| 【発明の名称】 |
高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法およびその評価装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】松田 恭司
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| 【要約】 |
【課題】高純度ガス用ステンレス鋼材の耐蝕性、非触媒性および水分放出性を非破壊で迅速に評価でき、また品質管理に利用可能な高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法およびその評価装置を提供する。
【解決手段】鋼材表面の皮膜の皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度を求め、このピーク強度の測定値とあらかじめ求めておいたこのピーク強度の適正範囲との比較によりその皮膜性状を評価し、鋼材の良否を判定する高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】鋼材表面の皮膜の皮膜構造を示すラマンスペクトルの少なくとも1つのピークの強度を測定し、この1つまたは複数のピーク強度の測定値から皮膜性状を評価し、鋼材の良否を判定することを特徴とする高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法。 【請求項2】ラマンシフト位置555cm-1近傍にピークを有するCr2O3皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度と、ラマンシフト位置680cm-1近傍にピークを有するFeCr2O4皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度の相対強度からその皮膜性状を評価し鋼材の良否を判定することを特徴とする請求項1記載の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法。 【請求項3】レーザ発振器と、分光器および検出器と、この分光器および検出器によって測定された皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度から高純度ガス用ステンレス鋼材の皮膜性状を評価し鋼材の良否を判定する演算手段を備えていることを特徴とする高純度ガス用ステンレス鋼材の評価装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高純度ガス用ステンレス鋼材、特に半導体製造プロセスなどで高純度ガス用の配管等に使用される高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法およびその評価装置に関する。 【0002】 【従来の技術】半導体製造分野においては、近年、半導体素子の高集積化が進み、超LSIと称されるデバイスでは、幅が1μm以下の微細パターンの加工が必要とされている。このような超LSI製造プロセスでは、微小な塵や微量不純物ガスであっても配線パターンに付着または吸着すると回路不良等の不良原因となる。そのため、使用する反応ガスおよびキャリヤガスはともに高純度であること、すなわちガス中の微粒子および不純物ガスの少ないことが必要とされる。それゆえ、その高純度ガス用配管および部材においては、内面からの微粒子(パーティクル)およびガスの放出が極力少ないことが要求される。 【0003】また、半導体製造用ガスとして、窒素やアルゴン等の不活性ガス以外にいわゆる特殊材料ガスと呼ばれるものも多種類使用される。そのため、高純度ガス用配管および部材においては、上記の要求に加え、塩素、塩化水素および臭化水素などの腐食性ガスに対する耐食性、シランなど化学的に不安定なガスに対する非触媒性、ならびに水分が吸着しにくく脱離しやすいという水分放出性などが必要とされる。この耐食性、非触媒性および水分放出性は、ガス配管系のみならず、各種半導体製造装置の反応容器や内部部品に用いられる鋼材においても同様に必要とされる。 【0004】このような用途には、SUS316Lなどのオーステナイト系またはフェライト系ステンレス鋼材が用いられている。 【0005】上記の耐食性、非触媒性および水分放出性は、酸素分圧を調整した雰囲気中でステンレス鋼材を加熱し、鋼表面にCr酸化物皮膜を生成させることにより向上することが知られている。 【0006】一方、このようにして得られるステンレス鋼材の高純度ガス用としての良否の評価は、上述した耐蝕性、非触媒性および水分放出性により行われる。従来、これらの評価は、以下のようにして行われてきた。 【0007】耐食性の評価は、鋼材として管を選び、管内に臭化水素(HBr)等を封入し、ある一定時間保持した後、管内面の発錆状況を走査型電子顕微鏡で観察する方法によっていた。 【0008】非触媒性の評価は、管内に100ppmモノシラン(SiH4 )等を含むアルゴンガスを流して、管出側でガスクロマトグラフによりモノシランの分解によって生じる水素濃度を測定する方法によっていた。 【0009】また、水分放出性の評価は、管を高相対湿度の雰囲気中に放置した後、管内に乾燥したアルゴンガスを流し、管出側ガス中の水分量をAPIMS(大気圧イオン化質量分析)で測定する方法によっていた。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ステンレス鋼材の高純度ガス用としての良否の評価に用いられる上記の評価方法は、高純度ガス用ステンレス鋼材を上記の環境下に長時間さらす必要があるため、評価に多くの時間を必要とする。また、非破壊検査でないため、製品の検査は抜き取り検査となり、製品すべてを評価することができない。特に、Cr酸化物皮膜を生成する処理にむらがある場合などには、全数検査ができないため、不良品を検出することができないという問題がある。 【0011】本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高純度ガス用ステンレス鋼材の耐蝕性、非触媒性および水分放出性を非破壊で迅速に評価でき、品質管理にも利用可能な高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法およびその評価装置を提供することを目的としている。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法は、鋼材表面の皮膜の皮膜構造を示すラマンスペクトルの少なくとも1つのピークの強度を測定し、この1つまたは複数のピーク強度の測定値から皮膜性状を評価し、鋼材の良否を判定することを特徴としている。 【0013】なお、皮膜性状の評価は、鋼材表面の皮膜のラマンスペクトルの皮膜構造を示すピーク強度の測定値とあらかじめ求めておいたこのピーク強度の適正範囲とを比較する方法によれば良い。このピーク強度の適正範囲は、従来方法などにより耐蝕性、非触媒性および水分放出性を評価した皮膜についてラマンスペクトルの皮膜構造を示すピークの強度を測定して決めれば良い。 【0014】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法は、ラマンシフト位置555cm-1近傍にピークを有するCr2O3皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度とラマンシフト位置680cm-1近傍にピークを有するFeCr2O4皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度との相対強度からその皮膜性状を評価し鋼材の良否を判定することを特徴としている。ラマンスペクトルのピーク位置は測定温度によりシフトするので、その測定温度に対応したラマンスペクトルのピークを選択すれば良い。なお、ラマンシフトとは、入射光とラマン効果による散乱光のスペクトルのエネルギ差(あるいは波数、波長の差)のことである。 【0015】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価装置は、レーザ発振器と、分光器および検出器と、この分光器および検出器によって測定された皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度から高純度ガス用ステンレス鋼材の皮膜性状を評価し鋼材の良否を判定する演算手段を備えていることを特徴としている。 【0016】上記の本発明は、本発明者らが把握した下記の事実を基礎としている。 【0017】■耐食性などに優れた表面皮膜は主にCr2O3の皮膜であり、その耐食性などの特性は皮膜に含まれるFeの濃度に依存していること。 【0018】■この皮膜中に含まれるFeはスピネル型酸化物(FeCr2O4)として主に皮膜の表面に存在すること。 【0019】■ラマン散乱の測定によれば、皮膜表面から深さ1nm以内の領域に存在するこの微量のスピネル型酸化物(FeCr2O4)の検出が可能であること。 【0020】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法によれば、鋼材表面の皮膜のラマンスペクトルの皮膜構造を示すピークの強度を測定し、このピーク強度の測定値をあらかじめ求めておいたこのピーク強度の適正範囲とを比較する。この比較により、鋼材表面の皮膜構造を評価し、この皮膜が耐蝕性、非触媒性および水分放出性に優れた皮膜であるか否かを評価することができる。その結果、鋼材表面の皮膜の耐蝕性、非触媒性および水分放出性によるステンレス鋼材の高純度ガス用としての良否を非破壊で判定できるのである。非破壊での評価であるため、迅速な評価が可能であるとともに全数検査を行うこともできるので、品質管理にも利用できる。 【0021】特に、ラマンシフト位置555cm-1近傍にあらわれるCr2O3皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度とラマンシフト位置680cm-1近傍にあらわれるFeCr2O4皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度との相対強度を用いることにより、その皮膜性状を評価し鋼材の良否を容易に判定することができる。 【0022】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価装置によれば、皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度を測定し、演算装置によりその皮膜性状を評価して、ステンレス鋼材の高純度ガス用としての良否を判定することができる。 【0023】 【発明の実施の形態】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法および評価装置の1例について説明する。 【0024】図1は、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価装置の1例を示す模式図である。図1において、10はレーザ発振器、14aは分光器、14bは検出器である。 【0025】レーザ発振器10と試料Sとの間にはミラー11が配置され、ミラー11はミラー駆動機構12によって駆動され、レーザ光の試料Sの照射点すなわち測定点を変化させる。ミラー駆動機構12はマイクロコンピュータ17により制御される。試料Sと分光器14aとの間には集光レンズ13が配置されている。また、分光器14aおよび検出器14bによって測定される皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度から高純度ガス用ステンレス鋼材の皮膜性状を評価し鋼材の良否を判定する演算手段15がマイクロコンピュータ17に設けられている。 【0026】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法について説明する。 【0027】レーザ発振器10から発振されたレーザ光20を、ミラー11により試料Sに照射させ、試料Sの表面でラマン散乱された散乱光を集光レンズ13で集め、分光器14aおよび検出器14bにより波数(波長)に対して散乱光の強度を測定し、ラマンスペクトルを得る。 【0028】例えば、検出器14bに光電子増倍管を用いて、分光器14aを波数に対して走査して、ラマンスペクトルを得ても良いし、検出器14bにCCD(Charge-Coupled Device)などを用いて、ラマンスペクトルの所定の波数位置での強度を得ても良い。なお、通常、分光器14aには回折格子が用いられる。 【0029】マイクロコンピュータ17内の演算手段15で、このラマンスペクトルの測定データから、1つまたは複数の予め決めておいたラマンシフト位置でのラマンスペクトルのピークの強度を求め、この強度の測定値とあらかじめ求めておいたこの値の適正範囲とを比較することによりその皮膜性状を評価し鋼材の良否を判定する。 【0030】例えば、ステンレス鋼材の場合、ラマンシフト位置555cm-1近傍にあるCr2O3皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度ICr2O3とラマンシフト位置680cm-1近傍にあるFeCr2O4皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度IFeCr2O4の相対強度比(式1)で、皮膜性状を評価し鋼材の良否を判定するようにすれば良い。 【0031】 Cr2O3比=ICr2O3/(ICr2O3+IFeCr2O4)×100 (%)・・・(1) このCr2O3比の適正範囲の決定は、あらかじめ、従来の評価方法を用いて、皮膜の耐蝕性、非触媒性および水分放出性に関して皮膜を評価し鋼材の良否を判定した鋼材について、このCr2O3比を測定して良品の範囲を適正範囲とする方法によれば良い。 【0032】なお、この例は式1で示されるCr2O3比による適正範囲を鋼材の良否判定に用いる例であるが、これ以外のものを用いて良い。 【0033】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の良否の判定方法は、フェライト系ステンレス鋼材のみならず、表面の皮膜性状が皮膜構造に依存するステンレス鋼材に適用することができる。 【0034】また、本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の良否の判定方法は、光学的な方法であり測定対象の形状に対する制限が少ないため、パイプの内側でも評価できる利点を有している。 【0035】 【実施例】以下、本発明に係る実施例について図1に基づいて具体的に説明する。 【0036】レーザ発振器10としてArレーザ(波長:514.5nm、パワー:100〜150mW)を用いた。検出器14bに光電子増倍管を用いて、分光器14aを波数に対して走査して、ラマンスペクトルを得る方法をとった。良否の判定対象の高純度ガス用ステンレス鋼材は外径6.4mm、肉厚1mm、長さ4mのフェライト系ステンレス鋼のシームレス鋼管とした。 【0037】フェライト系ステンレス鋼材の皮膜性状の良否判定基準の作成について説明する。 【0038】表1に示す化学組成を有する上記シームレス鋼管の内面を、電解研磨によって表面粗さRmax が0.5μmになるように平滑化して、高純度水によって洗浄後、純度99.999%のArガスを通じながら200℃に加熱して乾燥した。 【0039】 【表1】
【0040】これらの鋼管を表2に示す種々の条件で加熱処理(酸化処理)して酸化皮膜(以下、皮膜と呼ぶ。)を生成させた。 【0041】その後、図1の装置を用いて、ラマンスペクトルを測定し、ラマンシフト位置555cm-1近傍にあるCr2O3皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度ICr2O3とラマンシフト位置680cm-1近傍にあるFeCr2O4皮膜構造を示すラマンスペクトルのピークの強度IFeCr2O4から、式1に示される相対強度比であるCr2O3比を求めた。測定には、これらの鋼管の長さ方向中央部から切り出したサンプル(長さ1cm)を用いた。測定は室温(20℃)で行った。 【0042】図2は、ラマンスペクトルの測定例を示すものであり、(a)は後述する表3の試験No.1のスペクトルであり、(b)は後述する表3の試験No.25のスペクトルである。 【0043】 【表2】
【0044】一方、耐食性は、鋼管に臭化水素ガスを5気圧の圧力で封入し、温度80℃で100時間保持した後、管内面の発錆状況を走査型電子顕微鏡観察する方法で評価した。 【0045】非触媒性は、管内に100ppmモノシランを含むArガスを通じて、管出側でガスクロマトグラフによりモノシランの分解によって生ずるH2 濃度を種々の温度で測定し、モノシランの分解する最低の温度により評価した。 【0046】水分放出性は、酸化処理後の鋼管を20℃、相対湿度50%の雰囲気中に24時間放置した後、管内に乾燥したArガス(水分1ppb)を1l/minで流し、管出側ガス中の水分量を大気圧イオン化質量分析法で測定し、測定開始から出側での水分量が1ppb以下に低下するまでの所要時間(脱離時間)によって評価した。なお、この所要時間が短いほど水分放出特性に優れる。 【0047】Cr2O3比ならびに耐食性、触媒性および水分放出性の調査結果を表3に示す。 【0048】 【表3】
【0049】この表3から、Cr2O3比が98%以上のものについて、その鋼材が良と判定することとした。 【0050】そして、この範囲を適正範囲として演算手段15(マイクロコンピュータ17)に記憶させた。 【0051】そして、この評価装置を用いて、ラマンスペクトルを測定し、Cr2O3比を演算し、これが適正範囲に入っているかどうかを判定させることにより、非破壊で試料の高純度ガス用ステンレス鋼材としての良否を判定できることを確認した。 【0052】なお、本発明は、フェライト系ステンレス鋼材のみならずオーステナイト系ステンレス鋼材などについても適用可能である。その場合、その鋼材表面の皮膜のCr2O3比の適正範囲をあらかじめ求めておき、フェライト系ステンレス鋼材の場合と同様な方法で判定すれば良い。 【0053】 【発明の効果】本発明の高純度ガス用ステンレス鋼材の評価方法によれば、試料を実環境下にさらすことなく、試料の特性を非破壊で簡単に短時間で評価することができる。その際、対象鋼材ごとにその皮膜のラマンスペクトルを測定し、皮膜構造を示す所定のラマンスペクトルのピークの強度に対する適正範囲を設定すれば良いので、高純度ガス用のあらゆるステンレス鋼材に適用することができる。また、非破壊で評価できるため、全数検査が可能であり厳密な品質管理にも適用できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002118 【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成8年(1996)8月30日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】森 道雄 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開平10−73539 |
| 【公開日】 |
平成10年(1998)3月17日 |
| 【出願番号】 |
特願平8−229595 |
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