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【発明の名称】 石詰篭製河川用護岸壁
【発明者】 【氏名】白 井 諄 一
【課題】水の流速を緩和する水制効果や、生物の良好な成育環境を提供する自然保護効果、及び自然景観に勝れた石詰篭製河川用護岸壁を得る。

【解決手段】内部に詰め石をした石詰篭2を河川3に沿って左右に複数列並設すると共に、上下に複数段重積し、水流4に接する護岸壁1Aの前面側において、一部の石詰篭2の前面の位置5を前後にずらすことにより、壁面に凹凸6,7を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】内部に詰め石をした石詰篭を河川に沿って左右に複数列並設すると共に、上下に複数段重積し、河川に面する壁の前面側において、少なくとも1つの段について一部の石詰篭の前面の位置を相対的に前後にずらすことにより、壁面を凹凸に形成したことを特徴とする石詰篭製河川用護岸壁。
【請求項2】内部に詰め石をした石詰篭を河川に沿って左右に複数列並設すると共に、上下に複数段重積し、河川に面する壁の前面側において、少なくとも1つの段について一部の石詰篭を隣接するものとの間に間隔をおいて設置することにより、壁面を凹凸に形成したことを特徴とする石詰篭製河川用護岸壁。
【請求項3】請求項1又は2に記載の護岸壁において、複数の凹部を壁の内部において流路により相互に連通したもの。
【請求項4】請求項1乃至3の何れかに記載の護岸壁において、上段の石詰篭の前面を下段の石詰篭の前面より後退させることにより、壁面の少なくとも一部に傾斜が付けられているもの。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石詰篭により形成される河川用護岸壁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、河川工事の主眼は、降雨による増水や洪水等による被害を最小限に抑えるため、水流を如何に円滑且つ迅速に海まで導いて排水させるかということに置かれており、このため河川の両岸は、コンクリートやブロック等で築堤することにより、水流の障害となる湾曲部分や凹凸部分が少ない滑らかな護岸とするよう努力が続けられてきた。ところが最近では、人間生活と調和する豊かな自然の保全と創造という考え方が発達し、これに基づく多自然型河川工法が導入されるようになり、河川工事の主眼は、河川が本来有している生物の良好な成育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全あるいは創出することに置かれるようになった。具体的には、河川の曲線部分を過度に短絡化することを避けるとか、川幅については、標準断面を設定したうえで、一律な川幅にするのを避けるとか、護岸工事では、水理特性や背後地の状況等を十分踏まえたうえで、生物の良好な成育環境と自然景観の保全及び創出に配慮した工法を選択するというような方向付けがされた。そして、このような多自然型河川工法に適するものとして、じゃかご等の石詰篭が次第に見直されつつある。この石詰篭は、屈撓性や透水性及び緩衝性に勝れており、しかも自然石を使用するものであるため、生物の良好な成育環境を確保することができると同時に、美しい自然景観を保全あるいは創出することができるという利点を有する。
【0003】ところが、石詰篭を使用した従来の河川工法において、複数の石詰篭を河川に沿って並設及び段積することにより形成される護岸壁は、各石詰篭を整然と並べたものであるため、全体的に見れば実質的に平らな壁面を持っており、このため水の流速を緩和する水制効果や、魚等の生物の生存域又は避難域となる流速が緩やかで比較的広い緩流凹部を形成する効果が想像以上に低く、特に詰め石間に小さい隙間が形成されるだけであるため、大形の魚や群生する魚等にとって、十分に広く且つ安全な緩流凹部を確保するのは困難であった。また、自然な堤防とは異なって護岸が単調であり、自然景観の保全及び創出という点においても十分とは言えなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主たる課題は、水の流速を緩和する水制効果や、生物の良好な成育環境を提供する自然保護効果に勝れた、石詰篭製の河川用護岸壁を提供することにある。本発明の従たる課題は、護岸壁の壁面に変化を持たせることによって該護岸壁の自然景観を高めることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明によれば、内部に詰め石をした石詰篭を河川に沿って左右に複数列並設すると共に、上下に複数段重積し、河川に面する壁の前面側において、少なくとも1つの段について一部の石詰篭の前面の位置を相対的に前後にずらすことにより、壁面を凹凸に形成したことを特徴とする石詰篭製河川用護岸壁が提供される。また、本発明によれば、内部に詰め石をした石詰篭を河川に沿って左右に複数列並設すると共に、上下に複数段重積し、河川に面する壁の前面側において、少なくとも1つの段について一部の石詰篭を隣接するものとの間に間隔をおいて設置することにより、壁面を凹凸に形成したことを特徴とする石詰篭製河川用護岸壁が提供される。
【0006】上記構成の護岸壁によれば、河川に面する壁の前面側において、一部の石詰篭の前面の位置を前後方向にずらすか又は一部の石詰篭間に間隔を設けることにより、壁面を凹凸に形成しているので、川岸近くにおいては、上記壁面の凹凸により水の流れの方向が変えられたり水流が緩和されるなどして勝れた水制効果が得られ、護岸の侵食防止効果が高まるばかりでなく、凹部が緩流部となって生物の生存域又は避難域となるなど、生物の良好な成育環境も確保され、自然保護効果にも勝れる。特に、壁面の凸部に衝突した水流は、全部が速い流れを保ったまま本流方向に跳ね返されることなく、一部が石詰篭の内部に浸透してそこを通過し、その間に十分流速が緩和され、跳ね返された水流も、石詰篭の表面の凹凸により流れが分散されるため減速効果が働いて流速が緩和され、非常に勝れた水制効果を得ることができる。この効果は、コンクリート製の護岸壁に凹凸を設けたものからは到底得られないものである。
【0007】また、護岸壁の壁面を凹凸に形成することにより、滑らかな直線状又は曲線状をした単調な壁面からは得られない、自然に近い変化に富んだ景観を得ることができる。更に、一部の石詰篭の前面の位置を前後方向にずらすか又は一部の石詰篭間に隙間を設けるという非常に簡単な手段により、護岸壁の壁面に凹凸を簡単且つ確実に形成することができ、その凹凸の形状も、何個置きに石詰篭の位置をずらすかとか、どの程度位置をずらすかといったこと等を考慮することによって、種々のものに設定することができる。
【0008】本発明の好ましい1つの構成態様によれば、複数の凹部が壁の内部において流路により相互に連通されている。本発明の具体的な構成態様によれば、上段の石詰篭の前面を下段の石詰篭の前面より後退させて位置させることにより、壁面の少なくとも一部に傾斜が付けられている。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するに、図1乃至図3は本発明の第1実施例を示すもので、この第1実施例の護岸壁1Aは、角形の石詰篭2により壁面が後方に傾斜する形に構成されている。上記石詰篭2は、菱形金網や熔接金網、強化プラスチックなどの網状素材により直方体状に形成して、その内部に自然石等の石を充填したもので、この石詰篭2を、その軸線を水流4とほぼ直角に向けた状態で河川3に沿って左右に複数列並設すると共に、上下に複数段重積している。そして、該護岸壁1Aの河川に面する前壁面には、各段における石詰篭2の前面5の位置を相対的に前後に所要距離ずらすことにより、凹部6と凸部7とが形成されている。
【0010】上記各石詰篭2は、上段のものが下段のものの真上に位置するように配設されると共に、各列において、上段の石詰篭2の前面が下段の石詰篭2の前面より軸線方向後方側に所要距離だけ後退して位置するように配設されており、これにより、護岸壁1Aに必要な傾斜が付けられている。上記石詰篭2の前面5を前後にずらす距離Lの最適範囲は、護岸壁を設置する場所の状況や石詰篭2の寸法等によっても異なるが、通常は10〜100cm程度が好ましく、より好ましくは30〜50cm程度である。しかし、これらの寸法には限定されない。上記各石詰篭2は、上下及び左右の隣接するもの同士を適宜手段によって相互に連結しておくことができる。
【0011】上記構成を有する護岸壁1Aは、石詰篭2の前面5の位置を前後にずらして並設することにより壁面に凹部6と凸部7とを形成しているため、水流と接する壁面部分においては、上記凹凸により水の流れの方向が変えられたり水流4が緩和されるなどして勝れた水制効果が得られると共に、水流4が凸部7に衝突することによって乱流化し、空気を取り込んで撹拌されることにより、勝れた浄化作用も得られる。特に、壁面の凸部7に衝突した水流4は、全部が速い流れを保ったまま本流方向に跳ね返されることなく、一部が石詰篭2の内部に浸透してそこを通過し、その間に十分流速が緩和され、跳ね返された水流4も、石詰篭2自体の表面の凹凸により流れが分散されるため減速効果が働いて流速が緩和され、非常に勝れた水制効果を得ることができる。この効果は、コンクリート製の護岸壁に凹凸を設けたものからは到底得られないものである。
【0012】また、壁面の凹部6は小さいながらも湾処を形成し、その部分では流速が小さいため、水草や魚などの生存域又は避難域となるなど、生物の良好な成育環境が確保され、勝れた自然保護効果も発揮する。しかも、水制により流速が緩和されることで、護岸の侵食防止効果も高まることになる。更に、護岸壁1Aの壁面を凹凸に形成することにより、滑らかな直線状又は曲線状をした単調な壁面からは得られない、自然に近い変化に富んだ景観を得ることができる。しかも、護岸壁は一般に、予想可能な最大級の増水にも対応できるような高さに設定されているため、平常時に壁面の上部が流水と接することはなく、このため、この壁面上部の凹凸が緑生の場として好適に利用できるばかりでなく、凹部の日陰が苔植物の格好の生育の場ともなり、これが、河川緑化の促進や自然景観の保全等につながる。
【0013】上記実施例では、各段における石詰篭の前面の位置を1個おきに前後にずらしているが、2個以上の複数個おきにずらしても良く、あるいは、このように1個又は複数個おきに規則的に位置をずらすことなく、その場所に応じて適数個毎にランダムに位置をずらすこともでき、それをずらす距離Lを場所によって大小に違えることもできる。また、必ずしも全ての段について石詰篭の位置をずらすことなく、一部の段についてのみずらしても良い。
【0014】要するに、少なくとも水流と接する高さに位置するいずれか1つ以上の段について、その段内に横並び状態に位置する石詰篭の中の一部のものについて前面の位置を相対的に前後にずらせば良く、これによって壁面に必要な凹凸が形成されるのである。更に、必ずしも同じ寸法の石詰篭を前後に位置をずらして設置することなく、図4に示す第2実施例の護岸壁1Bのように、凹部6を形成する位置に、その凹部6の深さL分だけ他の石詰篭2より長さの短い短尺の石詰篭2aを設置しても良い。この場合には、その段における各石詰篭2,2aの背面の位置は揃うことになる。
【0015】図5は本発明の第3実施例を示すもので、この第3実施例の護岸壁1Cは、少なくとも一部の凹部6について、石詰篭2の前面5を上段の石詰篭2の前面5より後方まで後退させることにより、該凹部6を実質的に壁面から落ち窪んだ形に形成したものである。
【0016】図6及び図7は本発明の第4実施例を示すもので、この第4実施例の護岸壁1Dは、上記第1〜第3実施例の護岸壁が壁面を後方に傾斜させているのに対し、前壁面の一部又は全部を実質的に垂直に形成して、少なくとも水流と接する部分に、何れか1つ以上の列又は段における一部の石詰篭2の前面5の位置を壁面から後退させることにより、凹部6を形成したものである。この場合、凹部6以外の部分が相対的に凸部7となる。
【0017】上記凹部6は規則的に配置しても不規則に配置しても良く、その深さも場所によって違えることもできる。また、凹部6の形態についても、1つの石詰篭2だけを後退させて小規模の凹部6aとすることも、上下又は左右に隣接する複数の石詰篭2を後退させて大規模な凹部6bとすることもできる。更に、護岸壁1Dの背面側においては、各石詰篭2の背後の位置が図示の如く揃っていても、揃っていなくても良い。上記第4実施例の作用効果については、上記第1実施例の場合と実質的に同じであるが、各凹部6が、第1実施例の凹部6のような段状ではなく、壁面から落ち窪んだ穴のような形をしているため、魚などの生存域又は避難域としてのより勝れた効果を発揮する。
【0018】図8は本発明の第5実施例を示すもので、この第5実施例の護岸壁1Eは、複数の凹部6,6同士を護岸壁の内部に設けた流路8で相互に連通させたものである。これにより、魚等の生存域又は避難域が拡大し、より良好な成育環境が確保される。図9は本発明の護岸壁の第6実施例を示すもので、この護岸壁1Fは、上記第4実施例とは逆に、少なくとも水流と接する壁面部分に、何れか1つ以上の列又は段における一部の石詰篭2の前面5の位置を壁面から突出させることにより、凸部7を形成したものである。この場合、凸部7以外の部分が相対的に凹部6となる。特に、凸部7の下流側の陰となる部分に形成される凹部6が、魚などの生存域又は避難域として最も適する場所となる。
【0019】上記凸部7は規則的に配置しても不規則に配置しても良く、その突出量も場所によって違えることもできる。また、凸部7の形態についても、1つの石詰篭2だけを突出させて小規模の凸部とすることも、上下又は左右に隣接する複数の石詰篭2を突出させて大規模な凸部とすることもできる。上記第6実施例の作用効果については、上記第1実施例の場合と実質的に同じであるから、重複した説明は行わない。
【0020】上記各実施例では、一部の石詰篭の前面の位置を前後にずらすことによって壁面に凹部と凸部とを形成しているが、少なくとも水流と接する壁面部分の何れか1つ以上の段について、一部の石詰篭を隣接するものとの間に所要の間隔をおいて設置することにより、その部分に空間を形成しても良い。この場合、空間の部分が凹部となり、その他の部分が相対的に凸部となる。また、各実施例において上下段の石詰篭は、上段のものが下段のものの真上に位置するように段積しているが、上段の石詰篭を下段の石詰篭の隣接する2つに跨がって位置するように段積することもでき、これらの2つの段積の形態を混用しても良い。
【0021】更に、図示の実施例では角形の石詰篭を使用しているが、それ以外の形状、例えば円筒形の石詰篭を使用することもできる。更にまた、必ずしも同一形状、同一寸法、同一規格の石詰篭を使用して護岸壁を形成する必要はなく、異種形状、異種寸法、異種規格の石詰篭を混用し得ることは当然のことである。
【0022】
【発明の効果】このように本発明によれば、一部の石詰篭の前面の位置を前後方向にずらすか又は一部の石詰篭間に間隔を設けるといった極めて簡単な手段により、水の流速を緩和する水制効果や、魚や植物等の生物のための良好な成育環境を提供する自然保護効果、更には自然景観にも勝れた、多機能の石詰篭製護岸壁を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】390006116
【氏名又は名称】瀬戸内金網商工株式会社
【出願日】 平成8年(1996)7月5日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏 (外1名)
【公開番号】 特開平10−18265
【公開日】 平成10年(1998)1月20日
【出願番号】 特願平8−195774