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【発明の名称】 作業車両の動力取出装置
【発明者】 【氏名】渡部 勉

【氏名】石丸 秀司

【氏名】小山 浩二

【要約】 【課題】作業機の上昇に連動してPTO軸の回転を切りとするトラクタ等の作業車両は、この切りのタイミングを生産時などに設定し常に一定としている。このため、例えば車体の沈下が大きい軟弱な土壌では、作業機が土中に残ったままで動力を切りとし作業地を残してしまったり、過剰な負荷が係って同装置を破損するという課題があった。

【解決手段】作業機1の高さを変更する昇降装置2と、前記作業機1を駆動するPTO軸34とを備えたトラクタにおいて、前記PTO軸34に動力伝達を入切りするクラッチ機構4を設け、このクラッチ機構4を前記昇降装置2が作業機1を上昇したときに切りとなるように連動部材5を介して連結すると共に、この連動部材5には該クラッチ機構4が切りとなるときの作動位置をターンバックル6により調整する構成とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 作業機1の高さを変更する昇降装置2と、前記作業機1を駆動するPTO軸34とを備えた作業車両において、前記PTO軸34に動力伝達を入切りするクラッチ機構4を設け、このクラッチ機構4を前記昇降装置2が作業機1を上昇したときに切りとなるように連動部材5を介して連結すると共に、この連動部材5には該クラッチ機構4が切りとなるときの作動位置を調整する調整機構6を備えたことを特徴とする作業車両の動力取出装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、農業用、建設用等の作業車両の動力取出装置に関し、特に装着する作業機の上昇に連動してPTO軸の回転を切とするものに関する。
【0002】
【従来技術、及び発明が解決しようとする課題】従来、農業用トラクタなどには、PTO軸に動力伝達を入切りするクラッチ機構を設け、このクラッチ機構を作業機が上昇したときに切りとする連動機構を備え、泥等の飛散を防止するものがあった。しかしながら、前記従来の作業機の上昇に連動してPTO軸の回転を切りとする作業車両は、この切りのタイミングを生産時などに設定し常に一定としていたため、例えば車体の沈下が大きい軟弱な土壌では、作業機が土中に残ったままで動力を切りとし作業地を残してしまったり、過剰な負荷が係って同装置を破損するという課題があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記課題に鑑みて作業車両の動力取出装置を以下のように構成した。即ち、作業機1の高さを変更する昇降装置2と、前記作業機1を駆動するPTO軸34とを備えた作業車両において、前記PTO軸34に動力伝達を入切りするクラッチ機構4を設け、このクラッチ機構4を前記昇降装置2が作業機1を上昇したときに切りとなるように連動部材5を介して連結すると共に、この連動部材5には該クラッチ機構4が切りとなるときの作動位置を調整する調整機構6を備えたことを特徴とする作業車両の動力取出装置とした。
【0004】
【発明の効果】以上のように構成した作業車両の動力取出装置は、各種作業環境に応じて、調整機構6により作業機1を上昇したときに動力伝達を切りとするタイミングを任意に変更することができるので、前述のように作業効率を損なったり、作業機の破損を防止することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を農業用トラクタについて説明する。トラクタ車体7は、前部のボンネット8下に搭載のエンジン9から後側に、クラッチハウジング10、フロントミッションケース11、及びリヤミッションケース12を連接している。ステアリングハンドル13で操向する前車輪14と、操縦席15の後部でリヤミッションケース12外側のリヤアクスルハウジング18に軸装の後車輪16とを伝動して走行する構成となっている。17はフェンダーである。
【0006】昇降装置2は、リヤミッションケース12の上側に設けられる油圧ケース19に油圧力で作動される油圧シリンダ20とピストン21とを有し、リフト軸22回りに上下回動するリフトアーム23を、ピストンロッド24で連動作動する構成である。前記フロントミッションケース11内には、変速装置が設けられて、ピニオンギヤ軸25を伝動して、リヤミッションケース12内のリヤデフ軸26を駆動すると共に、フロントミッションケース11内の前輪伝動軸27を駆動できる。これらの伝動で前車輪14と後車輪16とを駆動して走行する。
【0007】又、フロントミッションケース11内のPTO伝動軸28は、リヤミッションケース12後部の変速軸29を伝動し、変速ギヤ30,31を介して、カウンタギヤ32,33とPTOクラッチ4とを軸装するPTO軸34を連動構成する。このPTO軸34はリヤミッションケース12後端に突出して、自在継手や伸縮軸継手等を有する伝動軸35を介して作業機1を伝動する動力取出機構3を構成する。
【0008】前記変速ギヤ30,31は、シフター操作されて、ギヤ30をPTO軸34上のカウンタギヤ32に噛合させてPTO軸34を高速で伝動すると共に、ギヤ31をカウンタギヤ33に噛合させて低速伝動とする構成となっている。このカウンタギヤ33はPTO軸34の方向に沿って前に移動できる。前記カウンタギヤ33と、PTO軸34との間には、湿式ディスク形態のPTOクラッチ4を設けて、クラッチばね36及びプレッシャプレート37を介在させて、シフタカム38の回動でこのカウンタギヤ33の押圧力を解除状態におくとき、該クラッチばね36でこのカウンタギヤ33を前側のカウンタギヤ32の方向へ張圧させて、PTOクラッチ4を圧接させてクラッチ入りの状態とする。
【0009】又、シフタカム38の回動で、クラッチばね36に抗してカウンタギヤ33を後側のPTOクラッチ4側へ移動させると、PTOクラッチ4がクラッチ切りの状態となる。このようなカウンタギヤ33の前後移動があっても、変速ギヤ31との噛合、離脱の関係は変らない。前記シフタカム38は、リヤミッションケース12にカム軸が軸支され、このリヤミッションケース12の外側部にシフタアーム39が設けられて、このシフタアーム39と前記リフトアーム23との間をターンバックルで伸縮調節できる調整機構6を有したロッド連動部材5で連結する。この連動部材5の下端には長孔40を形成して、前記シフタアーム39の連動ピン41を係合させている。
【0010】このようなリフトアーム23とPTOクラッチ4との間の連動部材5による連結によって、リフトアーム23が下降位置にあるときは、PTOクラッチ4が入りの状態にあってPTO軸34を伝動するが、リフトアーム23が上昇位置にあると、PTOクラッチ4が切りの状態となってPTO軸34を伝動しない。前記シフタカム38は、シフタアーム39で回動される丸棒からなるアーム軸の一部を切欠いで切欠部42を形成し、この切欠部42がカウンタギヤ33に対向するとき、クラッチばね36でカウンタギヤ33が前側へ引き寄せられてPTOクラッチ4の入りとし、切欠部42以外のシフタカム38部がカウンタギヤ33をクラッチばね36に抗して押圧してPTOクラッチ4の切りとしている。
【0011】図2は、前記調整機構6による連動部材5の長さを標準長Nに設定した場合を示すが、リフトアーム23が下位Aから上昇して長孔40の下端部がシフタアーム39の連動ピン41に係止する位置Bに上動された位置ではPTOクラッチ4が入りにあるが、リフトアーム23がこの位置B以上に回動されると、シフタアーム39がクラッチ入り位置aから回動されてPTOクラッチ4が切りになる。
【0012】図3は、前記調整機構6により連動部材5の長さを前記標準長Nよりも短かくした短縮長Mの場合と、長くした伸長Lの場合とを示す。この連動部材5を最短長Mとすると、リフトアーム23の下動作業位置Aで長孔40の下端に連動ピン41を位置させることができ、この場合は、リフトアーム23が作業位置Aから上昇すると直ちPTOクラッチ4が切り開始される。
【0013】又、連動部材5を最大長Lとすると、リフトアーム23の下動作業位置Aで長孔40の上端部に連動ピン41を位置させることができ、この場合は、リフトアーム23が前記標準長Nの場合の上昇角位置B時よりも更に上昇した角度位置CでPTOクラッチ4が切りとなる。このように調整機構6の調節操作でリフトアーム23の上昇角度、即ち作業機1の上昇位置に対するPTOクラッチ4の切り位置、及び入り位置を変更することができ、作業機1の作業深さや連結高さ等に応じて適切なタイミングに調節できる。
【0014】前記作業機1は、ロータリ耕耘装置として、車体7の後部にトップリンク43やロワリンク44からなる三点リンク機構で連結し、このロワリンク44をリフトアーム23にリフトロット45で連結して、リフトアーム23の上下回動で耕耘作業機1を昇降して耕深を調節できると共に、作業姿勢と非作業姿勢とに昇降できる。
【0015】この耕耘作業機1の入力軸46には前記伝動軸35が連動されていて、前記PTOクラッチ4の入りによって耕耘爪47を伝動回転して耕耘でき、切りによって停止できる。前記のようにリフトアーム23の上昇で耕耘作業機1が土壌面から上昇して非作業位置になると、PTOクラッチ4が切りとなって耕耘爪47の回転も停止して、安全を図ることができる。
【0016】図5において、上例と異なる点は、前記PTOクラッチ4にブレーキ48を設けて、リフトアーム23が上昇することにより、PTOクラッチ4が切りになると、これと同時にブレーキ48が制動されてPTO軸34の慣性による回転が速かに制止される。前記ブレーキ48は、前記PTO軸34上でリヤミッションケース12の後壁49に固定のブレーキディスク50と、PTOクラッチ4の切り位置でカウンタギヤ33の後側に一体形成のクラッチディスクホルダ51で押圧されて、該ブレーキディスク50に押圧されるブレーキディスク52とから構成され、これらブレーキディスク50,52の押圧摩擦力によってPTO軸34の回転が制動される。
【0017】図6において、上例と異なる点は、前記PTOクラッチ4を、前記リフトアーム23を昇降操作するためのポジションレバー53を下げ位置Dから上げ位置Uへ操作することによって、リンク54を経てシフタアーム39を連動してPTOクラッチ4を切りにする。このポジションレバー53は、前記油圧ケース19の一側ブラケット56にレバー軸55で支持される。
【0018】このポジションレバー53は、ポテンショメータ等を介してコントローラに入力して、このコントローラからの出力で油圧シリンダ20の油圧回路のコントロールバルブ57を作動させて、ポジションレバー53の操作位置に前記リフトアーム23を回動させることができる構成としている。以上のように構成したトラクタ7の動力取出装置は、沈下の大きな軟弱な圃場で作業を行うときには、調整機構6のターンバックルを短縮し、作業機が高い位置でクラッチを切りとする。反対に硬質な圃場や溝部を作業するときには、調整機構6のターンバックルを伸長して、より低い位置で動力伝達を切りとする。これにより、作業機の上昇に伴う泥などの飛散を防止すると共に、作業機が土中にあるまま駆動を停止して作業地を残したり、過剰な負荷の為作業機の破損を防止することができる。
【0019】尚、この発明の別形態としては、前記調整機構6をダイヤル式設定器とし、ソレノイドバルブを切換えてPTOクラッチ4を切りとする電気式連動機構に構成しても良いし、同クラッチ4の圧力を調整してPTO軸34の回転を前記泥の飛散が無い程度に低速に切り換える構成としても良い。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月21日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−318113
【公開日】 平成11年(1999)11月24日
【出願番号】 特願平10−139381