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【発明の名称】 ヘドロ処理方法
【発明者】 【氏名】武藤 勇
【課題】ガラス廃棄物を安全に廃棄できると共に、ヘドロ対策にもなり得るようにしたヘドロ処理方法を提供する。

【解決手段】ガラス廃棄物の粉砕物から調製されたガラス廃棄物粒子を、ヘドロ層表面に散布してヘドロ層を被覆することにより、ヘドロ層中の有機物や有害物質の溶出を抑制する。ガラス廃棄物粒子としては、ガラス廃棄物の粉砕物を造粒し、焼成して得られたもの、ガラス廃棄物の粉砕物を溶融し、粒状成形して得られたもの等を用いることができる。また、ガラス廃棄物粒子は、ヘドロ層表面に、厚さ10〜50cmに散布することが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラス廃棄物の粉砕物から調製されたガラス廃棄物粒子を、ヘドロ層表面に散布して前記ヘドロ層を被覆することを特徴とするヘドロ処理方法。
【請求項2】 前記ガラス廃棄物粒子が、ガラス廃棄物の粉砕物を造粒し、焼成して得られたものである請求項1記載のヘドロ処理方法。
【請求項3】 前記ガラス廃棄物粒子が、ガラス廃棄物の粉砕物を溶融し、粒状成形して得られたものである請求項1記載のヘドロ処理方法。
【請求項4】 前記ガラス廃棄物粒子を、前記ヘドロ層表面に、厚さ10〜50cmに散布する請求項1〜3のいずれか一つに記載のヘドロ処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビン等のガラス廃棄物を利用したヘドロ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、工場等からの産業排水や、家庭等からの生活排水に含まれる懸濁質が、河川、湖沼、海等の流水の緩やかな場所の水底にヘドロとなって堆積し、問題となっている。ヘドロは、有機性の汚濁物質が加わって嫌気状態となると、アンモニア、硫化水素、メタン等のガスを発生し、魚介類等に悪影響を与える。また、ヘドロ中に、産業排水中の重金属類及び有害物質が堆積することも多い。更に、有機物が微生物によって分解されて、アンモニア、亜硝酸を経て、硝酸へと変換され、こうしてできた硝酸塩、アンモニウム塩がりん酸などとともに富栄養化の問題を惹き起すことも多い。
【0003】従来のヘドロ処理方法としては、セメントを主剤とし、これに各種の添加剤を加えた固結剤を用いてヘドロを固める方法などが知られている。例えば、特開昭52-65965号公報には、水ガラス液に酸性液材を添加して特定のpHに調整した酸性水ガラス溶液からなるA液と、セメント懸濁液と溶解性アルカリ剤との混合液であるB液とを、ヘドロに注入することにより、ヘドロを固結させて、ヘドロに含まれる有害物質を封じ込めるとともに、ヘドロのために軟弱となっている地盤を強化して、埋め立てを行い易くする方法が開示されている。
【0004】一方、近年、ビン等のガラス製品の廃棄物処理が大きな問題となっている。すなわち、ガラス製品は割れやすく、割れた破片は危険であるため、不用意なところに廃棄することができず、回収して再利用するにも、かえってコスト高となることが多いという問題点があった。
【0005】ガラス廃棄物を有効利用する方法の一つとして、本発明者は、特公平6-49966号公報において、ビン等のガラス廃棄物を微細に破砕して加熱溶融し、これを微細な粒状に成形し、このガラス粒状物を用いて砂場を形成する人工砂場の造成法を提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭52-65965号公報等に示されるような固結剤を用いてヘドロを固める方法は、ヘドロが堆積した水底まで注入管を挿入して固結剤を注入する必要があるため施工が大変であり、また、大量の固結剤を必要とすることから材料コストが極めて高くなるという問題点があった。
【0007】また、特公平6-49966 号公報には、ガラス廃棄物を粉砕して粒状に成形し、このガラス粒状物を用いて砂場を形成することが開示されているものの、このようなガラス粒状物をヘドロの処理に利用するという発想については開示されていなかった。
【0008】したがって、本発明の目的は、ガラス廃棄物を安全に廃棄できると共に、ヘドロ対策にもなり得るようにしたヘドロ処理方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためになされた本発明の第一は、ガラス廃棄物の粉砕物から調製されたガラス廃棄物粒子を、ヘドロ層表面に散布して前記ヘドロ層を被覆することを特徴とするヘドロ処理方法である。
【0010】本発明の第二は、前記ガラス廃棄物粒子が、ガラス廃棄物の粉砕物を造粒し、焼成して得られたものであるヘドロ処理方法である。
【0011】本発明の第三は、前記ガラス廃棄物粒子が、ガラス廃棄物の粉砕物を溶融し、粒状成形して得られたものであるヘドロ処理方法である。
【0012】本発明の第四は、前記ガラス廃棄物粒子を、前記ヘドロ層表面に、厚さ10〜50cmに散布するヘドロ処理方法である。
【0013】本発明の第一によれば、ガラス廃棄物の粉砕物から調製されたガラス廃棄物粒子でヘドロ層を覆うことにより、ヘドロ層から有機物や有害物質が溶出するのを抑制することができ、それによって魚介類の生育が阻害されるのを防ぎ、自然環境を良好に維持することができる。また、ガラス廃棄物を海底の安全なところに廃棄することができ、地球上の資源が乏しくなったときには、海底から回収して再利用することも可能である。
【0014】本発明の第二、第三によれば、ガラス廃棄物の粉砕物を造粒して焼成するか、あるいは、ガラス廃棄物の粉砕物を溶融して粒状成形することにより、ガラス廃棄物が海流等によって流されにくくなると共に、例えば、ガラス廃棄物粒子を散布した水底を、人が素足で踏んだ場合等にも安全である。
【0015】本発明の第四によれば、ガラス廃棄物粒子を、ヘドロ層表面に、厚さ10〜50cmに散布することにより、ヘドロ層から有機物や有害物質が溶出するのを、長期間に亙って効果的に抑制することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明においてガラス廃棄物とは、ビール、ウイスキー、牛乳、ジュース等の各種飲食品に用いられるガラスビンや、コップ、ガラス皿等のガラス食器や、建物や自動車等の窓ガラスなど、ガラス製品全般であって、廃棄物として出されるものを意味する。
【0017】本発明においては、上記ガラス廃棄物を粉砕し、好ましくは粒状に成形することにより、ガラス廃棄物粒子を調製する。粒状に成形する方法としては、ガラス廃棄物を粉砕し、必要に応じて粘土等を混合した後、乾式プレス成形又は湿式押出し成形等の方法で造粒し、焼成する方法や、ガラス廃棄物を粉砕し、溶融した後、粒状に成形する方法などを採用することができる。また、ガラス廃棄物を微粉砕したものをそのまま用いることもできる。
【0018】上記のようにして調製されたガラス廃棄物粒子の粒径は、海流等によって流さないように、かつ、ヘドロ層からの有機物や有害物質の溶出を効果的に抑制できるようにするため、0.5 〜20mm程度とすることが好ましい。また、粒状に成形する場合には、例えば人が素足で踏んだ場合等にも安全な程度に丸みを持たせておくことが好ましい。
【0019】本発明において、ヘドロ層表面にガラス廃棄物粒子を散布する方法は、特に限定されず、例えばヘドロ層が堆積した海域において、船の上から散布する方法等を採用することができる。
【0020】ガラス廃棄物粒子は、ヘドロ層表面に均一に十分被覆できるように散布することが好ましく、ヘドロ層上を覆うガラス廃棄物粒子の厚さが10〜50cmになるように散布することが好ましい。ガラス廃棄物粒子の厚さが10cm未満では、例えば、海流や、底引き網や、船舶のアンカー等により、ガラス廃棄物粒子の層が容易に撹乱されてしまい、ヘドロ層中の有害物質の溶出防止効果が十分に得られない。また、50cmを超えると、ヘドロ層を広く覆うことが困難になり、ヘドロ層全体としての処理効果を高めることができなくなる。
【0021】
【実施例】ゴミとして回収されたガラスビン等のガラス廃棄物を、粉砕機に投入して微細に粉砕し、この粉砕物を湿式造粒して焼成することにより、直径0.5 〜20mm程度の粒状物を得た。
【0022】東京都内の川底から採取したヘドロを一定量の水と共に水槽に入れ、その上に上記で得たガラス廃棄物粒子を、厚さ30cm、50cmとなるように散布して、ヘドロ層をガラス廃棄物粒子で被覆した。また、比較のため、ヘドロ層を上記ガラス廃棄物粒子で覆わない水槽も用意した。
【0023】実験開始日及び一定期間経過後に、上記各水槽の水を採取して、常法によりCOD(化学的酸素要求量)、NH4 −N(アンモニア性窒素)、PO4 −P(りん酸性りん)を測定し、それらの増加量から溶出速度を求め、ガラス廃棄物粒子で覆わなかった水槽の溶出速度を1.0 とした溶出速度比を求めた。この結果を図1に示す。
【0024】図1の結果から、ヘドロ層の上に、ガラス廃棄物粒子を、厚さ30cmで被覆すると、COD、NH4 −N、PO4 −Pの溶出速度がかなり抑制され、50cmにすると更に抑制されることがわかる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、河川、湖沼、海等に形成されたヘドロ層の表面を、ガラス廃棄物粒子で被覆することにより、ヘドロ層中の有機物や有害物質の溶出を抑制して、自然環境を良好に維持することができる。また、ガラス廃棄物を河川、湖沼、海等に廃棄することにより、大量にかつ安全な場所に廃棄することできる。更に、将来資源が乏しくなったときには、ヘドロ層上に散布したガラス廃棄物粒子を回収して、再びガラス製品の原料として利用することもできる。
【出願人】 【識別番号】595140789
【氏名又は名称】武藤 勇
【出願日】 平成8年(1996)7月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
【公開番号】 特開平10−25723
【公開日】 平成10年(1998)1月27日
【出願番号】 特願平8−198345