また、これらゲル被覆種子の被覆ゲル層の水分率のばらつきを表3に示す。 【0015】 【表1】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━試験区 差(mm) 平均値(mm)────────────────────────── (ゲル被覆種子A) 0.73 10.46 α 4.87 7.32 β 2.36 6.43 γ 3.51 5.50 δ 1.38 6.18━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【0016】 【表2】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━試験区 差(g) 平均値(g)────────────────────────── (ゲル被覆種子A) 0.015 0.635 α 0.418 0.314 β 0.058 0.216 γ 0.201 0.126 δ 0.112 0.199━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【0017】 【表3】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━試験区 差(%) 平均値(%)────────────────────────── (ゲル被覆種子A) 2 95.2 α 2 94.3 β 1 94.9 γ 1 94.5 δ 1 95.0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【0018】〔水分率調整手段の検討〕ざるに薄い紙を敷き、この上にゲル被覆種子Aを重ならないよう並べ、さらにこの上に薄い紙を被せたものを、50℃に設定した熱風乾燥機内で乾燥させた。そのときのゲル被覆種子の被覆ゲル層の水分率の経時変化を調べた。また、シリカゲルデシケーター内に薄い紙を敷き、さらにその上にゲル被覆種子Aを重ならないよう置き密閉した後、これを25℃の恒温器内において、その後のゲル被覆種子の被覆ゲル層の水分率の経時変化を調べた。これら結果を図1に示す。 【0019】図1により、本発明のゲル被覆種子は熱風乾燥機を用いても、あるいはデシケーターを用いても得るできることが判る。なお、熱風乾燥機を用いた場合、デシケーターを用いる場合より水分率の調整に要する時間を短くすることができ、そのため種子の発芽を低く抑えることができることが判る。 【0020】〔常温保存性の検討〕上記水分率調整手段の検討で熱風乾燥機を用いて作製した水分率の異なるゲル被覆種子をそれぞれ恒温器内で25℃に保ち、その後の発芽率、突出率の変化を調べた。出芽率の変化を図2に、突出率の変化を図3に示す。図2及び図3により、水分率が90重量%以下のゲル被覆種子で発芽が抑制され、また、機械播種できなくなる突出も少なくなる。特に水分率が85%以下であると1週間の常温保存が可能であり、水分率が70重量%以上85重量%の範囲では2週間と云う長期間のゲル被覆種子の常温保存が可能である。 【0021】〔常温保存による検討〕上記水分率調整手段の検討と同様にして、水分率が84.9重量%に調整されたゲル被覆種子(以下、「ゲル被覆種子B」と云う)を25℃で7日間保存し、次いで10分間水に浸漬し、被覆ゲル層が完全に復元したのを確認後、さらに0.5重量%の過酸化水素水に10分間浸漬して酸素富化処理を行い、20℃の恒温器内・暗黒条件で発芽試験を行った。このときの発芽率及び突出率の経過をそれぞれ図4及び図5に「84.9%」として示す。なお、同様に、ただし水分率の調整を行わずに水分率94.3重量%のゲル被覆種子Aを25℃で7日間保存し、次いで酸素富化処理を行い、同様に発芽試験を行った際に得られたデータについても「94.3%」として併せて記載する。図4及び図5より、本発明に係る被覆種子Bを用いた場合は、播種時に発芽しているものが少ないにもかかわらず、その後の発芽は早く、いわゆる一斉出芽が可能であることが判る。また、播種時に突出しているものがないことも判る。しかし、播種後の突出は早く、やはり、一斉出芽効果が得られることを示唆している。このような一斉発芽により、苗の管理や収穫作業が容易、かつ、効率的になる。 【0022】一方、水分率を調整していないゲル被覆種子Aをそのまま用いた場合、7日の常温保存処理で被覆ゲル層にカビが発生しているものが多く、著しいものでは、種子にまでそのカビが達しているものがあった。なお、ゲル被覆種子Bでは7日間の常温保存に拘わらず、カビの発生はなかった。また、ゲル被覆種子Aをそのまま用いた場合にはでは7日間の常温保存処理により14%のものが突出していた。また、播種後の発芽率、突出率の伸びが低いが、これはカビにより発芽能力を失ったことによるものと考えられる。 【0023】〔冷蔵保存による検討〕次いで上記で作製したものと同じゲル被覆種子Bを用いて冷蔵保存について検討を行った。ゲル被覆種子Bを6℃で7日保存し、次いで10分間水に浸漬した後被覆ゲル層の復元を確認し、酸素富化処理を行い、20℃の恒温器内・暗黒条件で発芽試験を行った。このときの発芽率及び突出率の経過をそれぞれ図6及び図7に「84.9%」として示す。なお、同様に、ただし水分率の調整を行わずに水分率94.3重量%のゲル被覆種子Aを6℃で7日間保存し、次いで酸素富化処理を行い、同様に発芽試験を行った際に得られたデータについても併せて「94.3%」として記載する。 【0024】図6及び図7より、水分率調整を行わないゲル被覆種子では低温保存によっても5%の突出が生じてロスとなるが、本発明に係るゲル被覆種子Bを用いた場合には突出がないため、全くロスが生じない。なお、播種後4日の出芽率及び突出率はゲル被覆種子Aを用いた場合と全く同レベルであった。 【0025】〔熱風による水分率調整による影響調査〕次に熱風による水分率調整による影響の有無について調べた。ゲル被覆種子Aを作製直後、10分間水に浸漬した後被覆ゲル層の復元を確認し、酸素富化処理を行い、20℃の恒温器内・暗黒条件で発芽試験を行った。このときの発芽率及び突出率の経過をそれぞれ図8及び図9に「84.9%」として示す。なお、同様に、ただし水分率の調整を行わずに水分率94.3重量%のゲル被覆種子A作製直後、酸素富化処理を行い、同様に発芽試験を行った際に得られたデータについても「94.3%」として併せて記載する。図8及び図9より50℃での水分率調整処理は種子の発芽率、突出率に何らの影響を及ぼさないことが確認された。 【0026】 【発明の効果】本発明のゲル被覆種子は、常温保存が可能で、しかも容易にかつ完全に復元させることができる優れたものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006895 【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)8月7日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】瀧野 秀雄 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−46520 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)2月23日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−213506 |
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