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【発明の名称】 波形成形回路
【発明者】 【氏名】南 孝男
【課題】階段波の波高に傾斜がある場合でも波高部分と、ベースラインが傾きをもたず、ピークシフトを生じることがないようにする。

【解決手段】階段状に変化する信号から、階段波の波高に相当するパルスを生成する回路において、階段波の傾斜に比例した信号を生成する第1の回路と、階段波の波高に比例した信号を生成する第2の回路と、第1の回路と第2の回路の出力が入力され、両者の差信号を出力する差動増幅回路とを備えたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 階段状に変化する信号から、階段波の波高に相当するパルスを生成する回路において、階段波の傾斜に比例した信号を生成する第1の回路と、階段波の波高に比例した信号を生成する第2の回路と、第1の回路と第2の回路の出力が入力され、両者の差信号を出力する差動増幅回路とを備えた波形成形回路。
【請求項2】 請求項1記載の回路において、第1の回路、第2の回路はサンプル・ホールド回路を有し、パルス信号が生成されないベースライン期間は、サンプル・ホールド回路をそれぞれサンプル・モードとし、第1の回路と第2の回路の出力が同一の信号になるようにして差動増幅回路出力をゼロレベルになるようにしたことを特徴とする波形成形回路。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は放射線等の測定において、入力信号を所定の時間幅のパルス信号に成形するための波形成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3に示すように、シリコンあるいはゲルマニウム半導体検出器21を用いた高分解能の放射線測定装置においては、光子のエネルギに比例した高さの階段波を出力する前置増幅器22が使用される。前置増幅器22の概要は、図示したようにオペアンプの入出力間にコンデンサが接続された積分器で、放射線が検出されるたびにコンデンサは電荷を蓄積するため出力は階段波となる。この階段波出力は回路が飽和する前にスイッチで短期間コンデンサを短絡して電荷を放電することでリセットされる。
【0003】前置増幅器22の階段波出力は、図4に示す主増幅器23で個々の階段波の高さに比例した孤立したパルスに変換されて計測される。主増幅器において孤立したパルスに変換することを波形成形と言い、図5に示すように、ガウス波成形(図5(a))、三角波成形(図5(b))、台形波成形(図5(c))等様々な成形が行われている。
【0004】図6に示すように、一般的な波形成形回路は、微分回路24と数段の低域通過フィルタ回路(図示の例では低域通過フィルタ回路25〜27の3段)で構成される。図6に示したようにガウス波以外はフィルタ段の出力を加算器28で適当に加算することにより目的とする成形波を得ることができる。
【0005】ところで、階段波を出力する前置増幅器の主増幅器として、ディレー・クリッピングを使用したパルス信号の生成方式がある(特公平4−79555号公報)が、この方式を図7のブロック図、図8の波形図により概略説明する。図示しない前置増幅器からの階段波(a)は、差動増幅器32の一方の入力端子に加えられる。一方、差動増幅器32の出力は信号検出回路33で検出され、検出信号(b)は、シングルショット回路34、35のシングルショットパルス幅分だけ遅延を受けてパルス信号(d)が生成される。階段波(a)が入力される演算増幅器30は、スイッチ38を介して演算増幅器31に接続され、これらでサンプル・ホールド回路を構成している。サンプル・ホールド回路の出力は差動増幅器32の他方の入力端子に加えられるようになっている。そこで、スイッチ38を遅延パルス信号(d)でオンして階段波の波高をサンプル・ホールドし、遅延した階段波(e)を差動増幅器32の他方の入力端子に加えると、階段波(a)と遅延した階段波(e)との差信号(f)が得られ、この信号は個々の階段波の高さに比例した孤立したパルスとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】図7に示した方式は、階段波の各段のレベルが安定していることを前提としているが、前置増幅器からの実際の出力は放射線の発生頻度により異なる傾きを生じるため、差動増幅回路の出力は、生成されたパルスはもちろん、ベースラインとなる他の部分もこの傾きを生じてしまう。すなわち、図9に示すように、実際の階段波(a)は、各段の波高は傾きをもち、一方サンプリングパルス(d)でサンプル・ホールドされる階段波(e)は、サンプリングしたときの値が保持されるため各段が一定波高となり、階段波(a)と階段波(e)との差信号(f)は、矩形パルスとならず、ベースラインと、波高が傾きをもつパルスとなってしまう。特公平4−79555号では、演算誤差検出回路36でベースライン補正電圧を発生してチャージ・コンデンサ37のベース側に加えているが、ここでの演算誤差検出回路36は、一般的なベースライン安定化回路と考えられ、直流誤差の補正がなされるだけであり、ベースラインの傾斜は補正されない。また、これらの不具合は、遅延信号の生成が、パルス生成後の非常に短時間でサンプルされ、その他の期間はホールドされるために生じるものである。このようにして生成されたパルス信号を放射線ADC(アナログ・ディジタル・コンバータ)で計測すると、放射線ADCはパルス信号のピーク値をAD変換するため、実際の階段波の波高とは異なる値となることは明らかである。
【0007】また、前述したように、階段波の傾きは放射線の発生頻度によって異なるため、同じ放射線でも発生頻度によって計測値が変化してしまうことになり、ピークシフトと呼ばれる現象を生じることになる。すなわち、図10(横軸がエネルギー、縦軸がカウント数)に示すように、階段波の波高(横軸方向に表示)がフラットな場合の計測値が実線J1、J2であったとき、階段波の波高が傾斜していると、傾斜による最大波高値が計測値となるため、破線J1′、J2′のようにピークシフトしてしまうことになる。
【0008】本発明は上記課題を解決するためのもので、階段波の波高に傾斜がある場合でも波高部分が、ベースラインが傾きをもたず、ピークシフトを生じることがない波形成形回路を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、階段状に変化する信号から、階段波の波高に相当するパルスを生成する回路において、階段波の傾斜に比例した信号を生成する第1の回路と、階段波の波高に比例した信号を生成する第2の回路と、第1の回路と第2の回路の出力が入力され、両者の差信号を出力する差動増幅回路とを備えたことを特徴とする。また本発明は、第1の回路、第2の回路はサンプル・ホールド回路を有し、パルス信号が生成されないベースライン期間は、サンプル・ホールド回路をそれぞれサンプル・モードとし、第1の回路と第2の回路の出力が同一の信号になるようにして差動増幅回路出力をゼロレベルになるようにしたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の波形成形回路の例を示す図、図2は波形図である。図1において、ブロック10と11とは全く同一の回路であり、1、3、4、1′、3′はオペアンプ、2、2′はサンプル・ホールド回路、5は遅延線である。図1において、(A)には階段波を出力する前置増幅器からの階段波信号が入力され、(B)には遅延線5の遅延量だけ遅れた階段波信号が生じる。イベント検出回路(図示せず)で、放射線の発生が検出されない状態では、サンプル・ホールド回路2、2′はサンプル・モードにあり、スイッチSW1、スイッチSW1′は閉の状態にある。
【0011】放射線の発生がイベント検出回路で検出されると、サンプル・ホールド回路のモード切り換え信号(H)により、サンプル・ホールド回路2、2′は、遅延線5の遅延量の約1/2の点からパルス生成の期間ホールド・モードにされ、この時点から今まで閉となっていたスイッチSW1、SW1′は開となって、その時点での(A)、(B)の信号レベルがコンデンサーC′およびCに保持される。このとき、コンデンサーCは階段波が変化する直前のレベルを保持し、また、コンデンサーC′は階段波が変化した直後のレベルを保持する。オペアンプ3および3′は差動アンプとなっているので、(D)にはサンプル・ホールド回路の出力端(C)の信号レベルから(B)の信号レベルが差し引かれた信号が生じ、(F)にはサンプル・ホールド回路の出力端(E)の信号レベルから(A)の信号レベルが差し引かれた信号が生じる。すなわち、(A)の入力信号(階段波)が傾きをもっていなければ(F)はゼロとなり、(D)には波高一定のパルスが現れる。また、(A)の入力信号が傾きを持っていると、(F)にはその傾きに比例する傾斜信号が現れ、また、(D)には階段波の波高に比例する傾斜のあるパルスが現れる。
【0012】(D)と(F)の信号の傾斜は同一であるため、差動アンプ4で(F)の信号から(D)の信号を差し引けば、傾斜部分がキャンセルされた波高部分がフラットなパルス信号が得られる。このパルス信号の波高は階段波の波高を忠実に反映したものとなる。
【0013】また、前述したように、パルス信号が生成されない期間は、サンプル・ホールド回路はサンプル・モードとしているため、(C)には(B)と同一信号が生じることになり、差動アンプ出力(D)はゼロとなる。同様に(E)には(A)と同一信号が生じるため(F)もゼロとなる。その結果(G)もゼロとなる。このように、パルス信号が生成されないベースラインの期間はゼロとなり、ベースラインが傾きをもつことはない。
【0014】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、階段波の傾斜に比例した信号を生成する回路と、階段波の波高に比例したパルスを生成する回路を設け、その出力の差を求めることで、階段波に傾斜がある場合でも、波高部分、ベースラインとも傾きをもたず、その結果、計測値にピークシフトを生じることがないフラットなパルス信号を得ることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
【識別番号】000232324
【氏名又は名称】日本電子エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成9年(1997)4月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】蛭川 昌信 (外7名)
【公開番号】 特開平10−282239
【公開日】 平成10年(1998)10月23日
【出願番号】 特願平9−90545