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【発明の名称】 電子部品の封止用ケース材料
【発明者】 【氏名】田村 嘉男

【氏名】伊藤 久敏

【要約】 【課題】絞り加工前の洋白材からなる母材にNiめっき層を施してなり、つづく絞り加工の際に該Niめっき層が破断することなくすぐれた絞り加工性を有する電子部品の封止用ケース材料を提供すること。

【解決手段】洋白材の表面に厚さ0.5〜5.0μmのNiめっきを施した後、熱処理によりNiめっき層のNiを再結晶化させてなる電子部品の封止用ケース材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 洋白材の表面に厚さ0.5〜5.0μmのNiめっきを施した後、熱処理によりNiめっき層のNiを再結晶化させてなる電子部品の封止用ケース材料。
【請求項2】 熱処理後のNiめっき層の硬さがHV0.025で100〜120である請求項1記載の電子部品の封止用ケース材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水晶振動子のキャップなどの電子部品を封止するために用いられるケース材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、水晶振動子キャップなどの電子部品の封止用ケースに用いられる封止用ケース材料としては、成形加工時に良好な絞り加工性を示すという点から、64Cu−18Ni−Znなどの洋白材が母材として主に使用されている。また、洋白材は強度および絞り加工性にはすぐれているものの、耐食性、耐応力腐食割れ性、めっき性およびはんだ付け性に劣るため、通常はNiめっきが施されている。ところが、母材である洋白材の絞り加工前にNiめっきを施したばあい、つづく絞り加工の際にNiめっき層が破断してしまう。そこで、たとえば特開平5−327389号公報には、絞り加工後の洋白材にNiめっきを施す技術が開示されている。しかし、一般的に、絞り加工後のめっき層の厚さを制御するのは困難であるという問題がある。
【0003】そこで、たとえば特開平5−1367号公報には、絞り加工前の母材にNiめっきを施した後に該Niを母材に熱拡散させることを特徴とする電気・電子機器用銅合金材料に関する技術が開示されている。この技術によれば、母材の絞り加工前にNiめっきを施しても、つづく絞り加工時にNiめっき層は破断しない。
【0004】しかし、該技術によれば、Niめっき層の厚さおよびNi拡散層の形成を制御するのが困難であるという問題があり、さらに該公報には母材として銅合金、とくにりん青銅および黄銅を用いることは記載されているが、洋白材を用いるとの記載はない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記事実に鑑み、本発明の目的は、絞り加工前の洋白材からなる母材にNiめっき層を施してなり、つづく絞り加工の際に該Niめっき層が破断することなくすぐれた加工性を有する電子部品の封止用ケース材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、洋白材の表面に厚さ0.5〜5.0μmのNiめっきを施した後、熱処理によりNiめっき層のNiを再結晶化させてなる電子部品の封止用ケース材料に関する。
【0007】このばあい、Niめっき層の硬さがHV0.025で100〜120であるのが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明においては、洋白材(以下、「母材」ともいう)の表面にNiめっきを施した後に熱処理を行なう。これは、めっき上がりのNiめっき層の組織は絞り加工に対応するだけの伸び率を有さないため、該熱処理によりNiの再結晶組織を生成し、Niめっき層に充分な伸び率を付与するためである。
【0009】また、この熱処理により母材の平均結晶粒径も大きくなり、絞り加工の際にNiめっき層と同程度の伸び率を発揮する。したがって、該絞り加工時に、Niめっき層の破断が生じないのである。
【0010】本発明において母材として用いる洋白材は、通常はCuを45〜70%、Niを5〜35%およびZnを13〜35%含んでなるが、従来から電子部品の封止用ケースに用いられているものであればよく、とくに、すぐれた絞り加工性および強度を有するという点からJIS C 7521合金を用いるのが好ましい。
【0011】また、前記母材は、えられる電子部品の封止用ケースの種類によって異なるが、概して板状の形状を有する。
【0012】また、母材の厚さとしては絞り加工後に充分な強度を有するという点から0.10mm以上であればよく、プレス装置および加工部品の大きさの制約という点から0.10〜0.26mmであるのが好ましい。
【0013】本発明においては、母材に耐食性、耐応力腐食割れ性およびはんだ付け性を付与するために、Niめっきを施す。Niめっきを施す方法としては従来から用いられている方法でよいが、生産性およびめっき膜厚の均一性という点から電気めっき法を用いるのが好ましい。
【0014】また、Niめっき層の厚さとしては、0.5μm未満では絞り加工の際の母材の伸び率に対してNiめっき層に充分な伸び率を与えることができずにNiめっき層に破断を生じる点、および5.0μmを超えるとめっき加工に多大な処理時間を要し、かつ価格が高くなる点から0.5〜5.0μmであるのがよいが、母材中のZnが熱処理により拡散して表層に出やすいため、1.0〜5.0μmであるのが温度コントロールが容易である点から好ましく、さらに、Niめっき層の軟化に高温度あるいは長時間が必要となるため、1.0〜3.0μmであるのが経済的に有利である点からとくに好ましい。
【0015】本発明において母材の表面に施されたNiめっき層はそのままでは母材の絞り加工時に破断してしまうため、熱処理を行なってNiめっき層を再結晶化させ、一方、母材の結晶粒径を大きくして母材自体にも充分な伸び率を付与する。
【0016】本発明においては、前記のようにNiめっき層を再結晶化させる方法として連続焼鈍炉を用いて高温で短時間の熱処理を施す。この熱処理が不充分であると、Niめっき層に再結晶化が起こらないために該Niめっき層が充分に軟化せずに加工性が改善されず、過度であると、従来技術におけるばあいのように、Niめっき層のNiが母材である洋白材に拡散してしまい、再結晶化が起こらない。
【0017】該熱処理の条件および方法としては、Niめっき層の軟化が生じるという点から700〜850℃の温度範囲で1〜3分間加熱すればよく、製造における処理コストの点より、高温・短時間がより有利であるという点から750〜850℃の温度範囲で1〜2分間加熱するのが好ましい。
【0018】また本発明において、前記熱処理後のNiめっき層は、ビッカース硬さ試験法にもとづき、HV0.025で100〜120の範囲に入る硬度をもたせるのが好ましい。該硬度が100未満では加熱のしすぎにより母材自体の軟化が進行し、母材の結晶粒径の一部または全部が粗大化してしまい、絞り加工時に表面の肌荒れの度合いが大きくなるという点、および120を超えるとNiめっき層の軟化が不充分で、絞り加工時にしわ状の模様が生じ、結果として表面の肌荒れの度合いが大きくなるという点から、前記範囲とするのがよいが、同一部品を加工するばあいに絞り加工に要するプレス工程数を増加させないという点から100〜110であるのがとくに好ましい。表面の肌荒れの度合いが大きいと、えられるケース材料表面にラベルなどの印字を施すことが困難となるため、望ましくない。
【0019】本発明においてえられる電子部品の封止用ケース材料の用途としては、水晶発振子キャップ、水晶振動子キャップ、電池用キャップなど、電子部品の素子を封止するためのケースなどがあげられる。
【0020】
【実施例】以下に、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0021】実施例1〜4母材としてCu 64%、Ni 18%およびZn 18%を含有する厚さ0.2mmの板状の洋白材を用い、まず硫酸ニッケル240g/l、塩化ニッケル45g/l、ホウ酸30g/lのワット浴にて電流密度1〜8A/dm2の条件で、表1に示す厚さのNiめっき層を設けた。ついで、母材の最終焼鈍とNiめっき層の軟化をかねて、N2 97%およびH2 3%の雰囲気下、775℃の温度で2分間の条件で連続焼鈍炉を用いて加熱して熱処理を行ない、本発明の封止用ケース材料1〜4をえた。
【0022】えられたケース材料1〜4について、その絞り加工性を評価するためにプレス装置を用い、JIS Z 2201にしたがう5号試験片に加工し、JIS Z2241に記載された引張試験を適用し、断面減少率15%の引張り加工試験片をえた。ついで、#80、#320、#600および#1000の紙やすりを順に用いて、母材とNiめっき層の断面が現れるように研磨を行なった。最後に粒径2.0μmのアルミナ研磨材を用いて仕上げバフ研磨を行ない、現れた断面を金属顕微鏡で観察し、Niめっき層の破断の有無を外観で評価した。結果を表1に示す。
【0023】比較例1〜4実施例1と同様にして表1に示す厚さのNiめっき層を有する比較ケース材料1〜4をえて、さらに、実施例1と同様にしてNiめっき層の破断の有無を評価した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

表1よりNiめっき層の厚さは0.5μm以上であれば加工性に問題はないものと判断されるが、上限については、経済的観点から5.0μm以下であるほうが好ましい。
【0025】実験例Niめっき層に対する熱処理の効果を評価するために、実施例3でえたケース材料3と、Cu 64%、Ni 18%およびZn 18%からなる厚さ0.2mmの洋白材に厚さ4.0μmのNiめっき層を実施例1と同様にして設けて熱処理を行なわずにえた比較ケース材料5とを用い、引張り強さ、エリクセン値および表面硬さを評価し、ついで180°密着曲げ試験を行なった。
【0026】引張強さはJIS Z 2241、エリクセン値はJIS Z 2247、表面硬さはJIS Z 2244にもとづいて評価した。また、180°密着曲げ試験では、JIS Z 2248にもとづいて行なった曲げ試験片の曲げ部の外観を実体顕微鏡で観察し、表面のNiめっき層の割れの有無を評価した。
【0027】前記評価および試験の結果を表2に示す。また、ケース材料3および比較ケース材料5の表面を走査電子顕微鏡にて試料傾斜角度30°、拡大倍率1600倍にて撮影した写真を図1および2に示す。
【0028】なお、エリクセン値とは、一般に金属板の変形能、とくに張り出し性を示す値であり、大きいほど張り出し性にすぐれる材料であることを示す。
【0029】
【表2】

表2より、本発明によるケース材料3は比較ケース材料5に比較して引張り強さおよびエリクセン値は同程度であるが、表面硬さは低い。
【0030】また、図1および2より、本発明によるケース材料3のNiめっき層は再結晶化しているが、比較ケース材料5のNiめっき層は再結晶化していないことがわかる。
【0031】以上の結果より、本発明のケース材料3はNiめっき層の割れがなく、かつ再結晶化をしており、加工性にすぐれることがわかる。
【0032】実施例5および6熱処理温度を700℃および850℃に変えた以外は、実施例3と同様にして本発明のケース材料5および6をえた。実施例3でえたケース材料3と、該ケース材料5および6について、母材の結晶粒径(JIS H 0501による)およびNiめっき層の硬さ(JIS Z 2244による)を評価した。また、実施例1と同様の条件および方法で引張り加工後のNiめっき層の破断の有無を評価し、引張り加工後の表面粗さについてはJIS B 0601にしたがって評価した。結果を表3に示す。
【0033】比較例6〜8熱処理の温度を表3に示す温度に変えた以外は、実施例3と同様にして比較ケース材料6〜8をえた。
【0034】ついで、えられた比較ケース材料6〜8について実施例5と同様にして評価を行なった。結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

表3よりHV0.025で硬さが120を超えると母材の平均粒径が小さくなり軟化が不充分となり、加工時にしわ状の模様を発生させ、結果として表面粗さが大きくなるとともにNiめっき層の破断が認められて不都合である。一方、100未満のものについては、Niめっき層の破断は認められないが、母材の平均結晶粒径が大きくなりすぎ、加工時に肌荒れの度合いが大きくなり、結果として表面粗さが大きくなって不都合である。
【0036】また、HV0.025にて硬さを100〜120の範囲に制御するには、熱処理温度が700〜850℃であるのが好ましいのがわかる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、洋白材からなる母材にNiめっき層を施してなる材料において、つづく絞り加工の際に該Niめっき層が破断することなくすぐれた加工性を有する電子部品の封止用ケース材料をうることができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【識別番号】594027708
【氏名又は名称】三菱電機メテックス株式会社
【出願日】 平成8年(1996)11月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
【公開番号】 特開平10−150115
【公開日】 平成10年(1998)6月2日
【出願番号】 特願平8−306533