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【発明の名称】 消波兼育苗構造体
【発明者】 【氏名】荒木 辰平
【課題】護岸や流砂防止のための消波兼育苗構造体の築造を簡易にして、工期の短縮と費用の軽減をはかると共に、海洋小動植物の繁茂育成を促進して一次生産能力を向上する。

【解決手段】海底地盤に打設した複数の基礎杭と、各基礎杭の沈下及び傾斜を防止する基礎保持ブロックと、各基礎杭の中途に連結固定され、上面に水溜り凹部を形成した複数の消波兼育苗ブロックと、複数の基礎杭の上端部を相互に連結した連結ブロックとで消波兼育苗構造体を構成し、消波兼育苗ブロックの上面に水溜り凹部を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 海底地盤(G) に打設した複数の基礎杭(1) と、各基礎杭(1)の沈下及び傾斜を防止する基礎保持ブロック(2) と、各基礎杭(1) の中途に連結固定された消波兼育苗ブロック(3) と、上記複数の基礎杭(1) の上端部を相互に連結した連結ブロック(4) とで構成した消波兼育苗構造体。
【請求項2】 上記基礎保持ブロック(2) は、外形が略円錐台形状で中心部に上下方向の基礎杭挿通孔(6) を形成していることを特徴とする請求項1記載の消波兼育苗構造体。
【請求項3】 消波兼育苗ブロック(3) は、中心部に上下方向の基礎杭挿通孔(6) を形成し、上面に水溜り凹部(31)を形成していることを特徴とする請求項1記載の消波兼育苗構造体。
【請求項4】 連結ブロック(4) は、上面が平面状で、複数の上下方向の基礎杭挿通孔(6) を形成していることを特徴とする請求項1記載の消波兼育苗構造体。
【請求項5】 基礎杭(1) と前記各ブロック(2)(3)(4) とは、各ブロック(2)(3)(4) の基礎杭挿通孔(6) 一端部に形成した内面テーパ部(61)と基礎杭(1) の外周面との間に、外周面に外面テーパ部(51)を形成した楔体(5) を圧入して連結することを特徴とする請求項1記載の消波兼育苗構造体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、護岸、流砂防止及び海洋生産力の増強を目的とする消波兼育苗構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、海浜の護岸や流砂防止を目的とした消波ブロックがあり、海岸線等に上記消波ブロックを多数積上げて目的を果たしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の消波ブロックには次のような問題がある。
【0004】上記消波ブロックの設置に際し、予め設置場所の基礎調査を行い、設置場所の海底を均した後、多数の栗石を並べ、これらの栗石の上面を再度均して、その上に消波ブロックを積上げるという工法が用いられており、作業量が多いため工期が長引き、費用がかさむという問題があった。
【0005】消波ブロックは下から上に積上げて行くため、水深が深い場所でも、水深の浅い場所と同様の工事を要する。そのため、水深の深い場所では、作業量が膨大となるため、大幅な工期の短縮や費用の軽減を望むことができなかった。
【0006】消波ブロックの増設する場合には、再度基礎調査から始める必要がある。
【0007】上記のようにして設置された消波ブロックは、景観を損ない、また構造的に不規則な傾斜面が多いため人が近寄り難く、海洋レジャー等、水に親しむのに不向きであった。
【0008】上記消波ブロックは、水はけがよく、水や砂が溜まるように形成されていないため、海洋動植物が繁殖しにくく、浅い海に本来備わっている第1次生産能力が低い。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、海底地盤に打設した複数の基礎杭と、各基礎杭の沈下及び傾斜を防止する基礎保持ブロックと、各基礎杭の中途に連結固定された消波兼育苗ブロックと、上記複数の基礎杭の上端部を相互に連結した連結ブロックとで構成した消波兼育苗構造体を提供せんとするものである。
【0010】また、次のような特徴を併せ有するものである。
【0011】上記基礎保持ブロックは、外形が略円錐台形状で中心部に上下方向の基礎杭挿通孔を形成していること。
【0012】消波兼育苗ブロックは、中心部に上下方向の基礎杭挿通孔を形成し、上面に基礎杭挿通孔を囲繞した水溜り凹部を形成していること。
【0013】連結ブロックは、上面が平面状で、複数の上下方向の基礎杭挿通孔を形成していること。
【0014】基礎杭と前記各ブロックとは、各ブロックの基礎杭挿通孔一端部に形成した内面テーパ部と基礎杭の外周面との間に、外周面に外面テーパ部を形成した楔体を圧入して連結すること。
【0015】
【実施例】本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0016】図1は、本発明に係る消波兼育苗構造体Aを示しており、同消波兼育苗構造体Aは、海底地盤Gに打設した複数の基礎杭1と、各基礎杭1の沈下及び傾斜を防止する基礎保持ブロック2と、各基礎杭1の中途に連結固定され、上面に水溜り凹部31を形成した複数の消波兼育苗ブロック3と、各基礎杭1の上端部を相互に連結した連結ブロック4と、これらを連結固定するための楔体5とで構成されている。
【0017】基礎杭1は、図1で示すように、PSコンクリート等で断面円形状に形成した杭打機で打設可能の杭であって、下端部を円錐形状に尖らせている。
【0018】基礎保持ブロック2は、図1〜図3で示すように、平面形が略正方形、側面視が平らな台形状の略四角錐形状であり、中心部に上下方向の基礎杭挿通孔6を形成し、同基礎杭挿通孔6の上端部に内面テーパ部61を形成している。
【0019】消波兼育苗ブロック3は、図1及び図4及び図5で示すように、平面外形が略六角形状の厚板状であり、中心部に上下方向の基礎杭挿通孔6を形成し、同基礎杭挿通孔6の下端部に内面テーパ部61を形成し、同消波兼育苗ブロック3の上面に基礎杭挿通孔6を囲繞した環状の水溜り凹部31を形成し、同水溜り凹部31と基礎杭挿通孔6との間の消波兼育苗ブロック3上面を上方に延出させて、上方延出部32を形成している。
【0020】連結ブロック4は、図6及び図7で示すように、上面が平滑な略短冊形状で、両端部に基礎杭挿通孔6を形成し、同基礎杭挿通孔6の上部に内面テーパ部61を形成している。
【0021】楔体5は、図8及び図9で示すように、外形が略半円筒形状で、外周面に前記内面テーパ部61に符合する外面テーパ部51を形成しており、基礎杭1に基礎保持ブロック2や消波兼育苗ブロック3や連結ブロック4を連結固定する際に、2個の楔体5を対にして、基礎杭1の外周面と前記内面テーパ部61との間に打込んでこれらを連結固定する。
【0022】次に、図1及び図10を参照して、上述した基礎保持ブロック2と、基礎杭1と、消波兼育苗ブロック3と、連結ブロック4と、楔体5とを用いた消波兼育苗構造体Aの構築について、施工の順序に従って説明する。
【0023】■ 杭打機等を用い、基礎杭1を所定間隔を保持して海底地盤Gに打設する。この際、基礎杭1の上端が満潮時の海面T1から所定の高さを保持できるように基礎杭1の長さを選択する。
【0024】■ 基礎保持ブロック2を基礎杭挿通孔6の中に上記基礎杭1を通しながら着底させる。
【0025】■ 基礎保持ブロック2の基礎杭挿通孔6上部の内面テーパ部61と基礎杭1外周面との間に2個の楔体5を打込んで、基礎保持ブロック2と基礎杭1とを連結固定して、基礎杭1の沈下や傾斜を防止する。
【0026】■ 各基礎杭1の中途部上端近傍に、一個又は複数の消波兼育苗ブロック3を、水溜り凹部31を上方にして取付け、消波兼育苗ブロック3の基礎杭挿通孔6下部の内面テーパ部61と基礎杭1外周面との間に2個の楔体5を打込んで基礎杭1に消波兼育苗ブロック3を連結固定する。
【0027】■ 各基礎杭1の上端部を、図1及び図10で示すように、縦及び横方向の連結ブロック4で連結し、各連結ブロック4の基礎杭挿通孔6上部の内面テーパ部61と基礎杭1外周面との間に2個の楔体5を打込んで、基礎杭1に連結ブロック4を連結固定する。
【0028】上記のようにして構築された消波兼育苗構造体Aは、複数の基礎杭1が連結ブロック4で縦横に連結固定されているので構造的に強固であり、波浪の衝撃に十分耐えることができ、基礎保持ブロック2で海底地盤Gを被覆しているので、同海底地盤Gの洗掘を防止することができる。
【0029】また、基礎杭1と消波兼育苗ブロック3及び連結ブロック4との連結が、楔体5の打込みによって行われるので作業が簡単であり、更に、重力が楔体5を内面テーパ部61に食込ませる方向に作用して上記連結固定を強化する。
【0030】特に、波浪が基礎杭1や消波兼育苗ブロック3の間隙を通過する際に、波浪のエネルギを減衰して消波するのはもちろん、潮の干満により海面が低下して、消波兼育苗ブロック3の一部または全部が干潮時の海面T2上に露出しても、各消波兼育苗ブロック3の水溜り凹部31に、海水や波に巻き上げられた砂が残留するので、海草や魚の稚魚や海老の幼生などの海中の小動植物の成育場所となり、浅海の一次生産能力を著しく増強することができる。
【0031】また、消波兼育苗ブロック3の上面に上方延出部32を形成しているので、複数の消波兼育苗ブロック3を積み重ねても、各消波兼育苗ブロック3間に間隙が生ずるので、満潮時には、水溜り凹部31に支障なく海水の出入りして、上記小動植物の成育を促進して一次生産能力を向上することができる。
【0032】また、消波や一次生産能力に大きく関与する海面付近に、消波兼育苗ブロック3を集中して配設し、海面から離れた深さの消波兼育苗ブロック3を省略することができるので、工事期間と費用とを大幅に軽減することができる。
【0033】更に、連結ブロック4の上面が水平な平面状で歩きやすいので、魚釣りの足場やボートの桟橋など、海洋レジャーの施設として利用することができる。
【0034】図11及び図12は、他実施例の連結ブロック4aを示しており、同連結ブロック4aは、略直角三角形板状の連結ブロック4aの各頂点部に、上部に内面テーパ部61を形成した基礎杭挿通孔6を形成しており、この連結ブロック4aと、前記消波兼育苗ブロック3とを用いて、図13で示すように、基礎杭1と消波兼育苗ブロック3の密度の高い消波兼育苗構造体A1を構築して、消波性能と一次生産能力を高めることができ、更に、連結ブロック4aの上面面積が大きいことから、海洋レジャーの施設として更に利用しやすくなる。
【0035】なお、本実施例では、消波兼育苗ブロック3の平面形を略六角形状としているが、同平面形は上記に限定されず略正方形や略円形にすることもでき、要は消波兼育苗ブロック3の上面に海水を残留させるための水溜り凹部31を形成し、基礎杭1に連結固定できるものであればよい。
【0036】また、消波兼育苗構造体Aを増設する際にも、増設場所の海底地盤を均すのと、水深に応じて基礎杭1の長さを選択するだけでよく、作業が簡単で工期が短く費用も少なくて済む。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば次のような効果を得ることができる。
【0038】請求項1記載の発明では、海底地盤に打設した複数の基礎杭と、各基礎杭の沈下及び傾斜を防止する基礎保持ブロックと、各基礎杭の中途に連結固定された消波兼育苗ブロックと、上記複数の基礎杭の上端部を相互に連結した連結ブロックとで構成したによって、消波兼育苗構造体の築造が容易になり、工期の短縮と費用の軽減に貢献することができる。
【0039】請求項2記載の発明では、上記基礎保持ブロックは、外形が略円錐台形状で中心部に上下方向の基礎杭挿通孔を形成しているので、基礎杭の荷重が広く分散されて同基礎杭の沈下と傾斜とを防止することができる。
【0040】請求項3記載の発明では、消波兼育苗ブロックは、中心部に上下方向の杭挿通孔を形成しているので、基礎杭への連結固定が容易であり、更に、上面に杭挿通孔を囲繞した水溜り凹部を形成しているので、海洋小動植物の繁茂を促進して、一次生産能力を向上させることができる。
【0041】請求項4記載の発明では、連結ブロックの上面が平面状であるから、海洋レジャー等の施設として利用することができ、更に、複数の上下方向の杭挿通孔を形成しているので、複数の基礎杭の上端部を連結するのに便利である。
【0042】請求項5記載の発明では、基礎杭と前記各ブロックとは、各ブロックの基礎杭挿通孔一端部に形成した内面テーパ部と基礎杭の外周面との間に、外周面に外面テーパ部を形成した楔体を圧入して連結することによって、基礎杭と各ブロックとの連結固定が容易になり、しかも、各ブロックや基礎杭の重量を、楔体を食込ませる方向に作用させることができるので、上記の連結固定を更に強固にすることができる。
【出願人】 【識別番号】392003203
【氏名又は名称】有限会社南日本プラント設計事務所
【出願日】 平成8年(1996)7月2日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
【公開番号】 特開平10−18266
【公開日】 平成10年(1998)1月20日
【出願番号】 特願平8−172636