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【発明の名称】 水蒸発防止用シート
【発明者】 【氏名】近森 芳裕
【氏名】山元 智
【氏名】今井 清史
【課題】例えばダムや貯水池等に溜めた潅漑用水や飲料水が自然蒸発するのを防止するために使用する水蒸発防止用シートに係り、対紫外線耐久性を改善して長期間良好に使用することのできる水蒸発防止用シートを提供する。

【解決手段】上記のような水蒸発防止用シートであって、可視光線または紫外線に対する反射性に優れた表皮層1aが発泡シートよりなる浮遊層1bに積層された構造からなることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ダムや貯水池等の水面に浮設することにより水の自然蒸発を防止するために使用する水蒸発防止用シートであって、可視光線又は紫外線に対する反射性に優れた表皮層が発泡シートよりなる浮遊層に積層された構造からなることを特徴とする水蒸発防止用シート。
【請求項2】 前記表皮層が多孔質延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)シートである請求項1に記載の水蒸発防止用シート。
【請求項3】 前記表皮層が金属光沢を有するプラスチックシートか、又は金属箔である請求項1に記載の水蒸発防止用シート。
【請求項4】 前記金属光沢を有するプラスチックシートがアルミニウムをメッキしたポリエステルフィルムシートである請求項3に記載の水蒸発防止用シート。
【請求項5】 前記水蒸発防止シートの略全面に多数の小さな貫通孔を有することを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の水蒸発防止シート。
【請求項6】 前記水蒸発防止シートに、該シートの移動を防止する固定手段を設けてなる請求項1、2、3、4または5に記載の水蒸発防止シート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、例えばダムや貯水池等に溜めた潅漑用水や飲料水が自然蒸発するのを防ぐ水蒸発防止用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】上記のような貯水池、特に南方の島々の貯水池では、水面からの蒸発による逸水を少しでも防止したいという要望がある。その対策として従来貯水池の水面上に水蒸発防止用シートを張ることが提案されている。
【0003】例えば、特開昭50−97130号公報は、耐劣化性、耐候性、耐熱性等いわゆる耐久性を有するシート幕の裏面に浮性骨杆を縦横に又は縦若しくは横方向に適当な間隔をおいて取付けるか、又は、合成樹脂発泡体等の比重の軽い材質を裏面全体に張設することにより、該シート幕を開張して水面を覆うようにして浮設することを提案している。該シート幕には耐劣化性、耐候性、耐熱性等の条件に適する強力なものが好適な性状である旨が開示されており、その具体的な素材の種類については言及していない。また、該発明は太陽熱や風力による自然蒸発を最小限に食い止めることに主眼を置いており、水中生態系に対する影響についてはまったく言及していない。
【0004】また、特開平4−131417号公報は、上記のような水蒸発防止用シートとて発泡ポリエチレンなどのシートを用いて水面を被覆することを提案している。該発明は、具体的なシート幕材として発泡ポリエチレンを挙げ、発泡ポリエチレンが、自体軽量で水に浮くこと、変質しにくく半永久的な耐久性があること、水・空気を通さないこと、柔軟で取扱いやすいこと、などの利点があるため水蒸発防止シートとして用いるのに好適であることを強調している。すなわち、発泡ポリエチレンに代表される発泡シート材をそのまま水蒸発防止用シートとして用いることを提案しており、このような水蒸発防止シートはそれ自体軽量柔軟であるため、シート幕展張の際の取扱いが容易である効果を強調している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、これらの先行技術においていまだ解決されていない技術的課題は以下の通りである。例えば、発泡ポリエチレンに代表される通常の発泡材料の紫外線耐久性や耐候性は、長期間の屋外使用に耐えるほどに良好とはいえないのが実状である。このため、シート幕自体の耐久性をいかにして向上するかが水蒸発防止シートにおいて解決されるべき技術的課題となっていた。本発明は、このような浮材として用いられる発泡シート材の対紫外線耐久性の改善という従来技術が有する前記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、浮材として用いられる発泡シート材の対紫外線耐久性を改善した水蒸発防止シートを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、水蒸発防止シートの耐久性の向上という従来技術の課題を解決するものである。すなわち、本発明は、この技術課題を解決するために、以下に説明するように、発泡シート材の大気側表面に表皮層としてそれ自身耐候性に優れ、光線又は紫外線の反射に優れるフィルム材料を発泡シート材表面に積層固定することにより、紫外線耐久性に劣る発泡シート材を保護してその水蒸発防止シートとしての耐候性を向上したものである。また、本発明は、それ自身耐候性に優れ、光線又は紫外線の反射に優れるフィルム材料として、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE。なお単にPTFEというときはポリテトラフルオロエチレンを意味するものとする。)フィルム又は金属光沢を有するプラスチックシート、例えばアルミニウムをメッキしたポリエステルフィルムシート又はアルミニウム箔等の金属箔が表皮層の素材として好適であることを示すものである。
【0007】いま少し具体的に述べると、本発明の水蒸発防止用シートは、真白色のePTFEフィルム又はアルミニウムをメッキしたポリエステルフィルムシートのような金属光沢を有するプラスチックシート又はアルミニウム箔等の金属箔を可視光線又は紫外線に対する反射性に優れた表皮層として、浮遊層である発泡シート材の大気面側に接着、融着などの手段により積層固定したものである。
【0008】本発明においては、上記表皮層にはePTFEフィルムシート若しくは金属光沢を有するプラスチックシート若しくは金属箔が最も好適なものとして用いられる。また、上記浮遊層に用いる発泡シート材は、水と反応(例えば、膨潤)せず、かさ密度が1以下(すなわち、水面に浮く)ものであればその材質を特に指定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチルなどのポリエステル、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリエーテメラミンなどいずれかの単一重合体の樹脂からなる発泡シート又はこれら樹脂を構成する単量体と他の単量体との2種又は数種の組合わせからなる共重合体からなる発泡シートがその代表的なものとして用いられる。
【0009】
【作用】発泡シートよりなる浮遊層の表面に表皮層としてePTFEフィルムやアルミニウムをメッキしたポリエステルフィルムシートのような金属光沢を有するプラスチックシートやアルミニウム箔等の金属箔を積層することにより発泡シート材の耐久性を改善することができる。これは、ePTFEフィルムの真白性やアルミニウムメッキポリエステルフィルムシートやアルミニウム箔等の金属箔の金属光沢が紫外線を反射し、その遮蔽効果が発泡シートの紫外線劣化を著しく低減させるためである。ePTFEは後述するような独特な微細繊維質の構造体であり、その表面積が非常に大きいため、紫外線を含む光線を全反射させる効果が大きく、その結果、下層の発泡シート材を紫外線から保護する効果が特に大きくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明による水蒸発防止用シートを図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。図1は本発明による水蒸発防止用シートを貯水池に設置した状態の縦断面図、図2は水蒸発防止用シートの一部の拡大断面図である。
【0011】図において、1は貯水池Aの水面上に設置した水蒸発防止用シートで、該シート1は大気側に位置する表皮層1aと水側に位置する浮遊層1bとよりなる。表皮層1aは、ePTFEフィルム若しくはアルミニウムをメッキしたポリエステルフィルムシートのような金属光沢を有するプラスチックフィルム若しくはアルミニウム箔等の金属箔である。
【0012】特に、ePTFEフィルムは柔軟性にも優れしかも軽量で、接着、融着等による発泡シート材との積層加工も容易であり、しかも着色ができるため、本発明の水蒸発防止シートの表皮層として最も好ましい素材である。
【0013】上記ePTFEフィルムは、例えば特公昭53−39719号、特公昭51−18991号等に記載される製法により製造され、その微細構造も該製法とともに公知である。具体的には、該ePTFEフィルムは、基本的にPTFEファインパウダーと石油ナフサ等の潤滑助剤の混合物からなるペースト成形体をダイを経て押し出した後、得られたテープ状押出物を、加熱することによって潤滑助剤を蒸発除去した後、PTFEの融点以下の高温で1軸若しくは2軸方向以上に延伸することにより製造される。また、延伸により発生した微細構造を固定し、寸法安定性を向上するために、延伸後延伸状態を固定したままPTFEの融点以上の温度に加熱してから冷却する焼成処理がなされることもある。しかし、本発明におけるePTFEフィルムにあっては、最後の焼成処理は必ずしも必須の処理ではない。
【0014】このようにして製造されるePTFEフィルムは、純白色でマシュマロのような感触があるきわめて柔軟な感触のフィルムである。このフィルムを電子顕微鏡で観察すると、その表面及び内部ともフィブリル(小繊維)とそれらを繋ぐノード(結節)から形成されとり、独特の繊維質の多孔質体構造からなることがわかる。ePTFEは、これらフィブリルとノードとによって仕切られた「孔」と称する空間が構造内部に存在し、それらの空間(空孔)はフィルムの表面から裏面まで連続しているために通気性を有することになる。なお、このフィブリル/ノード構造は延伸方向及び延伸倍率によってその構造形態は変化する。例えば、1軸方向に延伸すると、フィブリルは1方向に配向したすだれ状になり、それらフィブリルを繋ぐノードは延伸方向に直角に細長い島状のものとして観察される。一方、2軸方向に延伸すると、フィブリルは放射状に広がり、それらを繋ぐノードは島状というよりむしろ細かい粒子状のものとして観察される。また、延伸倍率を大きくすると、フィブリルは長くなり、相対的にノード形状は小さくなり、究極的にはフィブリルのみからなるいわゆるノードレス構造になる。ePTFEフィルムのかさ密度は純粋なPTFE充実体の密度より小さく、空孔率にもよるが、多くは水の密度より小さい。従って、ePTFEフィルムを本発明の水蒸発防止シートとして用いた場合、浮遊層の浮力を損なうことがないという利点を有する。
【0015】上記ePTFEは純粋なPTFEからなり、その構造を特徴づけているフィブリルもノードもいずれもPTFEである。PTFEは化学的に極めて安定な樹脂であり、耐候性、耐紫外線性、耐熱性、耐寒性、耐水性等に優れた材料として周知である。したがって、ePTFEは本質的にPTFEそのものであり、その優れた化学的安定性を備えており、空気によって酸化されることもなく、紫外線に対しても耐久性がある。また、PTFEは自然界では合成されないためバクテリアによる侵食も受けない。
【0016】しかも、ePEFEは、際だった純白色を呈しており、紫外線に対して優れた遮蔽効果を有する。これは、ePTFEの微細多孔質構造に由来する全反射現象によるものと考えられる。一方、PTFE充実体フィルムは透明かスリガラス様の乳白色を呈するので紫外線を透過しやすく、そのために紫外線遮蔽効果においてePTFEフィルムに比べて劣る。
【0017】また、PTFEは、他の物質との親和性がなく、一般に接着しにくい材料と考えられているが、ePTFEは多孔質構造であるためにいわゆるアンカー効果によって接着、融着等が容易である。
【0018】また、ePTFEフィルムはマシュマロのような感触があり、接触する他の物体の形状にいかようにも沿わせることができる可塑的性質が強い。PTFEは一般に剛直なポリマーとされているが、ePTFEの柔軟な性質はその独特な繊維質構造によるものと考えられている。従って、ePTFEフィルムと発泡シート材と積層しても、発泡シートの伸縮に対しても容易に追随することができ、カーリングを生じにくい性質を有している。もっとも、その繊維質構造はすべてのノードがフィブリルによって結合された一体構造からなる網目構造であるため、変形に対してきわめて穏やかな弾性回復力も有しており、そのことが適度な積層加工しやすさの原因にもなっている。
【0019】本発明における表皮層1aの厚みは3〜300μmの範囲にあることが望ましい。これは、表皮層にePTFEフィルムを使用した場合を基準として定めたものであるが、水蒸発防止シートとしての生産性とのコストバランス、及び、紫外線遮蔽性、耐久性等の実効果を考慮すると、より好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜100μmの範囲の厚みが望ましい。なお、この厚みは、特にePTFEフィルムの場合について定義すると、ダイヤルゲージで測定した平均厚み(テクノロック社製1/1000mmダイヤルシックネスゲージを用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した場合)をいう。厚みが3μm未満のときは、充分な機械的強度や耐久性が得られず、しかも積層加工も困難になる。逆に、300μmを越えると、生産性が悪く、材料費も高くなるためコスト面で妥当とは言えなくなる。
【0020】表皮層1aの色調は、美的若しくは環境雰囲気の観点から適宜選択すればよいが、一般に濃い色よりも白色や金属色の方が太陽光や紫外線をよく反射し、蒸発防止用シートの表面温度も夏季でも比較的低く保つことができるため浮遊層1bの熱劣化を軽減することができるので好ましいと考えられる。表皮層1aとしてePTFEフィルムを使用すると、このフィルムは真白色であるため太陽光や紫外線をよく反射し、夏季でも蒸発防止用シートの表面温度を60℃前後に押さえ、水蒸発を有効に押さえて発泡シート材の劣化を防止することができる。
【0021】環境雰囲気の観点から、真白色や金属光沢の刺激的な色、外観が嫌われる場合は、着色したePTFEフィルムを用いればよい。ePTFEを着色する方法としては、ePTFE製造のPTFEファインパウダーへの助剤混合時に予め顔料を混入しておきePTFEの空孔に顔料を埋没させる方法、フィルムを形成した後に溶剤系の顔料を塗布することによって溶剤の浸透を利用してePTFEの空孔に顔料を埋没させる方法、フィルムを形成後にそのフィルムを顔料浴にディップし顔料をフィルムの空孔に埋没させる方法、等が挙げられる。
【0022】次に、浮遊層1bとしては水に浮く発泡シート材であれば適宜使用できるが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリウレタン又はメラミンなどの単一重合体からなる樹脂又はこれらの樹脂を構成する単量体と他の単量体からなる共重合体からなる発泡シートがその例として挙げられる。なかでも、ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィンのフォームシートが耐水性に優れ、コストが安価であることから、最も好ましいものである。
【0023】浮遊層1bの厚みは、ポリエチレンフォームシートを例にとると、1〜50mmの範囲のものが好ましい。加工性、コスト等を考慮すると、2〜10mmのものが好ましい。1mm未満であると浮力及び機械強度的に不十分であり、逆に50mmを越えると可撓性、可搬性に劣り、コスト及び重量が大きくなるので好ましくない。
【0024】ポリエチレンフォームシートの発泡倍率は特に制限されるものではないが、5〜50倍、更には10〜40倍のものが必要な浮力の面から適切である。発泡倍率が小さすぎると固くなり、巻き取りが困難になって連続的な積層加工が難しくなる。発泡倍率が大きくなると製造が困難になるほか、機械的強度が不足して取扱いが困難になる。これらを考慮するとポリエチレンフォームシートの発泡倍率は10〜40倍のものが好ましいということになる。
【0025】表皮層1aと浮遊層1bの積層は、表皮層1aと浮遊層1bを完全に一体化できる方法であれば接着加工であれ、融着加工であれ適宜使用できるが、蒸発防止用シートが水上に浮かべられ、自然環境に暴露された極めて厳しい環境で使用されることから、接着剤を使用しない融着加工がより好ましい。発泡シートであればフレームボンディング加工が適用できるため、融着加工が容易である。また、表皮層1aとしてePTFEフィルムを使用すれば、発泡シート材とのフレイムボンディング加工が容易にできる利点がある。
【0026】ポリエチレンフォームシートとePTFEフィルムをフレームボンディング加工で融着する場合を例に挙げると、ポリエチレンフォームシートを炎で炙った直後に、このポリエチレンフォームシートの炎で炙った面とePTFEフィルムを圧着することにより、炎で溶けたポリエチレン樹脂がePTFEフィルムの微細孔内に入り込み、ポリエチレン樹脂の一部がePTFEの構造内に浸透した状態で固化する、いわゆるアンカー効果によって、強固にかつ長期間安定に密着接合した状態が維持されることになる。
【0027】魚類や微生物などの水中生物や植物等の水中の生態系を考慮する必要がある場合は、水蒸発防止シートの略全面に多数の小径の貫通孔を有するものを用いるか、有しないものにあっては、適宜の手段で貫通孔を穿孔すればよい。それらの貫通孔のシート面に対する開孔率は、蒸発防止用シートの使用環境により適宜選択すればよいが、現実的には80%以下、更には50%以下、更に好ましくは30%以下であることが望ましい。開孔率が80%を越えると機械的強度が不十分となり、取扱いや施工が難しくなるとともに、水蒸気の透過も大きくなって本発明の目的を達成できないことととなる。要するに開孔率は水中生態系への影響がない範囲で、水蒸気透過速度と空気透過速度のバランスに立って、水蒸気透過を有効に低減できる範囲で決定されることになる。
【0028】次に、本発明に係る水蒸発防止シートの具体的な使用形態若しくは使用方法の例を述べる。上記表皮層1aと浮遊層1bとからなる水蒸発防止用シート1全体の平面形状や大きさ等は適宜であるが、例えば上記水蒸発防止用シート1を予め所定の大きさの方形状に形成して貯水池の水面上に縦横に並べて設置する。あるいは上記水蒸発防止用シート1を予め所定の幅(例えば1〜10m程度)の長尺帯状に形成して、これを貯水池の長さ寸法等に合せて所定の長さに切断し、これを幅方向に複数枚並べて設置して貯水池の略全面を覆うようにすればよい。
【0029】表皮層1aと浮遊層1bとを一体的に接合してなる水蒸発防止用シート1を、図1及び図2に示すように貯水池Aの水面上に設置することで、主として発泡シート材よりなる浮遊層1bの浮力によって水蒸発防止用シート1が常時水面上に浮いた状態で該水面を覆い、該水面からの蒸発を低減することができる。また、浮遊層1bの上面に耐候性を有する表皮層1aを設けたことで、該表皮層1aはもとより浮遊層1bが太陽からの紫外線等で劣化・損傷するのが防止される。特に上記実施形態のように表皮層1aとしてePTFEフィルムを用いた場合は、前述のように耐候性はもとより紫外線遮蔽性、耐熱性、耐寒性、耐水性、柔軟性等の種々の優れた特性を有するため、設置する地域の天候や気温等の如何に拘らず耐久性のよい水蒸発防止用シートを提供する。
【0030】なお、上記のようにして貯水池の水面上に設置した水蒸発防止用シート1は、風や波で移動しないように適宜固定手段を設けるのが望ましい。図1および図2はその固定手段として、コンクリートブロック等の重錘2を用いたもので、その重錘2を貯水池Aの底部の所望の位置に沈め、その重錘2と水蒸発防止用シート1とをワイヤロープ等の索条3で連結した構成である。
【0031】その索条3の下端は、図3に示すように重錘2に埋め込んだ逆U字状の係止杆2aに連結され、索条3の上端は止め具4を介して水蒸発防止用シート1に固定されている。その止め具4は図1ないし図3においては上部にフランジ部4aを有する鋲形に形成して軸部4bを水蒸発防止用シート1に突き刺し、その軸部4bに形成した係止孔4cに索条3を挿通して連結した構成である。4dは軸部4bに形成した抜け止め用の凹凸状である。
【0032】上記の止め具4の形状等は適宜変更可能であり、例えば図4に示すようにフランジ部4aに肉抜き孔4eを形成してもよい。また例えば図5に示すように、上記と略同様に構成した止め具4と共に、一端にフランジ部5a、他端に索条3の係止孔5bを有するアイナット状の受け具5を用いてもよい。その受け具5は、上部に止め具4の受孔5cが形成され、その受孔5cに止め具4の軸部4bを差し込むことによってフランジ4a・5a間に水蒸発防止用シート1を挟持させる構成である。
【0033】さらに例えば図6に示すように止め具4の軸部4bに雄ねじ4fを形成してフランジ6a付の筒状のナット6にねじ込むことによって両フランジ4a・6a間に水蒸発防止用シート1を挟持させると共に、上記ナット6の下端にアイボルト7をねじ込み、そのアイボルト7の係止孔7aに前記の索条3を連結することもできる。
【0034】また水蒸発防止用シート1を現地に搬送する場合には、例えば前記の方形のシートにあっては複数枚積み重ねた状態で搬送すればよく、また長尺帯状に形成したシートにあっては、例えばロール状に巻き取った状態で現地に搬入し、そのロール状に巻き取ったシート1の一端側を水面上に順次繰り出しながら設置することができる。
【0035】さらに水蒸発防止用シート1を貯水池の水面上を移動させるに当たって、該貯水池の面積が大きくて陸上からの設置が困難な場合には、例えば図7に示すようにボートB等で曳航して設置すればよい。図中、8は曳航用のロープ、9はそのロープ8を水蒸発防止用シート1に連結するためのブラケットで、該ブラケット9は図8に示すように上下一対の添板91・92間に水蒸発防止用シート1を挟んでフランジ付のボルト93・ナット94で締付け固定した構成である。
【0036】また上記のようにして貯水池の水面上に配置した水蒸発防止用シート1は、その隣り合うシート間に隙間が生じたり、互いに重なり合ったりしないように適宜の連結手段で互いに連結固定するのが望ましい。その連結手段は適宜であるが、例えば図9および図10に示すような、かすがい10等を用いると、シート1に突き刺すだけで容易に連結することができる。
【0037】〔実施例1〕本発明による水蒸発防止用シートの浮遊層1bとして古河電気工業株式会社製の独立気泡性ポリエチレンフォームシート(30倍発泡品、厚み10mm、クリーム色)を使用した。また表皮層1aとしては、未着色で白色のePTFEフィルム(厚み60μm、最大孔径0.2μm)を使用した。
【0038】本発明の水蒸発防止用シートを得るために、上記浮遊層1bを構成するポリエチレンフォームシートに、表皮層1aを構成するePTFEフィルムをフレームボンディング加工により積層固定した。すなわち、ポリエチレンフォームシートを炎で炙り、その炎で炙った面にePTFEフィルムを圧着することにより両層を融着固定した。加工スピードは5m/minとした。
【0039】なお本実施例で用いたePTFEフィルムの紫外線遮蔽率を紫外線カット素材の加工効果統一評価方法(日本化学繊維検査協会)により測定したところ86%であった。
【0040】〔比較例1〕上記実施例1に対する比較例1として上記浮遊層1bと同材質の古河電気工業株式会社製の独立気泡性ポリエチレンフォームシート(30倍発泡品。厚み10mm、クリーム色)のみを水蒸発防止用シートとして用いた。
【0041】以下に本発明による実施例1と比較例1の耐候性を比較評価した結果を示す。試験方法はJIS Z 2381に基づく屋外暴露試験により、上記実施例1および比較例1による水蒸発防止用シートの試料を2年間の屋外に露呈して暴露試験を行った。その結果、2年後の各シートを観察したところ、比較例1のシートは、表面が脆化し、樹脂の劣化が著しく、強度の低下が顕著であったのに対し、実施例1の積層シートは表皮層1aのePTFEフィルムに劣化は全く認められず、積層シートとしての強度低下もわずかであり、積層面での剥がれもなく良好な状態であった。
【0042】以上の結果から、本発明によればePTFEフィルムよりなる表皮層1aの紫外線遮蔽効果により、ポリエチレンフォームシートよりなる浮遊層1bの紫外線による劣化が良好に防止され、浮遊層1bの耐候性を必要かつ充分なレベルにまで改善されることが確認できた。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の水蒸発防止用シートは、紫外線遮蔽効果と耐候性に優れたePTFEフィルムシート若しくはアルミニウムをメッキしたポリエステルフィルムシートのような金属光沢を有するプラスチックフィルムシート若しくはアルミニウム箔等の金属箔よりなる表皮層1aに、発泡シートよりなる浮遊層1bを接着又は融着により積層固定したものからなる。表皮層1aはそれ自体耐候性に優れ紫外線を遮蔽するため、下層の浮遊層1bの発泡シートの紫外線劣化を防止することができ、同時に長期間の使用に耐えうる水蒸発防止用シートを提供する。
【0044】なお、これらの水蒸発防止シートの全面に多数の小孔径の貫通孔を設けるのもよい。この場合、水中の生態系の生存を維持しながら、空気透過と水蒸気透過のバランスの下に、ダム、貯水池等の水資源蒸発による水の逸失を防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000107387
【氏名又は名称】ジャパンゴアテックス株式会社
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
【出願日】 平成8年(1996)6月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
【公開番号】 特開平10−1930
【公開日】 平成10年(1998)1月6日
【出願番号】 特願平8−177340