| 【発明の名称】 |
アルミ製プーリとその製造法 |
| 【発明者】 |
【氏名】早坂 弘
【氏名】小宮山 正生
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| 【要約】 |
【課題】通常より厚膜の耐摩耗性メッキ層と本来のプーリ材質と合わせて、コストを抑えつつ、プーリの目標寿命Dにおける摩耗量を500μm以下とする要求に応じられる、アルミ製プーリとその製造法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金を鋳造して得たアルミ製プーリ11のベルト溝12に100μm以上500μm以下の厚さの耐摩耗性メッキ18を施したアルミ製プーリに関する発明と、その製造法に関する発明からなり、コストを抑えつつ、プーリの目標寿命Dにおける摩耗量を500μm以下とする要求に応じたアルミ製プーリを提供できるほか、エンジンの仕様等に合わせてアルミ製プーリの地金の種類及び耐摩耗性メッキの膜厚の組合わせを調節でき、プーリの目標寿命Dにおける摩耗量を500μm以下とする要求に応じられる。また、前記メッキ層が消滅する前に、プーリを外してベルト溝に再メッキをして寿命を伸ばすことも可能である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】アルミニウム合金を鋳造して得たアルミ製プーリのベルト溝に100μm以上500μm以下の厚さの耐摩耗性メッキを施したことを特徴とするアルミ製プーリ。 【請求項2】アルミニウム合金を鋳造して得たアルミ製プーリのベルト溝をメッキ厚さを考慮して成形し、前記ベルト溝に100μm以上500μm以下の厚さの耐摩耗性メッキを施すことを特徴とするアルミ製プーリの製造法。 【請求項3】前記アルミニウム合金が、Si14〜16重量%を含むアルミニウム合金鋳物又はアルミニウム合金ダイカストであり、前記メッキ処理前に溶体化処理後、人工時効硬化処理を行ったことを特徴とする請求項2記載のアルミ製プーリの製造法。 【請求項4】前記アルミニウム合金が、日本工業規格(JIS)H5202が適用されるアルミニウム合金鋳物であり、前記メッキ処理前に溶体化処理後、人工時効硬化処理を行ったことを特徴とする請求項2記載のアルミ製プーリの製造法。 【請求項5】前記アルミニウム合金が、日本工業規格(JIS)H5302が適用されるアルミニウム合金ダイカストであり、前記メッキ処理前に溶体化処理後、人工時効硬化処理を行ったことを特徴とする請求項2記載のアルミ製プーリの製造法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えばエンジンのクランクプーリ等に使用されるアルミ製プーリとその製造法に関する。 【0002】 【従来の技術】前記エンジン等には、外周にV形溝が形成され、これにいわゆるVベルトを掛けて駆動するプーリが使用されているが、近年車両の軽量化に呼応して、エンジンも極力その重量を減ずることが要求され、このため前記プーリも従来の鋳鉄製からアルミ製とする試みがなされている。この場合、材料としては、日本工業規格(JIS)H5202における鋳物用のAl−Si−Mg系アルミ合金で、鋳造性、機械的性質または耐食性が良好なAC4A、AC4Cや、日本工業規格(JIS)H5302におけるダイカスト用のAl−Si−Cu系アルミ合金で、鋳造性、被削性、機械的性質の良いADC12、更に同じくダイカスト用のAl−Si−Cu系アルミ合金で、耐摩耗性に優れたADC14やこれと類似したハイシリコンアルミ鋳物が選択され、またこれらの鋳造乃至ダイカスト時に、T6と称する溶体化処理後、人工時効硬化処理を施した、AC4A−T6、AC4C−T6、ハイシリコンアルミ鋳物−T6が使用されている。 【0003】ところで、図4に示すように、前記プーリ1は、その外周に形成されたV形ベルト溝2に嵌合したVベルト3が、矢印方向の押圧力を与えつつ紙面と直角方向へ移動するとき、その側面3aがV形ベルト溝2の対向斜壁(摺動面)2aに圧接されつつ摺動して、回転せしめられるものである。したがって上記状態を長時間続けると、V形ベルト溝2の対向斜壁(摺動面)2aが摩耗し、本発明者の研究によれば、この摩耗量Sが500〜600μmに達すると、図5の如く摩耗箇所の両側のみがVベルト3の側面3aと接触して、該側面3aに対する面圧を点線のように高め、短時間に該側面3aを著しく摩耗せしめ、Vベルト3が短時間で使用不能となることが判明した。 【0004】上記V形ベルト溝2の対向斜壁(摺動面)2aの摩耗量Sは、前記材質によって差があることは当然であるが、これを図3により説明する。図3は、横軸に時間H、縦軸に前記摩耗量μmをとったプーリの摩耗曲線図であり、横軸の時間は、プーリの目標寿命Dとして例えば車両走行距離70万キロメートルを時間換算した値をとり、0からDまでの間をA=20万キロメートル、B=40万キロメートル、C=60万キロメートルを各々時間換算した値で区切ったものである。なお、縦軸の摩耗量は高い数値を記してあるが、安全性から言えば、前記Dにおいても摩耗量が500μm以下であることが要求される。従って、500μmの横線は許容摩耗限界線と言える。このプーリの摩耗曲線図において、■は前記AC4A−T6製、■はADC12製、■はAC4C−T6製、■はADC14製、■は前記ハイシリコンアルミ鋳物−T6製、■は鋳鉄製の各プーリの摩耗曲線を表している。(■■■は後述) この図から判るように、■を除き■〜■の前記した材質のプーリは、「前記Dにおいても摩耗量が500μm以下」とする要求を満たすことができないのである。 【0005】そこで、前記V形ベルト溝2に表面硬化処理を施して摩耗量を減少させようとすること、就中、表面硬化法のうち耐摩耗性に優れ、コストも低廉な電気メッキ法を適用することが考えられる。しかしながら、本発明者の研究によれば、空中に浮遊しているダストは5〜80μmの直径を有し、しかも、その主成分がSiO2、Al2O3、Fe2O3等の高い硬度をもつ酸化物の集合物であるところから、コストを抑えるため上記電気メッキを膜厚50μm程度としたものでは、そのメッキ層は前記Vベルトにより摺動することに大きなダスト粒子によって深く穿られる異常摩耗を起こし、摩耗が促進されることが判明した。しかし、メッキ層を極端に厚くして、このメッキ層のみでダスト、摩耗に対応することはメッキのコストが高額になり過ぎる問題がある。 【0006】本発明者は上記に鑑み研究の結果、アルミ製プーリのV形ベルト溝に、前記大きなダスト粒子によっても深く穿られて異常摩耗を起こすことのない通常より厚膜の耐摩耗性メッキを施し、しかしこの厚いメッキ層のみでダスト、摩耗に対応するのでなく、メッキ層と本来のプーリ材質と合わせて、コストを抑えつつ、プーリの目標寿命Dにおける摩耗量を500μm以下とする前記要求に応じられるようにしたのである。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】即ち、本発明が解決しようとする課題は、通常より厚膜の耐摩耗性メッキ層と本来のプーリ材質と合わせて、コストを抑えつつプーリの目標寿命Dにおける摩耗量を500μm以下とする前記要求に応じられる、アルミ製プーリとその製造法を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための本発明は、アルミニウム合金を鋳造して得たアルミ製プーリのベルト溝に100μm以上500μm以下の厚さの耐摩耗性メッキを施したことを特徴とするアルミ製プーリに関する発明と、アルミニウム合金を鋳造して得たアルミ製プーリのベルト溝をメッキ厚さを考慮して成形し、前記ベルト溝に100μm以上500μm以下の厚さの耐摩耗性メッキを施すことを特徴とするアルミ製プーリの製造法に関する発明からなる。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1乃至図3により詳細に説明する。図1及び図2において、11は本発明に係るアルミ製プーリで、この例では外周にV形ベルト溝部12を形成した円筒部13が、その一端において取付け用円板部14と一体に成形され、該円板部14には、例えばダンパ取付け用めねじ15、クランク軸への取付け用のボルト孔16及び軽量化のための鋳抜き穴17が形成されている。前記V形ベルト溝部12には、対向斜壁12a及び底面12bに耐摩耗性メッキ層18が形成され、摺動面12cとされている。該メッキ層18は、プーリ11の材質に応じて100μm以上500μm以下の範囲で、その厚さが選択される。 【0010】前記本発明アルミ製プーリ11の製造に際しては、その材質として前記AC4A−T6、AC4C−T6、Si14〜16%のハイシリコンアルミ鋳物−T6等が選択され、これを重力鋳造またはダイカストによって粗形材として成形し、機械加工によって図1に示すような形状に成形される。この際、前記V形ベルト溝部12の、殊に対向斜壁12aの成形に当たっては、必要があれば前記耐摩耗性メッキ層18の厚さに応じて削り込むことも行う。このような加工の後、前記V形溝部12に、硬質の電気メッキ等によりメッキ層18を膜厚100〜170μmに形成して摺動面12cとされる。図3における■は前記AC4A−T6に耐摩耗性メッキを170μmの膜厚で施したもの、■はAC4C−T6に前記メッキを150μmの膜厚で施したもの、また■はSi14〜16%のハイシリコンアルミ鋳物−T6に前記メッキを100μmの膜厚で施したものを各々示すものである。 【0011】上記のように成形された本発明アルミ製プーリ11は、図2に示すように、V形ベルト溝部12の摺動面12cはここに掛けられたVベルト3と摺動し、まず前記メッキ層18を摩耗させるが、メッキ層18が100μm以上あるので、ダストに対する抵抗力が大きく、ダストの粒径が前記のように80μmと大きくても、深く穿るような異常な摩耗は生ぜず、図3の■、■、■の線に示すように、それぞれ55万キロメートル、50万キロメートル、33万キロメートルを時間換算した値の時間までメッキ層18のみで摩耗に対応する。 【0012】このメッキ層18が消滅してからはアルミ製プーリ11の前記地金が摩耗に対抗し、図3に示すように、各々■は■に、■は■に、■は■に平行に推移し、目標寿命Dにおいてはともに400μmの摩耗で終了する。従って、アルミ製プーリ11を前記許容摩耗限界である500μmに十分余裕のある摩耗値で安全に役目を終了させることができる。 【0013】 【発明の効果】本発明のアルミ製プーリは、アルミニウム合金を鋳造して得たアルミ製プーリのベルト溝に100μm以上500μm以下の厚さの耐摩耗性メッキを施したことを特徴とするので、軽量であるばかりでなく、膜厚100μm以上の耐摩耗性メッキによって、粒径の大きなダストによってもメッキ層を深く穿られることもなく、プーリの寿命までの時間の少なくともほぼ1/2の時間を耐えることができ、また、残りの時間をプーリの地金で、余裕をもって対応することが可能となる。 【0014】また、本発明に係るアルミ製プーリの製造法は、アルミニウム合金を鋳造して得たアルミ製プーリのベルト溝をメッキ厚さを考慮して成形し、前記ベルト溝に100μm以上500μm以下の厚さの耐摩耗性メッキを施すことを特徴とするので、コストを抑えつつプーリの目標寿命Dにおける摩耗量を500μm以下とする要求に応じたアルミ製プーリを提供できる効果があるほか、エンジンの仕様等に合わせてアルミ製プーリの地金の種類及び耐摩耗性メッキの膜厚の組合わせを調節でき、コストを抑えつつプーリの目標寿命Dにおける摩耗量を500μm以下とする前記要求に応じられる効果がある。また、本発明によれば、前記メッキ層が消滅する前に、プーリを外してベルト溝に再メッキをして寿命を伸ばすことも可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000165985 【氏名又は名称】古河鋳造株式会社
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| 【出願日】 |
平成8年(1996)8月31日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】椎原 英一
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| 【公開番号】 |
特開平10−78114 |
| 【公開日】 |
平成10年(1998)3月24日 |
| 【出願番号】 |
特願平8−249036 |
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