| 【発明の名称】 |
高強度スプライン |
| 【発明者】 |
【氏名】深谷 彰弘
【氏名】井山 和昌
【氏名】丸山 公孝
【氏名】望月 善一
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| 【要約】 |
【課題】応力集中がなく、強度的にも優れ、特にスプラインにおいて問題となる回転方向の繰り返し荷重に対する疲労強度が優れた高強度スプラインを提供する。
【解決手段】軸Sまわりに設けられた歯3により回転力を伝達するスプライン1であって、少なくとも前記歯3の先端を除く部分がほぼ円弧状の連続した曲線から構成されると共に、少なくとも前記歯先3Aから歯底3Bまでの部分に表面硬化処理が施されていることを特徴とするものである。例えば、表面硬化処理が、高周波焼入れや火炎焼入れのような表面焼入れであることを特徴とするもの、あるいは、窒化処理のような拡散処理であることを特徴とするものである。これにより、歯底の隅部に発生する応力集中を防止し、疲労強度を大幅に改善することができる。さらに、ショットピーニングを行うことによりさらに一層疲労強度の改善を図ることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸まわりに設けられた歯により回転力を伝達するスプラインであって、少なくとも前記歯の先端を除く部分がほぼ円弧状の連続した曲線から構成されると共に、前記歯先から少なくとも歯底の下側までの部分に表面硬化処理が施されていることを特徴とする高強度スプライン。 【請求項2】 前記表面硬化処理が、高周波焼入れや火炎焼入れのような表面焼入れ処理であることを特徴とする請求項1記載の高強度スプライン。 【請求項3】 前記表面硬化処理が、窒化処理のような拡散処理であることを特徴とする請求項1記載の高強度スプライン。 【請求項4】 前記表面硬化処理が、高周波焼入れや火炎焼入れのような表面焼入れ処理と、この表面焼入れ処理後に行われるショットピーニング処理の組合わせであることを特徴とする請求項1記載の高強度スプライン。 【請求項5】 前記表面硬化処理が、窒化処理のような拡散処理と、この拡散処理後に行われるショットピーニング処理の組合わせであることを特徴とする請求項1記載の高強度スプライン。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、トルクを伝達するための高強度スプラインに係り、特に疲労強度の大きな高強度スプラインに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来より、回転軸に対応した穴を有する種々の機能を備えた回転エレメントを回転軸に嵌着して回転力を伝達する場合には、例えばプラスチック成形機のスクリュを形成する場合のように、回転軸に設けられた溝とそれに嵌着されたスクリュエレメントに設けられた溝との間にキーを用いることが行なわれていた。 【0003】しかし、このキーによる方式ではキーの溝部に応力集中が起るため大きなトルクを伝達することができないという問題があり、この問題を解決するために軸まわりに直接設けられた複数条の歯とこの歯に合致する複数条の溝を有する穴の組合わせからなるスプラインを用いることが考えられた。 【0004】このようなスプラインの歯の形状として角形を採用する角形スプラインでは、歯底の隅部に逃げ溝を設ける必要があり、強度的に不利であるためインボリュートスプラインが開発された。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前述のインボリュートスプラインにおいては、前述の角形スプラインのように逃げ溝を設ける必要がなく、歯元部分の歯幅を大きくとることができるので平均強度を上げることはできるものの、歯底の隅角への応力集中をなくすことができないという問題がある。 【0006】そこで、このような応力集中をなくすために円弧状スプラインが提案されている。 【0007】この発明の目的は、以上のような従来の技術に着目してなされたものであり、応力集中がなく、強度的にも優れ、特にスプラインにおいて問題となる回転方向の繰り返し荷重に対する疲労強度が優れた円弧状スプラインからなる高強度スプラインを提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1による発明の高強度スプラインは、軸まわりに設けられた歯により回転力を伝達するスプラインであって、少なくとも前記歯の先端を除く部分がほぼ円弧状の連続した曲線から構成されると共に、前記歯先から少なくとも歯底の下側までの部分に表面硬化処理が施されていることを特徴とするものである。 【0009】従って、ほぼ円弧状の連続した曲線により歯を構成して円弧状スプラインを形成し、この円弧状スプラインの歯先から少なくとも歯底の下側に相当する部分に表面硬化処理を施して歯部分の強度を増した。 【0010】請求項2による発明の高強度スプラインは、請求項1記載の表面硬化処理が、高周波焼入れや火炎焼入れのような表面焼入れ処理であることを特徴とするものである。 【0011】従って、円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底の下側までの部分に表面焼入れを行なってスプラインの表面を硬化させた。 【0012】請求項3による発明の高強度スプラインは、請求項1記載の表面硬化処理が、窒化処理のような拡散処理であることを特徴とするものである。 【0013】従って、円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底の下側までの部分に拡散処理を行なってスプラインの表面を硬化させた。 【0014】請求項4による発明の高強度スプラインは、請求項1記載の表面硬化処理が、高周波焼入れや火炎焼入れのような表面焼入れ処理と、この表面焼入れ処理後に行われるショットピーニング処理の組合わせであることを特徴とするものである。 【0015】従って、円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底の下側までの部分に表面焼入れを行なって硬化させた後に、ショットピーニングを行う。 【0016】請求項5による発明の高強度スプラインは、請求項1記載の表面硬化処理が、窒化処理のような拡散処理と、この拡散処理後に行われるショットピーニング処理の組合わせであることを特徴とするものである。 【0017】従って、円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底の下側までの部分に拡散処理を行なって硬化させた後に、ショットピーニングを行う。 【0018】 【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態の例を図面に基づいて説明する。 【0019】図1には、軸側の円弧状スプライン1が示されている。この円弧状スプライン1では、軸Sの周囲に形成されている歯3の形状および歯底3Bがほぼ円弧の連続した曲線で構成されている。なお、歯3の先端(歯先)3Aは軸Sの軸心を中心とする円弧にほぼ沿うようにカットしてもよい。 【0020】また、図2には、インボリュートスプライン5が示されている。この比較例としてのインボリュートスプライン5では、軸Sの周囲に設けられている歯7が、円のまわりに糸を巻付け、その端を持って引っ張りながら糸を巻きほどいていくときに、糸の端が描く軌跡(インボリュート曲線)を用いて決定されたものである。 【0021】(実施例1)図3を参照するに、前述の図1に示される円弧状スプライン1で表面硬化処理を施していないもの、この円弧状スプライン1の少なくとも歯3の先端(歯先)3Aから歯底3Bの下側までについて表面硬化処理の一種である高周波焼入れ処理を施したもの、および図2に示されるインボリュートスプライン5で表面硬化処理を施していないものの三つの場合について、S55C、SCM440、SNCM630の各材質に対するねじれ疲労強度(100万回破断強度)の測定・比較を行なった。 【0022】ここで、インボリュートスプライン5においては、歯底7Bにおける隅角部の形状から焼入れを行うとクラックを生じるため、高周波焼入れ処理を施した場合については比較の対象としていない。 【0023】図3に示されるように、S55C、SCM440、SNCM630の各材質に対していずれも高周波焼入れ処理を施した円弧状スプライン1のねじれ疲労強度が最も高くなっていることがわかる。また、従来より焼割を起しやすいとされているSCM440やSNCM630についても焼割を起さなかった。 【0024】以上のことから、何れの材質に対しても高周波焼入れ処理を行うことにより疲労強度が増すことがわかると共に、円弧状スプライン1においては高周波焼入れ処理を行う際にクラックが生じないことから焼入れ処理に適した形状であることがわかる。また、焼割を起しやすいとされていたSCM440やSNCM630についても、焼割を起こすことなく合金鋼の効果を向上させることができる。 【0025】また、このように疲労強度が増すことにより、過大なトルクが前述の円弧状スプライン1に作用しても塑性変形が小さく抑えられるため、円弧状スプライン1に嵌着されている、例えばスクリュエレメント等の交換を容易に行うことができる。 【0026】(実施例2)図4を参照するに、材質SACM645で作製された前述の図1に示される円弧状スプライン1および図2に示されるインボリュートスプライン5について、表面拡散処理の一種である窒化処理(550℃、60H)を施した場合の疲労強度(100万回破断強度)について測定・比較を行なった。 【0027】図4に示されるように、窒化処理を施した円弧状スプライン1の疲労強度の方が、同じく窒化処理を施したインボリュートスプライン5の疲労強度よりも約35%程度大きなものとなることがわかる。 【0028】以上説明したように、円弧状スプライン1に高周波焼入れや窒化処理等の表面硬化処理を施すことにより、回転負荷に対する疲労強度を大幅に向上することができた。 【0029】また、円弧状スプライン1が高周波焼入れ等の表面硬化処理に適した形状であるということができる。 【0030】なお、前述した実施の形態では、軸側のスプラインについて説明したが、穴側についても同様である。 【0031】(実施例3)この実施例においては、二軸押出し機(スクリュウ径58mm)用スクリュウ軸(全長4m)を対象に、市販の高耐食性材料(例えばSUS420J2丸鋼をHRC30に調質したもの)を用いて円弧状スプライン1(図1参照)に加工したものを対象とする。なお、この円弧状スプライン1の断面形状は、実施例1及び実施例2において使用したものと同様の形状のものである。 【0032】このようにして加工した円弧状スプライン1の歯先3Aから歯底3Bまでについて全周高周波焼入れ(硬度HS65)し、450℃でHRC48に焼戻しを行う。 【0033】その後、曲りが全長に対して0.2mm以内となるように修正し、鋼球を用いて歯底3Bから歯先3Aに対して一様にショットピーニングしたものである。 【0034】このような円弧状スプライン1に対して前述の高周波焼入れを行ない450℃で焼戻しした後に、ショットピーニングを行ったものと、行っていないものについて疲労強度の比較を行なった。 【0035】なお、インボリュートスプライン5については、実施例1と同様に比較の対象としない。 【0036】図5には、以上の測定結果および、その他SUS431を高周波焼入れしHRC43に焼戻ししたもの、SUS440Mを高周波焼入れしHRC49に焼戻ししたものについて同様の試験を行った測定結果について示してある。図5から明らかなようにいずれの材質についても、ショットピーニングを行った場合の方が行わない場合と比較して約9%疲労強度が向上していることがわかる。 【0037】以上説明したように、円弧状スプライン1において、高周波焼入れを行った後にショットピーニングを行うことにより、ショットピーニングを行わない場合に比べて回転負荷に対する疲労強度を大幅に向上することができた。 【0038】また、前述のようなSUS420J2などの13Cr系のマルテンサイト系ステンレスを用いることにより、高耐食性と高温強度を有し400℃までの高温使用においても表面焼入れ組織が変化せず、ショットピーニングによる圧縮残留応力が付加され疲労強度の低下を防止することができ、9〜12%疲労強度向上した高温高耐食用高強度スプラインを得ることができる。 【0039】(実施例4)前述の実施例3と同じ材質,形状の円弧状スプライン1の全周についてガス軟窒化処理(550〜600℃で5時間保持後油焼入れ)行い、曲りが全長に対して0.2mm以内となるように修正して、鋼球を用いて歯底3B、7Bから歯先3A、7Aに対して一様にショットピーニングしたものである。 【0040】前述の円弧状スプライン1に対してこのような軟窒化処理した後に、ショットピーニングを行った場合と、行っていない場合について、疲労強度の比較を行なった。 【0041】図6を参照するに、ショットピーニングを行った円弧状スプライン1の方が、行わない場合と比較して約18%疲労強度が向上していることがわかる。 【0042】以上説明したように、円弧状スプライン1において、軟窒化処理を行った後にショットピーニングを行うことにより、ショットピーニングを行わない場合に比べて回転負荷に対する疲労強度を大幅に向上することができた。 【0043】さらに、ショットピーニングにより表面の脆弱な化合物層を除去することができるので、歪みの修正やトルクのかかり方等により脆弱な窒化層にクラックが生じるのを防止して、強度の安定化を図ることができる。 【0044】なお、この発明は前述の種々の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行なうことにより、その他の態様で実施し得るものである。 【0045】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明による高強度スプラインでは、ほぼ円弧状の連続した曲線により歯および歯底を構成して円弧状スプラインとしたので、歯底の隅部における応力集中を防止して表面硬化処理の際におけるクラックの発生を抑えることができる。また、この円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底に相当する部分に表面硬化処理を施して歯部分の強度を増したので、スプラインとしての疲労強度を大幅に改善することができる。 【0046】請求項2の発明による高強度スプラインでは、円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底の下側までの部分に焼入れ処理を行なって硬化させたので、スプライン全体としての疲労強度を大幅に改善することができる。 【0047】請求項3の発明による高強度スプラインでは、円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底の下側までの部分に拡散処理を行なって硬化させたので、スプライン全体としての疲労強度を大幅に改善することができる。 【0048】請求項4の発明による高強度スプラインでは、円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底の下側までの部分に表面焼入れを行なって硬化させた後に、ショットピーニングを行うので、前述の焼入れ処理を行った場合よりもさらに疲労強度を改善することができる。 【0049】請求項5の発明による高強度スプラインでは、円弧状スプラインの少なくとも歯先から歯底の下側までの部分に拡散処理を行なって硬化させた後に、ショットピーニングを行うので、前述の拡散処理を行った場合よりもさらに疲労強度を改善することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003458 【氏名又は名称】東芝機械株式会社
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| 【出願日】 |
平成8年(1996)10月8日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】三好 秀和 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開平10−2322 |
| 【公開日】 |
平成10年(1998)1月6日 |
| 【出願番号】 |
特願平8−267064 |
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