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【発明の名称】 屈折式ラック棒
【発明者】 【氏名】南里 泰司
【氏名】北田 幸夫
【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】水門の扉(4)等を昇降させるために扉(4)等に接続され、側板に一定のピッチでラックピン(12)を設けたラック棒(1)であって、前記ラック棒(1)の軸線方向に複数個の部分側板(11)を連接し、それぞれの前記部分側板(11)を一定の方向に屈折するように互いに枢着してなる側板と、前記部分側板(11)の連接部の近傍に設けられ、互いに隣接する前記部分側板(11)を屈折しないように拘束する拘束位置と、前記部分側板(11)を屈折可能とするような非拘束位置とに可動に設けられた拘束金具(13)と、前記拘束金具(13)に設けられ、外部の係合部材と係合することにより前記拘束金具(13)を拘束位置と非拘束位置とに切り換える切換係合部(131,132)とを有する屈折式ラック棒。
【請求項2】請求項1に記載した屈折式ラック棒において、前記拘束金具(13)は、隣接する前記部分側板(11)を枢着する枢着軸(14)とは異なる軸の回りを揺動可能に設けられている屈折式ラック棒。
【請求項3】請求項1に記載した屈折式ラック棒において、前記拘束金具(13)は、前記部分側板(11)の連接部に隣接するラックピン(121,122)の一方に揺動可能に設けられており、連接部に隣接するラックピンの他方に係合する係合凹部(134)を有するものである屈折式ラック棒。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、昇降式の水門等の昇降扉の昇降装置に使用されるラック棒に関するものであり、特に、屈折状態と非屈折状態とを自動的に切り換えることのできる屈折式ラック棒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】昇降式の水門の昇降扉の昇降装置には、ラックピンを有するラック棒を昇降扉に接続し、そのラック棒とピニオンギアの噛み合いによって昇降駆動するものが多く用いられる。従来のラック棒は、軸方向に一体的な構造を持ち、屈折あるいは屈曲するようには構成されていなかった。したがって、ラック棒は昇降扉の上昇位置においては、昇降距離だけ昇降装置から上方向に突出することになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のラック棒による昇降装置では、昇降装置の上部に昇降距離だけのスペースを必要とし、ラック棒のカバーを設ける場合にもラックカバーが上部に長く突出するため余分なスペースを必要とする。これらの昇降装置を建屋の中に設ける場合には、余分なスペースのためにスペース効率が低下したり、建屋の建築費が増加したりしていた。昇降装置を屋外に設ける場合や、ラックカバーを建屋から突出して設ける場合にも、ラックやラックカバーが上方に高く突出するため、落雷を受ける可能性が高くなり、落雷による破損事故が懸念される。また、周囲の景観に対する違和感が増し、景観を阻害することにもなる。
【0004】そのような理由により、ラック棒をチェーン状の構造とし、昇降装置の上部に突出するラック棒は円弧状に屈折させてコンパクトに格納することが考えられるが、単にラック棒をチェーン状の構造にしただけでは次のような問題がある。つまり、水門の扉を下降させるときに、扉に対し下方向の力を加えなくてはならない場合がしばしば生じる。水圧、異物等により扉が重力だけでは下降しない場合である。その場合、ラック棒を介して扉を下方向に駆動しなくてはならないが、このときに、単なるチェーン状の構造ではラック棒が屈折してしまい、扉に下方向の駆動力が伝達しない。したがって、昇降装置の下側の部分のラック棒は屈折してはならず、直線状の剛体として機能しなくてはならない。
【0005】そこで、本発明は、昇降装置より上部では屈折状態、昇降装置より下部では非屈折状態となり、余分なスペースを必要とせず、落雷や景観阻害を起こしにくい屈折式ラック棒を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明における屈折式ラック棒は、水門の扉等を昇降させるために扉等に接続され、側板に一定のピッチでラックピンを設けたラック棒であって、ラック棒の軸線方向に複数個の部分側板を連接し、それぞれの部分側板を一定の方向に屈折するように互いに枢着してなる側板と、部分側板の連接部の近傍に設けられ、互いに隣接する部分側板を屈折しないように拘束する拘束位置と、部分側板を屈折可能とするような非拘束位置とに可動に設けられた拘束金具と、拘束金具に設けられ、外部の係合部材と係合することにより拘束金具を拘束位置と非拘束位置とに切り換える切換係合部とを有する。
【0007】また、上記屈折式ラック棒において、前記拘束金具は、隣接する部分側板を枢着する枢着軸とは異なる軸の回りを揺動可能に設けることが好ましい。
【0008】また、上記屈折式ラック棒において、前記拘束金具は、部分側板の連接部に隣接するラックピンの一方に揺動可能に設けられており、連接部に隣接するラックピンの他方に係合する係合凹部を有するものであることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の屈折式ラック棒を使用した昇降式水門扉の昇降装置全体図である。扉4は図示しない昇降ガイドに沿って昇降移動可能に設けられ、下降位置では水門を水密状態に閉鎖し、上昇位置では水門を開放する。扉4にはラック棒1が接続されており、昇降装置3内のピニオンギア31を回転駆動することにより、ピニオンギア31に噛み合うラック棒1を上下に駆動し、扉4を昇降させる。ラック棒1は、軸方向に複数に分割されており、互いに屈折可能に枢着されている。
【0010】昇降装置3の上部には、ラック棒1を円弧状に屈折して案内する円弧状のラックガイド2が設けられている。ラックガイドの内部のピニオンギア31近傍には、ラック棒1を屈折可能状態と屈折不可能状態とに切り換える作動ピン21が設けられている。また、ラックガイド2内部に適宜の間隔でガイドローラ22が設けられており、ラック棒1を滑らかに円弧状に案内移動する。
【0011】図2、図3は、ラック棒1の構成を示す拡大図である。図2はラック棒1を側板の側から見た図であり、図3はラック棒1を蝶番14の側から見た図である。ラック棒1の側板は軸方向に複数個の部分側板11に分割されている。部分側板11の長さはラックピン12のピッチの数倍程度、例えば5ピッチ分の長さである。複数の部分側板11は蝶番14によりラック棒1の軸方向に接続されている。部分側板11は蝶番14の回動軸の回りに回動して互いに屈折することが可能である。
【0012】部分側板11には複数個のラックピン12が設けられており、左右の部分側板11が互いに結合されている。蝶番14に隣接して蝶番14の上部に位置するラックピン121と下部に位置するラックピン122は、左右の部分側板11を貫通して部分側板11の外側に突出している。その上部のラックピン121には、拘束金具13が取り付けられており、拘束金具13は部分側板11に対して揺動可能に設けられている。
【0013】図4は、拘束金具13の構成を示す図である。拘束金具13は、ラックピン取付穴133によりラックピン121に取り付けられる。ラックピン取付穴133の直下には係合凹部134が設けられ、係合凹部134によりラックピン122をフック状に保持する。扉4を上昇させる場合にラック棒1に働く引っ張り力は拘束金具13を介してラックピン121からラックピン122に伝達され、蝶番14には直接働くことはない。拘束金具13の蝶番14側の側面には作動突起131が設けられている。作動突起131の上部には上部平坦部132が設けられている。作動突起131と上部平坦部132は、作動ピン21と係合して拘束金具13を、互いに隣接する部分側板11を屈折しないように拘束する拘束位置と、部分側板11を屈折可能とするような非拘束位置とに切換作動させるためのものである。
【0014】図5は、ラック棒1を上昇させて扉4を開く場合の、拘束金具13の切換動作を示す図である。図5(a)は、ラック棒1のラックピン12に噛み合うピニオンギア31によって、ラック棒1が上方に駆動されている図であり、拘束金具13は係合凹部134によりラックピン122を保持して、ラック棒1のこの接続部分を直線状に保つ拘束位置にある。
【0015】図5(b)では、ラック棒1がさらに上方に駆動され、ラックガイド2に設けられた作動ピン21に拘束金具13の作動突起131が係合し、作動ピン21により拘束金具13が押されて右回りに揺動されて、拘束金具13の係合凹部134からラックピン122が外れる。拘束金具13のこの位置はラック棒1のこの部分が屈折可能となる非拘束位置である。図5(c)は、ラック棒1がさらに上方に駆動された図であり、ラックガイド2に案内されて円弧状のラックガイド2に沿った形状にラック棒1のこの接続部分が屈折する。ラック棒1は蝶番14の回動軸を中心に回動することによって屈折する。
【0016】図6は、ラック棒1を下降させて扉4を閉じる場合の、拘束金具13の切換動作を示す図である。図6(a)は、ラック棒1のラックピン12に噛み合うピニオンギア31によって、ラック棒1が下方に駆動されている図であり、拘束金具13は非拘束位置にある。ラック棒1の接続部分はラックガイド2に沿った形状に屈折している。
【0017】図6(b)では、ラック棒1がさらに下方に駆動され、ラックガイド2に誘導されて接続部分が直線状に戻される。そして作動ピン21が拘束金具13の上部平坦部132に係合する。拘束金具13はこのとき非拘束位置にあり上部平坦部132は傾斜した状態にある。この位置からラック棒がさらに下降すると、図6(c)のように、上部平坦部132が作動ピン21に押動され、拘束金具13は揺動されて拘束位置となる。
【0018】ラック棒1の接続部分の拘束金具13が拘束位置となると、接続部分が蝶番14を中心に回動して屈折しようとしても、拘束金具13に引張り力が働くが、拘束金具13がピン121とピン122を保持しており、ピン121とピン122との距離は変化しないのでラック棒1が屈折することはない。したがって、水門の扉4の案内部に異物等が挟まる等して扉4に下方向の駆動力を加える場合にもラック棒1は屈折することなく直線状を保ち、駆動力の伝達が確実に行える。
【0019】図7は、図1のA−A矢視断面図であり、ラックガイド2における作動ピン21の配置を示すものである。作動ピン21は、ラックガイド2の昇降装置3の近傍部分に設けられており、ラック1の両側板側のラックガイド2の側壁に1つずつ固定されている。作動ピン21の長さは拘束金具13にのみ係合して、ラック棒1の側板までは到達しない長さとする。したがって、作動ピン21が蝶番14に当たることはない。
【0020】図8は、図1のB−B矢視断面図であり、ラックガイド2におけるガイドローラ22の配置を示すものである。ガイドローラ22は、ラック棒1の側板を支持し、ラック棒1を円弧状に屈折した状態に案内する。
【0021】なお、この実施の形態では、拘束金具13は揺動するものを用いたが、往復直線移動するもの等を用いることもできる。拘束金具13が揺動するものにおいては、ラック棒1の部分側板同士の枢着軸と、拘束金具13の揺動中心軸とが異なる軸であれば拘束作用が生じる。しかし、この実施の形態のようにラックピンを揺動中心とするのが構成も簡単になり好ましい。
【0022】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0023】昇降装置より上部のラック棒は屈折状態として、円弧状のラックガイド内にコンパクトに収納できるため、余分なスペースを必要とせず、また、落雷による事故を減少させることができ、景観を阻害することもなくなる。
【0024】昇降装置より下部のラック棒は非屈折状態となり、直線状を保つ剛体として機能し、水門の扉等を効率的に下方向に駆動することができる。
【出願人】 【識別番号】000168193
【氏名又は名称】株式会社ミゾタ
【出願日】 平成8年(1996)6月14日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
【公開番号】 特開平10−1931
【公開日】 平成10年(1998)1月6日
【出願番号】 特願平8−175629