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【発明の名称】 自動走行方向制御コンバイン
【発明者】 【氏名】吉邨 文夫

【要約】 【課題】穀稈列の中心から偏って通過するような場合にも、すばやく、正常な走行方向に軌道修正ができるコンバインを提供すること。

【解決手段】分草具8を備えた刈取装置と、穀稈列を検出し、かつ穀稈への接触強度に応じた出力値を出力する二つののセンサ61、63とを備え、分草具8が穀稈列に強く接触したことを一方のセンサ61、63の触子62、64が検出した場合には、過去のセンサ61、63の出力信号の履歴から、所定時間の間、穀稈列に接触していない方のセンサ61、63の出力を停止し、コンバインの走行方向を穀稈列に接触していない方のセンサ61、63に向けるように制御をするコンバインである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 分草具を備えた刈取装置と、穀稈列を検出し、かつ穀稈への接触度合いに応じた出力値を出力する二つの穀稈検出手段とを備えたコンバインであって、刈取装置の分草具が穀稈列に接近したことをいずれか一方の穀稈検出手段が検出した場合には、過去の穀稈検出手段の出力信号の履歴から、所定時間の間又は所定距離の間、穀稈列に接触していない方の穀稈検出手段の出力を停止し、コンバインの走行方向を穀稈列に接触していない方の穀稈検出手段側に向ける制御をする制御装置を設けたことを特徴とする自動走行方向制御コンバイン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動走行方向制御を行うコンバインに関する。
【0002】
【従来の技術】コンバインは刈取装置の分草具を穀稈列の間に挿入して前進し、刈刃で穀稈の根元を切断し、刈取られた穀稈は脱穀装置に搬送されて脱穀され、脱穀、分離された穀粒はグレンタンクに一時貯留された後、グレンタンクに連接するオーガによりコンバインの外部に搬出され、これらの走行、刈取り、脱穀、穀粒搬出の各操作は操縦台に搭乗したオペレータの運転操作により行われる。
【0003】刈取装置よる刈取り作業は、穀稈がほぼ直線状に多数列に植設されている圃場において、刈取装置の分草具を穀稈列の間に挿入して前進し、刈刃で穀稈の根元を切断し、穀稈を刈取る。
【0004】コンバインは、水田など湿潤かつ軟弱な圃場を自由に走行しながら刈取作業を可能とするために、走行装置としてはクローラを用いる。クローラを構成する無限履帯は、広い接地面積を持ち、低い接地圧力でコンバインの沈下量を抑えて、コンバインの走行性能を低下させることがないようにしている。
【0005】そして、コンバインを直進走行させるときは左右一対のクローラを等速で駆動し、また、左右に方向変更させるときは左右のクローラに速度差を与えて、高速側のクローラを外側へ、低速側または後退側のクローラを内側へとする旋回が可能なようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】圃場に植立する穀稈列は、播種時の乱れから始まり、その後の生育時の条件にも左右され、ほぼ直線状ではあるものの微妙に曲がりくねっており、コンバインによる刈取作業においては、コンバインの分草具の先端を常に隣接する2列の穀稈列の中心に保つようにコンバインの走行方向を微妙に調節する操縦をしなければならない。この操縦を誤り、コンバインの分草具の先端を穀稈列に突っ込む(「株を割る」という。)と、植立する穀稈を倒伏させて穀稈の刈取不能、穀粒の収穫損失を招くことになり、また穀稈列に分草具を突っ込む衝撃により分草具をはじめとする刈取装置各部に損傷を与えることになる。
【0007】このため、例えば、本発明の実施の形態の図3に示すようなコンバインの刈取装置の分草具の先端付近に穀稈列を検出する検出手段(方向センサ)を備え、検出信号によりコンバインの走行方向を制御して、刈取作業時のコンバインの走行方向を分草具の先端が常に2列の穀稈列の中心に保持できるように調節する、自動走行方向制御装置つきのコンバインが開発されている。
【0008】穀稈列の検出手段として、穀稈列に接触する接触子の移動を回転に変換し、回転角度を電気信号として出力する回転ポジションセンサを左右2個一組として用い、刈取装置の分草具が左右2条の穀稈列の中心を走行するときは、左右の検出手段は低出力で等しい信号を発信する。刈取装置の分草具が左右2条の穀稈列の中心から偏って通過する場合には、穀稈列と接触子との接触状態が変化し、穀稈列に接触しない検出手段はゼロ信号を出力し、穀稈列に接近する検出手段は接近度合いに応じた信号を出力する。そして、検出手段の信号値がしきい値を超えた場合に、コンバインの走行方向を調節することにより自動走行方向制御しているので、刈取装置の分草具が左右2条の穀稈列の中心から多少偏って通過する場合には良好に調節できる。しかし、一旦偏りが著しくなり刈取装置の分草具が穀稈列に突っ込み株を割るような場合には、反対側の検出手段もしきい値を超える信号を出力するので、ますます偏り側に走行方向を変えるように誤制御したり、左右の検出手段が共にしきい値を超える信号を出力するために制御不能となる。
【0009】そこで、本発明の課題は穀稈列の中心から偏って通過するような場合にも、すばやく、正常な走行方向に軌道修正ができるコンバインを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は次の構成により解決される。すなわち、分草具を備えた刈取装置と、穀稈列を検出し、かつ穀稈への接触度合いに応じた出力値を出力する二つの穀稈検出手段とを備えたコンバインであって、刈取装置の分草具が穀稈列に接近したことをいずれか一方の穀稈検出手段が検出した場合には、過去の穀稈検出手段の出力信号の履歴から、所定時間の間又は所定距離の間、穀稈列に接触していない方の穀稈検出手段の出力を停止し、コンバインの走行方向を穀稈列に接触していない方の穀稈検出手段側に向ける制御をする制御装置を設けた自動走行方向制御コンバインである。
【0011】本発明のコンバインのより具体例を説明する。上記本発明のコンバインの穀稈検出手段は穀稈に対する接近度合い応じた(比例など)出力値の信号を出力し、また制御装置は穀稈検出手段の信号値がしきい値を超えた場合は、コンバインの走行方向を調節し、かつ、一方の穀稈検出手段の出力信号がゼロになってから、他方の穀稈検出手段の出力信号がしきい値を超えるまでの時間または距離が、予め設定した時間または距離を超えたときは、その後に出力信号がゼロとなっていた前記一方の穀稈検出手段の信号がしきい値を超えても制御信号として用いない制御を行う。
【0012】
【作用】本発明のコンバインの作用を次に説明する。コンバインが穀稈列に入らない状態では二つの穀稈検出手段(以後、センサと呼ぶことがある。)はともに穀稈に接触しないので、二つのセンサはともに出力信号がゼロである。コンバインが直進走行し、分草具の先端位置が穀稈列と穀稈列の中央に位置する状態では、センサは両者とも穀稈に軽く接触する。また、たとえば、コンバインが右方向に偏って走行した場合、またはコンバインが直進走行するにもかかわらず、穀稈列が左方向に曲がっている場合には、進行方向右側のセンサの穀稈接触が強くなり、進行方向左側のセンサは穀稈に接触しなくなるので、所定時間の間、右側のセンサの出力信号は波形の変動を繰り返しつつ次第に出力値は上昇し、左側のセンサの出力信号はゼロとなる。
【0013】右側のセンサの出力信号レベルが、あらかじめ設定したしきい値に到達した時点において、制御装置は制御信号を発信して、コンバインを若干左に進路変更するように作動するが、制御遅れや制御量が不足であれば、コンバインは遂に分草具は穀稈列に突っ込み(株を割る)、引き続き所定時間の間右寄りに走行する。
【0014】分草具が穀稈列に突っ込んだ後、穀稈列を通り抜けて通過すると右側のセンサの出力信号の出力値は急低下し、今まで右側のセンサが接触していた穀稈列に強く接触するので、左側のセンサの出力信号の出力値は急上昇する。
【0015】しかし、本発明ではこのとき左側のセンサの出力信号がゼロであり、かつ左側のセンサの出力信号がゼロになってから右側のセンサの出力信号がしきい値を超えるまでの間の時間又は距離が、あらかじめ設定した時間又は距離を経過していれば、その後、左側のセンサの出力信号がしきい値を超えても、左側のセンサの出力信号を無視する制御を行う。
【0016】こうして、本発明のコンバインは左側のセンサがしきい値を超える出力信号を発生しても誤って反対方向の右旋回の方向制御を行うことはない。また、右側のセンサと左側のセンサの両センサが同時にしきい値を超える出力信号を発生しても制御不能に陥ることがなく、引き続き右側のセンサの出力信号により左旋回の方向制御を行い、コンバインの走行方向を修正することができる。さらに、左側のセンサが左側の穀稈列に接触する場合には上述と左右反対で同様の作用をして左旋回の方向制御を行う。
【0017】
【発明の効果】こうして本発明によれば、常にコンバインの走行方向を穀稈列のあいだの中央部に自動的に修正してコンバインは正常に刈取走行することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。本発明の一実施の形態である図1は本発明のコンバインの左側面図であり、図2は本発明のコンバインの要部上面図であり、図3は本発明のコンバインの方向センサの部分上面図であり、図4は本発明のコンバインの走行トランスミッション(制動旋回経路)の展開図であり、図5はコンバインの走行トランスミッション(緩・急旋回経路)の展開図であり、図6は走行トランスミッションの側面図であり、図7は本,発明のコンバインの走行方向制御装置のブロック図であり、図8は本発明のコンバインの自動走行方向制御用の条刈方向センサの作動説明図である。
【0019】図1および図2を参照して、コンバイン1の車体フレーム2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ4を有する走行装置3を配設し、該車体フレーム2の前端側に、刈取装置支持フレーム13にそれぞれ取り付けられた、植立穀稈を分草する分草具8、植立穀稈を引き起こす引起しケース9、植立穀稈を刈取る刈刃10、刈取られた穀稈を挟持して後方に搬送する株元搬送装置11、供給搬送装置12などからなる刈取装置6が設けられる。刈取装置6の分草具8の先端部には詳細を後述する方向センサ60(図3)が設けられている。車体フレーム2の上方には、刈取装置6の供給搬送装置12から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン14を有する脱穀装置15と、該脱穀装置15で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク(図示せず)が載置され、グレンタンクの後部にオーガ17を連接して、グレンタンク内の穀粒をコンバイン1の外部に排出する構成としている。
【0020】コンバイン1のオペレータは車体フレーム2の上部右側で刈取装置6とグレンタンク16との中間に設けられる操縦台50の操縦席51に搭乗し、圃場などコンバイン1の前方の状況を注視しながら、操縦台50に設けた操作パネル(図示せず)の各種計器を監視し、パワステレバー52、HSTレバー53など各種操作桿を操作して、コンバイン1の走行、刈取などの運転操作を行う。コンバイン1の走行、刈取り、脱穀、選別、穀粒搬送などに必要な駆動動力は、車体フレーム2の上部で操縦席51の後方下部に搭載したエンジン(図示せず)により供給される。
【0021】図4〜図6を参照して、コンバイン1の走行駆動力の伝動経路を説明する。図4、図5はそれぞれ走行トランスミッションの制動旋回経路展開図、緩・急旋回経路展開図であり、図6は走行トランスミッションの側面図である。
【0022】コンバイン1の操縦席50(図1参照)において、オペレータが前進、後進、旋回の走行操作を行った場合の動力の伝動は以下の装置により行われる。図4、図5に示すように、コンバイン1のミッションケース108の上部には図示しない油圧変速装置HSTを設け、ミッションケース108の内部には一連の歯車、クラッチ、ブレーキなどからなる走行動力伝動機構を内装して走行トランスミッション101を構成している。
【0023】そして、出力軸109は、油圧変速装置HSTの油圧モータ(図示せず)から回転動力を取出す出力軸であって、出力ギヤ110を軸着してミッションケース108の上部に軸架している。
【0024】刈取動力取出し軸111は、出力ギヤ110に噛合させた取出しギヤ112を設け、油圧変速装置HSTによる変速後の回転動力を取り出して刈取装置6(図1)を駆動する構成としている。
【0025】副変速装置114は、変速軸115に小ギヤ116と中ギヤ117と係合爪118とを一体にして軸方向に摺動自在に遊嵌している。大ギヤ119は変速軸115の側端部に遊嵌して上記係合爪118に係合して伝動される構成になっている。
【0026】中間軸120は変速軸115の伝動下手側に軸架し、小ギヤ116に噛合う変速大ギヤ121、中ギヤ117に噛合う変速中ギヤ122、大ギヤ119に常時噛合う変速小ギヤ123をそれぞれ軸着し、前記変速軸115との間に副変速装置114を構成している。
【0027】次に、サイドクラッチ装置103とサイドブレーキ装置104とからなる制動旋回経路a(図6参照)の構成を説明する。サイドクラッチ装置103は、図4に示すように上記中間軸120の伝動下手側に軸架したサイドクラッチ軸107の中央位置にセンターギヤ124を遊嵌し、該センターギヤ124を前述の変速大ギヤ121に常時噛合うように構成している。さらにサイドクラッチ装置103はサイドクラッチ軸107上に左右一対のサイドクラッチギヤ125、125’を軸方向摺動自在に遊嵌して前記センターギヤ124の両側に係脱自在に係合できる構成としている。伝動軸126にはサイドクラッチ軸107の伝動下手側に軸架し、サイドクラッチギヤ125、125’に噛合う伝動ギヤ127、127’と、ホィールギヤ128、128’に噛合いする小径ギヤ129、129’とを軸着して伝動可能に構成している。ホィールシャフト130、130’は上記ホィールギヤ128、128’に伝動された回転動力を駆動スプロケット32、32’を介してクローラ4(図1参照、一方のスプロケット32、クローラ4のみを図示し、もう一方のスプロケット32’、クローラ4’は図示せず)に伝達する構成としている。
【0028】サイドブレーキ装置104、104’は前記サイドクラッチ軸107の左右両側位置に装備し、前述した左右のサイドクラッチギヤ125、125’を介してクローラ4、4’に選択的に制動力を伝達できる構成としている。
【0029】次に、減速伝動装置105を主要部とする緩旋回(マイルドターン)経路b(図6参照)の構成を説明する。まず減速伝動装置105は図5に示すように、中間軸120に左右摺動自在に軸装した緩旋回小径ギヤ132と、緩・急旋回軸133の旋回ギヤ134との間に構成し、緩旋回小径ギヤ132を旋回ギヤ134に噛合わせると緩・急旋回軸133が減速されて低速で回転される構成となっている。そして、旋回クラッチ装置135、135’は、その緩・急旋回軸133の左右両側に配置して遊嵌状態のクラッチギヤ136、136’を左右選択して緩・急旋回軸133に係合し、旋回ギヤ134の回転動力をいずれか一方のクラッチギヤ136、136’に伝動する構成とし、該クラッチギヤ136、136’はいずれか一方が前記した伝動軸126の伝動ギヤ127、127’に上述した低速の回転動力を伝動する構成にしている。これより下手の伝動経路は上述した制動旋回(ブレーキターン)経路aと同一経路となる。
【0030】次に、逆転伝動装置106を主要部とする急旋回(スピンターン)経路c(図6参照)の構成を説明する。逆転伝動装置106は図5に示すように前述した緩旋回小径ギヤ132と一体的に構成して中間軸120に左右摺動自在に軸装した急旋回大径ギヤ137と、逆転軸138の逆転伝動ギヤ139を介して旋回ギヤ134に逆転の回転動力が伝動される構成としている。急旋回(スピンターン)経路cの、緩・急旋回軸133以降の伝動下手の経路は前述した緩旋回(マイルドターン)経路bと同一で、選択した一方側のクローラ4または4’に逆転動力を伝動する構成としている。
【0031】以上のとおり、制動旋回(ブレーキターン)経路aはサイドクラッチ軸107を経てクローラ4、4’を伝動するが、他の緩旋回(マイルドターン)経路bと急旋回(スピンターン)経路cは、サイドクラッチ軸107を迂回して別の伝動経路を経てクローラ4、4’を伝動する構成である。以上のように構成した走行トランスミッション装置101は、走行車体2の前部に装備し、クローラ4、4’を駆動しながら路上あるいは圃場を自在に走行できる構成としている。
【0032】すなわちコンバイン1の図示しないエンジンを始動して、各部のクラッチを入りに操作すると、回転動力は機体の回転各部を伝動し、油圧変速装置HSTを経て走行トランスミッション装置101にも入力される。そのとき、油圧変速装置は、HSTレバー53を前進側にして作業速の位置に操作し、更に、副変速装置114の操作レバー(図示せず)を低速側(作業速度)に操作して設定する。
【0033】回転動力は、出力軸109、出力ギヤ110、取出ギヤ112および刈取動力取出軸111を経てミッションケース108から刈取装置8に伝動され、一方、ミッションケース108内では、変速軸115に伝動される。そして、回転動力は、小ギヤ116から変速大ギヤ121へと副変速経路114を通り、センターギヤ124、サイドクラッチギヤ125、125’、ホィールギヤ128、128’、ホィールシャフト130、130’、駆動スプロケット15、15’に達して左右両側のクローラ4、4’を駆動する。
【0034】このようにしてクローラ4、4’が駆動され、同時に刈取装置6と脱穀装置15(図1参照)の回転各部が駆動され、コンバイン1は前進しながら刈取、脱穀作業を開始する。
【0035】図1に示すように、コンバイン1の前進にともなって前部の刈取装置6が圃場に植立する穀稈に達すると、穀稈は刈刃10により刈り取られ、後方上方に搬送されて脱穀装置15に供給される。そして、穀稈は、脱穀装置15によって脱穀処理され、脱穀選別した穀粒を順次図示しないグレンタンクに収集一時貯留する。
【0036】コンバイン1が圃場の端に達して車体2を旋回する場合の作用を説明するが、旋回時の走行トランスミッション101の内部の動力伝動経路は、上述したように制動旋回(ブレーキターン)経路a、緩旋回(マイルドターン)経路bおよび急旋回(スピンターン)経路cの3経路がある。
【0037】まず、最初に、車体2を制動旋回(ブレーキターン)によって左旋回する場合を説明する。オペレーターは、旋回モード切替レバー(図示せず)を制動旋回(ブレーキターン)に設定しておき、パワステレバー52を左旋回側(左に傾倒)に操作すると、スイッチ操作が行われて、ソレノイドバルブ(図示せず)を切り替える。すると、サイドクラッチ装置103は、サイドクラッチシリンダ(図示せず)にポンプ側から圧油が送られて作動し、サイドクラッチギヤ125を外側に移動し、センターギヤ124との伝動が断たれるために左側のクローラ4を停止して左旋回を開始する。そして、オペレーターはパワステレバー52をさらに同じ方向に操作し続けると、可変リリーフバルブ(図示せず)が働き油圧回路の圧力が順次高まり、油圧が切替バルブ(図示せず)を通りブレーキシリンダ(図示せず)に送り込まれて左のサイドブレーキ装置104を働かせる。
【0038】このようにして、コンバイン1の車体2は、旋回内側のクローラ4を停止した状態にして制動力をかけ、旋回外側のクローラ4’を駆動しながら左側へ制動旋回(ブレーキターン)を行うのである。
【0039】次に、車体2を左側に急旋回(スピンターン)する場合について述べる。まず、旋回モード切替レバー(図示せず)を急旋回(スピンターン)に操作すると、逆転伝動装置106は、急旋回大径ギヤ137が逆転伝動ギヤ139に噛合して急旋回の準備をする。そして、パワステレバー52を左旋回側(左に傾倒)に操作すると、スイッチ操作が行われて、ソレノイドバルブを切り替えることによって左のサイドクラッチギヤ125の伝動を中断すると共に、旋回クラッチ135が係合状態になる。すると回転動力は、急旋回大径ギヤ137、逆転伝動ギヤ139、カウンタギヤ139’、旋回ギヤ134から緩・急旋回軸133に逆転となって伝動され、さらに、旋回クラッチ135、クラッチギヤ136、伝動ギヤ127を経て一方側のクローラ4を逆回転する。以上のようにして、コンバイン1の車体2は、左右のクローラ4、4’が相互に逆転してその場で急旋回(スピンターン)を行うことになる。
【0040】次に、緩旋回(マイルドターン)は、前述の旋回モード切替レバーを緩旋回(マイルドターン)に選択することによって行う。この場合、減速伝動装置105は、中間軸120の緩旋回小径ギヤ132から緩・急旋回軸133の旋回ギヤ134に減速された低速回転が伝達され、以下、急旋回(スピンターン)経路と同じ経路を経てクローラ4を他方のクローラ4’に比較してゆっくり駆動しながら旋回する。したがって、コンバイン1の車体2は、大きな円弧を描きながら旋回できる。
【0041】上記の作動は、図7に例示する制御装置70により制御される。すなわち、制御装置70のマイクロコンピュータCPU71の入力側には、まず、操縦台50のパワステレバー52の操作信号が入力インタフェース72を介して入力される。CPU71は必要な演算処理と出力信号を発生して、CPU71の出力側に接続する左クラッチソレノイド25L、右クラッチソレノイド25Rなどをぞれぞれ制御する。各ソレノイド25L、25Rは詳細を示さない油圧回路を制御してそれぞれのアクチュエータに作用して、たとえば右クラッチソレノイド25Rはサイドクラッチ装置103(図4)の右クラッチを作動させる。
【0042】オペレータの操縦により、コンバイン1で刈取作業を行う場合の走行方向の変更は、ほぼ直線状ではあるものの微妙に曲がりくねっている穀稈列と穀稈列との中間にコンバイン1の分草具8の先端が入るように、コンバイン1の走行方向を微妙に変更する操縦をしなければならない。
【0043】本発明の実施の形態は図2、図3に示すように、刈取装置6の分草具8の先端部(図1参照)に、右側の穀稈列を検出する条刈方向センサ61と、左側の穀稈列を検出する条刈方向センサ63とからなる方向センサ60を取り付け、図7の制御装置のブロック図に示すように条刈方向センサ61の信号出力と条刈方向センサ63の信号出力とを入力インタフェース72を介してマイクロコンピュータCPU71に入力する。そして、操縦台50に設けた自動方向制御スイッチ(図示せず)が投入されていれば、方向センサ60の信号出力によりCPU71は演算して、必要な方向変更のための制御信号をインタフェース73を経由して左クラッチソレノイド25Lまたは右クラッチソレノイド25Rに出力し、サイドクラッチ装置103(図4)の左クラッチ又は右クラッチを作動させ、クローラ4(図1)の速度を変更してコンバイン1の走行方向を変更する構成である。
【0044】条刈方向センサ61は、そのケースの内部に弦巻バネにより反時計方向に回転力を付勢された回転ポジションセンサ(図示せず)を内蔵し、該回転ポジションセンサの回転軸から条刈方向センサ61のケースの右側外部にピアノ線などの弾性針金状のセンサ触子62を突出する構造である。そして、コンバイン1が走行しつつセンサ触子62が穀稈列に接触して図3の参考線で示す62aの位置にに移動すると、回転ポジションセンサはセンサ触子62の移動により回転して、回転角度に比例した電気信号を出力する。同様にして、条刈方向センサ63は、も同様の構成からなり、条刈方向センサ63のケースの左側外部のセンサ触子64を突出する構造である。
【0045】それぞれのセンサ触子62および64の長さは穀稈列の条間幅の二分の一よりも若干長くして、コンバイン1を直進走行させて分草具8の先端位置を穀稈列と穀稈列の中央に位置させておけば、センサ触子62および64は両者とも穀稈に軽く接触して、その結果、二つの条刈方向センサ61、63の回転ポジションセンサは両者とも若干回転して、両者とも若干の電気信号を出力する構成としている。
【0046】図8の条刈方向センサ61、63の作動説明図の縦軸は条刈方向センサ61、63の出力信号レベルを、また横軸は時間すなわちコンバイン1の走行距離を示す。本図を用いて条刈方向センサ61、63の作動を説明する。
【0047】まず、コンバイン1が穀稈列に入らない状態(時間R)ではセンサ触子62、64はともに穀稈に接触しないので、条刈方向センサ61および条刈方向センサ63はともに出力信号がゼロである。
【0048】コンバイン1が直進走行し、分草具8の先端位置が穀稈列と穀稈列の中央に位置する状態では、センサ触子62、64は両者とも穀稈に軽く接触し、二つの条刈方向センサ61、63とその回転ポジションセンサはともに若干回転し、両者とも若干の電気信号を出力して時間Sに示すようになる。ここに両センサ61、63の信号出力が波形を繰り返すのは穀稈列の穀稈の株毎にセンサ61、63が作動することによる。
【0049】また、たとえば、コンバイン1が右方向に偏って走行する場合、またはコンバイン1が直進走行するにもかかわらず、穀稈列が左方向に曲がっている場合には、右側のセンサ触子62の穀稈接触が強くなり、左側のセンサ触子64は穀稈に接触しなくなるので、時間Tに示すように、条刈方向センサ61の出力信号は波形の変動を繰り返しつつ次第に出力値は上昇し、条刈方向センサ63の信号はゼロとなる。
【0050】自動方向制御スイッチ(図示せず)が投入されていれば、条刈方向センサ61の出力信号レベルが、あらかじめ設定したしきい値Yに到達した時点において、CPU71は制御信号を発信して左クラッチソレノイド25Lを寸動駆動し、コンバイン1を若干左に進路変更するように作動するが、制御遅れや制御量が不足であればコンバイン1は、遂に分草具8は穀稈列に突っ込み(株を割る)、引き続きU時間右寄りに走行する。
【0051】分草具8が穀稈列に突っ込んだ後、穀稈列を通り抜けて通過すると時間Vに示すように条刈方向センサ61の出力信号の出力値は穀稈列に接触しないので急低下し、いままで条刈方向センサ61が接触していた穀稈列に条刈方向センサ63が接触し、その出力信号の出力値は急上昇する。
【0052】しかし、本発明の実施の形態は、たとえば条刈方向センサ61の出力信号がY点で、しきい値を超えるとコンバイン1の走行方向を左に変更する制御信号を出力する。これにより、左クラッチソレノイド25Lを駆動し、サイドクラッチ装置103(図4)の左クラッチを寸動駆動し、クローラ4の速度を瞬時低下させてコンバイン1を若干左に方向を変更させる。これとともに、このとき条刈方向センサ63の出力信号がゼロであり、かつ条刈方向センサ63の出力信号がゼロになってから条刈方向センサ61の出力信号がしきい値Yを超えるまでのあいだの時間(又は距離)Tが、あらかじめ設定したα時間(または距離)を経過していれば、その後条刈方向センサ63の出力信号がしきい値Zを超えても、条刈方向センサ63の出力信号を無視する制御を行う制御装置70を備えた構成を特徴とする。
【0053】したがって、時間Vにおいて刈取装置6の分草具8が右側の穀稈列に突っ込んで、条刈方向センサ63がしきい値Zを超える出力信号を発生しても、誤って反対方向の右旋回の方向制御を行うことない。
【0054】また、条刈方向センサ63の出力信号がゼロであり、かつ条刈方向センサ63の出力信号がゼロになってから条刈方向センサ61の出力信号がしきい値Yをこえるまでのあいだの時間Tが、あらかじめ設定したα時間を経過していれば、その後、条刈方向センサ63の出力信号がしきい値Zを超えても、条刈方向センサ63の出力信号を無視する制御を行う。これとともに、条刈方向センサ63の出力信号があらかじめ設定した値△を超えたことが検出されれば、刈取装置6の分草具8が株を割ったと判定してコンバイン1の走行方向を左に変更する制御信号を発生し、左クラッチソレノイド25Lを駆動し、サイドクラッチ装置103(図4)の左クラッチを作動し、クローラ4の速度を低下させてコンバイン1を左に走行方向を変更させる制御を行う。
【0055】こうして、条刈方向センサ61と条刈方向センサ63の両センサが同時にしきい値Y、Zを超える出力信号をそれぞれ発生しても制御不能に陥ることなく、引き続き条刈方向センサ61の出力信号により左旋回の方向制御を行い、コンバイン1の走行方向を修正する。さらに、センサ触子64が左側の穀稈列に接触する場合には上述と左右反対で同様の作用をして左旋回の方向制御を行う。
【0056】こうして本発明によれば、常にコンバイン1の走行方向を穀稈列のあいだの中央部に自動的に修正してコンバインは正常に刈取走行することができる。上記説明では詳細を述べていないが、自動方向制御スイッチ55が投入された自動方向制御運転中であっても、非常事態を考慮して、オペレータのパワステレバー52の操作による制御を優先することは勿論である。
【0057】上記図1ないし図8に示す実施の形態のコンバイン1の変形例を図9および図10に示す。図9は本例の制御装置のブロック図であり、図10は本例のアナログ式方向センサの作動説明図である。本例によればアナログ式方向センサの初期値の設定を容易にして、コンバイン1の刈取作業の自動方向制御における条はずれを防止することができるというものである。
【0058】圃場に植立する複数の穀稈列の間隔は、作物の種類、播種時の乱れ、生育時の条件などにより不揃いであり、一列の穀稈列についても一定ではない。一方、条刈方向センサ61から突出するセンサ触子62および条刈方向センサ63から突出するセンサ触子64は、それぞれのセンサ触子62および64の長さが穀稈列の条間幅の二分の一よりも若干長くして、コンバイン1を直進走行させて分草具8の先端位置を穀稈列と穀稈列の中央に位置させていれば、センサ触子62および64は両者とも穀稈に軽く接触して、2個の条刈方向センサ61および63は両者ともに若干の電気信号を出力する構成としている。
【0059】しかし、センサ触子62および64の長さを、穀稈列の間隔に合わせて異なる長さの別のセンサ触子と取り替えることは実用上ほとんど実施不能である。したがって、通常は一組のセンサ触子だけで穀稈列の間隔の異なる場合の刈取り作業が行われる。このため、センサ触子62、64の長さに比べて穀稈列の間隔が狭すぎれば、分草具8が穀稈列の間隔の中心にあってもセンサ触子62、64は穀稈に押圧されて大きく回動し、センサ出力信号の初期出力値が増大する。センサ信号までの初期出力値が増大すると、初期出力値としきい値との信号出力の差が小になり、センサ信号のしきい値において行うコンバイン1の方向調節がハンティングするなど制御が不安定となることがある。そして、その結果分草具8の先端を穀稈列に乗り上げるなど、いわゆる条外しを引き起こすなどの不具合が発生するので、これを防止する必要がある。
【0060】図9と図10に示す例は、図3に示した方向センサ60と機械的構成が同等の図10に示すアナログ式方向センサ60を用い、かつ図9に示す制御装置70を用いて、制御装置70の外部からアナログ式方向センサ60の回転角の初期値を設定可能とし、該初期値を書き換え可能の不揮発性メモリに記憶させておく構成を特徴とする。
【0061】すなわち、図9に示すように、制御装置70のマイクロコンピュータCPU71に書き換え可能の不揮発性メモリ74と、通信インタフェース75を介してマイコンチェッカ76とを接続し、マイコンチェッカ76からアナログ式方向センサ60の初期値を入力し、入力された初期値を不揮発性メモリ74に記憶させる構成とする。たとえば、図10のアナログ式方向センサ60の条刈方向センサ61のセンサ触子62が実線で示す位置にあって穀稈に接触していない状態では信号を出力せず、センサ触子62が小角度回転して破線で示す62bのように穀稈に接触する状態で、この位置を初期値に設定する。このようにして、穀稈列の幅が異なる場合には穀稈の位置にあわせた初期値をマイコンチェッカ76により入力して書き換え可能の不揮発性メモリ74に記憶させて対応する構成である。
【0062】このようにするとコンバイン1が自動走行方向制御で刈取作業を行う場合に、穀稈列の幅が異なっていてもセンサ触子62、64を取り替える必要がなく、穀稈列の幅に適応したアナログ式方向センサ60の出力信号の初期値をマイコンチェッカ76により外部から変更して入力し、これを書き換え可能の不揮発性メモリ74に記憶しておくことができるから、圃場に植立する複数の穀稈列の間隔が変更され、作物の種類、播種時の乱れ、生育時の条件などにより不揃いであっても、これらに対する対応が極めて容易となる。かつ、アナログ式方向センサ60の出力信号の初期値の設定を適切に行うことにより、図10のセンサ触子の実線62、64と破線62b,64bとの間の不感帯を適切に設定したことになるから、アナログ式方向センサ60の出力信号によりコンバイン1を自動走行方向制御して、方向調節がハンティングするなどの不安定作動をすることがなくなる。これにより、刈取装置6の分草具8の先端を穀稈列に乗り上げるいわゆる条外しなどの不具合を引き起こさないで適切な自動走行方向制御を実施できる。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
【公開番号】 特開平11−239403
【公開日】 平成11年(1999)9月7日
【出願番号】 特願平10−44758