トップ :: E 固定構造物 :: E02 水工;基礎;土砂の移送

【発明の名称】 フック付き鋼矢板および鋼管矢板、ならびにそれらを用いた護岸工法
【発明者】 【氏名】島谷 幸宏
【氏名】鳥崎 肇一
【氏名】塩崎 禎郎
【氏名】篠原 雅樹
【氏名】昇 健次
【氏名】坂田 豊
【氏名】飯田 久雄
【課題】生態系の保全が可能であり、施工に手間をかけずに景観上の問題が解消される護岸構造を実現可能な鋼矢板およびそれを用いた護岸工法を提供すること。

【解決手段】ウェブ面にL字状のフック3を取り付けたフック付き鋼矢板11を、最初に仮締切高さまで打設し、次いで法覆工としてのふとんかご14の施工完了後に前記フック付き鋼矢板1を水面下まで2次打設し、該フック3によってふとんかご14を押さえ付け一体化し、護岸構造を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ウェブ面にL字状のフックを取り付けたことを特徴とするフック付き鋼矢板。
【請求項2】 本体側面にL字状のフックを取り付けたことを特徴とするフック付き鋼管矢板。
【請求項3】 請求項1に記載のフック付き鋼矢板または請求項2に記載のフック付き鋼管矢板を、フックが護岸側となるように打設し、該フックによって法覆工を押さえ付け一体化することを特徴とする護岸工法。
【請求項4】 前記フック付き鋼矢板またはフック付き鋼管矢板を最初に仮締切高さまで打設し、次いで法覆工の施工完了後に前記フック付き鋼矢板を水面下まで2次打設することを特徴とする請求項3に記載の護岸工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、河川、港湾の護岸構造等に用いられる鋼矢板およびこのような鋼矢板を用いた護岸工法に関し、特に河川施設等の治水機能を保ちながら生態系を保全・創造し、美しい河川景観をつくりだすために用いられる鋼矢板および鋼管矢板、ならびに護岸工法に関する。
【0002】
【従来技術】鋼矢板を用いた護岸工法としては、図8に示すように、鋼矢板21を水面20で打ち止め、コーピングを行ない、法面22をブロック23等で固める工法がよく知られている。また、仮締切と本設とを兼ねて用いられる鋼矢板護岸工法としては、法面の施工完了後に鋼矢板の突出部分を切断する工法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記いずれの工法を採用した場合も鋼矢板が水面上に見え、景観上問題がある。また、これらの工法を採用した場合、鋼矢板およびコンクリートによって、生態系の保全に欠かせない水際部と高水敷との連続性が遮断され、生物の生息に適さない環境となってしまうという問題がある。
【0004】一方、鋼矢板を水面下まで打ち込む方法を採用する場合には、通常、仮締切が行われるが、施工に手間がかかるという問題がある。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、生態系の保全が可能であり、施工に手間をかけずに景観上の問題が解消される護岸構造を実現可能な鋼矢板および鋼管矢板、ならびにそれらを用いた護岸工法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、第1に、ウェブ面にL字状のフックを取り付けたことを特徴とするフック付き鋼矢板を提供する。第2に、本体側面にL字状のフックを取り付けたことを特徴とするフック付き鋼管矢板を提供する。
【0006】第3に、上記フック付き鋼矢板またはフック付き鋼管矢板を、フックが護岸側となるように打設し、該フックによって法覆工を押さえ付け一体化することを特徴とする護岸工法を提供する。
【0007】第4に、上記護岸工法において、前記フック付き鋼矢板またはフック付き鋼管矢板を最初に仮締切高さまで打設し、次いで法覆工の施工完了後に前記フック付き鋼矢板を水面下まで2次打設することを特徴とする護岸工法を提供する。
【0008】本発明においては、ウェブ面にL型状のフックを取り付けた鋼矢板または本体側面L型状のフックを取り付けた鋼管矢板を用い、フックが護岸側となるように打設し、該フックによって法覆工を押さえ付けて一体化し、治水機能を確保するが、この場合に、法覆工としてふとんかごのような自然に近い材料を用いることができるため、生態系の保全に必須である水際部と高水敷との連続性を保つことができ、生物の生息に適した環境を有する護岸構造を得ることができる。また、鋼矢板の打設を行う際に、最初に仮締切高さまで打設し、次いで法覆工の施工完了後に前記フック付き鋼矢板を水面下まで2次打設するという方法を採用することにより、手間をかけずに景観上の問題を解消することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明のフック付き鋼矢板の一例を示す斜視図である。鋼矢板1は、U字状をなす本体1aとそのウェブ面2に設けられたL字状のフック3とから構成されている。フック3はウェブ面2に下方に屈折して設けられており、打設された際に、屈折した部分により後述する法覆工を押さえつけることが可能となっている。
【0010】フック3は鋼矢板1のウェブ面2に溶接により取り付けられる。フック3の取り付け位置、形状は、施工現場に合わせて任意に決定することができる。ただし、フック3の取り付け位置は、鋼矢板の打設用のバイブロのつかみ代(チャッキングスペース)として鋼矢板1の天端より30〜40cmあけることが好ましい。 図2は、本発明のフック付き鋼管矢板の一例を示す斜視図である。鋼管矢板4は、鋼管本体5と、鋼管本体5の側面にその長手方向に沿って本体5を挟むように設けられた継手6および7と、鋼管本体5の側面における継手6および7の中間位置に設けられたフック8とから構成されている。フック8は本体5側面に下方に屈折して設けられており、打設された際に、屈折した部分により後述する法覆工を押さえつけることが可能となっている。また、継手6はT形鋼で構成されており、継手7は鋼管で構成されている。なお、これら継手の形態は限定されず、種々の形態のものを採用することができる。
【0011】フック8もフック3と同様、溶接により取り付けられ、その取り付け位置、形状は、施工現場に合わせて任意に決定することができる。また、取り付け位置は、フック3と同様の理由により、鋼管矢板本体の天端より30〜40cmあけることが好ましい。
【0012】次に、上記フック付き鋼矢板または鋼管矢板を用いた本発明の護岸工法の例について図3ないし図7に基づいて説明する。図3に示すように、フック付き鋼矢板11をフック側が護岸側となるよう、仮締切となる高さまで打設し、その隣にフックなしの鋼矢板12を打設する。同様にフック付き鋼矢板11とフックなしの鋼矢板12とを順次交互に打設する。この場合に、鋼矢板11,12をその高さが施工期間中の最高水位(図2中のH.W.L.)よりも高くなるように打設し、法面(護岸)側に水が流入しないようにする。
【0013】鋼管矢板4を用いる場合にも、基本的には同様に施工される。ただし、図4に示すように、互いに隣接する鋼管矢板の一方の継手6と他方の継手7を嵌合するようにして施工される。
【0014】次に、鋼矢板および鋼管矢板いずれの場合にも、図5に示すように、法面の掘削を行い、その部分に吸出し防止材13を敷き、法覆工としてのふとんかご14を施工する。そして、必要に応じて植生マット15を敷くことにより、法面の緑化を促進する。植生マット15の代わりに覆土を用いてもよい。
【0015】このようにして法面の施工が完了した後に、図6に示すように、フック付き鋼矢板11およびフックなし鋼矢板12を再び打ち込んで、これらの上端を水面下に位置させる。これによってフック3が植生マット15および法覆工であるふとんかご14を押さえ付け、これらが一体化する。
【0016】その後、必要に応じて、図7に示すように、鋼矢板の打ち残し部16に捨て石17を行い、流失防止を図る。このようにして護岸構造を構築することにより、治水機能を確保することができるのみならず、法覆工としてふとんかごのような自然に近い材料を用いることができ、生態系の保全に必須である水際部と高水敷との連続性を保つことができる。また、鋼矢板11,12を最初に仮締切高さまで打設し、次いで法覆工の施工完了後にこれらを水面下まで打設するので、手間がかからない。
【0017】なお、本発明は上記実施の形態に限定されず種々変形可能である、例えば上記実施例では法覆工としてふとんかごを用いたが、これに限らず自然に近い他の材料を用いることも可能である。また、鋼矢板としてフック付きのものとフックなしのものとを交互に打設した場合について示したが、これに限らず、施工の都合に合わせてその配列を決定すればよく、全てフック付きのものを用いるようにしてもよい。鋼矢板としてU字状のものを用いたがこれに限るものでもない。さらに、鋼矢板および鋼管矢板の打設の方法も上述のように2段階で行う方法に限るものではなく、施工の都合に合わせて最適な方法を採用すればよい。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ウェブ面にL型状のフックを取り付けた鋼矢板または本体側面にL型状のフックを取り付けた鋼管矢板を用い、フックが護岸側となるように打設し、該フックによって法覆工を押さえ付けて一体化するので、法覆工としてふとんかごのような自然に近い材料を用いることができ、生態系の保全に必須である水際部と高水敷との連続性を保つことができる。したがって、生物の生息に適した環境を有する護岸構造を得ることができる。また、鋼矢板または鋼管矢板の打設を行う際に、最初に仮締切高さまで打設し、次いで法覆工の施工完了後に前記フック付き鋼矢板を水面下まで2次打設するという方法を採用することにより、手間をかけずに景観上の問題を解消することができる。
【出願人】 【識別番号】590005999
【氏名又は名称】建設省土木研究所長
【識別番号】000173810
【氏名又は名称】財団法人土木研究センター
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成8年(1996)7月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
【公開番号】 特開平10−30223
【公開日】 平成10年(1998)2月3日
【出願番号】 特願平8−184947