| 【発明の名称】 |
有用微生物コーティング種子及びその種子の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】小池 寿
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| 【要約】 |
【課題】有用微生物がコーティングされた高品質の種子を提供する。
【解決手段】有用微生物が固定化された微生物固定化溶液に、2液からなるバインダー、薬剤などを混合した菌体保持溶液を豆類の種子にフィルム状にコーティングする。前記微生物が固定化される固定化溶液を砂糖、PVA、PVP、水などでつくる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有用微生物が固定化された微生物固定化溶液に、2液からなるバインダー、薬剤、などを混合した菌体保持溶液を豆類の種子にフィルム状にコーティングした有用微生物コーティング種子。 【請求項2】 有用微生物を固定化する固定化溶液が砂糖ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、水からなる請求項1記載の有用微生物コーティング種子。 【請求項3】 微生物が液体培養により菌体ペースト回収の可能な細菌類である請求項1記載の有用微生物コーティング種子。 【請求項4】 菌体保持溶液が微生物固定化溶液5%位、バインダーA液25%位、バインターB液45%位、薬剤10〜15%位、増量材15〜10%位の組成からなる請求項1記載の有用微生物コーティング種子。 【請求項5】 加工温度を設定したら豆類の種子を予熱し、加工温度が一定温度になったら加工を開始する第1工程と、該種子を均一に加温する第2工程と、加温中の該種子に菌体保持溶液をフィルム状にコーティングする第3工程と、該種子に対する加温を停止し、品温を室温まで降下させる第4工程とからなる有用微生物コーティング種子の製造方法。 【請求項6】 加工温度を40〜45℃に設定した請求項5記載の有用微生物コーティング種子の製造方法。 【請求項7】 前記種子を均一に加温するために温風を使用すると共に、前記種子を加工室内で転動させる請求項5記載の有用微生物コーティング種子の製造方法。 【請求項8】 前記種子に菌体保持溶液をフィルム状にコーティングするために前記種子を加工室内で転動せしめる請求項5記載の有用微生物コーティング種子の製造方法。 【請求項9】 菌体保持溶液を種子重量に対して重量比で0.4%/分位で前記種子にフィルム状にコーティングする請求項5記載の有用微生物コーティング種子の製造方法。 【請求項10】 前記種子に対する菌体保持溶液のコーティング時間が25〜30分位である請求項5、8又は9記載の有用微生物コーティング種子の製造方法。 【請求項11】 前記有用微生物コーティング種子の品温を室温迄降下せしめるために該種子を加工室内で転動せしめる請求項5記載の有用微生物コーティング種子の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、有用微生物が供給された種子及び該種子の製造方法に関し、とりわけ、それら種子及び製造方法の改良に関する。 【0002】 【従来技術と課題】微生物と薬剤とを混合して種子にコーティングする加工技術は、数多く存在するが、その多くは、加工後における微生物の活性を維持するため、ピートモス、珪藻土などに微生物を吸着させたキャリアを緩衝物として利用し、薬剤との接触もしくはコーティング加工中に発生する微生物に対するストレスを軽減していた。この従来技術によるときは、微生物をキャリアに吸着させなければならないので、作業の準備工程が多くなり、加工への対応が煩雑になる。ピートモス、珪藻土といった固形成分のキャリアを種子表面に適度に付着させるため、種子との混合−成型−乾燥という3段階が必要となることから、周知のバッチ式糖衣フィルムコーティング装置を使用できず、専用の特殊装置を準備しなければならない。種子にコーティングされる微生物の密度を確保するため、前記固形成分のキャリアを一定の重量以上使用しなければならない。このことにより、加工後の種子が大きくなるため、或いは該種子重量が重くなるため、播種作業時に播種機の設計変更を余儀なくされる場合があった。上述した従来技術に対して、液体キャリアを使用する微生物供給技術が知られている。(たとえば、特表平3−501800号公報参照。)この2番目の従来技術が開示している液体キャリアは、水及び水基材の緩衝液、たとえば、リン酸緩衝溶液を包含しているため、マメ科種子が有する毒性物質から微生物を保護する働き、固定化された微生物の活性保持性などという諸機能が思わしくない。本発明は、叙上のような事情に着目してなしたものであるが、就中、2番目の従来技術に見られる前記課題を解消せしめることを目的とする。 【0003】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、次のような技術手段を講じる。まず、有用微生物が固定化された微生物固定化溶液に、2液からなるバインダー、薬剤などを混合した菌体保持溶液を豆類の種子にフィルム状にコーティングした種子ということであり、前記有用微生物を固定化する固定化溶液がポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、水で調製するということである。そして、加工温度を設定したら豆類の種子を予熱し、加工温度が一定温度になったら加工を開始する第1工程と、その種子を均一に加温する第2工程と、加温中の該種子に菌体保持溶液をフィルム状にコーティングする第3工程と、該種子に対する加温を停止し、品温を室温まで降下させる第4工程とからなるということである。 【0004】 【発明の実施の形態】本発明で使用する適応種子は、豆類の種子全般である。有用微生物は、根粒菌、アゾスピリラム属菌、シュードモナス属菌等液体培養により菌体ペースト回収の可能な細菌類が主体である。該菌体ペーストは、この菌体ペーストに15%食塩水等の保護剤を添加し、−80℃で凍結保存し、使用時に解凍して一定の濃度に調節する。前記菌体ペーストと、前記1番目の従来技術で周知の乾燥微生物との顕著な相違点は、菌体ペーストは、乾燥微生物に比して、1度に大量の濃縮菌体細胞を保存することが可能であり、かつ保存操作が真空凍結乾燥器のような専用装置を必要とせず、簡便であり、保存期間も乾燥微生物なみであるので、大量の濃縮菌体細胞を1度に取扱うのに適していることである。 【0005】有用微生物を種子にコーティングする目的は、根粒菌に代表されるマメ科植物との共生関係により、空中窒素を固定し、窒素養分として取入れる働き、或いは他の微生物を添加することで、ホルモン的作用、植物病原菌に対する拮抗作用などを有効活用することであり、濃縮された菌体ペーストを使用することで接種密度を簡単にコントロールすることが可能になる。該微生物は、前記細菌類のほかに糸状菌、放線菌なども使用できるが、胞子形成のできる菌は、胞子を利用したほうが菌濃度を制御しやすい。該微生物菌体ペーストは、予め設定した任意の密度となるように室温に保持された固定化溶液に懸濁せしめ、微生物固定化溶液をつくる。 【0006】微生物を固定化する固定化溶液は、次のような成分、目的を有する。 砂糖ポリビニールアルコール(PVA) ポリビニールピロリドン(PVP) 水ここで、砂糖を使用する目的は、固定化された微生物の保持性を向上させる機能を発揮せしめるためである。また、微生物コーティング種子を播種した後、土壌中での微生物活性の回復を向上させるためである。 【0007】ポリビニルアルコール(PVA)を配合する目的は、水溶性高分子化合物の分子の架橋構造中に微生物を封じ込め、農薬、湿度、温度などといった外的環境要因から、封じ込められた微生物を保護する働きを発揮させる。即ち、微生物を固定化する機能を発揮する成分である。ポリビニールピロリドン(PVP)を添加する目的は、特にマメ科種子で知られている種子表面に存する毒性物質から微生物を保護させ、同時に、微生物固定化溶液中での微生物の分散性を改善させる。後記配合割合は、微生物コーティング種子の加工中における温風乾燥ストレスから微生物を保護する。 【0008】菌体保持溶液は、次の如き成分、目的を有する。 微生物固定化溶液(微生物固定化済) バインダーA液(アラビアゴム) バインダーB液(澱粉) 薬剤(殺虫剤、殺菌剤又は植物成長調整剤) 増量材(微粉末炭酸カルシウム) ここで、A液とB液との2液からなるバインダーは、微生物の種子表面への付着性を良好にし、光沢のある種子表面であっても良好な付着性を発揮し、同時に乾燥性も良好であり、必要以上に温風に曝さなくても加工処理することができるようにするため添加する。 【0009】薬剤のうちの殺菌剤は、土壌中の病原性微生物を駆除し、微生物コーティング種子の発芽、定着性を向上させ、殺虫剤は、播種後、土壌中で該種子に寄生する害虫(たとえば、タネバエなど)を駆除するようにする。使用可能な薬剤は、市販されている農薬類の殺虫剤、殺菌剤又は植物成長調整剤を使用できる。(たとえば、殺菌剤のビス(ジ メチルチオカルバモイル)ジ スルフィド、2−メトキシ−N−(2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル)アセト−2’,6’−キシリジドなど、殺虫剤の(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)ジ エチルチオホスフェートなど。) 増量材は、45μmメッシュサイズ以下の微粉末炭酸カルシウムを使用する。尚、着色する場合は、食品添加物色素を0.1〜0.2%位菌体保持溶液に添加する。 【0010】菌体保持溶液を種子にコーティングする加工は、周知のバッチ式糖衣フィルムコーティング装置を使用してフィルム状(セロファン紙程度の厚さの薄膜状)にコーティングする。処でバインダーは、前記2液のほか、メチルセルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース等)、ビニールアセテート系樹脂、酢酸ビニール重合体、ゼラチンなどを使用できる。また、増量材は、前記増量材のほか、45μmメッシュサイズ以下のルチル型酸化チタンを使用できる。さらに、適用可能な種子は、前記豆類種子全般のほか、種子表面が豆類の状態に類似した全ての種子である。 【0011】 【実施例】本発明の製造方法を加工準備工程→製造工程(加工工程)の順に説明する。 加工準備工程微生物を固定化する固定化溶液の調製砂糖 15.0%ポリビニールアルコール(PVA) 10.0%ポリビニールピロリドン(PVP) 1.0%水 74.0%砂糖、PVA、PVP、水を室温下において上記配合割合で混合して固定化溶液を調製する。上記各成分の配合目的、配合割合の目的などは、前記した通りである。 【0012】固定化溶液と微生物との混合室温に保持されている固定化溶液に、微生物菌体ペーストを予め設定した任意の密度となるように懸濁せしめ、微生物が固定化された微生物固定化溶液をつくる。処で、該懸濁液の微生物菌体ペースト懸濁密度は、1種子当り105 〜107 の微生物が付着するように調整する。該懸濁密度は微生物の種類によって異なるが、たとえば、根粒菌の場合、固定化溶液調整時に該溶液1g当り108細胞数を下回らないように調整する。混合時間は、微生物菌体ペースト添加後30分位である。 【0013】バインダーの調製アラビアゴム 25%溶液(A液) 澱 粉 15%溶液(B液) バインダーの使用目的は前述した通りである。 【0014】バインダーへの薬剤の添加市販の農薬類、即ち前記薬剤をバインダーに添加する。この添加量は後記するが、増量材との配合比率を変えることにより、使用する薬剤の効果に応じて変更可能である。増量材は、前記した45μmメッシュ以下の微粉末炭酸カルシウムを使用する。 【0015】菌体保持溶液の調製微生物固定化溶液(微生物固定化済) 5%バインダーA液 25%バインダーB液 45%薬剤 10〜15%増量材 15〜10%上記各成分を上記配合割合で混合(室温下で混合)して調製する。着色を希望する場合は、食品添加物色素を0.1〜0.2%位菌体保持溶液に添加する。 【0016】製造装置の準備周知のバッチ式糖衣フィルムコーティング装置の加工室(回転ドラム)に、これから微生物をコーティングする種子を投入し、微生物コーティング用のスプレーをセットする。(上記コーティング装置は不図示。) 【0017】製造工程第1工程 製造装置の加工温度を送風温度で40〜45℃位に設定する。加工温度を40〜45℃位に設定する理由は、もしも送風温度が50℃を超えるようなことが起きると、熱ストレスによる加工中の微生物死滅率が増え、加工終了後の微生物付着数を安定的に保つことができなくなるから、このことを防ぐために安全範囲を見込んで設定したものである。製造装置を起動した後、菌体保持溶液のスプレーによるコーティング前に種子を40〜45℃位になるまで5〜10分位予熱する。この種子の予熱は、種子温度が低い場合、種子表面に汗をかくことを防止するために行う。そして、排気温度が加工温度よりも若干低い温度範囲(たとえば、35〜40℃の範囲)で安定して一定になり、加工温度が一定(40〜45℃の範囲で安定して一定)になったら、加工を開始する。 【0018】第2工程加工室(回転ドラム)の回転を20〜25rpmに設定し、加工室内の種子を均一に加温する。この加工室の回転は、種子が大きい程速くする。種子が大きいほど加工室の回転を速くする理由は、加工室に収容された種子の総表面積の比率が、種子が大きいほど小さくなるので、種子が大きくなる程回転数をあげないと、スプレーコーティングした時に転がりかたが緩慢になり、コーティング斑を生じる原因となるので、これを回避するためである。種子は、加工室内で転動する。 【0019】第3工程 加工室内で加温されている種子に対して菌体保持溶液をスプレーでフィルム状にコーティングする。菌体保持溶液は、加工原料の種子重量に対して重量比で0.4%/分位でスプレーしてコーティングする。このスプレーによるコーティング時間は、25〜30分位である。コーティング時間が30分を超えないようにしたのは、該時間が30分を超えるとコーティング処理された微生物の生存率が著しく低下するからである。種子は、加工室内で転動しながら、菌体保持溶液が均一な厚さ(セロファン紙位の厚さ)のフィルム状にコーティングされる。 【0020】第4工程 菌体保持溶液が均一な厚さのフィルム状にコーティングされた有用微生物コーティング種子に対する温風供給を停止して加温を止め、該種子の品温を室温まで降下させる。この品温の降下は、前記コーティング種子を加工室内で転動せしめて行う。前記品温降下のためのコーティング種子の転動は、加工室の回転数を10rpmに減速し、10〜15分位回転させ続けて行う。かくして、有用微生物がフィルム状にコーティングされた種子が製造される。 【0021】 【発明の効果】本発明は、叙述のように有用微生物が固定化された微生物固定化溶液に、2液からなるバインダー、薬剤などを混合した菌体保持溶液を豆類の種子にフィルム状にコーティングしたこと、有用微生物を固定化する固定化溶液が砂糖、ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、水からなるということなどによって、次のような効果を発揮する。砂糖によって、微生物固定化溶液に固定化された微生物の保持性が向上し、微生物コーティング種子を播種した後、土壌中での微生物活性の回復が向上する。水溶性高分子化合物の分子の架橋構造中に微生物が封じ込められ、農薬、湿度、温度などといった外的環境要因から、封じ込められた微生物を保護し、該微生物をしっかり固定化する。マメ科種子で知られている種子表面に存する毒性物質から微生物が保護され、同時に、微生物固定化溶液中での微生物の分散性が改善される。微生物の種子表面への付着性が良好になり、光沢のある種子表面であっても良好な付着性を発揮し、同時に、乾燥性も良好であり、必要以上に温風に曝さなくても加工処理することができるようになる。有用微生物コーティング種子を播種した後、種子にとって有害な土壌中の微生物が駆除され、農作物の生育が旺盛になり、高品質の生産物を収穫することが期待される。有用微生物コーティング種子であるため、前記固形成分キャリアを使用する1番目の従来技術に比して、播種時において播種機の設計を変更する必要がなく、未加工状態の種子と同様に作業に供することができる。有用微生物コーティング種子に含まれる微生物、薬剤などの有用な成分の働きによって、それら成分を改めて種子に付着させる手間が省ける。 以上 |
| 【出願人】 |
【識別番号】597012460 【氏名又は名称】十勝農業協同組合連合会
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)6月17日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】早川 政名 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−4606 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)1月12日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−159703 |
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