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【発明の名称】 橋梁式魚道
【発明者】 【氏名】野崎 春麿
【氏名】小森 俊郎
【氏名】大野 寛
【課題】河岸又は河床の岩盤に最小限の工事を施すことで、長い魚道を容易に構築することができる橋梁式魚道を提供する。

【解決手段】岩盤2には二つ以上の橋脚3が間隔をおいて立設され、橋脚3の上面4,5には、調整モルタル7と簡易ゴム支承体8とを介して、コンクリートによりプレキャスト成形された橋桁ブロック10が二列状に載せられている。橋脚3と橋桁ブロック10との間、そして二列の橋桁ブロック10間は確実に固定され、所定勾配の橋桁15が形成されている。橋桁ブロック10の上面には、調整モルタル17を介して、コンクリートによりプレキャスト成形された魚道ブロック20が設置・接合されている。橋桁ブロック10と魚道ブロック20との間も確実に固定され、所定勾配の魚道水路23が形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 岩盤に少なくとも二つの橋脚を間隔をおいて立設し、該橋脚間にコンクリートによりプレキャスト成形された橋桁ブロックを掛け渡して所定勾配の橋桁を形成し、該橋桁ブロックの上にコンクリートによりプレキャスト成形された魚道ブロックを設置して構築された橋梁式魚道。
【請求項2】 前記橋桁ブロックを複数列状に掛け渡す請求項1記載の橋梁式魚道。
【請求項3】 前記魚道ブロックは、底壁と、該底壁の両側縁部に立設された一対の側壁と、該底壁及び一対の側壁により構成される魚道水路に設けられた隔壁とを備えている請求項1又は2記載の橋梁式魚道。
【請求項4】 前記魚道ブロックは、底壁と、該底壁の両側縁部に立設された一対の側壁と、該底壁の幅方向途中部に立設されて魚道ブロック内を魚道水路及び呼び水水路に仕切る仕切壁と、該魚道水路に設けられた隔壁とを備えている請求項1又は2記載の橋梁式魚道。
【請求項5】 前記隔壁の上縁の一部に切欠部を形成した請求項3又は4記載の橋梁式魚道。
【請求項6】 前記側壁の上縁に前記隔壁の上縁より一回り高い凸壁部を設け、該凸壁部以外の側壁の上縁から魚道水路の余分な水が魚道ブロック外へ溢れ出るようにした請求項3、4又は5記載の橋梁式魚道。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、河川のダム、堰、頭首工等に付設して魚類等の水棲生物の溯上を可能にする魚道に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の魚道は、河岸又は河床の岩盤を掘削し、該岩盤上にコンクリートで基礎工を施した後、該基礎工上に現場打ちコンクリートで構築するか、あるいは該基礎工上にコンクリートによりプレキャスト成形された多数の魚道ブロックを設置及び連結して構築するかしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、堰堤の高低差が大きい場合、魚道は魚類が遡上しうる勾配を確保するためにある程度長く構築する必要があり、そのためには山肌に沿った河岸又は河床の岩盤を長距離にわたって掘削したり、該岩盤上に基礎工を長く施したりしなければならず、その作業が非常に困難であった。
【0004】また、比較的高い砂防堰堤に構築する魚道は、階段式の場合、数回の折り返しが必要であり、構造自体が複雑になっていた。
【0005】そこで、本発明の課題は、河岸又は河床の岩盤を長距離にわたって掘削したり、該岩盤上にコンクリートで長い基礎工を施したりしなくても、該岩盤に最小限の工事を施すことで、長い魚道を容易に構築することができる橋梁式魚道を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明の橋梁式魚道は、岩盤に少なくとも二つの橋脚を間隔をおいて立設し、該橋脚間にコンクリートによりプレキャスト成形された橋桁ブロックを掛け渡して所定勾配の橋桁を形成し、該橋桁ブロックの上にコンクリートによりプレキャスト成形された魚道ブロックを設置して構築される。
【0007】橋桁ブロックは一列状に掛け渡してもよいが、橋桁ブロック単体を小型軽量化するために複数列状に掛け渡すことが好ましい。
【0008】魚道ブロックとしては、次のものを例示できる。
■ 底壁と、該底壁の両側縁部に立設された一対の側壁と、該底壁及び一対の側壁により構成される魚道水路に設けられた隔壁とを備えたもの。
■ 底壁と、該底壁の両側縁部に立設された一対の側壁と、該底壁の幅方向途中部に立設されて魚道ブロック内を魚道水路及び呼び水水路に仕切る仕切壁と、該魚道水路に設けられた隔壁とを備えたもの。
【0009】この隔壁は、水流を緩和して魚類の休息場所を作るとともに、魚類にとって適切な越流水深と越流形状を確保するためのものである。隔壁は、個々の魚道ブロックの中間部に設けたり、端部に設けたりできる。
【0010】また、隔壁の上縁の一部に切欠部を形成し、魚類がレベルを選択して乗り越えられるようにすることが好ましい。特に切欠部は大型魚による乗り越えを容易にする。
【0011】また、隔壁を設ける場合、側壁の上縁に隔壁の上縁より一回り高い凸壁部を設け、凸壁部以外の側壁の上縁から魚道水路の余分な水が魚道ブロック外へ溢れ出るように構成することが好ましい。
【0012】橋脚と橋桁ブロックとの間、また、橋桁ブロックと魚道ブロックとの間は、例えばアンカー鉄筋、モルタル、固定金具、凹凸嵌合等の各種固定手段によって固定することができる。また、魚道ブロックは、二つ以上を相互に連結することができ、その連結手段は特に限定されない。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。図1、図6等に示すように、本実施形態の橋梁式魚道1は、橋脚3と橋桁ブロック10と魚道ブロック20とを主部品として構築されている。
【0014】山肌に沿った河岸又は河床の岩盤2にはコンクリート製の二つ以上の橋脚3が間隔をおいて立設され、隣り合う下流側の橋脚3と上流側の橋脚3とは、魚道に所定勾配を持たせられるように、所定ピッチ(中心間距離)と所定高低差をなすように並んでいる。橋脚3の上面は下流側の低い上面4と上流側の高い上面5との二段構成となっており、上面4,5からは橋脚3に植設された2本のアンカー鉄筋6が突出している。
【0015】図2、図3、図5等に示すように、橋脚3の上面4,5には調整モルタル7が厚さ20〜40mm程度に敷設・接合され、該調整モルタル7の上には厚さ10〜30mm程度の板状の簡易ゴム支承体8が設置されている。橋脚3間には、コンクリートによりプレキャスト成形されたプレストレストコンクリート製又は鉄筋コンクリート製の橋桁ブロック10が二列状に掛け渡されている。二列状としたのは、長いゆえに重くなりやすい橋桁ブロック10の単体を小型軽量化するためであり、従って、橋桁ブロック10の幅は橋脚3の幅の半分弱である。橋桁ブロック10の長さは橋脚3間の所定ピッチに略等しく、橋桁ブロック10の下流側端部は、下流側の橋脚3の高い上面5の簡易ゴム支承体8に載せられ、橋桁ブロック10の上流側端部は、上流側の橋脚3の低い上面4の簡易ゴム支承体8に載せられている。
【0016】図2に示すように、二列の橋桁ブロック10間には前記アンカー鉄筋6が進入する40〜80mm程度の隙間が開けられ、該隙間にはアンカー鉄筋6の突出部を埋設固定するように無収縮モルタル11が充填されている。また、図3及び図5に示すように、二列の橋桁ブロック10には両橋桁ブロック10,10を幅方向に貫通する横組鉄筋12が間隔をおいて複数本通され、該横組鉄筋12の中央部は前記無収縮モルタル11に埋設固定されている。また、二列の橋桁ブロック10の各外縁には横組鉄筋12の両端部が現れる複数の切欠13が形成されており、該切欠13には横組鉄筋12の両端部を埋設固定するように無収縮モルタル14が充填されている。
【0017】このようにして、橋脚3と橋桁ブロック10との間、そして二列の橋桁ブロック10間が確実に固定され、所定勾配の橋桁15が形成されている。なお、長さ方向に並ぶ橋桁ブロック10同志はモルタル等で接合しても接合しなくてもよい。橋桁ブロック10の上面からは橋桁ブロック10に植設された2本のアンカー鉄筋16が突出している。
【0018】橋桁ブロック10の上面には調整モルタル17が厚さ20〜40mm程度に敷設・接合されている。調整モルタル17の上には、補強鉄筋を埋設するようにコンクリートによりプレキャスト成形された魚道ブロック20が設置・接合されている。本実施形態では、二列一単位の橋桁ブロック10の上に三つの魚道ブロック20が長さ方向に並んで載るようになっている。
【0019】魚道ブロック20は、底壁21と該底壁21の両側縁部に立設された一対の側壁22とにより魚道水路23を構成し、上端は開放している。底壁21の長さ方向中央部には、水流を緩和して魚類の休息場所を作るとともに魚類にとって適切な越流水深と越流形状を確保するための隔壁24が立設され、該隔壁24の両側部は両側壁22に接合されて魚道ブロック20を補強している。隔壁24の上縁の片端部には切欠部25が形成されている。側壁22の上縁中央部には隔壁24の上縁より一回り高い円弧状凸壁部26が設けられている。
【0020】図4及び図5に示すように、魚道ブロック20の底壁21には前記アンカー鉄筋16が進入する貫通孔27が形成されており、該貫通孔27にはアンカー鉄筋16の突出部を埋設固定するように無収縮モルタル28が充填されている。このようにして、橋桁ブロック10と魚道ブロック20との間が確実に固定され、所定勾配の前記魚道水路23が形成されている。なお、長さ方向に並ぶ魚道ブロック20同志は、端面の凸部29と凹部30とが嵌合することにより連結され、さらにその端面間が無収縮モルタル(図示略)でシールされている。
【0021】本実施形態の橋梁式魚道1によれば、次のような効果が得られる。
■ 河岸又は河床の岩盤2には橋脚3を立設するための最小限の工事を施せば済み、従来のように長距離にわたって掘削したり基礎工を施したり必要が無いので、たとえ長い橋梁式魚道1でも容易に構築することができる。
【0022】■ 比較的高い砂防堰堤に魚道を構築する場合、特に長い魚道が必要になるが、この橋梁式魚道1は上記■の理由で容易に構築できるので、従来の階段式のように折り返す必要はなく、構造を簡単にできる。
【0023】■ プレキャスト成形された橋桁ブロック10及び魚道ブロック20で構築されているので、現場での配筋工程、型枠組み工程、コンクリート打設工程等を省略でき、橋梁式魚道1を少ない工程数で短期間に施工することができる。
【0024】■ 橋桁ブロック10が二列状に掛け渡されているので、橋桁ブロック10の単体が小型軽量化し、その運搬や取扱いが楽になる。
【0025】■ 隔壁24の上縁は、切欠部25によってレベルが2種類あるため、魚類がレベルを選択して乗り越えることができる。特に切欠部25は大型魚による乗り越えを容易にする。
【0026】■ 側壁22の円弧状凸壁部26は、隔壁24を越えてゆく魚類が魚道ブロック20外へ飛び出すのを防止するとともに、見る者に美感を与えることができる。また、円弧状凸壁部26以外の側壁22の上縁からは、魚道水路23の水Wが増水したときに、余分な水が魚道ブロック20外へ溢れ出るので、魚道水路23の水深を一定に保つことができる(図1参照)。
【0027】なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して具体化することも可能である。
(1)橋桁ブロック10を一列状又は三列以上とすること。
(2)橋脚3と橋桁ブロック10の設計耐力によっては、1パス、すなわち橋脚3をピッチの大きい二つだけにすることもできる。
(3)橋脚3と橋桁ブロック10との固定手段や、橋桁ブロック10と魚道ブロック20との固定手段を変更すること。
【0028】(4)図7に示すように、魚道ブロック20の幅方向途中部に仕切壁31を立設し、該仕切壁31によって魚道ブロック20内を魚道水路23と呼び水水路32とに仕切ること。
(5)魚道ブロック20の内面又は外面に模様(例えば自然石を模した凹凸模様)を設けて、人工感を薄らがせ、周辺の景観に調和させること。特に内面に凹凸模様を設けた場合は、藻等が付着しやすくなって棲息環境が改善される。
【0029】
【発明の効果】以上詳述した通り、請求項1の発明に係る橋梁式魚道によれば、河岸又は河床の岩盤を長距離にわたって掘削したり、該岩盤上にコンクリートで長い基礎工を施したりしなくても、該岩盤に最小限の工事を施すことで、長い魚道を容易に構築することができる。
【0030】上記効果に加え、請求項2の発明に係る橋梁式魚道によれば、橋桁ブロック単体が小型軽量化し、その運搬や取扱いが楽になる。
【0031】また、請求項3の発明に係る橋梁式魚道によれば、隔壁が魚道水路における水流を緩和するとともに、魚類の休息場所を作るため、さらに魚類の遡上が楽になる。
【0032】さらに、請求項4の発明に係る橋梁式魚道によれば、別途呼び水水路を構築する必要が無くなる。
【0033】さらに、請求項5の発明に係る橋梁式魚道によれば、魚類が隔壁のレベルを選択して乗り越えることができ、特に切欠部は大型魚による乗り越えを容易にする。
【0034】また、請求項6の発明に係る橋梁式魚道によれば、隔壁を越えてゆく魚類が魚道ブロック外へ飛び出すのを防止できるとともに、魚道水路の水深を一定に保つことができる。
【出願人】 【識別番号】000186898
【氏名又は名称】昭和コンクリート工業株式会社
【出願日】 平成8年(1996)7月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
【公開番号】 特開平10−25730
【公開日】 平成10年(1998)1月27日
【出願番号】 特願平8−203214