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【発明の名称】 海底地盤の保護工法
【発明者】 【氏名】和木 多克
【氏名】野々田 充
【氏名】佐藤 光洋
【氏名】松崎 勝夫
【氏名】鴻上 雄三
【氏名】中野 浩
【課題】海中に大量の排水を放出させる設備において、軟弱な海底地盤が排水の流れにより洗掘が生じることを防止するために地盤保護部材を配置し、前記地盤保護部材の安定性を向上させ得るようにする。

【解決手段】海中に設けた排水口2から排出される排水により、水流4が生じることに対して、水流の方向の所定の範囲に地盤保護部材10を敷設して、海底地盤5の洗掘を防止できるようにする。前記地盤保護部材10は、アスファルトマットを隣接させて多数枚配置し、前記マット部材の継ぎ目に止水処理を行うとともに、端部の沈下を促進させる押圧部材を配置する等して、アスファルトマットの安定性を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 海底に配置した排水口から海中に向けて排水する設備を設け、前記排水口から排水の流れる方向の所定の範囲に配置し、排水の流れに対して地盤を保護するための地盤保護部材において、前記地盤保護部材をアスファルトマットを敷き詰めて構成し、前記アスファルトマットの継ぎ目の部分に、止水部材を一体に配置することを特徴とする海底地盤の保護工法。
【請求項2】 前記アスファルトマットの継ぎ目の部分に配置する止水部材は、前記継ぎ目を挟んでアスファルトマット間に配置して固定するシート状または板状の部材と、前記アスファルトマット間の継ぎ目に充填する充填部材とを組み合わせて構成することを特徴とする請求項1に記載の海底地盤の保護工法。
【請求項3】 前記地盤保護部材を構成するアスファルトマットには、地盤保護部材の巾方向の端部に前記アスファルトマットと一体に構成した追加マット部を設け、前記追加マット部分を地盤中に沈下させる手段を設けて構成することを特徴とする請求項1または2に記載の海底地盤の保護工法。
【請求項4】 前記追加マット部に対応させて押圧部材を配置し、前記押圧部材により追加マット部を押圧固定する作用を行わせ、前記アスファルトマットの端部の安定性を向上させることを特徴とする請求項1または2に記載の海底地盤の保護工法。
【請求項5】 前記追加マット部に配置する押圧部材としてウェイト部材を用い、前記ウェイト部材をアスファルトマットの荷役に使用するワイヤに接続して、追加マット部の地盤中への沈下を促進させることを特徴とする請求項4に記載の海底地盤の保護工法。
【請求項6】 前記追加マット部を、海底地盤を掘削した溝に入り込ませ、前記溝を埋め戻す材料により押圧固定することを特徴とする請求項1または2に記載の海底地盤の保護工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海底の洗掘防止のための工法に関し、特に、海中に敷設した放水口から大量の排水を放出する際に、排出される水の流れにより海底が洗掘されることを防止する工法に関する。
【0002】
【発明の背景および解決を要する課題】海岸に立地する発電所や液化天然ガスの処理設備、または、大量に冷却水を使用する工場等のように、海水を冷却や加熱に使用する工場においては、海中から水を取り入れて、工場内での冷却や加熱に使用し、使用後の温排水や冷排水等を再び海中に放出する設備を備えている。前記排水の放出のためには、海底に敷設する排水管路の排水口を、1つの排水管路に対して多数設け、排水を多数の排水口から分散させる状態で放出する設備を用いている。そして、複数の排水口から、排水の速度を減じた状態で放出するような手段を用い、排水が海水と良く混り合って局部的に温度の異なる部分が形成されないようにしている。
【0003】例えば、従来より海水を利用して熱交換を行う装置においては、排水設備として図1に示すように、放水管1を陸上の設備から海中に延長して敷設して設けており、前記放水管1の立上がり部の先端に、流速を減じて放水するための放出口2を配置している。また、前記放水管1に接続する管路3は、海底地盤5に溝を掘削して埋設して敷設しているもので、前記管路の上部には、コンクリート板やアスファルトマット等のカバー部材6を配置して、管路を埋めている土等が洗掘されたり、船のアンカーに対する防護手段を構成している。
【0004】ところが、排水口から排水される水の速度を減少させるような手段を用いた場合でも、自然水流とは異なる水の流れが人為的に形成されるものであるために、特に、海底面が泥や細かい砂等の場合には、その排水口から放出される排水により海底が洗掘されるという問題が発生する。また、前記洗掘が生じた場合には、砂や泥により海が汚されたり、漁業にも大きな影響が発生することの他に、海岸の景観等にも大きな影響が生じるという問題がある。
【0005】前記図1に示すような放水管1から排水を大量に放出する例として、水深10mの海域で、海底地盤から4mの位置に直径が2mの放水口を配置し、前記放水口から排出する水量を毎秒11.25立方mとして設計する場合を例にして説明する。その場合には、排水口から放出される排水の流速は毎秒3.59mとなり、図2に示すように、水の流れの模様4が形成されると計算される。前記放水口2からの排水は、放水口2から次第に拡散する状態で長さL1の範囲では巾が拡がりながら流れ、所定の距離まではその流れの幅を維持しながら希釈され、次第に流速が減少して、終端部からL2の範囲では流れが順次狭められるように形成される。そして、排水の流速が毎秒0.32mとなる位置を求めると、L=150mとなり、最大巾が約20mの範囲で排水の影響が現れるものと計算される。つまり、前記図1、2に示される例においては、放出口2からの排水に対して、海底地盤の洗掘を防止するためには、前記条件の下では、前述したように、L=150m、W=20mの範囲で、海底地盤を保護する工事を行うことが必要とされる。
【0006】そこで、前記排水の影響を受ける海底地盤の保護を行うためには、例えば、a:捨石を投棄して所定の厚さの石の層を海底地盤上に設置する方法(グラベルマット工法)。
b:石カゴを海底地盤上に敷き並べる方法(石カゴ工法)。
c:繊維マットを敷設する方法。
d:コンクリート板を敷設する方法(コンクリート被覆工法)。等のような各種の工法を用いることが考えられる。
【0007】ところが、前記各種の施工方法において、前記工法aのグラベルマット工法を適用する場合は、海底地盤が軟弱な地盤であると、船から投棄した石が海底泥等の表面から下に沈み込むという問題が発生する。そして、海底面から1mの厚さでグラベルマット層を形成しようとする場合には、2m以上の厚さとなるように大量の石を投棄する必要があり、必要量の2〜5倍の石を投棄する必要がある。さらに、その石を投棄することにより海底地盤の泥を掻き回して海が濁る等の問題が発生することや、石の径が大きくて隙間が多いことから、保護部の洗掘が進行することは避けられなく、耐久性は良くない等の問題がある。
【0008】前記工法bの石カゴ敷設工法を用いる場合には、1つの石カゴの重量が大きく、取扱い性に問題があること、および、石カゴを正確に並べて敷設することが困難である等の欠点がある。さらに、カゴに収容する石が比較的大きいものであるために、カゴの下面の砂や泥が水流により吸い出されるという問題があり、その他に、金網が腐食することにより、長期間の安定性にも問題がある。
【0009】前記工法cの繊維マットを敷設する方法は、合成繊維のシートと金網とを一体に重ねたものを使用するために、敷設作業を容易に行い得て、地盤の泥や砂等の吸い出しに対する保護作用を良好に発揮することが可能である。しかしながら、前記マットは比較的軽量なものであることから、波の影響を受けないようにするためには、周辺部に重量物を大量に配置する必要があり、その重量物を配置する際に、繊維マットが損傷されやすいこと、および、敷設後に重量物が落下した場合には、簡単に破れたりする等の信頼性に問題がある。
【0010】前記工法dのコンクリート板を敷設する工法では、任意の大きさの板部材を敷き詰めるのであるから、海底地盤を保護する作用を容易に行うことができるという長所がある。しかし、板部材のサイズは、製作と荷役の面から限定されるものであるから、広い面積にコンクリート板を敷き並べるためには、非常に面倒な工事を行わなければならない。さらに、板部材の間に隙間が生じていると、その隙間から地盤の砂等が吸い出されるという問題があり、時間が経過するにしたがって、保護面に大きな凹凸等が生じることが想定される。そして、コンクリート板の間に大きな段差や隙間が生じた場合には、再び板を除去して地盤を整地し、再びコンクリート板を敷き直す等の補修が必要となることも懸念される。
【0011】本発明は、前述したような従来より考えられている海底地盤の洗掘防止の工法の問題を解消するもので、アスファルトマットを敷設することにより、地盤の保護の作用を良好に発揮できるとともに、施工が容易で、耐久性の大きい海底地盤の保護工法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、海底に配置した排水口から海中に向けて排水する設備を設け、前記排水口から排水の流れる方向の所定の範囲に配置し、排水の流れに対して地盤を保護するための地盤保護部材に関する。本発明においては、前記地盤保護部材をアスファルトマットを敷き詰めて構成し、前記アスファルトマットの継ぎ目の部分に、止水部材を一体に配置して構成している。また、本発明において、前記アスファルトマットの継ぎ目の部分に配置する止水部材は、前記継ぎ目を挟んでアスファルトマット間に配置して固定するシート状または板状の部材と、前記アスファルトマット間の継ぎ目に充填する充填部材とを組み合わせて構成することが可能である。
【0013】前記構成に加えて、前記地盤保護部材を構成するアスファルトマットには、地盤保護部材の巾方向の端部に前記アスファルトマットと一体に構成した追加マット部を配置し、前記追加マット部分を地盤中に沈下させる手段を設けて構成することが可能である。また、本発明において、前記追加マット部に対応させて押圧部材を配置し、前記押圧部材により追加マット部を押圧固定する作用を行わせ、前記アスファルトマットの端部の安定性を向上させることもできる。前記工法に加えて、本発明においては、前記追加マット部を海底地盤を掘削した溝に入り込ませ、前記溝を埋め戻す材料により押圧固定する手段を用いることもできる。さらに、マットの継ぎ目に止水処理と補強の処理とを行って、接続部シールを構成する場合には、アンカー等がマットの継ぎ目に当たる状態で投下されても、地盤保護部材が損傷を受けることがなく、止水性をも良好な状態で確保できるので、マット継ぎ目の部分からの砂の吸い出し等を防止して、地盤の保護の作用を安定して維持させることが可能である。
【0014】前述したように構成することにより、本発明の海底地盤の保護工法においては、従来より海底地盤の保護や海中構造物の安定のために使用しているアスファルトマットと同様な部材を用いて、水流により洗掘を受ける部分の保護を行うことが可能であり、アスファルトマットを敷設する作業も容易に行うことができる。また、アスファルトマットを多数枚敷設して地盤保護部材を構成する場合には、任意の広さの海底地盤上に、アスファルトマットを敷き詰めて構成することが可能であり、アスファルトマットの敷設作業を容易に行うことができる。そして、アスファルトマットを敷設して構成する地盤保護部材の周囲の部分の安定性を向上させるためには、地盤保護部材の周囲に押さえ部材を配置したり、アスファルトマットの端部を早期に沈下させて、潮流等の影響を受けにくいものとすることが可能であり、そのような処理を容易に行うことができる。
【0015】さらに、本発明においては、前記追加マット部に配置する押圧部材としてウェイト部材を用い、前記ウェイト部材をアスファルトマットの荷役に使用するワイヤに接続して、追加マット部の地盤中への沈下を促進させることも可能である。前記アスファルトマット端部の沈下作用に対して、排水の流れの案内部分を確保するために、アスファルトマットを所定の長さだけ延長して構成することもでき、その追加マット部に対して沈下を促進させたり、安定性を向上させるための手段を容易に適用することが可能になる。また、前記マットの端部を海底地盤に設けた溝に入り込ませて、埋め戻し砂等によりマット端部を固定する手段を用いる場合には、押圧部材を用いる場合に比較して、工事直後からマットの端部を安定させることが可能であり、海底地盤の保護作用を容易に行い得るとともに、アンカーによる引剥がし等の問題が生じることを防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】図示される例にしたがって、本発明の海底地盤の保護工法を説明する。本発明の海底地盤の保護工法は、前記図1、2に示されたように、大量の排水を海中に放水する装置において、排水口から比較的高速度で放水される大量の排水により、海底地盤が洗掘されることを防止するために、前記排水口2の排水方向の上流部と下流部の一定の範囲の部分に、巾がWで長さがLの地盤保護部材10を敷設する場合を示している。前記図1、2に示したように、放出管1の排水口2から排出される水流4は、水流の上流部の水を巻き込んだ状態で、下流部に向けて移動するので、地盤保護部材10は排水口2の上流部に長さL3の部分まで延長して配置し、地盤保護部材の全体の長さがLに設定される。
【0017】前記地盤保護部材10として、本発明においては、アスファルトマットを多数枚並べて構成しており、前記アスファルトマットは、図3に示す例においては、巾がWのアスファルトマット11、11a……を並べて、長さがLの地盤保護部材10を構成している。そして、前記地盤保護部材10の陸側の先端部付近の中央に、排水口2を配置し、排水口から放出される水流を地盤保護部材10に沿わせるようにして案内する。前記図3に示されるように配置するアスファルトマット11……においては、アスファルトマットの継ぎ目の部分が水流に対して直角に配置されているので、前記アスファルトマットの継ぎ目に隙間が生じている場合には、その継ぎ目の部分から地盤の砂等が吸い出されたりするという問題が生じやすい。
【0018】そこで、前記図3に示す地盤保護部材10においては、図4に示すように、アスファルトマット11、11a……の各々の継ぎ目の下部分に、透水性を有しないシート部材15を配置し、アスファルトマットの間を保護する手段を設ける。前記シート15としては、ゴム製のシート部材やプラスチック製のシート等の任意のシート部材を使用することができる。また、前記シート部材15は、アスファルトマットの端部に一体に取り付けておいたものを、アスファルトマットの敷設時に隣接するアスファルトマットとの間に位置決めして、隣接するアスファルトマットの端部をシート上に重ねるように配置することや、アスファルトマットの継ぎ目の部分に対応させてあらかじめシート部材を敷き込み、その上に2つのアスファルトマットを設置するような工法を用いることが可能である。そして、前記アスファルトマットの不透水性と、アスファルトマットの間に敷き込むシートとにより、海底地盤5の砂や泥等が洗掘の影響を受けないように保護することが可能である。
【0019】前記図3には、アスファルトマットの構成を示しているが、本発明の海底地盤の保護工法に使用するアスファルトマットは、従来より一般の海洋工事に使用されているアスファルトマットと同様に、2層のアスファルト層の間に、内部補強部材12とワイヤ13とを配置して、アスファルトの接着性を利用して一体化したものとして構成する。前記アスファルトマットの内部に配置する内部補強部材としては、従来のアスファルトマットと同様に、ガラスクロスや金網等のような部材を用いることができる。前記ワイヤ13としては、任意の太さのものを所定の間隔でマットの巾方向に配置して、アスファルトマットの移動や敷設の際に、ワイヤの端部に吊具のフック等を係止して、クレーンにより吊り上げることができるようにする。また、前記地盤保護部材に使用するアスファルトマットは、任意の厚さのマット部材として構成することができるものであり、例えば、5cm程度の厚さを有し、巾を地盤保護部材の巾と同一に設定し、長さ(水流方向)を5mないし10m程度に設定して構成する場合には、クレーン装置等により容易に取扱いを行うことができる。
【0020】前記図4に示したように、アスファルトマットの継ぎ目の部分の下部にシートのみを配置することの他に、本発明においては、図5に示すように、アスファルトマット11、11aの間の継ぎ目の部分の下面にシート部材15を配置する他に、継ぎ目を充填材16により塞いで、隙間が生じないようにする手段を用いることも可能である。前記図5に示すように、アスファルトマットの間の継ぎ目に充填材を施工する場合に、前記充填材としては、アスファルト合材や、ゴムアスファルト、その他の任意の材料を用いることができる。例えば、前記アスファルト合材を充填材として使用する場合には、地盤保護部材の施工海域にアスファルトマットを全部敷設した後で、アスファルト施工装置を装備した船から、ホース等を用いて流動性の大きなアスファルト合材を流下させて、隙間に詰めるようにして施工することができる。そして、前述したようにして、アスファルトマットの継ぎ目に地盤まで達する隙間を生じないような処理を施すことにより、排水による水流が流れる地盤保護部材の表面には、地盤の砂等を吸い出すような隙間が生じることがないので、地盤の保護の作用を良好な状態で行うことができる。
【0021】
【実施例】前記図5に示すように、多数枚のアスファルトマットを海底地盤上に敷き詰めて、地盤保護部材10を構成する場合に、船のアンカー等によりアスファルトマットが影響を受けるという問題が懸念される。例えば、船が地盤保護部材の近辺に停泊して、アンカー30を透過した場合に、海底地盤が軟弱な層の場合には、図6に示すように、D1の深さにまでアンカーが沈み込む状態となる。そして、船が風や波浪の影響を受けた場合には、アンカーを引きずったままで移動するので、地盤中に沈み込んだ状態のアンカーがアスファルトマットの端部に係合してマット部材を引き剥がしたり、移動させたりするという問題が発生する。また、地盤保護部材1の周囲の部分の地盤に対しては、波浪や潮流等により洗掘が発生することが想定されるものであり、地盤の洗掘が発生することにより地盤保護部材の端部の安定性が低下し、地盤保護部材の耐久性にも障害が発生する。
【0022】そこで、前述したような地盤保護部材の周囲の部分での洗掘に対処させるために、図6、7に示すように、アスファルトマット巾Wの外側に追加マット部20、20aを、巾がW1になるように追加して設けておき、前記追加マット部の部分が洗掘を受けることにより、図の鎖線で示すように地盤中に沈み込むようにさせる。前記地盤保護部材を敷設する海域が軟質の地盤である場合に、細かい砂や泥等の地盤では、潮流や波浪、排水の流れの影響等により、アスファルトマットの端部が自然な状態で沈み込み、追加マット部20が下方に向けて湾曲する状態で安定する。そして、その湾曲して沈下した部分を砂等が覆う状態となるので、以後のアスファルトマット端部に対する洗掘が進行することはなく、マットがあおられたり、アスファルトマットの安定性が損なわれたりすることはない。前述したようにして、マット端部が沈下して、図6に示されるように、アンカー20の沈下する深さD1よりも深い部分Dまで、マット端部が沈下した状態では、アンカーが引きずられた場合でも、マットの端部をアンカーが引っ掛けたりすることがなく、地盤保護部材による地盤の保護作用を維持することができる。
【0023】前記図7に示した例は、地盤保護部材の周囲の部分に追加マット部を一体に配置して、追加マット部の自然沈下を待って、洗掘等の作用に対処させることの他に、本発明においては、地盤保護部材を敷設した際に、図8に示すように、その周囲に捨石等を投棄して、石積みの層22所定の巾に亘って構成することも可能である。そして、地盤保護部材の敷設の後の自然沈下を待つ前の段階で、地盤保護部材の周囲の部分を石積みの層の押圧力により、マットがあおられることを防止し、地盤保護部材の安定性を早期に確保できるような手段を講じることも可能である。
【0024】前記図8に示されるように、地盤保護部材の周囲の部分にウェイト部材を配置する場合には、その重量によりマット端部(追加マット部20)を地盤中に沈下させる作用を促進することができるものであり、マット端部が地盤中に沈下する際に石積み層に乱れが生じるものの、マット端部を押圧する作用はそのまま継続される。また、マット端部に対して捨石を投棄する場合でも、マット自体の強度が大きいものであることから、捨石の衝撃によりマットが破損したりすることはない。なお、前記石積みの層に代えて、コンクリートのブロック状の部材を追加マット部の上に配置して、ウェイト部材として利用することも可能であるが、その他に、鉄のブロック等を使用することも可能である。
【0025】前記図8に示したように、地盤保護部材の周囲の部分に別体のウェイト部材を配置して、マットの安定性を確保させることも可能である。図9、10に示す例は、アスファルトマットの荷役に使用するワイヤを用いて、ウェイト部材25を配置する場合を示しており、本実施例では、ウェイト部材25として任意のブロック状の部材を用いることが可能である。例えば、コンクリートブロックやコンクリート板部材、もしくは、比重の大きな骨材を混入したコンクリート部材、鉄のブロックやH型鋼等のような比重の大きい部材を使用することができる。前記ウェイト部材25は、アスファルトマットの荷役等に使用するワイヤ13の端部に接続して、取り付けることができるものであり、ウェイト部材が最初に地盤中に沈下することにより、マットの端部材として配置する追加マット部20を地盤中に引き摺るようにして強制的に沈下させる作用を行う。
【0026】また、前記図9、10に示すように、地盤保護部材の周囲にウェイト部材25を配置する場合に、1つのアスファルトマットに対して1つのウェイト部材を配置した場合には、隣接するアスファルトマットが不等沈下する現象が発生して、アスファルトマットの継ぎ目の部分に隙間が生じたりすることが懸念される。そこで、本実施例においては、2つのアスファルトマット11a、11bの長さL4の半分ずつに対応させて、1つのウェイト部材25aを配置し、前記ウェイト部材24aに対してアスファルトマット11a、11bの対応するワイヤ13をそれぞれ接続させるようにしている。
【0027】また、前記1つのウェイト部材には、例えば、1つのアスファルトマット11bを挟むようにして隣接する2つのアスファルトマット11a、11cの半分ずつを担当させるウェイト部材を配置して、各隣接するアスファルトマットの追加マット部20……を等しく沈下させるような手段を設けることも可能である。そして、前述したようにして、ウェイト部材を地盤保護部材の周囲の部分に対してそれぞれ取り付けることにより、アスファルトマットの単位体がばらばらに沈下することを防ぎ、アスファルトマットの継ぎ目に隙間が形成されることがないようにして、地盤保護部材の耐久性を向上させることが可能になる。
【0028】
【実施例2】前記実施例に示されたように、アスファルトマットの端部にウェイト部材を配置して、追加マット部を地盤中に埋没させる手段を用いることの他に、本発明においては、図11、12に示すような方法を用いることもできる。図11に示す例は、アスファルトマット11を敷設する際に、そのマットの端部に対応する部分に浚渫等により溝26を形成して、マット端部21(追加マット部)を浚渫溝26の中に曲げ込ませて配置する。そして、マット端部21を溝に曲げ入れた状態で、溝に砂27等を埋め戻すことにより、マット端部を押圧保持させるようにする。なお、前記溝26の掘削深さDは、アンカー等を船から投入した際に、地盤の地質の条件等により計算されるアンカーの貫入する深さD1よりも深く設定するもので、アンカーを引き摺った場合(走錨)にも、マット端部を引っ掛けて移動させることがないようにする。
【0029】図12に示す例は、海底地盤5を浚渫して形成した溝26にマット端部21を曲げ込ませ、前記マット端部21に対して捨石による押圧層28を形成し、さらに、溝26の残りの部分に、砂27等の埋め戻し部材を充満させる。前記捨石による押圧層28を構築する場合には、任意のサイズの捨石を使用することができるものであるが、埋め戻し砂に接する部分では、できるだけ大きな捨石を用いることにより、アンカーの引き摺り(走錨)等に対処させることが可能になる。
【0030】そして、前記図11、12の各々に示すように、マット端部21を浚渫溝26に曲げ込ませるように配置して固定する場合には、アスファルトマットを敷設すると同時に、マット端部を地盤中に固定保持することができる。したがって、地盤保護部材としてのアスファルトマットを敷設する作業と平行して、あらかじめ浚渫等により構築している溝に、マット端部を溝に曲げ込ませる作業を行う。その後に、前記溝に曲げ込んだマット端部に対して、埋め戻し砂や捨石の層を構築することによって押圧し、マット端部が洗掘の影響を受けることがないように固定保持させる。なお、本発明の実施例において、マット本体に対して配置する追加マット部分は、例えば、計算上必要とされるマットの巾Wに対して、両側の部分に必要とされる巾W1の部分を加えて、全体の巾がW+2W1のものとして構成することができる。
【0031】前記本発明の各実施例のように、地盤保護部材の不等沈下を防止するとともに、アンカーにより異郷を受けることを防止する手段を用いて、排水の水流を案内する手段を講じることの他に、本発明においては、地盤保護部材を小サイズのマットにより構成して、問題が生じたときに、小サイズのマットを容易に敷設し代える手段を用いることも考えられる。例えば、図13に示す例においては、地盤保護部材10Aを小サイズのアスファルトマット11A、11B、11C……を組み合わせて構成し、前記アスファルトマット11A……の間の継ぎ目の部分に対する止水シート等を配置した状態で、地盤上に設置することもできる。前記アスファルトマットとしては、地盤保護部材の巾の半分ないし1/3程度の巾で、5〜10mの長さのものを使用すると、アスファルトマットの単位体の重量が比較的小さくなり、小型のクレーン船を用いる場合でも、容易に敷設作業を行うことが可能になる。
【0032】そして、前記アスファルトマットの単位体が、船のアンカーにより引き剥がされた場合や、潮流等の影響を受けて移動したりした場合に、そのアスファルトマットの地盤を捨石等を投棄して整地してから、新たにアスファルトマットを敷設して補修を行うことができる。また、小サイズのアスファルトマットを補修する場合には、先に敷設したアスファルトマットよりも若干大きいマットをその上に設置して、周囲のマットと端部を重ねるようにすることにより、損傷を受けたマットを除去せずに、補修作業を行うことも可能である。さらに、小サイズのアスファルトマットを用いる場合には、その継ぎ目の部分に対して、コンクリートの板等の比重の大きい部材を重ねて配置し、継ぎ目の部分を板により塞ぐような手段を施して、各マットの安定性を向上させることもできる。
【0033】したがって、前記図13に示すようにして、小サイズのアスファルトマットを組み合わせて使用する場合には、大サイズのマットを組み合わせて使用する場合に比較して、補修等の作業を簡素化することが可能になる。しかしながら、前述したように、小サイズのマットの適用を可能にする条件は、例えば、潮流や波浪の影響が非常に小さい場合や、船舶の停泊を禁止している海域、漁船等の操業が行われない海域等のように、排水の影響のみを地盤保護部材が対応できる条件の海域で適用すると良い。なお、本実施例においても、地盤保護部材の端部が洗掘の影響を受ける恐れがある場合には、地盤保護部材の周囲の部分に対して、ウェイト部材のような部材や、石積み層を形成することにより、地盤保護部材の周囲の洗掘に対する処理を行うことが必要とされる場合もあり、その場合には、前記各実施例のような処理を行うことができる。さらに、前記実施例の場合でも、マット間の隙間から洗掘が生じることが懸念される場合には、後述するように、マット間に止水処理を施すことが良い場合もある。
【0034】
【実施例3】前記実施例に示されたように、本発明のアスファルトマット敷設工法を適用して、排水により形成される海流によって、海底地盤が洗掘されることを防止する手段を設けることができる。ところが、多数枚のアスファルトマットを敷設して保護部を構成する際に、そのマットの隙間を塞ぐ処理が不十分であると、マットの隙間から海底の砂等が吸い出されたりすることがある他に、地盤保護部材の上にアンカーが投下された場合に、マットの隙間を押し広げてアンカーがマットの下面に潜り込む等の問題の発生が予測される。本発明は、前記請求項2に記載の手段に関連するものであるが、前記図4、5に示した実施例に加えて、図14以降の図面に示すように、マット接続部の止水工法を適用することができる。
【0035】図14に示す例は、前記図5に示す例に加えて、マットの上面にも強化シート部材17を配置して、前記強化シート部材17とマットとの間を釘のような止め具17bを用いて取り付けている。また、アスファルトマット11、11aの継ぎ目の隙間には、充填材料16を充填してマット間の止水を完全に行わせるようにして、前記マットの上下に配置するシート部材と、間に詰める充填材料16とを組み合わせて接続部シール14を構成している。また、図15に示す例では、隣接して配置されるマット11、11aの間の隙間に充填材料16を充填するが、アスファルトマットの継ぎ目の下面には、任意の厚さのアスファルトマット部片18を配置している。前記マット部片18は、例えば、巾が1〜2mで、任意の長さのものを縦に接続して用いることができるもので、保護部材の長さや巾に対応させて、任意の長さに接続して配置することができる。
【0036】前記アスファルトマットの上側に配置する強化シート部材17は、例えば、合成繊維の不織布を基材とし、ゴムアスファルトを積層して構成したシート部材を用いることが可能である。その他に、任意の強度が大きくて、不透水性のシート部材を使用することができるもので、前記強化シート部材17の上に鉄板のような部材17aを配置して、止め具17bをマットに向けて打ち込んで固定するようにして、接続部シール14を構成している。また、前記マット間の隙間に詰め込む充填材料16としては、柔軟性に富み、膨脹収縮に容易に適応可能なゴムアスファルトのような部材、またはアスファルトを流し込んで充填する方法を使用することが可能であり、アスファルトマットを敷設した後で、潜水作業員が充填材料を隙間に手で詰めることにより、前記マット間の隙間に止水性を持たせるようにする。
【0037】図16に示す例は、アスファルトマット11、11aの間の隙間に充填材料16を充填する他に、マット継ぎ目の上部にマット部片18を配置して、充填物をマット部片により押圧保持させるようにする。さらに、前記マット部片とアスファルトマットとには、荷役用のワイヤロープ13……がそれぞれ配置されているものであるから、アスファルトマットのワイヤ13aと、マット部片18のワイヤ13bとを接続部材13cを用いて接続して、マット部片の位置決めと固定とを行うようにする。なお、前記アスファルトマットに設ける追加のワイヤ13aは、マット製造時にマット上面に突出させて設けておくことにより、ワイヤ13a、13bの接続作業を容易に行い得るようにする。したがって、前記図16に示される接続部シール14においても、充填材料とマット部片とにより、マット接続部での止水性を良好に設定することが可能になる。
【0038】図17に示す例では、アスファルトマットの継ぎ目に対応する位置に、あらかじめワイヤで編んだネット状部材19等を敷設しておき、さらに、アスファルトマットの上には強化シート部材17のようなシート部材を一体に固定する。そして、前記アスファルトマットの隙間には充填材料16を充填して、充填材料の上下の面に配置する強化シート部材17と、ネット部材19の間で充填材料を保持させるようにすることにより、継ぎ目での止水性を確保して、接続部シール14を構成している。
【0039】前記図14〜17のそれぞれに示すようにして、接続部シールを構成する場合に、図18に示すように、地盤保護部材10として多数のアスファルトマット11、11a……を配置することに対応させて、各々のマットの継ぎ目の部分に対して所定の巾で接続部シール14、14aを配置する。前述したようにして、アスファルトマットの継ぎ目の部分を充填材料を用いて塞ぎ、継ぎ目の上下面にシートやマットを一体に配置することにより、マット継ぎ目での止水性を良好に発揮させることが可能になる他に、アンカー等の衝撃に対しても対応させることができる。つまり、前記図14〜17に示すように、マット継ぎ目の上下面にシート等を配置して固定することにより、船のアンカーが投下された時の衝撃に対処させることができ、アンカーがマットの継ぎ目の部分に当たっても、継ぎ目を突き抜けて地盤にまで食い込む等の不都合な状態が発生することを防止できる。
【0040】そして、本発明の海底地盤保護工法においては、アスファルトマットの継ぎ目の部分での止水と補強の手段を適用すること、および、地盤保護部材の周囲の部分を押さえる手段とを設けることにより、マット部材を敷設した部分に対して海流や潮流による洗掘が発生することを防止できる。さらに、前記地盤保護部材の周囲を深く埋めて固定することと、マット継ぎ目に対して止水とともに補強を行うことにより、アンカー等が地盤保護部材の上に直接投下された場合でも、アンカーがマットに食い込んで、走錨によりマットを引剥がすような不都合が発生することを防止できる。また、地盤を保護する海域の周囲でアンカーが投下されて、そのアンカーが地盤に深く食い込んだ場合にも、その走錨によりマットを端から引剥がすような不都合が発生することを防止できる。
【0041】
【発明の効果】本発明は、前述したように構成するもので、海底地盤の保護工法においては、従来より海底地盤の保護や海中構造物の安定のために使用しているアスファルトマットと同様な部材を用いて、水流により洗掘を受ける部分の保護を行うことが可能であり、アスファルトマットを敷設する作業も容易に行うことができる。また、アスファルトマットを多数枚敷設して地盤保護部材を構成する場合には、任意の広さの海底地盤上に、アスファルトマットを敷き詰めて構成することが可能であり、アスファルトマットの敷設作業を容易に行うことができる。さらに、マットの継ぎ目に止水処理と補強の処理とを行って、接続部シールを構成する場合には、アンカー等がマットの継ぎ目に当たる状態で投下されても、地盤保護部材が損傷を受けることがなく、止水性をも良好な状態で確保できるので、マット継ぎ目の部分からの砂の吸い出し等を防止して、地盤の保護の作用を安定して維持させることが可能である。
【0042】前記効果に加えて、アスファルトマットを敷設して構成する地盤保護部材の周囲の部分の安定性を向上させるためには、地盤保護部材の周囲に押さえ部材を配置したり、アスファルトマットの端部を早期に沈下させて、潮流等の影響を受けにくいものとすることができ、そのような処理を容易に行うことができる。さらに、前記アスファルトマット端部の沈下作用に対して、排水の流れの案内部分を確保するために、アスファルトマットを所定の長さだけ延長して構成することもでき、その追加マット部に対して沈下を促進させたり、安定性を向上させるための手段を容易に適用することが可能になる。
【出願人】 【識別番号】594067368
【氏名又は名称】ワールドエンジニアリング株式会社
【識別番号】000232508
【氏名又は名称】日本道路株式会社
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
【識別番号】000230711
【氏名又は名称】日本海上工事株式会社
【出願日】 平成8年(1996)7月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 紘
【公開番号】 特開平10−25724
【公開日】 平成10年(1998)1月27日
【出願番号】 特願平8−203083