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【発明の名称】 流通路形成方法
【発明者】 【氏名】榎本 清志

【氏名】藤原 力

【氏名】恩田 孝

【氏名】千田 誠

【要約】 【課題】流体を流通させる流通路を短時間で母材に形成できる流通路形成方法を提供する。

【解決手段】母材11の表面に凹状の溝11aを機械加工し、水溶性の中子12を上記溝11aに充填した後、母材11の表面にろう材をHP/HVOFにより溶射してろう材層13を形成し、次に、ハステロイ合金の粉末をHP/HVOFにより溶射して外層14を形成し、続いて、母材11を加熱処理して上記外層14を焼結して緻密化させると共に上記ろう材層13により母材11と外層14とをろう付したら、母材11を水に浸漬して前記中子12を溶解させて除去することにより、冷却液の流通方向と直交する方向の断面形状が略ロ型をなす流通路11bを母材11に形成するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 母材に凹状の溝を形成し、当該溝に水溶性の中子を充填した後、当該母材に外層を高圧・高速フレームによる溶射で形成したら、上記中子を水に溶解させて除去することにより、当該母材に流体の流通路を形成することを特徴とする流通路形成方法。
【請求項2】 請求項1に記載の流通路形成方法であって、前記中子の充填を行った後、前記母材にろう材を溶射してから前記外層の形成を行い、加熱処理してから前記中子の除去を行うようにしたことを特徴とする流通路形成方法。
【請求項3】 請求項2に記載の流通路形成方法であって、前記ろう材の溶射を高圧・高速フレームで行うことを特徴とする流通路形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、母材に流体の流通路を形成する方法に関し、特に、ロケットエンジンやジェットエンジンなどに冷却液などの流通路を形成する際に適用すると有効である。
【0002】
【従来の技術】ロケットエンジンやジェットエンジンなどは、燃焼室を冷却するために、液体水素などの冷却液を流通させる流通路が形成されている。このような流通路は、図4に示すように、銅合金などからなる母材1の表面に凹状の溝1aを機械加工(図4(a))し、当該溝1aにワックス2を充填(図4(b))した後、当該母材1の表面をめっき処理して当該表面に銅の外層3を形成(図4(c))したら、当該母材1を加熱して上記ワックス2を溶融させて除去する(図4(d))ことにより、冷却液の流通方向と直交する方向の断面形状が略ロ型となるように形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述したようにして母材1に流通路1bを形成する方法では、比較的肉厚の大きい(約2mm)外層3をめっき処理により形成しているため、当該外層3の形成に多大な時間がかかってしまい、製作効率が非常に悪かった。
【0004】
【課題を解決するための手段】前述した課題を解決するための、本発明による流通路形成方法は、母材に凹状の溝を形成し、当該溝に水溶性の中子を充填した後、当該母材に外層を高圧・高速フレームによる溶射で形成したら、上記中子を水に溶解させて除去することにより、当該母材に流体の流通路を形成することを特徴とする。
【0005】上述した流通路形成方法においては、前記中子の充填を行った後、前記母材にろう材を溶射してから前記外層の形成を行い、加熱処理してから前記中子の除去を行うようにしたことを特徴とする。
【0006】上述した流通路形成方法においては、前記ろう材の溶射を高圧・高速フレームで行うことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明による流通路成形方法の各実施の形態を各図面を用いて以下に説明する。
【0008】[第一番目の実施の形態]本実施の形態は、純ニッケルからなる母材にハステロイ合金からなる外層を設けて流通路を形成する場合であり、ロケットエンジンに適用すると有効である。その手順を図1を用いて説明する。
【0009】純ニッケルからなる母材11の表面に凹状の溝11aを機械加工(図1(a))し、アルミナと燐酸三カリとを混合した水溶性の中子12を上記溝11aに充填(図1(b))した後、当該母材11の表面にNiろう材(BNi−1)を高速・高圧フレーム(High Pressure/High Velocity of Flame :以下、HP/HVOFと記す)により溶射してろう材層13を形成(図1(c))し、次に、ハステロイ(Hastelloy )合金の粉末をHP/HVOFにより溶射して外層14(約2mm)を形成(図1(d))し、続いて、当該母材11を加熱処理(1100℃×5h)して上記外層14を焼結して緻密化させると共に上記ろう材層13により母材11と外層14とをろう付したら、母材11を水に浸漬して前記中子12を溶解させて除去(図1(e))することにより、冷却液の流通方向と直交する方向の断面形状が略ロ型をなす流通路11bを母材11に形成する。
【0010】上記HP/HVOFによる溶射は、粉末の溶射材料を高速・高圧の燃焼ガスで溶融させながら母材に噴き付けるため、溶射材料の粒子速度が非常に速く(約990〜1170m/s)、溶射被膜を厚く(約5〜6mm)形成することができる。
【0011】したがって、このような流通路形成方法によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)HP/HVOFによる溶射で外層14を形成するので、当該外層14を短時間で厚肉にすることができる。
(2)中子12が水溶性であるので、除去を簡単に行うことができる。
(3)ろう材層13により母材11と外層14とをろう付するので、母材11と外層14との結合力を高めることができる。
(4)加熱処理により外層14を焼結して緻密化させるので、外層14の強度を高める(15〜20kg/cm2 →60kg/cm2 )ことができる。
【0012】[第二番目の実施の形態]本実施の形態は、銅からなる母材にハステロイ合金からなる外層を設けて流通路を形成する場合であり、ロケットエンジンに適用すると有効である。その手順を図2を用いて説明する。なお、前述した実施の形態と同様な部分については、前述した実施の形態と同様な符号を用いることにより、その説明を省略する。
【0013】銅からなる母材21の表面に凹状の溝21aを機械加工(図2(a))し、アルミナと燐酸三カリとを混合した水溶性の中子12を上記溝21aに充填(図2(b))した後、当該母材21の表面にAgろう材(BAg−8)をHP/HVOFにより溶射してろう材層23を形成(図2(c))し、次に、ハステロイ合金の粉末をHP/HVOFにより溶射して外層14(約2mm)を形成(図2(d))し、続いて、当該母材21を加熱処理(1100℃×5h)して上記外層14を焼結して緻密化させると共に上記ろう材層23により母材21と外層14とをろう付したら、母材21を水に浸漬して前記中子12を溶解させて除去(図2(e))することにより、冷却液の流通方向と直交する方向の断面形状が略ロ型をなす流通路21bを母材21に形成する。
【0014】したがって、本実施の形態では、前述した実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0015】[第三番目の実施の形態]本実施の形態は、ハステロイ合金からなる母材にハステロイ合金からなる外層を設けて流通路を形成する場合であり、ジェットエンジンに適用すると有効である。その手順を図3を用いて説明する。なお、前述した実施の形態と同様な部分については、前述した実施の形態と同様な符号を用いることにより、その説明を省略する。
【0016】ハステロイ合金からなる母材31の表面に凹状の溝31aを機械加工(図3(a))し、アルミナと燐酸三カリとを混合した水溶性の中子12を上記溝31aに充填(図3(b))した後、当該母材31の表面にNiろう材(BNi−1)をHP/HVOFにより溶射してろう材層13を形成(図3(c))し、次に、ハステロイ合金の粉末をHP/HVOFにより溶射して外層14(約2mm)を形成(図3(d))し、続いて、当該母材31を加熱処理(1100℃×5h)して上記外層14を焼結して緻密化させると共に上記ろう材層13により母材31と外層14とをろう付したら、母材31を水に浸漬して前記中子12を溶解させて除去(図3(e))することにより、冷却液の流通方向と直交する方向の断面形状が略ロ型をなす流通路31bを母材31に形成する。
【0017】したがって、本実施の形態では、前述した実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0018】なお、前述した各実施の形態では、ろう材層13,23をHP/HVOFによる溶射で形成するようにしたが、一般的な他の溶射方法でろう材層を形成するようにしてもよい。しかしながら、ろう材層をHP/HVOFによる溶射で形成するようにすれば、ろう材層を厚肉に形成することができるので、母材と外層との結合力を大きく向上させることができるようになる。
【0019】
【発明の効果】本発明の流通路形成方法によれば、母材に流通路を短時間で形成することができるので、製作効率を大幅に向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成8年(1996)7月2日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎 (外2名)
【公開番号】 特開平10−18911
【公開日】 平成10年(1998)1月20日
【出願番号】 特願平8−171953