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【発明の名称】 排水システムの防塵設備
【発明者】 【氏名】依田 裕明
【氏名】真鍋 明
【氏名】松井 志郎
【氏名】吉川 慶彦
【課題】排水システムの排水性能の低下を防止し高い信頼性を維持できる、排水システムの防塵設備を提供する。

【解決手段】迂回水路4の分岐部に、回転円盤式スクリーン122を設けるとともに、その鉛直上方にフロート101を設け、表層流れをせき止める。これにより、フロート本体101aおよびスカート101bの前面(上流側)に止水滞留水域201がつくられ、ここに塵芥301がトラップされる。その後塵芥301は、水流発生装置107の作り出す水流にのって河川1内における分岐部より下流側に確実に押し流され、フロート101の前面から取り除かれる。そして捕集ネット203によって釜場202に集積され、適当なときに選別し搬出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 主水路の下流部に設けられた主水路ゲート、該主水路から分岐して設けられ排水ポンプを備えた迂回水路、及びこの迂回水路の下流部に設けられた迂回水路ゲートを備えた排水システムに設置され、前記主水路から前記迂回水路が分岐する分岐部近傍に配置されたスクリーンを有し、前記主水路から前記迂回水路への塵芥の流入を防止する排水システムの防塵設備において、前記スクリーン近傍の水面位置に上下方向浮沈可能に設けられ、前記分岐部近傍の表層流れをせき止めて上流側に滞留部分を形成する浮沈部材と、前記滞留部分において前記浮沈部材の幅方向に水流を発生する水流発生手段とを有することを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項2】 請求項1記載の排水システムの防塵設備において、前記浮沈部材は、前記迂回水路の全幅を分割するように複数個配置されていることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項3】 請求項1記載の排水システムの防塵設備において、前記浮沈部材は、水位変化に追随して浮遊するフロートであることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項4】 請求項1記載の排水システムの防塵設備において、前記浮沈部材は、駆動手段によって所定高さ位置に駆動されるゲートであることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項5】 請求項4記載の排水システムの防塵設備において、前記浮沈部材は、水位が相対的に高いときには、該浮沈部材の下端が前記スクリーンの上端と略同一の高さ方向位置となり、水位が相対的に低いときには、該浮沈部材の下端が前記スクリーンの上端よりも低い位置となって該浮沈部材の少なくとも一部が前記スクリーンを覆うように構成されていることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項6】 請求項1記載の排水システムの防塵設備において、前記スクリーンは、前記迂回水路の幅方向に複数個配列されたスクリーン要素を備えており、各スクリーン要素は、水面に略平行な回転円盤状部材が鉛直方向複数箇所に所定間隔で取り付けられているいることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項7】 請求項6記載の排水システムの防塵設備において、前記複数個のスクリーン要素のうち少なくとも1つには、前記回転円盤状部材の回転中心である鉛直軸から放射状に取り付けられ、該鉛直軸まわりに遠心ポンプとして機能する複数枚の羽根が設けられていることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項8】 請求項6記載の排水システムの防塵設備において、前記複数個のスクリーン要素のうち少なくとも1つは、前記回転円盤状部材と同一回転中心である回転円筒部材を備えており、かつ前記複数の回転円盤状部材は、該回転円筒部材の外周面の鉛直方向複数箇所に固定されていることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項9】 請求項8記載の排水システムの防塵設備において、前記回転円筒部材の外周面には、スリットが形成されていることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【請求項10】 請求項1記載の排水システムの防塵設備において、前記水流発生装置は、プロペラ式水流機であることを特徴とする排水システムの防塵設備。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、河川に迂回水路を設けて河川水を排水するシステムに係わり、特に、ポンプへ塵芥が流入するのを防止するための排水システムの防塵設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】河川に迂回水路を設けてその途中に排水機場を設置した、一般的なこの種の排水システムの配置平面図を図13に示す。図13に示される排水システムは、主水路である河川(または水路、以下同じ)1とその下流側に接続する大河川(又は大水路若しくは海洋、以下同じ)2との接続部に主水路ゲート3を設けるとともに、迂回水路4を開削する。そして、その迂回水路4の途中に排水ポンプを備えた排水機場5を設け、さらに迂回水路4と大河川2との接続部に迂回水路ゲート6を設ける。そして、大雨や台風といった洪水時には主水路ゲート3を閉じるとともに迂回水路ゲート6を開いて排水機場5に設置された排水ポンプで河川1の濁水を大河川2に排水し、河川1の流域の冠水被害を防止する。また、この排水システムにおいては、河川1を浮遊し流下してきた塵芥が迂回水路4から排水機場5に流れ込み排水ポンプが破損または閉塞して排水運転ができなくなるのを防止するために、塵芥を捕捉するスクリーン(通常はバースクリーン)を備えた防塵設備7が、迂回水路4が河川1から分岐する分岐部近傍に配置されている。この防塵設備7のスクリーンの目幅は、ポンプが吸込んだ場合に羽根車の閉塞(又はポンプ細隙部の咬み込み)で回転が阻害され運転不能となる恐れのある、塵芥サイズ以下に設定されている。
【0003】そして、このように防塵設備7のスクリーンに捕捉された塵芥は、通常、所定期間毎に、例えば、図書下水道設計資料研究会編「下水道講座3―ポンプ場の設計と考え方」(鹿島出版会)の第96頁に記載されているような、スクリーンに併設された自動除塵機によって除去される。この自動除塵機は、水面に略鉛直方向に設けられたスクリーン上を、何本かのスクレーパをつけたエンドレスチェーンが走行し、スクレーパによってスクリーン前面に捕捉された塵芥をかき揚げ除去するものである。すなわち、エンドレスチェーン上のスクレーパがスクリーンの上端近傍で反転する位置に達すると、塵芥はスクレーパから、スクレーパの反転する位置の下方に設置されたベルトコンベア上に落下する。そしてこの塵芥は、ベルトコンベアに乗せられてホッパに送られて集積され、産業廃棄物として排水機場外で処分される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の構成には、以下の課題が存在する。すなわち、スクリーンに捕捉された塵芥は、迂回水路4を流下する流水圧力により、スクリーン上に押しつけられた状態となっている。よって、上述のようにスクリーン上の塵芥をスクレーパでかき揚げ除去するためには、この押しつけ力による摩擦力に抗してかき揚げる必要があり、その力は数トン以上に大きくなることがある。また、この摩擦力は、流水による押しつけ力のほかには、塵芥とスクリーンとのあいだの摩擦係数に依存するが、塵芥は、流木、水母、プラスチック類など、多種多様の形状であり、ものによっては摩擦係数が非常に大きくなることがある。したがって、これらのような場合には摩擦力が極めて大きくなり、スクレーパの駆動原動機がオーバロードしてトリップし、除塵機の性能を良好に維持するのが困難となる可能性がある。除塵機の性能が低下すると、防塵設備のスクリーン上に塵芥が堆積し通水を妨げるので、迂回水路の通水性が低下し、排水システムの排水性能を維持するのが困難となる。この排水システムは、河川の氾濫を防ぐために台風や大雨洪水の緊急時に運転されるものであることから、信頼性をさらに向上する必要がある。
【0005】本発明の目的は、排水システムの排水性能の低下を防止し高い信頼性を維持できる、排水システムの防塵設備を提供することにある。
【0006】
【発明が解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明によれば、主水路の下流部に設けられた主水路ゲート、該主水路から分岐して設けられ排水ポンプを備えた迂回水路、及びこの迂回水路の下流部に設けられた迂回水路ゲートを備えた排水システムに設置され、前記主水路から前記迂回水路が分岐する分岐部近傍に配置されたスクリーンを有し、前記主水路から前記迂回水路への塵芥の流入を防止する排水システムの防塵設備において、前記スクリーン近傍の水面位置に上下方向浮沈可能に設けられ、前記分岐部近傍の表層流れをせき止めて上流側に滞留部分を形成する浮沈部材と、前記滞留部分において前記浮沈部材の幅方向に水流を発生する水流発生手段とを有することを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。すなわち、大雨や台風といった洪水時には、主水路下流部の主水路ゲートが閉じられるとともに、迂回水路下流部の迂回水路ゲートが開かれ、主水路の濁水を排水ポンプで迂回水路を介し放流し、主水路の流域の冠水被害を防止する。このとき、水母、木材、プラスチック等の塵芥が、濁水と一緒になって主水路内を流下してくるが、これらは一般に比重が水より小さいことから、浮力によって濁水の表層を流下してくる。そして、濁水とともに、迂回水路の分岐部から迂回水路へと流入しようとする。ここで、本発明においては、この分岐部に、スクリーンを設けるとともに、その近傍の水面位置に浮沈部材を設け、表層流れをせき止めて上流側に滞留部分を形成することにより、ほとんどの塵芥は、この滞留部分にトラップされる。そしてまた、水流発生手段で、滞留部分に、浮沈部材の幅方向に水流を発生させる。このとき、水流発生手段から発生された水流は、進んでいく際、滞留部分の境界において、常に主水路から浮沈部材に向かって流下する流れの力を受け続けるので、水流発生手段から遠く離れても流れが拡散して勢いを失うことがない。すなわち、水流発生手段は、浮沈部材の幅方向に主水路の下流側に向かう水流を、効果的に作り出すことができる。これにより、このトラップされた塵芥を、主水路内における分岐部より下流側に流すことができる。よって、例えば、主水路内における分岐部より下流側に集積場を設けて塵芥を集積させておけば、防塵とは別個独立して、適当なときに、溜まった塵芥を水路から引き上げることができる。またこれに加え、浮沈部材が上下方向浮沈可能であることから、例えば洪水等により水位が変動しても、これに対応して、常に表層流れに滞留部分を形成することができる。またスクリーンとその近傍の浮沈部材とが併せて配置されることから、たとえば浮沈部材を、迂回水路の全幅を分割するように複数個配置すれば、仮にスクリーンの機能が不十分で局所的に塵芥が堆積し通水が悪くなったとしても、その部分のスクリーン要素前面の水位が上昇するとともに対応する浮沈部材がより浮上することでその部分の閉塞を防止し、通水を確保することができる。
【0007】好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記浮沈部材は、前記迂回水路の全幅を分割するように複数個配置されていることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。
【0008】また好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記浮沈部材は、水位変化に追随して浮遊するフロートであることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。
【0009】また好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記浮沈部材は、駆動手段によって所定高さ位置に駆動されるゲートであることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。これにより、例えばゲートのつっこみ深さが一定になるように駆動を制御すれば、滞留部分の広さを一定にすることができる。
【0010】さらに好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記浮沈部材は、水位が相対的に高いときには、該浮沈部材の下端が前記スクリーンの上端と略同一の高さ方向位置となり、水位が相対的に低いときには、該浮沈部材の下端が前記スクリーンの上端よりも低い位置となって該浮沈部材の少なくとも一部が前記スクリーンを覆うように構成されていることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。
【0011】また好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記スクリーンは、前記迂回水路の幅方向に複数個配列されたスクリーン要素を備えており、各スクリーン要素は、水面に略平行な回転円盤状部材が鉛直方向複数箇所に所定間隔で取り付けられているいることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。
【0012】さらに好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記複数個のスクリーン要素のうち少なくとも1つには、前記回転円盤状部材の回転中心である鉛直軸から放射状に取り付けられ、該鉛直軸まわりに遠心ポンプとして機能する複数枚の羽根が設けられていることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。これにより、該当するスクリーン要素からの塵芥の離脱を容易にすることができる。よって例えば、最も主水路下流側のスクリーン要素をこのように構成すれば、回転円盤式スクリーンから主水路下流側への塵芥の離脱・放出を円滑に行うことができる。
【0013】また好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記複数個のスクリーン要素のうち少なくとも1つは、前記回転円盤状部材と同一回転中心である回転円筒部材を備えており、かつ前記複数の回転円盤状部材は、該回転円筒部材の外周面の鉛直方向複数箇所に固定されていることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。例えば、スクリーンにおける塵芥の捕捉をより確実にするために、隣り合うスクリーン要素の円盤状部材どうしを互いに重なるように配置する場合、回転軸に回転円盤状部材を直接固定する構成では1つのスクリーン要素でかせぐことができる幅が比較的小さく限定され、スクリーンを構成するのに必要なスクリーン要素の数が膨大となる。そこで、回転軸まわりに回転円筒部材を設け、その外周面に回転円盤状部材を固定することにより、1つのスクリーン要素でかせぐことができる幅を増加し、スクリーンを構成するのに必要なスクリーン要素の数を低減することができる。
【0014】さらに好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記回転円筒部材の外周面には、スリットが形成されていることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。これにより、回転円筒部材が通水抵抗となり通水面積が減少するのを抑制し、通水を確保することができる。
【0015】また好ましくは、前記排水システムの防塵設備において、前記水流発生装置は、プロペラ式水流機であることを特徴とする排水システムの防塵設備が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。本発明の第1の実施形態を図1〜図6により説明する。従来構造を説明した図13と同等の部材には同一の符号を付す。本実施形態による防塵設備100の全体構造を表す正面図を図1に、水平断面図を図2に示す。図1及び図2において、防塵設備100は、先に図13で説明した排水システムにおける、迂回水路4の入り口すなわち主水路である河川1からの分岐部に設けられるものであり、大きく分けて、上下方向浮沈可能に設けられた浮沈部材としての複数のフロート101と、これらフロート101の下部に位置する回転円盤式スクリーン122と、およびフロート101の前面(上流側)に配置された水流発生手段としての水流発生装置107から構成される。各々の構造及び機能を以下に説明する。
【0017】まず、フロート101について説明する。フロート101は、迂回水路4の分岐部近傍の濁水の表層流れを堰止めし、その前面(上流側)に止水滞留水域201(図2参照)を生成する働きをするものである。
【0018】各フロート101は、例えば鋼板等で外枠が形成された中空構造体であるフロート本体101aと、その前後両面から鉛直下方に延びたスカート101bとが一体形成されており、さらにこれらが複数のガイド棒101cに沿って上下動し水位変化に追随して浮遊できる構成となっている。このフロート101の詳細構造を表す側断面図を図3(a)(b)に示す。図3(a)がフロート101の上昇時の状態、図3(b)がフロート101の下降している状態に対応する。なお構造の明確化のために両図ともスカート101b内は部分的に断面を示している。これら図3(a)(b)に示されるように、ガイド棒101cの上端および下端にはそれぞれストッパ101dがとりつけられており、フロート101の上下運動幅を規制するようになっている。これにより、水位がどれだけ高くても、フロート101の下端が回転円盤式スクリーン122上端と略同一の高さ方向位置になったところで上昇が止まり、フロートが過大上昇することがないようになっている。また水位が低いときは、フロート101の下端が回転円盤式スクリーン122上端よりも低い位置となって、フロート101の少なくとも一部が、回転円盤式スクリーン122を覆う、すなわちフロート101のスカート101b内に円盤式スクリーン122に収納されるようになっている。そしてこの場合も、水位がどれだけ低くても、ストッパ101dの働きでフロート101が水路を閉鎖しないようになっている。
【0019】次に、回転円盤式スクリーン122について説明する。回転円盤式スクリーン122は、フロート101の水路内下方に配置されてフロート101の潜り水流中の塵芥301を除去するためのものであり、フロート101を貫通しつつ上端が水面上に延長されて後述するタイミングベルト104に接続された鉛直な回転軸102c、この回転軸102cに設けられた回転円筒102a、及びこの回転円筒102aの鉛直方向複数箇所に取り付けられ水面に略平行な端面鋸歯状の回転円盤102bから構成される第1のスクリーン要素102を迂回水路4の幅方向に複数個配列している。また、それら第1のスクリーン要素102よりも河川1の下流側には、フロート101を貫通しつつ上端が水面上に延長された鉛直な回転軸105c、この回転軸105cの鉛直方向複数箇所に取り付けられ水面に略平行な端面鋸歯状の回転円盤105b、及び回転軸105cから放射状に取り付けられ回転軸105cまわりに遠心ポンプとして機能する4枚の羽根105aから構成される第2のスクリーン要素105を1個配列している。この第2のスクリーン要素105は、羽根105aのポンプ作用によって塵芥301を離脱させて下流へと押し流す機能をもたせたものである。これにより、回転円盤式スクリーン122から河川1下流側への塵芥301の離脱・放出を円滑に行うことができるようになっている。これら第1及び第2のスクリーン要素102,105の詳細構造を表す平面図及び側面図を図4(a)(b)に示す。
【0020】このとき、第1のスクリーン要素102にあっては、回転円盤102bを回転円筒102aに固定する構成とすることにより、1つのスクリーン要素でかせぐことができる幅を増加させ、回転円盤式スクリーン122を構成するのに必要な第1のスクリーン要素数を低減している。さらに、各回転円筒102aの外周面上には、略鉛直方向にスリット102dを設け、これによって回転円筒が通水抵抗となり通水面積が減少するのを抑制し、通水を確保している。またこのとき、各スクリーン要素102(又は105)は、隣合うスクリーン要素102(又は105)の回転円盤102b(又は105b)どうしが、排水運転中、ポンプが吸込むと羽根車の閉塞や構造隙間への咬み込みを起こし排水運転できなくなる恐れのある塵芥サイズ以下の間隔となるように、幅方向にオーバラップして配置され(図1参照)、これによって、塵芥301を確実にトラップするように構成されている。
【0021】これらすべてのスクリーン要素102,105の回転円盤102bは、運転中、図2に示すようにすべて同一方向に回転する。すなわち第1のスクリーン要素102にあっては、フロート101上部に設けられた駆動モータ103によって発生された駆動力が、タイミングベルト104を介して各回転軸102cに分配され、各回転円筒102a及び回転円盤102bが等速駆動されるようになっている。これにより回転円盤式スクリーン122にトラップされた塵芥301は、図2中左から右へとスクリーン要素102を乗り換えながら、下流方向へ移動することになる。また第2のスクリーン要素105にあっては、フロート101上部に設けられた他の駆動モータ106によって発生された駆動力が、回転軸105cに伝達され、回転円盤105b及び羽根105aが駆動されるようになっている。これは、羽根105aのポンプ作用は一般に回転軸の回転速度が速いほどその作用も大きいことから、第2のスクリーン要素105をより高速回転させることで塵芥301の離脱を円滑におこなうためである。
【0022】次に、水流発生装置107について説明する。水流発生装置107は、保護カバー107b内に設けられたプロペラ107cを回転させることにより止水滞留水域201においてフロート1の幅方向(=迂回水路4の幅方向)に水流を発生させる、いわゆるプロペラ式水流機である。そして、河川1の水位変化に対応し常に止水滞留水域201の表層部で水流を効果的に発生させるために、保護カバー107bの上部に水流発生装置用フロート107aを取り付けて水面に浮かせた構成となっている。
【0023】なお、図1に示されるように、迂回水路4は、一般には、センタピア4aによって複数個(本実施形態では3つ)の迂回水路4Aに仕切られている。したがって、本実施形態における防塵設備100では、施工の便宜のために、フロート101及び回転円盤式スクリーン122をセンタピア4a間寸法に合わせてユニット化し、これを各迂回水路4ごとに設置している。すなわち、各ユニットは、各迂回水路4Aの全幅を略3分割するように配置されている3個のフロート101と、5個のスクリーン要素102及び1個のスクリーン要素105とを備えている。そして、図1及び図2中左側2つの各ユニットに設けられたスクリーン要素105は、トラップした塵芥301を隣のユニットに受け渡す役目を果たし、図1及び図2中右端のユニットに設けられたスクリーン要素105のみが、トラップした塵芥301を河川1の下流側に流す役目を果たすことになる。
【0024】以上のように構成した本実施形態の防塵設備100の動作及び作用効果を以下に説明する。防塵設備100が設けられている一般的な排水システム(図13参照)においては、例えば、大雨や台風といった洪水時になると、河川1下流の主水路ゲート3が閉じられるとともに、迂回水路4下流部の迂回水路ゲート6が開かれ、河川1の濁水を排水機場5内の排水ポンプで迂回水路4を介し放流し、河川1の流域の冠水被害を防止する。このとき、水母、木材、プラスチック等の塵芥が、濁水と一緒になって河川1内を流下してくるが、これらは一般に比重が水より小さいことから、浮力によって塵芥301として濁水の表層を流下してくる。そして、濁水とともに、迂回水路4の分岐部において河川1から迂回水路4へと流入しようとする。ここで、本実施形態の防塵設備100においては、この分岐部に、回転円盤式スクリーン122を設けるとともに、その鉛直上方にフロート101を設け、表層流れをせき止める。これにより、フロート本体101aおよびスカート101bの前面(上流側)に止水滞留水域201がつくられる(図2参照)。
【0025】この作用を詳細に図5及び図6を用いて説明する。フロート101が流れを堰止めると、これによりフロート1の前後に水位差が発生する。この水位差xは、図5に示されるフロート1の水面下の突っ込み深さyによって一意的に決定されることが公知であり、例えば「水理学」(本間ほか偏著、岩波書店)P199によれば、次式の関係で与えられる。
y=Ho−Q/(μb√(2gx))
ここで、Ho:堰上流の水位、Q:流水量、μ:流出係数(=0.6)、b:水路幅、g:重力加速度である。
【0026】この関係を具体的に示したものを図6に示す。この図6は、水路幅b=7m、流水量Q=17.5m3/s(流速=0.5m/s)とした場合で、水路の水深Hoを、Ho=5mとHo=3mの2つの場合についてそれぞれ示したものである。図6でも明らかなように、フロート101の突っ込み深さyが大きくなるほど、フロート101前後の水位差も大きくなることがわかる。しかしながら、あまりつっこみ深さyを大きくすると、フロート101上流の水位Hoが上昇して好ましくない。例えば、水位差を0.2m以内に抑えることにすると、フロート101の突っ込み深さyは、Ho=5mの場合でy=2.8m、Ho=3mの場合でy=1.7m程度になる。
【0027】ここにおいて、公知の流れ解析によれば、フロート1前面水面付近の止水滞留水域201の範囲は、おおよそフロート101の突っ込み深さ(y)に比例することがわかっている。例えば上記の計算例に従うと、Ho=5m、y=2.8mの場合では止水滞留水域201のフロート101に向かう方向の寸法L(図2参照)はL≒2.5m程度となり、Ho=3m、y=1.7mの場合ではL≒1.5m程度が確保されることとなる。なお、フロート101前後面に水位差がつくと、フロート101には水位差に相当する水圧が作用するので、フロート101a,101bおよび後述するガイド棒101cは、この水圧に耐えうる強度となるように予め設計されている。このようにして、フロート101上流側に止水滞留水域201を形成することにより、ほとんどの塵芥301は、この止水滞留水域201にトラップされる。
【0028】そして、水流発生装置107で、止水滞留水域201に、フロート101の幅方向(迂回水路4の幅方向)に水流204を発生させる。このとき、水流発生装置107から発生された水流204は、進んでいく際、止水滞留水域201の境界において、常に河川1からフロート101に向かって流下する流れ205の力を受け続ける(流れ205自体は図2に破線で示すように止水滞留水域201の境界から下方へと潜り込む)ので、水流発生装置107から遠く離れても流れが拡散して勢いを失うことがない。すなわち、水流発生装置107は、フロート101に沿いつつ河川1の下流方向に向かう水流を、効果的に作り出すことができる。したがって、このフロート101にトラップされた塵芥301は、水流発生装置107の作り出す水流にのって河川1内における分岐部より下流側に確実に押し流され、フロート101の前面から取り除かれるので、塵芥301の掃流を効果的かつ確実に行うことができる。
【0029】一方、比較的比重が重い一部の塵芥301はフロート101前面の止水滞留水域201よりも下方にもぐり込み、回転円盤式スクリーン122にトラップされる。前述したように、このトラップされた塵芥301は、各スクリーン要素102を乗り換えながら、またスクリーン要素105で隣のユニットへと受け渡されつつ、図2中左から右へと河川下流方向へ搬送され、図2中右端のユニットのスクリーン要素105においてそのポンプ作用により離脱され、河川1内における分岐部より下流側に放出される。
【0030】以上のようにして、表層および底層を浮遊流下する塵芥301はすべて河川1の下流に押し流されるので、下流側に設けられた捕集ネット203によって釜場202に集積することができ、ここで一時的に貯留される。その後、塵芥を、防塵とは別個独立して適当なときに選別し搬出することができる。
【0031】またこれに加え、フロート101が上下方向浮沈可能であることから、例えば洪水等により水位が変動しても、これに対応して、常に表層流れに止水滞留領域201を形成することができる。よって、端に固定堰を設ける場合よりも有利である。また、回転円盤式スクリーン122とその上部のフロート101とが併せて配置されることから、仮に回転円盤式スクリーン122の機能が不十分で局所的に塵芥301が堆積し通水が悪くなったとしても、その部分のスクリーン要素102,105前面の水位が上昇するとともに対応するフロート101がより浮上し、そのスクリーン要素102の通水面積を広くして閉塞を防止し、通水を確保することができる。
【0032】したがって、本実施形態の防塵設備100によれば、スクリーンに捕捉された塵芥をスクレーパでかき揚げて除去する従来構造のように、塵芥による摩擦の度合いによって排水システムの排水性能が低下することがなくなるので、高い信頼性を維持することができる。
【0033】なお、上記第1の実施形態においては、回転円盤式スクリーン122の鉛直上方にフロート101を設けたが、これに限られない。すなわち、回転円盤式スクリーン122の流れ方向位置と、フロート101の流れ方向位置とが、多少前後にずいれていてもよい。この場合も、同様の効果を得る。また、上記第1の実施形態においては、第2のスクリーン要素105に4枚の羽根105aを設けたが、これに限られず、2〜3枚、又は5枚以上でもよい。したがって、複数枚であれば足りる。これらの場合も、同様の効果を得る。
【0034】本発明の第2の実施形態を図7〜図10により説明する。本実施形態は浮沈部材として、駆動手段によって所定高さ位置に駆動されるゲートを用いる場合の実施形態である。第1の実施形態と同等の部材には同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態による防塵設備400の全体構造を表す正面図を図7に、水平断面図を図8に示す。これら図7及び図8において、第1の実施形態の防塵設備100と異なる主要な点は、上記したように、フロート101に代わり、所定高さ位置に駆動されるゲート108が設けられている点である。
【0035】すなわち、ゲート108は、フロート101と同様、迂回水路4の分岐部近傍の濁水の表層流れを堰止めし、その前面(上流側)に止水滞留水域201を生成する働きをするものである。各ゲート108は、例えば鋼板等で外枠が形成された中空構造体であるゲート本体108aと、その前後両面から鉛直下方に延びたスカート108bが一体形成されており、さらにこれらが複数のガイド棒108cに案内されて上下動するようになっている。このゲート108の詳細構造を表す側断面図を図9(a)(b)に示す。図9(a)がゲート108の上昇時の状態、図9(b)がゲート108の下降している状態に対応する。なお構造の明確化のために両図ともスカート108b内は部分的に断面を示している。
【0036】このような構成のゲート108は、ゲート本体108aに取りつけられた送りネジ108dがゲート駆動装置109で駆動されることにより、上下動される。そしてこのときのゲート駆動装置109の動作は、ゲート前面の水位に応じて制御される。これを以下詳細に説明する。
【0037】すなわち図8に示されるように、ゲート108の上流側に電極式水位検出器などの検出器110を設置し、水位を検出する。また図7〜図9には特に図示しないが、各ゲート108には変位検出器113が併設されており、それぞれの変位を検出する。そしてこれら2つの検出信号に応じ、制御盤112によってゲート駆動装置109の駆動が制御される。この制御盤112による駆動制御の内容を表すブロック図を図10に示す。
【0038】図10に示す制御盤112において、あらかじめ設定されている目標ゲート突っ込み深さyoに対応する制御目標電圧発生器117からの制御目標信号と、ゲート上流側の水位Ho(第1の実施形態の図5参照)を表す水位検出器110の検出信号と、各ゲート108の変位量すなわち高さh”(第1の実施形態の図5参照)を表すゲート変位検出器113からのフィードバック信号とが、演算器114に入力される。そしてこの演算器114において、Hoとh”とからy=Ho−h”が求められ、さらに、これとyoとから制御偏差y−yoが算出される。そして、位相補償回路115によってその制御偏差y−yoの位相が調整された後、増幅器116を介してゲート駆動装置109に出力される。このような制御によって、ゲート108の水中突っ込み深さyが目標値yoに制御される。
【0039】なお、ゲート下流側にも検出器111を設けているが、この検出器111からの水位信号は、ゲート上流側の水位信号との差をとることで、防塵設備400の目詰まりのモニターに活用することができる。
【0040】以上のように構成した本実施形態の防塵設備400によれば、第1の実施形態と同様の効果に加え、ゲート108の突っ込み深さyを一定(=目標値yo)に制御することが可能となるので、ゲート108の前面に塵芥301を滞留させるのに十分な止水滞留水域201を常に確保することができる。
【0041】なお、上記第2の実施形態においては、制御盤112内に位相補償回路115を設けてフィードバック定置制御を行ったが、これに限られない。すなわち制御方法はこのフィードバック制御のほかにも種々考えられる。例えば、さらに制御の応答性を高めることを目的として、いわゆるPID制御を行うこともできる。この場合は、図10における位相補償回路115の部分にPID制御回路が設けられることとなる。
【0042】次に、水流発生装置に関する他の実施形態について説明する。本実施形態は、プロペラ式でない場合の水流発生装置の実施形態である。第1及び第2の実施形態と同等の部材には同一の符号を付す。本実施形態による水流発生装置の構成を表す概念図を図11に示す。図11において、本実施形態による水流発生装置507は、ゲート108の下流側領域(図示せず)からポンプ501によって取水された河川水は、ゲート108上流側の水位を表す検出器110からの信号に基づく制御盤512の制御でモータバルブ403A,B,Cのいずれかが開かれることにより、対応する給水配管502A,B,Cのいずれかから噴出し、これによって水流発生水位レベルを制御するものである。この制御盤512内での制御内容を表すブロック図を図12に示す。
【0043】図12に示す制御盤512において、ゲート108上流側の水位Ho(第1の実施形態の図5参照)を表す水位検出器110からの検出信号と、電圧発生器520からの、各給水配管502A,502B,502Cに対応する電圧信号VA,VB,VCとが比較器518に入力され、検出信号Hoと電圧信号VA,VB,VCとが比較される。この比較においては、例えばHoに一番近い電圧信号が選択され比較器518から出力されるようになっている。そして比較器518からの出力がスイッチ切換器519に入力され、スイッチ切換器519は入力値に応じてモータバルブ503A〜Cのスイッチを切り換える。すなわち、比較器518でVAが選択された場合は、モータバルブ518Aを開状態、他のモータバルブ518B,Cを閉状態として、給水配管502Aのみを導通させ、ポンプ501からの水を最高位置から噴出させる。比較器518でVBが選択された場合は、モータバルブ518Bを開状態、他のモータバルブ518C,Aを閉状態として、給水配管502Bのみを導通させ、ポンプ501からの水を中間位置から噴出させる。比較器518でVCが選択された場合は、モータバルブ518Cを開状態、他のモータバルブ518A,Bを閉状態として、給水配管502Cのみを導通させ、ポンプ501からの水を最低位置から噴出させる。
【0044】このような制御を行ってゲート108前面側の水位に対応してモータバルブ503を切り換えることによっても、塵芥301の集積しやすい止水滞留水域201の表層部に効果的に水流を発生させることができる。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、浮沈部材にトラップされた塵芥は、水流発生手段の作り出す水流にのって主水路内における分岐部より下流側に確実に押し流され、塵芥の掃流を効果的かつ確実に行うことができる。よって、例えば、主水路内における分岐部より下流側に集積場を設けて塵芥を集積させておけば、防塵とは別個独立して、適当なときに、溜まった塵芥を水路から引き上げることができる。したがって、スクリーンに捕捉された塵芥をスクレーパでかき揚げて除去する従来構造のように、塵芥による摩擦の度合いによって排水システムの排水性能が低下することがなくなるので、高い信頼性を維持することができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成8年(1996)6月24日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
【公開番号】 特開平10−8437
【公開日】 平成10年(1998)1月13日
【出願番号】 特願平8−163194