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【発明の名称】 移動農機の操向装置
【発明者】 【氏名】江田 秀弥

【氏名】山▲崎▼ 達也

【要約】 【課題】左右のサイドクラッチの切替え時に機体が停止する等の走行作動に障害を与えないようにする。

【解決手段】コンバイン11は、機体進行方向を自動的に制御すべく設けられた方向センサ82と、この方向センサ82からの信号に基づき制御部111を介して出力されるサイドクラッチ切り作動信号により、電磁ソレノイド71L,71Rを介して出没制御される作動ピン72L,72Rとを備えている。そして、方向センサ82からの信号に基づき、例えば左側のサイドクラッチ切り状態から右側のサイドクラッチ切り状態に切替えられる場合に、右側の電磁ソレノイド71Rの作動を所定時間禁止する遅延タイマ121を設け、サイドクラッチ切り作動信号が左右に連続して出力された場合にのみ、前記遅延タイマ121を作動させるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸方向に摺動して左右の各サイドクラッチの入切を行う各サイドクラッチギヤと、該各サイドクラッチギヤに一体的に組み込まれたそれぞれの各カムと、機体進行方向を自動的に制御すべく設けられた方向センサと、該方向センサからの信号に基づき制御部を介して出力されるサイドクラッチ切り作動信号により、電磁アクチュエータを介して出没自在に制御され、前記カムと係合あるいは離脱して前記左右の各サイドクラッチギヤを摺動させるそれぞれの作動ピンと、を備える移動農機の操向装置において、左右いずれか一方のサイドクラッチ切り状態から、前記サイドクラッチ切り作動信号が出力されて左右いずれか他方のサイドクラッチ切り状態に切替えられる場合に、左右いずれか他方の前記電磁アクチュエータの作動を所定時間禁止する遅延手段を設け、前記サイドクラッチ切り作動信号が左右に連続して出力された場合にのみ、前記遅延手段を作動させて、前記左右の各カムに対する前記左右何れか一方の作動ピンの離脱作動後に、前記左右何れか他方の作動ピンの係合作動をなし得るようにした、ことを特徴とする移動農機の操向装置。
【請求項2】 前記遅延手段の遅延時間は、走行速度に連動して低速走行時に長く、高速走行時に短くなるように設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の移動農機の操向装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンバイン、ハーベスタ等の移動農機の操向装置に係り、さらに詳しくは、方向センサにより機体進行方向を自動的に制御可能な移動農機の操向装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、この種のコンバインやハーベスタ等の移動農機においては、走行方向に対応して機体の左右に配置した一対のクローラ走行部、及び各クローラ走行部に搭載エンジンの走行駆動力を各別に伝達するそれぞれの各サイドクラッチを備えると共に、自走走行時(移動走行時、作業走行時等)の進行方向制御のためには、対応する各サイドクラッチを手動的に入切切替えする操作手段の他、各サイドクラッチを自動的に入切切替えする操作手段、例えば、刈り取り作業中に穀稈の株列を検知して出力する方向検知センサ手段を配置させている。
【0003】上記構成において、機体を旋回するには、方向検知センサによる操作手段の場合、方向検知センサからの検知出力により、それぞれに該当する側の油圧シリンダの作動杆を伸長作動させてサイドクラッチを切ることで、所望方向への旋回を可能にしている。
【0004】そして、前記サイドクラッチの切り作動に際しては、例えば、操作手段の場合、本出願人の既提案に係る特開平6−298116号公報に開示されているように、走行操作レバーを切り側に操作することにより、先ず最初に、介在されている該当側の電磁ソレノイド(電磁アクチュエータ)に通電して励磁させ、該励磁によって突出作動するソレノイドピン(作動ピン)を対応するサイドクラッチギヤに一体化した作動カム面に当接係合させ、該作動カム、ひいてはサイドクラッチギヤを軸方向に移動させてクラッチの噛み合いを外し(サイドクラッチの断)、かつほぼ同時に油圧シリンダを作動させて該サイドクラッチの切り状態を保持するようにした手段が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、方向検知センサ手段に基づき各サイドクラッチを自動的に入切切替えする場合、例えば、右方のサイドクラッチを切って右方に旋回している状態で、引き続き瞬時に左方に切替え操作指令が発せられると、あらかじめ与えられている機構構成のために、右方のサイドクラッチギヤの作動カム面にソレノイドピンが乗り上げた状態(右方のサイドクラッチの切り状態)のままで、同時に左方のサイドクラッチのソレノイドピンが突出(同様に今度は、左方のサイドクラッチの切り状態)されて同様な操作がなされることになり、この結果、左右双方のサイドクラッチが同時に断たれて、走行中に機体が急停止してしまうという惧れがあるほか、その操作フィーリングも甚しく悪化することになるものであった。
【0006】すなわち、穀稈の刈り取り作業等において、刈り取り走行中に該穀稈列の株位置検出を自動的に行う位置検出センサからの走行切換え信号によって行う場合には、通常では、例えば機体の右旋回を行う場合、該当する電磁アクチュエータが励磁されてソレノイドピンが突出し、該右方のソレノイドピンが該当側の作動カムの凸部(カム面)に乗り上げて係合され、右方のサイドクラッチが外れて右方側のクローラ走行部への回転駆動力が絶たれると共に、該当側の制動がなされて左方側のクローラ走行部のみの駆動で所望の右旋回がなされる。
【0007】そして、この場合、何らかの理由で、引続き走行操作レバーを左方に左旋回を行う場合には、未だ前記右方のソレノイドピンが該当側のカム凸部に乗り上げたままであり、しかも、この状態では、該右方のソレノイドピンによるサイドクラッチを断つための作動抵抗が比較的強大であることから、たとえ、該当する右方の電磁アクチュエータの励磁が解かれても、該右方のソレノイドピンの急速な復帰は不可能であるために、左方のソレノイドピンの突出が同時になされること、つまりは、右旋回に引き続いて左旋回がなされることで、左右双方のサイドクラッチが同時に断たれて機体自体が停止するという不都合を生ずるものであった。
【0008】従って、本発明の目的とするところは、左右のサイドクラッチの切替え時に機体が停止する等の走行作動に障害を与えることなく、しかも車速の如何に関係なく良好に行い得るようにした移動農機の操向装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係る請求項1に記載の発明は、軸方向に摺動して左右の各サイドクラッチの入切を行う各サイドクラッチギヤ(51R,51L)と、該各サイドクラッチギヤ(51R,51L)に一体的に組み込まれたそれぞれの各カム(61R,61L)と、機体進行方向を自動的に制御すべく設けられた方向センサ(82)と、該方向センサ(82)からの信号に基づき制御部(111)を介して出力されるサイドクラッチ切り作動信号により、電磁アクチュエータ(71R,71L)を介して出没自在に制御され、前記カム(61R,61L)と係合あるいは離脱して前記左右の各サイドクラッチギヤ(51R,51L)を摺動させるそれぞれの作動ピン(72R,72L)と、を備える移動農機(11)の操向装置において、左右いずれか一方のサイドクラッチ切り状態から、前記サイドクラッチ切り作動信号が出力されて左右いずれか他方のサイドクラッチ切り状態に切替えられる場合に、左右いずれか他方の前記電磁アクチュエータ(71R,71L)の作動を所定時間禁止する遅延手段(121R,121L)を設け、前記サイドクラッチ切り作動信号が左右に連続して出力された場合にのみ、前記遅延手段(121R,121L)を作動させて、前記左右の各カム(61R,61L)に対する前記左右何れか一方の作動ピン(72R,72L)の離脱作動後に、前記左右何れか他方の作動ピン(72R,72L)の係合作動をなし得るようにした、ことを特徴としている。
【0010】本発明に係る請求項2に記載の発明は、前記遅延手段(121R,121L)の遅延時間(tD )は、走行速度に連動して低速走行時に長く、高速走行時に短くなるように設定されている、ことを特徴としている。
[作用]従って、本発明の操向装置によれば、一方のサイドクラッチギヤ(51R,51L)の切り操作時に、遅延手段(121R,121L)の作用により、該当側の作動カム(61R,61L)から作動ピン(72R,72L)が離脱するのを待ってから、他方のサイドクラッチギヤ(51R,51L)の切り操作がなされるようにしたので、双方の作動ピン(72R,72L)の同時作動が禁止されて、機体自体が停止するという不都合が解消される。また、前記遅延手段(121R,121L)の遅延時間(tD )が、走行速度に連動して低速走行時に長く、高速走行時に短くなるように設定されているため、走行速度に影響されずに上記作用が果される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る移動農機の操向装置の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】図1は、本発明の実施形態を適用したコンバイン(移動農機)の外観を示す斜視図である。同図1に示す実施形態の構成において、コンバイン11は、自走用の左右一対のクローラ走行装置13L,13Rを走行方向に沿わせて配置した機体12を有しており、該機体12の上部を占める運転席14の操作パネル15には、操作レバー(マルチステアリングレバー)16が設けられている。そして、本機自体は、搭載されているエンジン17からの出力で各クローラ走行装置13L,13Rを駆動させて自走走行する。
【0013】前記機体12の前方には、穀稈を刈り取るための昇降自在な前処理部18が設けられ、該穀稈の刈り取り作業中は、前記操作レバー16の左右傾動操作による操向制御、又は後述する方向センサ82からの指令のもとで、立毛穀稈列条に沿い機体12を走行させて所要の刈り取りを継続して行うようになっている。
【0014】図2〜図7に示すように、前処理部18における左右の前処理フレーム81R,81Lの前部には、デバイダ83R,83Lが取り付けられており、その中央の前処理フレーム81Cには、上下位置に株元搬送ガイド80U,80Lが固定されていると共に、穀稈列の株位置検出を自動的に行って機体12の進行方向を自動的に制御し得る方向センサ82が設けられている。この方向センサ82には、機体12の進行方向左右側にセンサバー84R,84Lが揺動可能に取り付けられている。そして、この方向センサ82からの信号により、後述する図8の制御部111を介して油圧ソレノイドバルブ71を作動させ、サイドクラッチ機構により機体12の進行方向を自動的に制御できるようになっている。
【0015】前記センサバー84R,84Lは、図3及び図4に示すように、株元搬送ガイド80U,80Lの妨げとならないよう、その後退角θを大きく設定する必要があると共に、センサバー84R,84Lによる検知はできるだけ前方で行うことが要求される。そして、このセンサバー84R,84Lの形状を、図5(a)のように、途中から折り曲げてθ=30°の後退角を持たせている。これは、図5(b)の形状とすれば、前後左右方向の検知位置を同一とした場合、θ=15°の後退角しかとれず株元搬送の妨げとなるからである。
【0016】また、図6に示すように、左右のセンサバー84R,84Lの長さが同一であると、左デバイダ83Lが未刈株を割るためカジリが発生すると共に、割らないように左右のセンサバー84R,84Lの長さを長くすると、動作不感帯が小さくなり、乗車フィーリングが悪くなる。このため、図7に示すように、左のセンサバー84Rの長さ(L1 )を株割りしない長さにまで伸ばした上で、右のセンサバー84Lの長さ(L2 )を乗車フィーリング、条外れの許容する範囲内において短く(L1 >L2 )している。
【0017】次に、前記コンバイン11の動力伝達系を構成するトランスミッション21は、図8ないし図10に示されているように、前記エンジン17から出力される駆動力が、入力プーリ22を介してメインシャフト(入力軸)23に伝達され、かつ次の各伝達機構を経て前記左右の各クローラ走行装置13L,13R、前処理部18および油圧ポンプ31等を駆動させるようになっている。
【0018】すなわち、トランスミッション21は、主クラッチAを組み込んだ第1シャフト24と、前記前処理部18への駆動力取り出し部Bを組み込んだ第2シャフト25と、変速機構Cを組み込んだ第3シャフト26および第4シャフト27と、左右一組づつの各サイドクラッチ機構DL,DR およびブレーキ機構EL,ER を組み込んだ第5シャフト28と、それに、これらの各シャフトに装着されるギヤ列群を介して前記左右の各クローラ走行装置13L,13Rに駆動力を伝達する左右一組のドライブシャフト29L,29Rおよびドライブギヤ30L,30Rとで構成されている。
【0019】なお、この場合、上記個々の符号に付した各添字“L,L”は、機体12の走行方向に対して左(LEFT)側に該当する各部もしくは各部材を示しており、R,Rは、同右(RIGHT) 側に該当する各部もしくは各部材を示すもので、以下の記述についても全く同様である。
【0020】前記メインシャフト23によって駆動される油圧ポンプ31は、後述するように、油圧バルブ32(図13を参照)を介して各部の油圧作動機構を作動させるための油圧源を構成している。そして、例えば、図8および図10に示されているように、油圧作動される油圧シリンダ33L,33Rは、シリンダ軸34L,34Rと、該シリンダ軸34L,34Rの摺動作動で所要角度だけ揺回動されるシフタ35L,35Rとを有しており、シフタ35L,35Rに一体的に連繋されたシフトフォーク36L,36Rによって前記サイドクラッチ機構D(DL,DR )の切り動作対応にブレーキ機構E(EL,ER )を作動制御する。
【0021】前記第1シャフト24は、主クラッチAの作動(作動機構については不図示)により、前記メインシャフト23を通して得られる前記エンジン17からの駆動出力を入切する。
【0022】前記第2シャフト25に伝達される駆動力は、駆動力取り出し部Bとしてのワンウエイクラッチ41を介して出力プーリ42から取り出され、前処理部18を作動させるための動力源になる。
【0023】前記第3シャフト26および第4シャフト27の変速機構Cは、伝達される駆動力の回転数を各段毎に変速(各変速段の詳細については詳述せず)する。
【0024】前記第5シャフト28の各サイドクラッチ機構DL,DR は、図9および図11に示されているように、左右一組のサイドクラッチギヤ51L,51Rを有しており、これらの各サイドクラッチギヤ51L,51Rは、第5シャフト28のシャフト上に対して、スプライン等で軸方向にのみ摺動自在に嵌挿されると共に、シャフト上に巻き掛けて介装した戻しスプリング52L,52Rにより、常にクラッチ入り方向に付勢されている。
【0025】そして、左右双方のサイドクラッチ機構DL,DR が入り状態にあるとき、つまり、後述する操作レバー16が中立位置(又は方向センサ82による自動操向時で直進状態)にあるときには、該当する左右双方の各サイドクラッチギヤ51L,51Rの対向側各端部のそれぞれが、戻しスプリング52L,52Rの付勢力によって、センターギヤ53での左右の各ドグ54L,54Rに係合されており、この状態では、各サイドクラッチ機構DL,DR を介したセンターギヤ53からの前記左右の各ドライブギヤ30L,30Rおよびドライブシャフト29L,29Rを経た上での前記左右の各クローラ走行装置13L,13Rへの走行駆動力の伝達がなされる。
【0026】また、左右何れか一方のサイドクラッチ機構DL またはDR が入り状態にあるとき、つまり、例えば、操作レバー16が左方傾動位置(又は方向センサ82による右方のセンサバー84Lのオン時)、または右方傾動位置(又は方向センサ82による左方のセンサバー84Rのオン時)にあるときには、前者の場合、該傾動側該当のサイドクラッチギヤ51Lの端部がドグ54Lに非係合にされて、左方のクローラ走行装置13Lへの走行駆動力が断たれ、且つ右方のクローラ走行装置13Rのみへの走行駆動力の伝達がなされて左旋回が行われ、これとは逆に、後者の場合、該傾動側該当のサイドクラッチギヤ51Rの端部が、ドグ54Rに非係合にされて、右方のクローラ走行装置13Rへの走行駆動力が断たれ、且つ左方のクローラ走行装置13Lのみへの走行駆動力の伝達がなされて右旋回が行われる。
【0027】なお、前記方向センサ82による自動操向の場合、該方向センサ82からの信号により制御部111を介して油圧ソレノイドバルブ71を作動させ、更に油圧シリンダ33を作動させてサイドクラッチ機構DL ,DR を入切制御する。
【0028】ここで、前記左右それぞれの各サイドクラッチ機構DL,DR における駆動力の入切作用について一層詳細に述べる。
【0029】図8、図10および図11に示されているように、前記左右の各サイドクラッチギヤ51L,51Rに対しては、それぞれにカム61L,61Rが一体的に設けられると共に、該左右の各カム61L,61Rのカム面62L,62Rには、軸方向側左右に突出するカム凸部63L,63Rがほぼ180度の位相差で2ヶ所に形成されており、左右の各電磁アクチュエータとしてのソレノイド71L,71Rから突出される各ソレノイドピン72L,72Rと、前記各カム61L,61Rのカム凸部63L,63Rとの協働作用により、前記各サイドクラッチギヤ51L,51Rを軸方向に摺動操作させることで所要のクラッチ切り動作を行い得るようになっている。なお、73L,73Rは、前記各ソレノイドピン72L,72Rの戻しスプリングである。
【0030】すなわち、前記操作レバー16又は方向センサ82からの旋回指令に伴い、制御部111を介してソレノイド71L(または71R)が励磁されることにより、ソレノイドピン72L(または72R)が突出してサイドクラッチギヤ51L(または51R)のカム61L(または61R)に嵌入当接され、且つ該当接状態でのサイドクラッチギヤ51L(または51R)の回転駆動に基づき、該サイドクラッチギヤ51L(または51R)のそれ自体が、軸方向に摺動してセンターギヤ53のドグ54L(または54R)から外れ、この結果、該当するクローラ走行装置13L(または13R)への走行駆動力が切られるのである。
【0031】このときのサイドクラッチ切り動作の態様を図12に順次に示す。
【0032】図12(a)ないし(d)は、前記カムの回転に伴うソレノイドピンとカムとの相対的な位置関係を作動順に示す説明図である。この場合のサイドクラッチ切り動作は、左方のサイドクラッチ機構DL についてのみ述べる。なお、ここでのサイドクラッチ切り動作は、実質的に、センターギヤ53のドグ54Lからサイドクラッチギヤ51Lの端部の係合が外れることであり、且つこれと同時に、ブレーキ機構EL によって該切り動作状態が保持されることである。
【0033】すなわち、サイドクラッチギヤ51Lに付随するカム61Lが、図に矢印で示す時計方向に回転駆動されている場合、ソレノイド71Lへの通電励磁によって突出されるソレノイドピン72Lと、該ソレノイドピン72Lが当接されるカム61Lのカム凸部63Lとの間の相対的な角度位置の関係が、回転角度において+42.80°の位相差関係にある位置に至るまでは、サイドクラッチが入り状態に保持されている。
【0034】前記サイドクラッチの入り状態で、カム61Lの矢印方向への回転が進み、図12(a)に示すように、ソレノイドピン72Lとの位相差が+42.80°の位置に達した時点から、カム凸部63Lが、自身の回動に伴い、ソレノイドピン72Lに乗り上げることで押され、戻しスプリング52Lの弾圧力に抗して軸方向に摺動されることになり、これによってサイドクラッチ切り動作が開始される。
【0035】引続き、矢印方向へのカム61Lの回転が継続されて、図12(b), (c)に示すように、±16.30°の範囲内に達した時点では、サイドクラッチ切り動作が終了するのであり、該切り動作の終了に合わせて、ブレーキ機構EL によるブレーキ作動が行われることで、該サイドクラッチ切り状態が保持されるのである。
【0036】そして、このサイドクラッチ切り状態から、再度、サイドクラッチ入り状態に復帰させるのには、一旦、ブレーキ作動を解放した上で、さらに回転を進めることにより、図12(d)に示すように、前記とは逆の動作によってクラッチ入り動作が開始され、且つ半回転位置で該入り動作が終了するのである。
【0037】ここで、本実施形態においては、左右いずれか一方のサイドクラッチ切り状態から、前記サイドクラッチ切り作動信号が出力されて左右いずれか他方のサイドクラッチ切り状態に切替えられる場合に、左右いずれか他方の前記電磁アクチュエータ71L,71Rの作動を所定時間禁止する遅延タイマ121L,121Rを設け、前記サイドクラッチ切り作動信号が左右に連続して出力された場合にのみ、前記遅延タイマ121L,121Rを作動させて、前記左右の各カムカム61Lまたは61Rに対する前記左右何れか一方の作動ピンソレノイドピン72Rまたは72Lの離脱作動後に、前記左右何れか他方の作動ピンソレノイドピン72Rまたは72Lの係合作動をなし得るようにする。
【0038】つまり、この場合、遅延タイマ121L,121Rによる遅延時間は、ソレノイドピン72Lまたは72Rが、対応するカム61Lまたは61Rのカム凸部63Lまたは63Rに乗り上げて越えるまでの時間相当に設定させるのである。
【0039】図13(a)〜(d)は、本実施形態によるタイミングチャートである。
【0040】すなわち、従来の通電タイミングの場合には、右方に傾動操作した後に直ちに左方に傾動操作すると、先にも述べたように、先行する右傾動操作に伴い、該当するソレノイドピン72Rの突出と、該ソレノイドピン72Rへのカム凸部63Rの乗り上げ(右サイドクラッチの切り状態)とがなされたまま、つまり、該ソレノイドピン72Rが復帰しないままの状態で、継続する左傾動操作に伴い、該当するソレノイドピン72Lの突出と、該ソレノイドピン72Lへのカム凸部63Lの乗り上げ(左サイドクラッチの切り状態)とが行われることになり、この結果、本機自体が走行停止してしまうことになる。
【0041】このような従来の通電タイミングに対して、図13に示す本実施形態の通電タイミングの場合には、右方に傾動操作した後に直ちに左方に傾動操作しても、制御部111に組み込まれている遅延タイマ121L(121R)によってソレノイド71R(71L)への通電が所定時間(tD )相当に遅延されるため、先行する右傾動操作で突出されているソレノイドピン72R(72L)が復帰した後でなければ、対応するソレノイドピン72L(72R)が突出されることがなく、結果的には、本機自体が走行停止するという惧れが解消されるのである。
【0042】そして、本実施の形態では、前記遅延タイマ121L(121R)による遅延時間(tD )は、走行速度に連動して低速走行時には長く、高速走行時には短くなるように設定されている。すなわち、前述した図13(d)において、遅延時間(tD )を車速連動として変化できるようにし、これにより、機体走行速度が低速から高速に至るまで、例えば、右方のソレノイドピン72Rが復帰した後でなければ、対応する左方のソレノイドピン72Lが突出されることがなく、確実に上記不具合を回避することができる。
【0043】図14は、前記カム61L,61Rにおけるカム面62L,62Rおよびカム凸部63L,63Rの連続する各輪郭と、その回転角度との関係を示すもので、この場合、前記カム61L,61Rの回転に伴い、前記ソレノイドピン72L,72Rにカム面62L,62Rが乗り上げつつある状態、これを換言すると、ソレノイドピン72L,72Rが、同図14の(a)と(b)間(始点0°位置から26.5°までの角度範囲)のカム面62L,62R上にあるときには、サイドクラッチが半噛み(半係合)状態にあり、引続き、ソレノイドピン72L,72Rに対してカム凸部63L,63Rが同図14の(b)と(c)間(これに続く32.6°までの角度範囲)に移動したとき、つまり、カム凸部63L,63Rがソレノイドピン72L,72R上に乗り上げた位置では、サイドクラッチが切り状態にされる。
【0044】また、同様にして、ソレノイドピン72L,72Rに対してカム凸部63L,63Rが同図14の(c)と(d)間(その後の26.5°までの角度範囲)に移動することで、再びサイドクラッチが半噛み(半係合)状態に戻り、さらに、ソレノイドピン72L,72Rにカム61L,61Rの平坦面が接することになる同図14の(d)位置から1回転終了までの間(残りの94.4°の角度範囲)においては、再びサイドクラッチが入り状態にされるのである。
【0045】従って、前記ソレノイドピン72L,72Rの突出作動に伴い、カム61L,61Rを介してサイドクラッチを切り状態にするためには、該カム61L,61Rのカム凸部63L,63Rがソレノイドピン72L,72Rに最低1回だけ乗り上げるに足りる必要最小限の回転角相当分(239.1°の角度範囲)の時間だけ、該ソレノイドピン72L,72Rを突出させてやればよいことになり、本実施形態では、前記遅延タイマ121に対して、該当する必要最小限の時間を設定するのである。
【0046】続いて、本実施形態の作用について述べる。
【0047】いま、例えば、コンバインによる刈取作業時において、方向自動スイッチがオンされた状態の自動操向制御時に、穀稈の株列に対し方向センサ82のセンサバー84Lが深く接触して感知すると、左側のサイドクラッチが切られて左側に旋回し、反対に、穀稈の株列に対し方向センサ82のセンサバー84Rが深く接触して感知すると、右側のサイドクラッチが切られて右側に旋回し、また、株列に対しセンサバー84R,84Lが正常な接触の範囲であれば、機体12は直進走行する。
【0048】ところで、前記方向センサ82からの検出信号により、制御部111から出力される右旋回信号によって右方のソレノイド71Rが励磁され、対応する右方のソレノイドピン72Rをカム61R側に突出させ、以後、先に述べた如く、右サイドクラッチが切られ、所期通りに右旋回作動が行われる。
【0049】そして、この場合、遅延タイマ121によって、該右旋回作動から設定遅延時間相当に左方のソレノイド71Lの励磁が禁止されており、たとえ、右側への切替え操作の直後に左側への旋回指令がなされたとしても、対応する左方のソレノイドピン72Lの突出がなされることはなく、該ソレノイドピン72Lについては、遅延タイマ121に設定されている遅延時間のために、先に突出されている右方のソレノイドピン72Rが復帰した後でなければ作動されないもので、この結果、従来のように、左右双方のソレノイドピン72L,72Rの同時突出による機体12の停止が防止されるのである。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、方向自動制御に基づくサイドクラッチ切り作動信号が、左右のサイドクラッチに連続して出力された場合にのみ、遅延手段を作動させて左右何れか一方の作動ピンの離脱作動後に、他方の作動ピンの係合作動がなされるようにしたので、サイドクラッチの切替え時に機体が停止する等の走行作動に障害を生ずる惧れがなく、しかも、サイドクラッチの切替え制御が左右に続けてなされた場合以外には、遅延手段の作動がなされないために、方向切替え時のフィーリングが損なわれることもない。
【0051】また、遅延手段の遅延時間を走行速度に連動させて、低速走行時に長く、高速走行時に短くなるように設定されているので、走行速度に関係なく前記効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
【公開番号】 特開平11−285303
【公開日】 平成11年(1999)10月19日
【出願番号】 特願平10−92066