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【発明の名称】 農用作業車
【発明者】 【氏名】福本 俊也

【要約】 【課題】対地作業装置を上限まで上昇させない状態で車体を走行させた場合にはローリングを阻止するトラクタを構成する。

【解決手段】車体にローリング自在に対地作業装置を連結し、この対地作業装置の対地ローリング姿勢と目標ローリング姿勢とが合致する方向にローリングシリンダ16を制御する制御装置21を備え、走行車体の走行速度を判別する車速センサ29で所定値以上の速度を判別した際にローリングシリンダ16の駆動によるローリング作動を阻止する阻止手段Dを備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行車体に対して昇降自在、かつ、ローリング自在に対地作業装置を連結すると共に、この対地作業装置の対地ローリング姿勢と目標ローリング姿勢とが合致する方向にローリング用のアクチュエータを制御する制御装置を備えている農用作業車であって、前記走行車体の走行速度を判別する車速判別機構を備え、この速度判別機構で所定値以上の速度を判別した際に前記アクチュエータの駆動によるローリング作動を阻止する阻止手段を備えている農用作業車。
【請求項2】 前記阻止手段でローリング用のアクチュエータの作動を阻止する以前に前記対地作業装置の対車体姿勢を水平に設定する強制設定手段を備えている請求項1記載の農用作業車。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行車体に対して昇降自在、かつ、ローリング自在に対地作業装置を連結すると共に、この対地作業装置の対地ローリング姿勢と目標ローリング姿勢とが合致する方向にローリング用のアクチュエータを制御する制御装置を備えている農用作業車に関し、詳しくは、ローリングを規制する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】上記のように構成された農用作業車としてトラクタを例に挙げると、対地作業装置を上限まで上昇させた場合には、これと連動して対地作業装置を車体に対して平行姿勢となるようローリング制御し、そのローリング姿勢を維持するものが存在する(例えば、特開平6‐141604号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術のように対地作業装置を上限まで上昇させた場合に対地作業装置を対車体平行姿勢に維持するものでは、路上走行時には対地作業装置を上限まで上昇させておくだけで車体が左右方向に傾斜することがあっても対地作業装置が不測にローリング作動せず車体のバランスを悪化させることもない。しかし、キャビンを備えた車体に対してブロードキャスタのように大型のホッパーを備えた対地作業装置を備えた場合には、上昇時にホッパーがキャビンの後壁に接触することから上限まで上昇できないこともある。このように対地作業装置を上限まで上昇させない状態で路上を走行した場合には車体の左右傾斜に連動して対地作業装置が自動的にローリング作動して車体のバランスを悪化させることもあり改善の余地がある。
【0004】本発明の目的は、対地作業装置を上限まで上昇させない状態で車体を走行させた場合でもローリングを阻止する農用作業車を合理的に構成する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の特徴(請求項1)は冒頭に記したように、走行車体に対して昇降自在、かつ、ローリング自在に対地作業装置を連結すると共に、この対地作業装置の対地ローリング姿勢を計測するローリングセンサの計測結果と目標ローリング姿勢とが合致する方向にローリング用のアクチュエータを駆動力する制御装置を備えている農用作業車において、前記走行車体の走行速度を判別する車速判別機構を備え、この速度判別機構で所定値以上の速度を判別した際に前記アクチュエータの駆動によるローリング作動を阻止する阻止手段を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0006】本発明の第2の特徴(請求項2)は請求項1において、前記阻止手段でローリング用のアクチュエータの作動を阻止する以前に前記対地作業装置の対車体姿勢を水平に設定する強制設定手段を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0007】〔作用〕上記第1の特徴によると、車速判別手段で所定値以上の速度を判別した場合には阻止手段がアクチュエータの駆動による対地作業装置のローリング作動を阻止するものとなる。つまり、走行速度が所定値以上であることを判別した場合には車体が左右に傾斜することがあっても対地作業装置がローリング作動しないものとなる。
【0008】上記第2の特徴によると、阻止手段がローリング作動を阻止する際にはアクチュエータの駆動によって対地作業装置を対車体姿勢を水平(従来例の走行機体に対して左右平行と同じ)に設定するので車体の左右バランスが不均衡な状態に維持されることはない。
【0009】〔発明の効果〕従って、対地作業装置を上限まで上昇させない状態で車体を比較的高速で走行させる際には自動的にローリングが阻止され左右バランスを崩すことなく走行できる農用作業車が合理的に構成されたのである(請求項1)。又、車体を比較的高速で走行させる際でも自動的に左右のバランスが均衡して安定的な走行を可能にするものとなった(請求項2)。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3に示すように、ステアリング操作自在な駆動型の前車輪1、駆動型の後車輪2を備えた車体3の前部にエンジン4を搭載すると共に、このエンジン4からの動力がクラッチハウジング5を介して伝えられるミッションケース6を車体後部に配置し、ミッションケース6の後部位置にリフトシリンダ7の作動で昇降作動する左右一対のリフトアーム8を備え、又、車体3に備えたキャビンCの内部に運転座席9、ステアリングハンドル10、運転座席9の右側にリフトシリンダ7を制御するポジションレバー11、運転座席9の左側にミッションケース内のギヤ変速装置(図示せず)を変速操作する変速レバー12夫々を備えて農用作業車の一例としてのトラクタを構成する。
【0011】車体3の後端の下部位置に左右一対のロアーリンク13を備え、上部位置にトップリンク14を備え、左右のロアーリンク13と左右のリフトアーム8とを左右一対のリフトロッド15で吊り下げ状態で連結し、更に、右側のリフトロッド15の中間に複動型のローリングシリンダ16を介装することで3点リンク機構を構成すると共に、この3点リンク機構の後端位置にブロードキャスタ型の対地作業装置Aを連結支持してある。尚、対地作業装置Aを昇降駆動する場合には前記リフトシリンダ7を駆動し、対地作業装置Aをローリング駆動する場合にはローリングシリンダ16を伸縮駆動するものとなっている。尚、ブロードキャスタ型の対地作業装置Aは肥料を貯留するホッパー17の下部位置に肥料を飛散させる散布部18を配置すると共に、フレーム19を備えて構成されている。
【0012】このトラクタでは対地作業装置Aの姿勢を地面を基準にして所定の姿勢に維持するローリング制御と、対地作業装置Aを上限まで上昇させた場合に対地作業装置Aのローリング作動を阻止する制御とを行えるよう構成されると共に、路上走行のように比較的高速で走行する場合にはローリング制御が可能な状態にあっても対地作業装置Aを対車体水平姿勢となるよう強制的なローリング作動を行うものとなっている。つまり、ブロードキャスタ型の対地作業装置Aは上部位置に大型のホッパー17を備えていることから上昇させた場合にはホッパー17がキャビンCの後壁に接触して上限まで上昇できないことから、対地作業装置Aを上限まで上昇させない状態においても走行速度が高まった場合にはローリング作動を阻止するものとなっており、その制御のための構成、及び、制御動作を以下に説明する。
【0013】図4に示すように、制御系が構成され、この制御系ではマイクロプロセッサを備えた制御装置21に対して前記ポジションレバー11の操作量を計測するポテンショメータ型のポジション設定器22、前記リフトアーム8の揺動量を計測するポテンショメータ型のリフトアームセンサ23、車体3の左右傾斜を電気的に計測するよう車体3の後部位置に備えたローリングセンサ24、前記ローリングシリンダ16の伸縮作動によるリフトロッド15の長さを計測するストロークセンサ25、ローリング制御用の水平スイッチ26、左下スイッチ27、右下スイッチ28、前車輪1若しくは後車輪2の回転速度から車体3の走行速度を計測する車速判別機構としての車速センサ29(具体構造は詳述せず)からの信号が入力する系が形成されると共に、前記リフトシリンダ7に対して作動油の給排を行う電磁式のリフト弁30、前記ローリングシリンダ16に対して作動油の給排を行う電磁式のローリング弁31夫々を制御する出力系が形成されている。
【0014】尚、運転座席9の側部位置には図2,図4に示すように、前記水平スイッチ26、左下スイッチ27、右下スイッチ28を備えた制御ケース32が配置されており、水平スイッチ26をON操作した場合には対地作業装置Aの目標ローリング姿勢を対地水平にセットし、左下スイッチ27をON操作した場合には対地作業装置Aのローリング姿勢を左下がり側に変位させると共に、そのローリング姿勢を目標ローリング姿勢にセットするものとなっており、右下スイッチ28をON操作した場合には前述と同様に対地作業装置Aのローリング姿勢を右下がり側に変位させると共に、そのローリング姿勢を目標ローリング姿勢にセットするものとなっている。
【0015】図5のフローチャートに示すように、ローリング制御ルーチンが制御装置21にプログラムの形で設定され、このルーチンでは車速センサ29からの信号に基づいて車体3の走行速度が予め設定された速度に達しているかを判別し、その設定速度に達していない場合にはリフトアームセンサ23からの信号に基づいて対地作業装置Aが上限に達しているかを判別し、上限に達していない場合には前記制御ケース32のスイッチ操作状況に基づいて目標ローリング姿勢(対地ローリング姿勢)をセットし、更に、ローリングセンサ24からの信号に基づく車体3のローリング量と、ストロークセンサ25からの信号に基づく対地作業装置Aの対車体ローリング姿勢とを入力し、これらの情報から対地作業装置Aの現在の対地ローリング姿勢が目標ローリング姿勢(対地ローリング姿勢)を基準に設定される不感帯の域内に存在するかを判別する。この判別によって不感帯の域外に存在する場合には対地作業装置Aを目標ローリング姿勢に設定するに必要なリフトロッド15の目標長さを設定し、ローリング弁31を介してローリングシリンダ16を伸縮作動させるものとなり、対地作業装置Aの現在の対地ローリング姿勢が目標ローリング姿勢を基準に設定される不感帯の域内に存在する場合にはローリングシリンダ16の伸縮作動を行わないものとなっている(#101〜#109ステップ)。
【0016】次に、車速センサ29からの信号に基づいて車体3が設定速度以上で走行していることが判別された場合、及び、リフトアームセンサ23からの信号に基づいて対地作業装置Aが上限に達していることが判別された場合には、対地作業装置Aが対車体水平状態(車体3が対地水平姿勢で作業装置Aも相対的に対地水平姿勢となる状態)であるかを判別し、対車体水平状態でない場合にのみ対地作業装置Aが対車体水平となるために必要なリフトロッド15の目標長さを設定し、ローリング弁31を介してローリングシリンダ16を伸縮作動させる制御のみを行いローリングセンサ24に基づくローリング制御を行わないものとなっている(#110〜#112ステップ)。尚、#110〜#112ステップに至る制御の流れのようにローリングセンサ24からの信号に基づく制御を行わない処理で請求項1の阻止手段Dが形成され、#111,#112ステップで請求項2の強制設定手段Eが形成されている。
【0017】このように本発明では、上限まで上昇できない対地作業装置Aを用いて作業を行う際に車体3が低速で走行している場合には作業状態にあると判別できるので設定された目標ローリング姿勢を維持するようローリング制御を行い、車体3が高速で走行した場合には路上走行にあると判別できるので対地作業装置Aを強制的に対車体水平姿勢に維持してローリング作動を阻止するものとなり、高速で走行した場合でも対地作業装置Aのローリングに起因して車体がアンバランスな状態に陥ることを阻止して安定的な走行を可能にするものとなっている。
【0018】〔別実施の形態〕本発明は上記実施の形態以外に、例えば、変速レバー12が車体3を高速で走行させる変速位置に設定されたことを判別した場合には対地作業装置Aのローリング作動を阻止するよう変速レバー12の操作位置に基づいて車体3の走行速度を判別する車速判別機構を構成することも可能である。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成9年(1997)9月5日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開平11−75417
【公開日】 平成11年(1999)3月23日
【出願番号】 特願平9−240722