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【発明の名称】 磁気カードとその製造方法
【発明者】 【氏名】長谷部 章雄
【氏名】石井 政義
【氏名】大槻 悦夫
【課題】特殊な磁気記録再生装置を用いずに,優れた偽造防止効果を有する磁気カードとその製造方法を提供する。

【解決手段】磁気カード1は、磁性層3が一般式Rx 100-x-y y ( R はSmを必須成分として Yを含む希土類元素の1種以上,T はCo主成分の遷移金属(Fe,Co,Ni)の1種以上,M はSi,Ti,Al,Ga,V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Pd,Hf,Ta,W,Pt,Auの1種以上)で表され,x=16.0〜22.0(at%),0 ≦y<30(at%)の範囲であり,酸素量が100 〜15000ppmの磁性粉末からなる磁性塗料か,又は前記組成になるように組成の異なる2種以上の粉末を混合し,含有される酸素量が100 〜15000ppmの磁性粉末からなる磁性塗料により形成されている。磁気カード1の磁性層の磁性粉末は、合金インゴット,焼結体,急冷薄帯及び還元粉末の内の1種以上を用意し,水素処理後,粉砕を行い,粉砕粉末に熱処理を施すことにより作製する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁気カードにおいて,磁性層が,一般式,Rx 100-x-y y (但し,Rは,Smを必須成分としてYを含む希土類元素から選択された少なくとも1種,Tは,Coを主成分とする遷移金属(Fe,Co,Ni)の内から選択された少なくとも1種,Mは,Si,Ti,A1,Ga,V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Pd,Hf,Ta,W,Pt,およびAuの内少なくとも1種)で表され,Rの組成値x16.0〜22.O,Mの組成値yは0≦y<30(いずれもat%)の範囲であり,酸素量が100〜15000ppmである磁性粉末からなる磁性塗料か,あるいは前記組成になるように組成の異なる2種以上の粉末を混合し,含有される酸素量が100〜15000ppmである磁性粉末からなる磁性塗料により形成されていることを特徴とする磁気カード。
【請求項2】 請求項1記載の磁気カードにおいて,前記磁性層は,少なくともその構成粒子が一方向に配向していることを特徴とする磁気カード。
【請求項3】 請求項1又は2記載の磁気カードにおいて,前記磁性粉末は,合金インゴット,焼結体,急冷薄帯及び還元粉末の内の少なくとも一種を水素処理後粉砕を行い,粉砕粉末に熱処理を施すことにより得られる処理粉末であることを特徴とする磁気カード。
【請求項4】 請求項3記載の磁気カードの製造方法において,前記急冷薄帯は,R,TおよびMを融解した溶湯を50℃/秒以上の速度で急冷することによって作製されたものであることを特徽とする磁気カードの製造方法。
【請求項5】 請求項3記載の磁気カードの製造方法において,前記還元粉末を,R,T,及びMの酸化物から,カルシウムを用いこの酸化物を還元し作製したものであることを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項6】 請求項1記載の磁気カードを製造する方法において,前記磁性粉末を,合金インゴット,焼結体,急冷薄帯及び還元粉末の内の少なくとも一種を用意し,水素処理後,粉砕を行い,粉砕粉末に熱処理を施すことにより作製することを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項7】 請求項6記載の磁気カードの製造方法において,前記急冷薄帯は,R,TおよびMを融解した溶湯を50℃/秒以上の速度で急冷することによって作製されたものであることを特徽とする磁気カードの製造方法。
【請求項8】 請求項6記載の磁気カードの製造方法において,前記還元粉末を,R,T,及びMの酸化物から,カルシウムを用いこの酸化物を還元し作製することを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項9】 請求項6乃至8の内のいずれかに記載の磁気カードを製造する方法において,前記磁性層に一方向磁界を印加し,前記磁性層を配向させる処理を行うことを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項10】 請求項1記載の磁気カードを製造する方法において,前記磁性層を形成する磁性粉末を,溶解法,粉末冶金法,液体急冷法または還元法によって作製された合金又は合金粉末に,水素処理を施すことにより作製することを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項11】 請求項9記載の磁気カードを製造する方法において,前記水素処理は,液体窒素温度から200℃の温度範囲で行われることを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項12】 請求項10又は11記載の磁気カードを製造する方法において,前記磁性粉末は,前記水素処理した後,粉砕し,その粉末または混合粉末を,真空あるいは不活性雰囲気中で600℃〜1100℃の温度範囲で熱処理を施して作製することを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項13】 請求項10記載の磁気カードの製造方法において,前記液体急冷法によって作製される合金又は合金粉末は,R,TおよびMを融解した溶湯を50℃/秒以上の速度で急冷することによって作製された急冷薄帯からなることを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項14】 請求項10記載の磁気カードの製造方法において,前記還元法によって作製される合金又は合金粉末は,R,T,及びMの酸化物から,カルシウムを用いこの酸化物を還元し作製された粉末であることを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項15】 請求項10乃至14の内のいずれかに記載の磁気カードを製造する方法において,前記磁性層に一方向磁界を印加し,前記磁性層を配向させる処理を行うことを特徴とする磁気カードの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,磁気カード及び磁カードの製造方法に関し,特に,記録した所定の情報を消去あるいは上書き等の書換えが困難もしくは不可能である,偽造防止に優れた磁気カード及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】乗車券,テレホンカード,プリペイドカードなどの金券として利用されている磁気カード類は,カードを利用する毎に所定の装置で,カードに設けられた磁気記録層に残金等の所定の情報を書き換えることにより使用されている。これらのカードには,偽造防止の策として,磁気記録層に保護層を設ける,あるいは磁気記録層を多層にする,または使用毎にカードにパンチ穴を開ける等の工夫が施されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが,磁気カードの普及と共に,磁気カードの情報を再生,記録する装置技術も発達し,磁気カードに記録した情報を容易に読み取り,さらには情報を書き込むことまで可能となった。具体的には,磁気記録カードの使用毎に,新しい情報を含む全情報が,旧情報の上にオーバーライトされる形で書き換えられるため,カードの情報を記録,再生する装置があれば,容易に情報の書換えが行え,これにより,カードの偽造が容易に行えることになり,近年磁気カードの偽造が目だって増えてきた。
【0004】この原因として,磁性層の保磁力が2〜3kOeと低いことにあると考えられる。つまり,保磁力が低いと従来の磁気記録,再生装置で容易に情報の書換えができ,カードの偽造が可能となる。
【0005】そこで,本発明の技術的課題は,かかる現状に鑑み,情報の記録は容易に行えるが,記録した情報の消去,書換えが困難(不可能)であるため,従来の様な偽造を目的とした情報消去,書き込みが不可能である磁気カードとその製造方法を提供することにある。
【0006】また,本発明の他の技術的課題は,従来のものと比較し,特殊な磁気記録再生装置を用いずに,優れた偽造防止効果を有する磁気記録カードとその製造方法を提供することにある。
【0007】更に,本発明の別の技術的課題は,保磁力が高いため一度記録した情報の消去,書換えが困難又は不可能である磁気カードとその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,第一に初期情報記録する際,長手方向に一箇所以上の未記録部分を残し記録を行い,更にその後,順次新しい情報を記録する際には,既存の情報を消去することなく,未記録部分に新規情報を記録する方法を検討した。その結果,特別な磁気記録,再生装置を用いる必要がなく,また,優れた偽造防止効果を有する磁気記録方式および磁気記録媒体とその製造方法を見いだし,既に提案している(特願平6−143695号,国内優先権主張,特願平6−320091号,参照)。更に,本発明者らは,調査を継続した結果,より優れた偽造防止効果を有する磁気カードおよびその製造方法を見いだし,本発明を成すに至ったものである。
【0009】本発明の磁気カードにおいて,磁性層を形成する磁性粉として,一般式,Rx100-x-y y (但し,Rは,Smを必須成分としてYを含む希土類元素から選択された少なくとも1種,Tは,Coを主成分とする遭移金属(Fe,Co,Ni)の内から選択された少なくとも1種,Mは,Si,Ti,A1,Ga,V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Pd,Hf,Ta,W,Pt,及びAuの内少なくとも1種)で表され,Rの組成値xは16.0〜22.0,Mの組成値yは0≦y<30(いずれもat%)の範囲であり,酸素量が100〜15000ppmである磁性粉,あるいは前記組成になるように組成の異なる2種以上の粉末を混合し,含有される酸素量が100〜15000ppmである混合粉末を使用している。
【0010】本発明において,磁気カードの偽造防止効果をより向上させる手段としては,前記磁性粉の保磁力をより高くすることが最も効果的である。前記磁性粉の保磁力は,粉末粒径を小さくすることにより高くなるため,保磁力を高めるためには,磁性粉を粉砕する工程において,より細かくかつ工業的には効率よく粉砕することがキーポイントとなる。
【0011】本発明では,溶解法,液体急冷法,粉末冶金法,または還元法により作製した合金あるいは合金粉末に対し,液体窒素温度から200℃の温度範囲で水素処理を施すことにより,合金あるいは合金粉末の粉砕性を向上させ,その後の粉砕工程において,より粒径の小さい粉末を短時間で得ることが可能となり,そのため,磁性粉の保磁力が向上し,より偽造効果に優れた磁気カードの提供が可能となることを見いだしたものである。
【0012】本発明の磁気カードは,より高保磁力で,かつ着磁性に優れた特性を有するものである。
【0013】本発明における上記磁気カードの保磁力は,記録情報の消去あるいは上書きが困難(不可能)であるために,3.5kOe以土で,かつ保磁力を有効に発現するために保磁力の1/2以下の印加磁界で飽和磁化の25%以上の磁化を有することが好ましい。
【0014】ここで,本発明における高保磁力でかつ着磁性の良好な磁性粉としては,一般式,Rx 100-x-y y (ただし,RはSmを必須成分としてYを含む希土類元素から選択された少なくとも1種,Tは,Coを主成分とする遷移金属(Fe,Co,Ni)の内から選択された少なくとも1種,Mは,Si,Ti,A1,Ga,V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Pd,Hf,Ta,W,PtおよびAuの内少なくとも1種)で表され,Rの組成値xは16.0〜22.0,Mの組成値yは0≦y<30(いずれもat%)の範囲であり,酸素量が10〜15000ppmである磁性粉,あるいは前記組成になるように組成の異なる2種以上の粉末を混合し,含有される酸素量が10〜15000ppmである混合粉末が適当である。本発明において,磁性層を構成する磁性粉の製造方法としては,溶解法,液体急冷法,粉末冶金法,還元法によつて得られた上記組成の合金あるいは合金粉末を液体窒素温度から200℃の温度範囲で水素処理した後,粉砕し,その後真空もしくは不活性雰囲気下で600〜1100℃の温度で熱処理を施し粉末を得る方法が適当である。または,組成の異なる2種類以上の粉末を混合した混合粉末も適当であり,製造方法としては,合金あるいは合金粉末を上記と同様の方法て水素処理した後,合金あるいは合金粉末を上記組成になるように混合粉砕し,その後真空もしくは不活性雰囲気下で600〜1100℃の温度で熱処理を施し粉末を得る方法が適当である。
【0015】ここで,上記組成の限定理由は,一般式,Rx 100-x-y y において,xが16.0at%以下では,保磁力が低下し,22.0at%以上では磁化が低下し好ましくないからであり,また,Mは30at%以下であると保磁力の低下が見られ好ましくない。
【0016】また,酸素量の限定理由としては,酸素混入により酸索がSmとSm2 3 化合物を形成するため,実際に磁性化合物を形成するSm値が減少し,酸素量が15000ppm以上になると,Sm2 3 以外に軟磁性相が出現し,保磁力の低下を招くことになる。また酸素量が100ppm以下の粉末は工程上作製が困難である。
【0017】また,水素処理が液体窒素温度以下では,冷却コストが高く好ましくなく,200℃以上の温度では粉砕性の向土効果がほとんどみられず好ましくない。
【0018】また,本発明において,熱処理温度が600℃以下および1100℃以上の場合は,保磁力の低下が起こり好ましくない。
【0019】また,基体上に形成される磁性層は,磁性粉をバインダーと共に混練した磁性塗料を塗布乾燥することにより形成される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】(第1の実施の形態)純度99.0%以上のSm,Coを溶解してSm19.2at%,Co80.8at%の組成の合金を作製した。その後,−190℃〜250℃の温度の水素雰囲気中で合金に水素処理を施し,ボルテックスを用いて4時間粉砕を行った。得られた粉末の平均粒径を下記表1に示した。更に,得られた粉末に1000℃でAr雰囲気中15分間熱処理を施し,室温まで急冷を行った。
【0022】熱処理後の粉末を,下記表2に示す割合で樹脂,溶剤と混合し磁性塗料を作製した。得られた磁性塗料を,ポリエチレンテレフタレート(PET)の基体上に塗布厚さ20μmになるように塗工を行い,乾燥し基体上に磁性層を形成した。得られた磁気カードの磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定した。その結果を下記表1に示す。尚,比較例として,本発明と同組成の合金を,水素処理を行わず,粗粉砕をした後,ボルテックスで4時間粉砕して得られた粉末を,第1の実施の形態と同条件で熱処理した粉末の結果も下記表1に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】上記表1に示すように,比較例と比較して,水素処理温度−190〜200℃で粉砕粒径が小さく,かつ磁気特性が良好な結果が得られた。
【0026】さらに各カードに対し,従来のリーダライタ(記録磁界,5kG)を用い,FM方式で記録し,再生を行ったところ,いずれのカードでも良好な記録信号が検出された。次に,この磁気ヘッドを用い記録信号の消去を行ったところ,いずれのカードでも,記録信号は消去前の50%以上の出力で残留し消去され難かった。しかし,水素処理温度250と比較例の試料のカードでは,他のカードと比較して,記録信号の残留率は約10%低下した。
【0027】また,これは溶解法だけにかかわらず,液体急冷法,粉末冶金法,還元法を用いて作製した合金あるいは合金粉末においても同様の結果となった。
【0028】(第2の実施の形態)純度99.0%以上のSm,Co,添加元素を溶解して下記表3に示す組成の合金を作製し,第1の実施の形態と同様の方法で,水素吸蔵,粉砕,熱処理,そして磁性層を形成した磁気カードを作製した。得られた磁気カードの磁気特性をV.S.Mを用いて測定した。結果を表3に示した。
【0029】
【表3】

【0030】上記表3に示した元素を添加した場合でも良好な結果が得られた。さらに,第5の実施の形態と同様の方法で,各カードに記録を施し,消去を行ったところ,全てのカードにおいて記録信号が消去前の50%以上の出力で残留し消去され難かった。
【0031】尚,添加元素を,2種類以上添加しても,良好な結果が得られることは容易に推測される。
【0032】(第3の実施の形態)図1は,本発明の第1の実施例の形態による磁気カードの部分断面図である。図1に示すように,この磁気カード1は,乗車券,テレホンカード,あるいはプリペイドカードなどの金券として利用されている。この,磁気カード1はポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる基体2の主面上に,磁性塗料を塗布することによって磁性層3を形成し,さらにその上に必要に応じて保護層4を形成したものである。
【0033】図2は,図1の磁気カードの磁気記録方法を説明するための磁性層3の面からみた平面図である。図2に示すように,磁気カード1の磁性層3には磁気カード1の長手方向での両端間にのびたストライプ状の情報記録層5が設けられている。情報記録領域5は,図2では便宜のため明瞭に黙視でき得るように記載したが,実際には黙視できない形態で設けられることが望ましい。また,情報記録領域5には,初期情報としての情報を,長手方向に隣接した複数の記録の集まりとして磁気的に記録しておく。従って,情報記録領域5の情報を既に記録している部分は斜線(ハッチング)を施して示した。
【0034】情報記録領域5には長手方向に隣接して既存の情報領域51と未記録部分の情報領域52とが設けられている。既存の情報領域51には,固定情報を記録しておく。磁気カード1を使用する毎に,順次新しい情報を記録する際には,既存の情報領域51の記録情報を消去することなく,未記録部分の情報記録領域52に新規情報を記録する。尚,ここで一旦記録された未記録部分の情報領域52の可変情報の書換えは困難であるが,複数の記録のうち,選ばれた記録を磁気的に消去することのみによって行う。この場合,磁気記録・再生装置によって,既存の固定情報及び可変情報を読み込み,処理回路により既存の固定情報を参照して可変情報に所定の処理を施した後,磁気記録・再生装置により未記録部分の情報領域52から複数の記録のうち,選ばれた記録を磁気的に消去することで可変情報の書換えを行うことができる。
【0035】次に,磁気カード1の磁性層3を形成するための磁性粉末について説明する。純度99.0%以上のSm,Coを溶解して下記表4に示す組成の合金を作製し,室温で水素吸蔵を行い,得られた粉末をボルテックスを用いて微粉砕を行い,平均粒径が1.5〜3.0μmの粉末を得た。さらに得られた粉末に1000℃でAr雰囲気中15分間熱処理を施し,室温まで急冷を行った。
【0036】熱処理後の粉末を次の表5に示す割合で樹脂,溶剤と混合し磁性塗料を作製した。
【0037】得られた磁性塗料を,ポリエチレンテレフタレート(PET)の基体上に塗布厚さ20μmになるように塗工を行い,乾燥し基体上に磁性層を形成した。得られた磁気カードの磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定した。結果を下記表4,図3に示す。Sm値16.0at%以上,22.0at%以下で,また酸素量が15000ppm以下で保磁力が大きく,かつ着磁性の良好な結果が得られた。
【0038】さらに各カードに対し,従来のリーダライタ(記録磁界,5KG)を用い,FM方式で記録し,再生を行ったところ,Sm値22.9at%,または酸素量が15000ppm以上の磁性粉を用いたカードでは,記録信号出力が小さく,検出が困難であったが,それ以外のカードでは,良好な記録信号が検出され,記録がなされていた。次に,この磁気ヘッドを用い記録信号の消去を行ったところ,Sm値15.1at%と22.9at%と酸素量が15000ppm以上の磁性粉を用いたカードでは,記録信号が消去前の10%以下の出力に減衰し消去され易く,その他のカードでは,記録信号が消去前の50%以上の出力で残留し消去され難かった。
【0039】また,これはインゴットだけにかかわらず,急冷粉末,焼結体,RD粉末においても同様の結果となった。
【0040】以上のことから,Sm値16.0〜22.0at%で酸素量が15000ppm以下の磁性粉を用いたカードで良好な結果が得られた。
【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】(第4の実施の形態)次に,第3の実施の形態の結果を参考にして,純度99.0%以上のSm,Coと純度99.0%以上の添加元素,各1種類を溶解して下記表6に示す組成の合金を作製し,第3の実施の形態と同様の方法で水素吸蔵,粉砕,熱処理を行い,第3の実施の実施と同様の方法で,磁性層を形成した磁気カードを作製した。磁気カードの磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定した。結果を下記表7に示す。添加元素を添加しても良好な結果が得られた。さらに,第3の実施の形態と同様の方法で,各カードに記録を施し,消去を行ったところ,全てのカードとも記録信号が消去前の50%以上の出力で残留し消去され難かった。
【0044】また,これはインゴットだけにかかわらず,急冷粉末,焼結体,RD粉末においても同様の結果となった。
【0045】以上のことより,第3の実施の形態における2元系でも良好な結果が得られていたが,さらに添加元素,各1種類を添加しても良好な結果が得られた。
【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】(第5の実施の形態)前述した第4の実施の形態において,純度99.0%以上のSm,Coと純度99.0%以上のAl,Siを溶解して下記表5に示す組成の合金を作製し,第3の実施の形態と同様の方法で水素吸蔵,粉砕,熱処理を行い,第3の実施の形態と同様の方法で,磁性層を形成した磁気カードを作製した。磁気カードの磁気特性を振動試料型磁力計(V.S.M)を用いて測定した。結果を下記表8,図4に示す。Al,Siを30at%以上,添加した磁性粉末は保磁力の低下が見られた。0〜30at%添加した磁性粉末は,良好な結果が得られた。さらに第1の実施の形態と同様の方法で,各カードに記録を施し,消去を行ったところ,Al,Siを30at%以上の磁性粉を用いたカードでは,記録信号が消去前の10%以下の出力に減衰し消去され易く,その他のカードでは,記録信号が消去前の50%以上の出力で残留し消去され難かった。
【0049】以上のことから,Al,Siを0〜30at%の磁性粉を用いたカードで良好な結果が得られた。
【0050】
【表8】

【0051】(第6の実施の形態)第5の実施の形態においてSm19.1Co68.7Al12.2組成の粉末を1000℃で熱処理を施した磁性粉を用い第3の実施の形態と同様の方法で作製した磁性塗料を,PET基体上に塗布した後,カード面と平行に,0〜10kOeの磁界を印加し磁性分を配向し,その後,乾燥し基体上に磁性層を形成した磁気カードを得た。得られた磁気カードの磁気特性をVSMを用い配向方向と平行に磁界を印可し測定した。その結果,配向処理を施すことにより,保磁力は低下せず着磁性が最大6%程度良くなった。
【0052】以上のことより,磁性粉末を用い,磁性分を形成する際,配向処理を施しても特性劣化は見られず良好な結果が得られた。
【0053】
【発明の効果】以上,説明した通り,本発明では,保磁力3.5kOe以上でかつ保磁力の1/2以下の印加磁界で飽和磁化の25%以上の磁化を有する磁性層が,情報の記録は容易に行えるが,記録した情報の消去,書換えが困難又は不可能であることに着目したもので,磁気記録媒体の面内長手方向に磁気記録をする方法において,第一に初期情報記録する際,長手方向に一箇所以上の未記録部分を残し記録を行い,更にその後,順次新しい情報を記録する際には,既存の情報を消去することなく,未記録部分に新規情報を記録することができる。従って,本発明によれば,情報の記録は容易に行えるが,記録した情報の消去,書換えが困難又は不可能であるため,偽造を目的とした情報消去,書き込みが不可能である磁気記録用カードが得られる。
【0054】従って,本発明は工業上極めて有益である。
【出願人】 【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
【出願日】 平成8年(1996)7月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 洋介 (外3名)
【公開番号】 特開平10−32113
【公開日】 平成10年(1998)2月3日
【出願番号】 特願平8−187864