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【発明の名称】 植生可能な袋詰脱水袋
【発明者】 【氏名】三木 博史
【氏名】山田 哲也
【氏名】千田 昌平
【氏名】安部 克郎
【氏名】小久保 裕
【氏名】岡村 康弘
【氏名】近藤 誠宏
【課題】脱水処理に適したフィルター効果を有し、植生可能で、環境上害が少なく、配設面において滑りの発生し難い袋詰脱水袋を提供する。

【解決手段】布帛製の袋体に高含水比粘土を注入し、該高含水比粘土を袋詰して脱水する袋詰脱水袋であって、袋体がメッシュ状に形成された非腐食性繊維部と腐食性繊維部を含んで構成されている植生可能な袋詰脱水袋。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 布帛製の袋体に高含水比粘土を注入し、該高含水比粘土を袋詰して脱水する袋詰脱水袋であって、袋体がメッシュ状に形成された非腐食性繊維部と腐食性繊維部を含んで構成されていることを特徴とする植生可能な袋詰脱水袋。
【請求項2】 腐食性繊維が高含水比粘土の注入後3か月以内に腐食しない繊維である請求項1記載の植生可能な袋詰脱水袋。
【請求項3】 腐食性繊維が高含水比粘土の注入後12か月以内に腐食する繊維である請求項1または2記載の植生可能な袋詰脱水袋。
【請求項4】 腐食性繊維部が少なくとも1mm幅でメッシュ状に形成されている請求項1、2または3記載の植生可能な袋詰脱水袋。
【請求項5】 袋体が多重織物である請求項1、2、3または4記載の植生可能な袋詰脱水袋。
【請求項6】 非腐食性繊維が合成繊維であり、腐食性繊維が天然繊維、再生繊維または半合成繊維である請求項1、2、3、4または5記載の植生可能な袋詰脱水袋。
【請求項7】 合成繊維がポリエステル繊維であり、再生繊維がレーヨン繊維である請求項6記載の植生可能な袋詰脱水袋。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、河川、湖沼などに堆積している高含水比粘土を布帛製袋に注入して脱水し、盛土や埋土に使用する袋詰脱水処理工法おいて使用される袋詰脱水袋に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、河川、湖沼などに堆積している高含水比粘土を織編物などからなる布帛製袋に注入して脱水し、盛土や埋土に使用する袋詰脱水処理工法において使用される袋詰脱水袋は、脱水処理に適したフィルター性を有するために、通常、開孔径は90〜600μm程度にされている。しかしながら、このような袋詰脱水袋では、例えば堤防造成に使用し、また吹き付けや播種などで植生する場合、植物の根や茎が袋体を貫通し難く、植物の育成が困難であるという問題がある。
【0003】特に、最近の土木分野では、従来の人工構造物むきだしの完成物ではなく、環境に調和した構造物が求められており、景観が重要視されている。河川工事においても同様であり、多自然護岸など、のり面工事のように緑化が要求されつつある。この場合、構造物の表面に植物が存在することは、表面の浸食に対抗する手段でもある。また、袋体が長年経過しても腐食して土壌に同質化されることがなく、土中に袋体が半永久的に残ることになり、公害としての環境的な問題がある。さらに、袋体を配置、敷設あるいは配設する場所との馴染みが悪く、特に配設面において滑りが発生する恐れがあり、地盤の安定性に欠けるなどの問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従来の問題を解決し、脱水処理に適したフィルター効果を有し、植生可能で、環境上害の少ない、かつ配設面において滑りが発生し難い袋詰脱水袋を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、布帛製の袋体に高含水比粘土を注入し、該高含水比粘土を袋詰して脱水する袋詰脱水袋であって、袋体がメッシュ状に形成された非腐食性繊維部と腐食性繊維部を含んで構成されていることを特徴とする植生可能な袋詰脱水袋である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の袋詰脱水袋を構成する経糸および緯糸の素材は、メッシュを構成する非腐食性の素材として、ポリエステル繊維フィラメント糸が好ましいが、この他、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの合成繊維からなるフィラメント糸、スパン糸、およびそのタスラン糸などの加工糸などであってもよい。また、腐食する素材としては、セルロース系繊維、特に再生繊維であるレーヨン繊維フィラメント糸が好ましく使用されるが、このほか綿、麻などの天然(植物)繊維、アセテートなどの半合成繊維でもよい。
【0007】この場合、腐食性繊維としては、3か月以上および12か月以下をもって腐食する素材であることが望ましく、3か月未満に腐食する素材であると、脱水処理時に腐食してしまうため、フィルター性が損なわれ、泥漏れが発生する恐れがある。また、12か月を超えて腐食し、あるいは12か月を越えても植生可能な程度に腐食しないような素材であると、植物の育成が容易でなく、腐食性繊維の腐食によってメッシュ状構造となることにより、植物の育成を妨げることなく、安定かつ容易に植生を可能にするという、本発明の目的を達成することがスムーズに行い難くなる。
【0008】袋詰脱水袋を構成する経糸および緯糸の繊度は、好ましくは300〜20,000de程度であり、メッシュを構成する糸と腐食する糸の繊度は同じであっても、異なっていてもよい。また、袋詰脱水袋を構成する経糸および緯糸の密度は、前記繊度に加えて、繊維密度を、好ましくは3,000〜500,000de/インチ程度とすることが、シートに適当な強度、フィルター効果を与える上で好ましい。この際、メッシュを構成する糸と腐食する糸の密度は同じであっても、異なっていてもよい。
【0009】袋詰脱水袋を構成する経糸および緯糸の引張強度は、好ましくは2gf/de以上であり、2gf/de未満であると、シートの強度を大きくするために、糸を太くするか糸密度を大きくする必要があり、フィルター効果が得られ難くなることがある。また、メッシュを構成する糸と腐食する糸の引張強度は異なっていても、同じであってもよい。
【0010】袋詰脱水袋は、織あるいは編組織などに限定されるものではなく、織物では通常一重組織のものが利用されるが、多大な引張強度を必要とする場合は、好ましくは二重織以上の多重組織のものがフィルター効果が高い。また、袋詰脱水袋を構成する腐食する糸を構成する部の幅は、植生する植物の種類によって一概には言えないが、1mm以上、好ましくは5mm以上とするのがよい。腐食する糸を使用する部の幅を1mm未満とすると、腐食性繊維の腐食によってメッシュ状構造を発現した際に、植物の育成を妨げることなく容易かつ安定した植生をスムーズに行うことが難しくなる。
【0011】袋詰脱水袋の引張強度は、袋詰脱水する高含水比粘土の重量により、適宜選択する。また、袋詰脱水袋の透水係数は、好ましくは1.0×10-3cm/sec以上であり、袋詰脱水袋の開孔径は、好ましくは90μm以上、600μm以下である。透水係数が1.0×10-3 m/sec未満であると、また開孔径が上記の範囲外であると、効果的なフィルター効果が安定して得られ難くなることがある。
【0012】本発明は、上記のように構成されているため、当初の脱水目的をほぼ完了した後、腐食性繊維の腐食によって、メッシュ状構造となることにより、植物の育成を妨げることなく容易かつ安定した植生が可能となる。また、袋体の大部分が腐食することにより環境上害は少ない。さらに、インターロッキング効果によって配設した場所の土と一体化するため、配設面において滑りが発生し難く地盤は安定となる。また、脱水処理時は腐食性繊維の腐食は生じないため、フィルター効果に何ら問題はない。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0014】実施例1図1(a)と(b)は、本発明の実施例を示す袋詰脱水袋の縦方向の拡大断面図および拡大平面図である。図において、袋詰脱水袋10は引張強度が8gf/de、繊度500deのポリエステル繊維フィラメント糸と、引張強度が3gf/de、繊度500deのレーヨン繊維フィラメント糸を、図1(a)に示す如く、経糸11および緯糸12に使用して、一層に配列された緯糸12間を経糸11が順次往復してなる一重組織をもって、糸密度30本/インチに製織し、構成されている。経糸11および緯糸12は、図1(b)に示すように、ともに1mm幅のポリエステル繊維フィラメント糸を使用する部13と、10mm幅のレーヨン繊維フィラメント糸を使用する部14を、交互に繰り返している。
【0015】このような構成からなる袋詰脱水袋に湖沼からの高含水比粘土(泥土)を満たしたのち、約3か月間放置した。このとき、袋詰脱水袋は当初の脱水をほぼ完了していたが、袋詰脱水袋の構造はあまり変化した点はなく、腐食の発生は見られなかった。次に、6か月経過した時点では、袋詰脱水袋のレーヨン繊維フィラメント糸の部分に腐食が進行しており、一部がはみ出すなどして、綻びが目立ち、目は粗くなってその隙間から泥土が見られる状態であった。さらに、12か月後には、部分的には腐食したレーヨン繊維フィラメント糸が混在するが、ポリエステル繊維フィラメント糸の部分は何らの変化もなく残存し、全体としてメッシュ状構造に形成された状態となっていた。また、袋詰脱水袋の泥土は配設した場所の土壌とほぼ一体化していた。
【0016】実施例2図2(a)と(b)は、本発明の他の実施例を示す袋詰脱水袋を構成する織物の縦方向の拡大断面図および拡大平面図である。図において、袋詰脱水袋20は引張強度が8gf/de、繊度3,500deのポリエステル繊維フィラメント糸と、引張強度が3gf/de、繊度3,500deのレーヨン繊維フィラメント糸を、図2(a)に示すように経糸21および緯糸24に使用して、三層に配列された緯糸24間を経糸21が順次往復してなる三重組織をもって、糸密度30本/インチに製織し、構成されている。図2(b)に示すように、経糸21は、1mm幅のポリエステル繊維フィラメント糸を使用する部22と、25mm幅のレーヨン繊維フィラメント糸を使用する部23を、交互に繰り返している。また、緯糸24は、図2(b)に示すように、三層の内、中間層26および下層27の糸については、全てレーヨン繊維フィラメント糸を使用し、表層25の糸については、図2(b)に示すように、1mm幅のポリエステル繊維フィラメント糸を使用する部28と、25mm幅のレーヨン繊維フィラメント糸を使用する部29を、交互に繰り返している。
【0017】この袋詰脱水袋数体を、実施例1と同様に、河川に堆積している高含水比粘土を満たし、その後約3か月放置し脱水処理を完了した後、図3に示すように多段積みし、護岸構造物の一部として有効利用した。多段積み時、袋詰脱水袋の構造にあまり変化した点はなく、腐食の発生は見られないため、袋詰脱水袋の移動に何ら支障はなかった。また、植物種としてヨシ(葦)を繁茂させるため、袋詰脱水袋の上にヨシ根の混入した浚渫土を苗床として覆土し、水質の浄化および生態系の保全を図った。数か月後、ヨシは護岸法面全体を覆った状態となった。このとき、袋詰脱水袋は、実施例1と同様に、レーヨン繊維フィラメント糸が腐食し、ポリエステル繊維フィラメント糸がメッシュ状構造となって残った状態で、植物の育成に十分に適し、袋内に茎が入り込み、根が張り密生した状態となっていた。また、メッシュ状構造となることにより、インターロッキング効果によって配設した場所の土と一体化するため、配設面において滑りが発生し難く、地盤の安定性にも問題はなかった。また、実施例1,2において、袋詰脱水袋上に脱水泥土を軽く覆土した場合もほぼ同様であった。
【0018】なお、実施例1では袋詰脱水袋を図1に示す一重組織、実施例2では図2に示す三重組織をもって構成したが、前記の如く、これに限定されるものではなく、その他の一重織組織および三重織組織、または二重織以上の多重織でもよく、多大な引張強度を必要とする場合は、好ましくは二重織以上の多重織組織のものがフィルター効果が高い。
【0019】
【発明の効果】以上に説明した如く、本発明によれば、袋体が部分的に腐食性繊維より構成されており、腐食性繊維の腐食によって、メッシュ状構造となることにより、植物の育成を妨げることなく容易かつ安定した植生が可能となる。また、袋体の大部分が腐食することにより環境上害は少なく、さらにインターロッキング効果によって配設した場所の土と一体化するため、配設面において滑りが発生し難く地盤は安定となる。また、脱水処理時は腐食性繊維の腐食は生じないためフィルター効果に何ら問題を生じることがないという顕著な効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】590005999
【氏名又は名称】建設省土木研究所長
【識別番号】000173810
【氏名又は名称】財団法人土木研究センター
【識別番号】000160784
【氏名又は名称】株式会社クボタ建設
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井石化産資株式会社
【出願日】 平成8年(1996)7月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆
【公開番号】 特開平10−18261
【公開日】 平成10年(1998)1月20日
【出願番号】 特願平8−188039