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【発明の名称】 クローラ式車両の操向機構
【発明者】 【氏名】大曲 博美

【要約】 【課題】ステアリングホイルの操向操作により、旋回内側の走行部を減速する一方、旋回外側の走行部を増速して、機体の旋回を行うクローラ式作業車において、高速走行時の急旋回を防止する。

【解決手段】機体の走行速度の増加に応じて、ステアリングホイルの操作抵抗を増加すべく構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ステアリングホイル(16)の操向操作により、旋回内側の走行部を減速する一方、旋回外側の走行部(4L)(4R)を増速して、機体の旋回を行うクローラ式車両(A) において、機体の走行速度の増加に応じて、ステアリングホイル(16)の操作抵抗を増加すべく構成したことを特徴とするクローラ式車両の操向機構。
【請求項2】 ステアリングホイル(16)の操向操作により、旋回内側の走行部を減速する一方、旋回外側の走行部を増速して、機体の旋回を行うクローラ式車両(A) において、上記ステアリングホイル(16)に油圧ダンパ(D) を連動連結すると共に、機体の走行速度を検出する速度センサ(S) を設け、同速度センサ(S) の検出値により、上記油圧ダンパ(D) の絞り弁(D2)の開度を制御すべく構成したことを特徴とするクローラ式車両の操向機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クローラ式車両の操向機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、左右走行部をそれぞれ左右遊星歯車機構の遊星ギヤに連動連結し、同左右遊星歯車機構のリングギヤを、静油圧式の走行用無段変速機を介してエンジンに連動連結する一方、ステアリングホイルの操作により変速比を変更可能の静油圧式の操向用無段変速機を設け、同操向用無段変速機の出力を、相互に反対方向に回転する2出力に分割して、同2出力をそれぞれ上記左右遊星歯車機構のサンギヤに入力し、同左右遊星歯車機構によって、前記走行用静油圧式変速機からの入力と、操向用静油圧式変速機からの入力とをそれぞれ合成して左右走行部を駆動することで、左右走行部の走行速度を異ならせて、機体の旋回を行うようにしたクローラ式車両がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記クローラ式車両では、機体の走行速度に関係なくステアリングホイルの操向操作量に応じて、旋回内側のクローラが減速し、旋回外側のクローラが増速するので、ステアリングホイル操作に対する機体旋回が過敏になり、更に、ステアリングホイルが前記操向用静油圧式変速機を変速操作するだけであり、ステアリングホイルの操作力が機体の旋回状態に関係なく略一定であるため、特に、高速走行時において、ステアリングホイルをわずかに操向操作しただけで、機体が急旋回して危険であるという問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、ステアリングホイルの操向操作により、旋回内側の走行部を減速する一方、旋回外側の走行部を増速して、機体の旋回を行うクローラ式車両において、機体の走行速度の増加に応じて、ステアリングホイルの操作抵抗を増加すべく構成したことを特徴とするクローラ式車両の操向機構を提供せんとするものである。
【0005】また、次のような特徴を併せ有するものである。
【0006】ステアリングホイルの操向操作により、旋回内側の走行部を減速する一方、旋回外側の走行部を増速して、機体の旋回を行うクローラ式車両において、上記ステアリングホイルに油圧ダンパを連動連結すると共に、機体の走行速度を検出する速度センサを設け、同速度センサの検出値により、上記油圧ダンパの絞り弁の開度を制御すべく構成したこと。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施例では、エンジンに、走行用静油圧式変速機と、左右遊星歯車機構とを介して左右走行部を連動連結すると共に、ステアリングホイルとの操作により変速比を変更可能の操向用静油圧式変速機の出力を互いに反対方向回転の2出力に分割してそれぞれ上記左右遊星歯車機構に入力し、前記走行用静油圧式変速機の出力と合成して、左右走行部に出力して左右走行部の走行速度を異ならせるようにして機体の旋回を行うようにし、更に、上記ステアリングホイルに油圧ダンパを連動連結すると共に、機体の走行速度を検出する速度センサを設けて、同速度センサの検出値により油圧ダンパの絞り弁の開度を制御して、機体の走行速度が高速になるに従い上記絞り弁の開度を小さくして、油圧ダンパの抵抗を大きくすることで、高速走行時のステアリングホイルの急激な操向回動操作を抑制して、急激な機体旋回を防止するようにしている。
【0008】
【実施例】本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0009】図1は、本発明に係る操向機構Mを具備するクローラ式車両Aを示しており、同クローラ式車両Aは、機体フレーム3の左右側部にクローラ式の左右走行部4L,4R を配設し、機体フレーム3の前側上部に原動機部5を配設し、同原動機部5の後方位置に運転部6を配設している。図中、7は三点リンク式の昇降機構である。
【0010】左右走行部4L,4R は、機体フレーム3の前後部に、それぞれ左右駆動輪8L,8Rと左右遊動輪9L,9R とを軸支し、同機体フレーム3の下面に複数の下部転輪12を軸支し、同機体フレーム3の上面に上部転輪13を軸支し、これらの外周に履帯14を巻回して、クローラ式の左右走行部4L,4R を形成している。
【0011】運転部6は、機体フレーム3の中途部にステアリングコラム15を立設し、同ステアリングコラム15の上部にステアリングホイル16を回動自在に配設し、同ステアリングホイル16の後方位置に座席17を所定間隔を開けて配設し、同座席17の右側部に前後進切換変速レバー18を前後傾動自在に配設している。図中、19はキャビンである。
【0012】図2及び図3は、動力伝達機構及び操向機構Mの構成を示しており、図示するように、機体の前方から、エンジンE、フロントミッションF、リアミッションRの順に配設し、フロントミッションFの後面に、可変容量型油圧ポンプと定容量型油圧モータとで構成した静油圧式の操向用無段変速機20を取付け、一方、リアミッションRの前面に、上記と同様に可変容量型油圧ポンプと定容量型油圧モータとで構成した静油圧式の走行用無段変速機21を取付けている。
【0013】また、上記ステアリングホイル16と前後進切換変速レバー18との操作は、連動機構を介し、それぞれ操向用無段変速機20と走行用無段変速機21とに伝達されて、当該無段変速機20,21 の変速比を変更するようにしている。
【0014】次に、動力伝達機構と操向機構Mとの具体的な構成について、動力伝達の順に従って説明する。
【0015】即ち、エンジンEとフロントミッション入力軸23とをダブルフックジョイント22を介して連動連結し、同フロントミッション入力軸23と操向用無段変速機入力軸20a の前端と連動連結し、同操向用無段変速機入力軸20a の後端を、ギヤトレィン(図示せず)と、両端にユニバーサルジョイント25を設けた第1連動軸26とを介して走行用無段変速機入力軸21a の前端に連動連結し、走行用無段変速機出力軸21b をユニバーサルジョイント25と第2連動軸33とを介し、フロントミッションFの後面に軸支した前入力軸34の後端に連動連結しており、前入力軸34の前端に形成した走行用噛合傘歯車35を介し、左右走行部入力軸38L,38R の間に軸支した中間軸39に連動連結している。
【0016】中間軸39は、左右走行部4L,4R の左右走行部入力軸38L,38R に左右遊星歯車機構40L,40R を介して連動連結しており、同左右遊星歯車機構40L,40R は、それぞれ左右走行部入力軸38L,38R を介し、左右最終駆動機構輪11L,11R に連動連結している。
【0017】左右遊星歯車機構40L,40R は、それぞれ、中間軸39の左右両端に嵌着した左右リングギヤ43L,43R と、後述する左右差動軸46L,46R の外側端に嵌着した左右サンギヤ49L,49R と、左右走行部入力軸38L,38R に嵌着した左右ケージ42L,42R の回転軸44に軸支された左右遊星ギヤ41L,41R とで構成されており、左右リングギヤ43L,43R と左右サンギヤ49L,49R とは、左右遊星ギヤ41L,41R を介して噛合状態で連動連結している。
【0018】一方、操向用無段変速機出力軸20b の後端に操向用原動傘歯車45を取付け、同操向用原動傘歯車45に、左右差動軸46L,46R の内側端に嵌着した左右操向受動傘歯車47L,47R を噛合させ、左右差動軸46L,46R をこれらの外側端に設けた左右噛合歯車50L,50R を介し、前記左右サンギヤ49L,49R に連動連結している。
【0019】かかる構成によって、エンジンE→走行用無段変速機入力軸21a →走行用無段変速機出力軸21b →前入力軸34→走行用噛合傘歯車35→中間軸39→左右リングギヤ43L,43R →左右遊星ギヤ41L,41R →左右ケージ42L,42R →左右走行部入力軸38L,38R →左右最終駆動機構11L,11R →左右駆動輪8L,8R という経路を介して動力を伝達する一方、操向用無段変速機20に伝達された動力は、操向用無段変速機出力軸20b →操向用原動傘歯車45→左右操向用受動傘歯車47L,47R →左右差動軸46L,46R →左右噛合歯車50L,50R →左右サンギヤ49L,49R →左右遊星ギヤ41L,41R→左右ケージ42L,42R →左右走行部入力軸38L,38R →左右最終駆動機構11L,11R→左右駆動輪8L,8R へと伝達される。
【0020】また、左右差動軸46L,46R の間に、ステアリングホイル16の操向操作に応じて作動するクラッチ体51としての湿式多板クラッチを介設して、ステアリングホイル16が直進位置にあるときは、同クラッチ体51で左右差動軸46L,46R を連結して、左右差動軸46L,46R の停止状態を保持し、ステアリングホイル16をいずれかの方向に操作したときは、上記連結を解除して操向用無段変速機20の出力により、左右差動軸46L,46R を相互に逆方向に回転できるようにしている。
【0021】従って、ステアリングホイル16の操作により操向用無段変速機20が出力すると、同出力が左右走行部入力軸38L,38R をそれぞれ逆回転させる方向に伝達されるため、一方の走行部入力軸は増速され、他方の走行部入力軸は減速されて、左右走行部4L,4R に走行速度差が生じ、機体を左右に旋回させることになる。
【0022】また、前後進切換変速レバー18を中立位置に操作して、走行用無段変速機21を停止させた状態で、ステアリングホイル16を回動操作すると、操向用無段変速機20の出力によって、左右走行部4L,4R が互いに逆方向に回転して、各走行部4L,4R の略中間位置を中心として最小半径で機体を旋回させるスピンターンを行うこともできる。図2中、52は前後進切換変速レバー18と連動して、操向用無段変速機21の油圧ポンプと油圧モータ間の油路を切り換える電磁油圧方向制御弁である。
【0023】かかるクローラ式車両Aにおいて、本発明では、図2及び図4示すように、ステアリングコラム15の下部にステアリングホイル16と連動連結したステアリングギヤボックス60を設け、同ステアリングギヤボックス60から延出したステアリングレバー61を先端を、前記操向用無段変速機21の変速操作軸62に、連結杆63を介して連動連結する一方、同ステアリングレバー61の中途部を油圧ダンパDのロッドD1に連動連結し、同油圧ダンパDのヘッド部及びボトム部に循環油路64を介して連通連結した絞り弁D2を設けて、同絞り弁D2の開度をコントローラCにより制御するようにすると共に、機体の走行速度を検出する速度センサSを上記コントローラCに接続して、速度センサSからの速度検出値により、絞り弁D2の開度を機体の走行速度が高速になるに従い次第に小さくして、油圧ダンパDの抵抗を増大させるようにしている。図4中、21M と21P とは、操向用静油圧式変速機21の油圧モータと油圧ポンプである。
【0024】かかる構成により、機体の走行速度が高速になるに従って、ステアリングホイル16の回動操作に要する操作力が次第に増大し、ステアリングホイルの急激な操作による急旋回が抑制され、安全な機体の旋回を行うことができる。
【0025】また、走行速度が低速のときは、絞り弁D2の開度が大きくなりステアリングホイル16の回動操作に要する操作力が小さくなるので、機敏な機体の旋回を行うことができる。
【0026】更に、機体の走行速度を検出して、油圧ダンパの絞り弁の開度を制御しているので、ステアリングホイルの操作抵抗を低速から高速にかけて無段階に変化させることができ、操舵フィーリングに違和感が生ずるのを防止して、操舵フィーリングを良好に保持することができる。
【0027】
【発明の効果】本発明は、次のような効果を有するものである。
【0028】請求項1記載の発明では、ステアリングホイルの操向操作により、旋回内側の走行部を減速する一方、旋回外側の走行部を増速して、機体の旋回を行うクローラ式車両において、機体の走行速度の増加に応じて、ステアリングホイルの操作抵抗を増加すべく構成したことによって、走行速度が高速になるに従いステアリングホイルの操作力が増大して急激な操作が抑制され、機体の急旋回が防止されて安全な旋回走行を行うことができ、一方、低速走行時にはステアリングホイルの操作力が減少し、急激な操作が許容されて機敏な機体の旋回を行うことができる。
【0029】請求項2記載の発明では、ステアリングホイルの操向操作により、旋回内側の走行部を減速する一方、旋回外側の走行部を増速して、機体の旋回を行うクローラ式車両において、上記ステアリングホイルに油圧ダンパを連動連結すると共に、機体の走行速度を検出する速度センサを設け、同速度センサの検出値により、上記油圧ダンパの絞り弁の開度を制御すべく構成したことにより、上記操作抵抗を低速から高速にかけて無段階に変化させて、操舵フィーリングを良好に保持することができる。
【出願人】 【識別番号】000005164
【氏名又は名称】セイレイ工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月20日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−113316
【公開日】 平成11年(1999)4月27日
【出願番号】 特願平9−306672