トップ :: E 固定構造物 :: E02 水工;基礎;土砂の移送

【発明の名称】 消波装置
【発明者】 【氏名】高橋 重雄
【氏名】下迫 健一郎
【氏名】鈴木 高二朗
【氏名】斉藤 祐一
【氏名】岡村 知光
【氏名】三浦 裕信
【課題】港口部等においても船舶の航行等を妨げることなく消波を行うことができる消波装置を提供する。

【解決手段】海波Wの進行方向に垂直に延びるように配置され軸支された回動軸3Aと、回動軸3Aに一端が取り付けられ回動軸3Aを中心として揺動可能に構成された腕状体2A,2A′と、一側が腕状体2A,2A′の他端に取り付けられ2面の一方が海中において海波Wの進行方向に垂直に配置されるとともに海中で浮上する受波板1Aと、海波Wの動きに伴う腕状体2A,2A′の揺動運動により海水の吸入・吐出を行うポンプ機構4Aを備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 海波の進行方向に垂直に延びるように配置され軸支された回動軸と、前記回動軸に一端が取り付けられ前記回動軸を中心として揺動可能に構成された2つの腕状体と、一側が前記2つの腕状体の他端に取り付けられ2面の一方が海中において前記海波の進行方向に垂直に配置されるとともに海中で浮上する受波板と、前記海波の動きに伴う前記腕状体の揺動運動により仕事を行うように構成された仕事機構とを備えたことを特徴とする消波装置。
【請求項2】 請求項1記載の消波装置において、前記仕事機構は、吸入口と吐出口を有し海中に配置された容器と、前記容器内へ前記吸入口を通じて海水を吸入する方向にのみ開放される吸入弁と、前記容器外へ前記吐出口を通じて海水を吐出する方向にのみ開放され吐出弁と、前記容器内に収容されるとともに一側が前記回動軸に取り付けられ海波の動きに伴って往復運動を行い、前記往復運動のうちの一方の方向への運動により前記吸入口から海水を吸入し、前記往復運動のうちの他方の方向への運動により前記吐出口から海水を吐出するように構成された移動体とを有することを特徴とする消波装置。
【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の消波装置において、前記受波板は、内部に形成された空室と、注水口と、排水口を有し、かつ、前記注水口から前記空室内に海水を注水することにより前記受波板の浮力を失わせ前記受波板に前記海波が作用しないようにし、前記排水口から前記空室内部の海水を外部に排水することにより前記受波板に浮力を持たせ前記受波板に前記海波が作用するようにしたことを特徴とする消波装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、消波装置に関し、特に、海波の動きに伴う揺動運動により仕事を行わせることにより海波のエネルギーを消費させて消波するように構成した消波装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、港湾等においては、波浪の侵入を防いで港内を静穏に保つための手段として防波堤等が建設されていた。防波堤は、コンクリート構造等により港湾を囲むようにして海中に堤状の構造物を構築するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、港湾は船舶が出入する施設であるため、港湾の全周を防波堤で囲むことはできず、防波堤を構築しない港口部を設ける必要がある。このため、港口部から海波が侵入し、港内の静穏を乱すことが問題となっていた。特に、最近では、長周期の侵入波により港内船舶に大きな動揺を与えたり、係留索が破断する、という事態が発生し問題となっている。
【0004】本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、港口部等においても船舶の航行等を妨げることなく消波を行うことができる消波装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、海波の進行方向に垂直に延びるように配置され軸支された回動軸と、前記回動軸に一端が取り付けられ前記回動軸を中心として揺動可能に構成された2つの腕状体と、一側が前記2つの腕状体の他端に取り付けられ2面の一方が海中において前記海波の進行方向に垂直に配置されるとともに海中で浮上する受波板と、前記海波の動きに伴う前記腕状体の揺動運動により仕事を行うように構成された仕事機構とを備えたことを特徴とする。
【0006】また、請求項2に記載した発明は、請求項1記載の消波装置において、前記仕事機構は、吸入口と吐出口を有し海中に配置された容器と、前記容器内へ前記吸入口を通じて海水を吸入する方向にのみ開放される吸入弁と、前記容器外へ前記吐出口を通じて海水を吐出する方向にのみ開放され吐出弁と、前記容器内に収容されるとともに一側が前記回動軸に取り付けられ海波の動きに伴って往復運動を行い、前記往復運動のうちの一方の方向への運動により前記吸入口から海水を吸入し、前記往復運動のうちの他方の方向への運動により前記吐出口から海水を吐出するように構成された移動体とを有することを特徴とする。
【0007】また、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2記載の消波装置において、前記受波板は、内部に形成された空室と、注水口と、排水口を有し、かつ、前記注水口から前記空室内に海水を注水することにより前記受波板の浮力を失わせ前記受波板に前記海波が作用しないようにし、前記排水口から前記空室内部の海水を外部に排水することにより前記受波板に浮力を持たせ前記受波板に前記海波が作用するようにしたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明の第1実施形態である消波装置の構成を示したものであり、図1はその全体の斜視図を、図2は消波装置におけるポンプ部の構成と動作を示したものである。図に示すように、この消波装置101は、受波板1Aと、2つの腕状体2A及び2A′と、回動軸3Aと、ポンプ機構4Aと、底板7Aを備えて構成されている。ここに、ポンプ機構4Aは仕事機構に相当している。
【0009】受波板1Aは、海水よりも比重が小さく海中で浮上する合成樹脂等の材料からなる略長方形の平板状部材である。受波板1Aの一側の両端付近には、上記した2つの腕状体2A及び2A′の一端が取り付けられている。受波板1Aは、厚さの薄い中空箱形状部材の中空部に空気を密封して形成してもよい。このような中空箱形状に形成すれば、合成樹脂板の場合と同様に海中に入れれば浮上する。また、このように中空箱形状に形成する場合には、受波板1Aは金属等により作成することができる。
【0010】腕状体2A及び2A′は、金属等からなる略棒状の部材である。腕状体2A及び2A′の一端は、上記したように受波板1Aの一側に取り付けられているが、腕状体2A及び2A′の他端は、回動軸3Aに取り付けられている。また、2つの腕状体2A及び2A′は、互いに平行となっている。
【0011】回動軸3Aは、金属等からなる略丸棒状の部材である。この回動軸3Aは、腕状体2A,2A′の長手方向に対して垂直に延びるようにしてポンプ機構4A内に回動可能な状態で軸支され、その両端付近がポンプ機構4Aの外部に出ており、その部分に腕状体2A,2A′の他端が取り付けられている。このような構成により、腕状体2A,2A′は、回動軸3Aを中心として揺動可能となっており、腕状体2A及び2A′の揺動により受波板1Aも一体となって揺動する。
【0012】ポンプ機構4Aは、容器40Aと、吸入口41Aと、吐出口42Aと、吸入弁43A及び43A′(図2(B)参照)と、吐出弁44A及び44A′(図2(C)参照)と、移動体45A(図2(A),(B),(C)参照)を有している。図2(A)は、容器40Aの上面及び側面を取り外した状態を示しており、図2(B)は容器40Aの吸入口41A側の断面を、また図2(C)は容器40Aの吐出口42A側の断面を、それぞれ示している。
【0013】容器40Aは、金属等からなり、外形が略かまぼこ形状又は略半円柱状に形成された中空部材である。容器40Aの内部には、隔壁81A(図2(A),(B),(C)参照)が設けられている。このため、容器40Aの内部は、隔壁81Aにより、下方の第1室46Aと上方の第2室47Aに区分されている。また、第1室46Aの内部には、隔壁82A(図2(A)参照)が設けられている。このため、第1室46Aの内部は、隔壁82Aにより、図において手前側となる吸入側空室と、図において奥側となる吐出側空室の2つの部分に区分されている。
【0014】第1室46Aの吸入側には、外部と連通する開口である吸入口41Aが設けられている。また、第1室46Aの吐出側には、外部と連通する開口である吐出口42Aが設けられている。また、隔壁81Aの中央には、回動軸3Aが軸支されている。そして、回動軸3Aの長手方向に一側を沿わせるようにして長方形状の移動体45Aが取り付けられている。
【0015】また、図2(B)に示すように、隔壁81Aのうち吸入口41Aに近い部分には、開口が設けられ、この開口を開閉する吸入弁43A及び43A′が隔壁81Aにヒンジ接合されている。また、図2(C)に示すように、隔壁81Aのうち吐出口42Aに近い部分には、開口が設けられ、この開口を開閉する吐出弁44A及び44A′が隔壁81Aにヒンジ接合されている。そして、吸入弁43A及び43A′は、容器40A内へ海水を吸入する方向にのみ開放され、吐出弁44A及び44A′は、容器40A外へ海水を吐出する方向にのみ開放されるようになっている。
【0016】また、第2室47Aの上面は半円筒形状となっており、この円筒の中心は回動軸3Aの中心と一致している。また、回動軸3Aの中心から移動体45Aの外側端面までの長さは、回動軸3Aの中心から第2室47Aの半円筒形状の上面の内壁までの長さよりわずかに短く設定されており、移動体45Aの外側端面と第2室47Aの半円筒形状の上面の内壁の間の空隙は微小となっている。
【0017】底板7Aは、金属等からなる平板状部材である。底板7Aの上面には、ポンプ機構4Aが取り付けられる。
【0018】次に、上記した第1実施形態の消波装置101の動作について説明する。図1に示すように、上記した消波装置101の底板7Aを海底上に置き、受波板1Aの平面部分が海波Wの進行方向に対して垂直となるように、すなわち、回動軸3Aが海波の進行方向に垂直に延びるように配置し、受波板1Aの上部が海面から上に出る程度にして錨等により底板7Aを海底に固定する。そして、あらかじめ容器40Aの第1室46A及び第2室47A内に海水を満たしておく。
【0019】このように配置すると、受波板1Aに作用する浮力により受波板1Aは直立しようとし、波がない場合にはそのまま自立し、海波Wの往復運動が加わると、押圧力と吸引力が交互に受波板1Aの面に作用する。これらの力により、腕状体2A及び2A′は、回動軸3Aを中心として海波Wの進行方向に揺動する。この腕状体2A及び2A′の動きにより、回動軸3Aが回動する。その結果、回動軸3Aに取り付けられた移動体45Aが、ポンプ機構4Aの容器40Aの第2室47A内で揺動する。
【0020】上記した移動体45Aの揺動運動により、例えば図2(B)において実線で示すように時計回り方向に回動する場合には、吸入弁43Aが開放されるとともに吸入弁43A′が閉塞される。この動きにより、海水が吸入口41Aから第1室46Aの手前の吸入側空室内に吸入されるとともに、開放された吸入弁43Aから第2室47Aのうち図の左側の部分に流入する。このとき、吐出口42A付近では、吐出弁44Aが開放されるとともに吐出弁44A′が閉塞される。この動きにより、海水が第2室47Aの右側の部分から第1室46Aの吐出側空室内に押し出されるとともに、吐出口42Aから容器40Aの外部へ吐出される。
【0021】また、移動体45Aの揺動運動により、例えば図2(B)において破線で示すように反時計回り方向に回動する場合には、吸入弁43A′が開放されるとともに吸入弁43Aが閉塞される。この動きにより、海水が吸入口41Aから第1室46Aの吸入側空室内に吸入されるとともに、開放された吸入弁43A′から第2室47Aの右側の部分に流入する。このとき、吐出口42A付近では、吐出弁44A′が開放されるとともに吐出弁44Aが閉塞される。この動きにより、海水が第2室47Aの左側の部分から第1室46Aの吐出側空室内に押し出されるとともに、吐出口42Aから容器40Aの外部へ吐出される。
【0022】上記のように、この消波装置101では、海波Wの動きに応じて受波板1A及び腕状体2A,2A′が揺動運動を行い、それに伴いポンプ機構4A内の移動体45Aが海水の吸入・吐出という仕事を行う。すなわち、海波Wが本来有していた波の運動エネルギーが、海水の吸入・吐出という仕事に変換されて消費されることになる。このため、海波Wの進行方向において消波装置101の後方では波が減衰する。このようにして、消波装置101により消波を行うことができる。
【0023】上記の消波装置101においては、受波板1Aの質量・面積により海波Wによる仕事の量を変えることができる。また、吸入口41Aと吐出口42Aに絞り機構(図示せず)を設けたり、腕状体2A,2A′に緩衝器(図示せず)等を接続するなどして給排動作に対する負荷を与え、絞りの開口量や緩衝量を調節可能な構成とすれば、受波板1A及び腕状体2A,2A′の揺動時の最大振れ角度を調整することが可能となる。このように構成すれば、海波Wの最大エネルギーが大きな海域に配置する場合には負荷を大きく設定し、海波Wの最大エネルギーが小さな海域に配置する場合には負荷を小さく設定する、という操作が可能となる。
【0024】また、上記の消波装置101では、非常にエネルギーの大きな海波Wが襲来した場合には、受波板1Aは非常に強い押圧力を受けるため、腕状体2A,2A′は受波板1Aが底板7Aに接触するほど大きく振れ、波が後方に透過することもある。しかし、このような大波が去った後は、受波板1Aには浮力による復元力が作用し、再び海波の動きに応じて消波を行う。したがって、この消波装置101は、防波堤のような波に対して不透過な消波手段が波力をそのまま受けることにより時に損傷を受けることもあるのに比べ、波に対して適度の透過性を有しており、耐波安定性が高い。
【0025】次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態である消波装置のポンプ部の構成を示したものである。図に示すように、この消波装置102は、受波板1Bと、2つの腕状体2B及び2B′(2B′は図示せず)と、回動軸3Bと、ポンプ機構4Bと、底板7Bを備えて構成されている。ここに、ポンプ機構4Bは仕事機構に相当している。
【0026】この第2実施形態の消波装置102が第1実施形態の消波装置101と異なる点は、ポンプ機構4Bの構成にある。このポンプ機構4Bは、腕状体2B等の中間にヒンジ48Bが設けられ、海波の動きに伴う腕状体2B等の揺動運動は、ヒンジ48Bに接続するロッド49Bの水平往復運動に変換される。このロッド49Bの動きにより、容器40B内で移動体45Bが往復運動をする。このため、腕状体2B等の揺動が図の実線の場合には、海水は図の実線に示すように吸入口41Bから吸入弁43Bを経て容器40Bの左側空室内に入り、容器40Bの右側空室内にあらかじめ入っていた海水が吐出弁44Bから吐出口42Bを経て外部へ吐出される。腕状体2B等の揺動が図の破線の場合には、海水は図の破線に示す順によって吸入・吐出される。
【0027】このように、第2実施形態の消波装置102においては、シリンダ・ピストン形式のポンプ機構4Bにより、海水の吸入・吐出という仕事を行うことにより消波が行われる。
【0028】次に、本発明の第3実施形態について説明する。図4は、本発明の第3実施形態である消波装置の構成を示したものである。図に示すように、この消波装置103は、受波板1Cと、2つの腕状体2C及び2C′(2C′は図示せず)と、回動軸3Cと、制動機構5Cと、底板7Cを備えて構成されている。ここに、制動機構5Cは仕事機構に相当している。
【0029】この第3実施形態の消波装置103が第1,2実施形態の消波装置と異なる点は、ポンプ機構のかわりに制動機構5Cを設けた点にある。この制動機構5Cは、略半円柱状の凹部が設けられた一対のブロック51C及び52Cと、略半円柱状の凹部のそれぞれの内壁に設けられた制動体53C及び53C′と、各制動体間に回動軸3Cをはさみ込んだ状態で2つのブロック51C及び52Cを締結するボルト等の締結具54C及び54C′を有している。制動体53C及び53C′としては、例えば鋳鉄や焼結金属等からなり摩擦抵抗の大きな部材が用いられる。
【0030】上記のような構成により、海波の動きに伴い腕状体2C等が揺動運動を行うと、回動軸3Cが制動体53C,53C′と摩擦しながら回動する。この際、回動軸3Cは、制動体53C,53C′から制動を受け、回動軸3Cの運動エネルギーが熱エネルギーに変換されて周囲に発散される。
【0031】このように、第3実施形態の消波装置103においては、回動軸3Cが制動体53C,53C′の制動に抵抗しつつ回動するという仕事を行うことにより消波が行われる。
【0032】消波装置において行う仕事は、上記以外のものであってもよい。例えば、回動軸にフライホイール(はずみ車)等を装着し、腕状体の揺動運動を回転運動に変換し、この回転運動を発電機のシャフトに伝達して波力発電を行わせるようにしてもよい。
【0033】また、上記した消波装置は、1個だけでなく、複数個並設して用いることができる。例えば、図5に示す第4実施形態のように、例えば上記の消波装置101を海波Wに対し縦横に整列させて配置することにより、全体として消波システムを構成するようにしてもよい。あるいは、図6に示す第5実施形態のように、例えば上記の消波装置101を海波Wに対しいわゆる「千鳥状」に配置することにより、全体として消波システムを構成するようにしてもよい。個々の消波装置は、102や103を使用してもよい。
【0034】また、図7に示す第6実施形態のように、上記した消波装置101の受波板1Aが海面Sの上に出ないように配置することにより、いわゆる「潜堤」を構成し、周囲の景観を損なわずに消波機能を発揮させるようにすることも可能である。個々の消波装置は、102や103を使用してもよい。
【0035】あるいはまた、図8に示す第7実施形態のように、上記した消波装置101の受波板1Aのかわりに、内部に空室11Dが形成された受波板1Dを設け、腕状体2A,2A′のかわりに、内部に空洞(図示せず)が形成された腕状体2D,2D′を設け、空室11Dと腕状体2Dの空洞の一端を注水口12Dと注水弁(図示せず)を介して連通させ、空室11Dと腕状体2D′の空洞の一端を排水口13Dと排水弁(図示せず)を介して連通させ、腕状体2Dの空洞の他端に注水管61Dを接続させ、かつ腕状体2D′の空洞の他端に排水管62Dを接続させるようにして消波装置107を構成してもよい。消波装置107の他の部分は、消波装置101と同様に構成する。そして、上記の注水管61Dの他端に注水ポンプ(図示せず)を接続し、排水管62Dの他端に排水ポンプ(図示せず)を接続し、受波板1Dの空室11D内への注水・排水を制御可能にすれば、注水口12Dから空室11D内に例えば海水を注水することにより受波板1Dの浮力を失わせて図8のように傾倒し受波板1Dに海波Wが作用しないようにすることができ、逆に排水口13Dから空室11D内部の海水を外部に排水することにより受波板1Dに浮力を持たせて浮上・自立させ受波板1Dに海波Wが作用するようにさせることもできる。
【0036】このように構成すれば、消波の必要のない場合や船舶等を航行させる場合に受波板1Dを傾倒することが可能である。消波装置102や103の場合も同様である。したがって、図9に示す第8実施形態のように、防波堤B,Bの設置されない港口部の海底に上記の消波装置、例えば107を設置すれば、通常は消波を行い、船舶等の航行時のみ空室11D内に注水して受波板1Dを傾倒するように制御することができる。消波装置107をこのように使用すれば、入出港時の船舶等の航行を妨げることなく港湾の港内の静穏度をさらに向上させることができる。
【0037】また、図10に示す第9実施形態のように、岸壁Qの周辺に上記の消波装置、例えば107を設置すれば、通常は受波板1Dを傾倒しておき、船舶等が接岸し係留されている時のみ空室11D内の海水を排水して受波板1Dを浮上させ消波を行うように制御することができる。消波装置107をこのように使用すれば、着岸又は離岸時の船舶等の航行を妨げることなく岸壁付近の静穏度だけを向上させることができ、経済的である。
【0038】また、図11に示す第10実施形態のように、砂浜海岸の侵食を防止するためのいわゆる「離岸堤」として使用することもできる。特に、潜堤状にすれば、景観を損なうことがなく、板の形状、配置等を工夫することにより波の透過性も持たせるようにすれば、消波装置107の背後(海岸側)の海水を交換させる機能を持たせることも可能である。
【0039】また、上記した消波装置、例えば101においては、海水を吸入口41Aから吸入した後、吐出口42Aから海中へ吐出している。消波装置107の場合も同様である。これを、図12に示す第11実施形態のように、港外側に配置された消波装置107の吐出口42Dにホース71等を接続し港内側まで延設し、吐出口72から吐出するようにすれば、電力等の動力を用いず海波Wのエネルギーのみにより、海水を揚水又は送水し、かつ海水交換することが可能である。この場合は、揚水又は送水が仕事となる。
【0040】さらに、図13に示す第12実施形態のように、消波装置112の吸入口41Eに、多数の孔が設けられた吸入管73を接続して砂浜内部に差し込み、地下水を揚水して地下水位Lを下げるようにすれば、一種の「サブサンドフィルター工法」として利用することができ、砂浜海岸の侵食を防止することができる。
【0041】なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、海波の動きに伴う揺動運動により仕事を行わせることにより海波のエネルギーを消費させて消波するように構成したので、港口部等においても船舶の航行等を妨げることなく消波を行うことができる。また、波のエネルギーを消費するだけでなく、揚水、送水、発電等のエネルギー源として活用することも可能である。そして、受波板の浮上・傾倒を制御することにより、消波機能の始動と停止を制御することができるため、消波を行いたい場所と時を限定することができ、経済的である。そのほか、離岸堤、潜堤、海浜侵食防止手段等として利用することもできる。
【出願人】 【識別番号】391002834
【氏名又は名称】運輸省港湾技術研究所長
【出願日】 平成8年(1996)6月26日
【代理人】
【公開番号】 特開平10−8434
【公開日】 平成10年(1998)1月13日
【出願番号】 特願平8−185510