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【発明の名称】 ゴム製防舷材
【発明者】 【氏名】中村 昌弘
【課題】船舶の接岸の際のエネルギ−を吸収するゴム製筒型防舷材やV型防舷材にて代表される圧縮中に座屈現象を起こす座屈型防舷材の改良に係る。

【解決手段】外面及び内面が共に略円錐台形をなしたゴム支承部と、当該ゴム支承部の台面に形成したゴム受衝部と、前記ゴム支承部の底面に形成される取付部よりなり、ゴム支承部外面の座屈周ラインに隣接又は近接した領域の一方又は両側に外方に張り出すゴム肉盛部を設けたことを特徴とするゴム製防舷材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 外面及び内面が共に略円錐台形をなしたゴム支承部と、当該ゴム支承部の台面に形成したゴム受衝部と、前記ゴム支承部の底面に形成される取付部よりなり、ゴム支承部外面の座屈周ラインに隣接又は近接した領域の一方又は両側に外方に張り出すゴム肉盛部を設けたことを特徴とするゴム製防舷材。
【請求項2】 ゴム支承部内面の座屈周ラインに隣接又は近接した領域に内方に張り出すゴム肉盛部を設けた請求項第1項記載のゴム製防舷材。
【請求項3】 ゴム支承部の少なくとも外表面が取付面に向かって末広がり状に拡径した曲面で構成された請求項第1項記載のゴム製防舷材。
【請求項4】 ゴム受衝部内に円板状若しくは円環状剛性板材が埋設され、ゴム取付部内に円環状剛性板材が埋設された請求項第1項記載のゴム製防舷材。
【請求項5】 ゴム支衝部外面の座屈周ラインのゴム取付部からの位置h1 は、防舷材の高さHに対して、h1 =0.6H〜0.95Hであり、肉盛部の長さl1 はl1 <0.5Hである請求項第1項記載のゴム製防舷材。
【請求項6】 ゴム支承部内面の座屈周ラインの取付部からの位置h2 は、h2 =0.2H〜0.6Hであり、肉盛部の長さl2 はl2 <0.75Hである請求項第2項記載のゴム製防舷材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は船舶の接岸の際のエネルギ−を吸収するゴム製筒型防舷材やV型防舷材にて代表される圧縮中に座屈現象を起こす座屈型防舷材の改良に係るものである。
【0002】
【従来の技術】図1は従来より用いられているゴム製円錐台形筒型防舷材の一部切断側面図であり、この防舷材はゴム支承部12、岸壁との取付部13、受衝部14、そしてこれらの部位に埋設される鉄板15、16よりなっている。しかるに、この防舷材の軸線方向に圧縮して船舶等の接舷エネルギ−を吸収する反力−歪曲線は、図2に示すように歪の増加と共に反力が増大し、極大点(A点)に達した後、歪は増加しているにもかかわらず反力は減少してC点に達し、そして更に歪が加わると反力は急上昇することとなる。このような特性曲線を持つ防舷材にあって、実際上の使用範囲はA点の反力と同一反力B点までの歪範囲とされ、防舷材の吸収エネルギ−はB点までの歪−反力曲線と横軸とで囲まれる面積で表されるが、反力が減少した部分、即ち図の破線ABと曲線A−C−Bとで囲まれた面積の部分Sだけ吸収エネルギ−ロスとなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記のように減少した吸収エネルギ−(S)をできるだけ少なくしたゴム製防舷材を提供することを目的とし、具体的には、ゴム製防舷材のゴム支衝部の座屈変形により発生する反力の落ち込み現象を支衝部の外面座屈ラインに隣接又は近接するように設けたゴム肉盛部の圧縮により反力の落ち込みを防止した高効率の防舷材を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は以上の目的を達成するために次の構成としたものである。即ち、本発明の要旨は、外面及び内面が共に略円錐台形をなしたゴム支承部と、当該ゴム支承部の台面に形成したゴム受衝部と、前記ゴム支承部の底面より取付面に沿って伸びるゴム取付部とよりなり、ゴム支承部外面の座屈周ラインに隣接又は近接した領域の一方又は両側に外方に張り出すゴム肉盛部を設けたことを特徴とするゴム製防舷材にかかるものである。そして、好ましくは、これに更にゴム支承部内面の座屈周ラインに隣接又は近接した領域に内方に張り出すゴム肉盛部を設けるのがよく、更に、前記ゴム支承部の少なくとも外表面が取付面に向かって末広がり状に拡径した曲面で構成された防舷材であるのがよい。
【0005】そして、一般にはゴム受衝部内に円板状若しくは円環状剛性板材が、そして、ゴム取付部内に円環状剛性板材がこれ又埋設されるものがよく、ゴム受衝部内に埋設された円板状鉄板よりゴム支衝部側の外面に座屈周ラインを設けるべきである。
【0006】ゴム支衝部外面の座屈周ラインについて言えば、ゴム取付部からの位置h1 は、防舷材の高さHに対して、h1 =0.6H〜0.95Hであり、更に、ゴム肉盛部の長さl1 は、防舷材の高さHに対して、l1 <0.5Hであることが特によい。一方、ゴム支承部内面の座屈周ラインの取付部からの位置h2 は、h2 =0.2H〜0.6Hであり、この部位の肉盛部の長さl2 はl2 <0.75Hとされるのがよい。
【0007】
【発明の実施の形態】この発明は、座屈型の例えばゴム製筒型防舷材の圧縮変形の実際を詳細に観察した知見に基づくものである。従来の防舷材では、歪量が前記した図2のA、Bの間にある場合には、歪量が増加するに従い、図3の矢印の如く変形が進行する。このとき反力は一旦ピ−ク(極大点・A点)に達した後、B点に至るまでに大きく落ち込むことになる。図3の従来形の防舷材の変形より分かるように、図2のA、B間における反力の落ち込みは外面の座屈周ラインP(更には内面座屈周ラインLとの共同によって)における座屈変形の過程で生じており、図3の第1及び第2ステップでは座屈周ラインPをはさんだ支衝部外面で接触していないことが分かる。
【0008】そこで、本発明にあっては、ゴム支承部の外面の座屈周ラインPをはさんだ領域の一方若しくは両方にゴム肉盛部9を備え、A−B間で積極的に接触圧縮域を増やすことにより反力を増やすこととしたものである。従って、本発明の筒型防舷材は図4の矢印の順の如く圧縮変形が進行するに従い、座屈周ラインPをはさんだ外面領域相互が徐々に接触圧縮し、接触圧縮域が拡大していくことによる圧縮反力で、A、B間の反力の落ち込みを補償できることとなったのである。
【0009】本発明のゴム製防舷材にあっては、ゴム支承部の外面に形成したゴム肉盛部9によって外面の座屈周ラインPが常に一定の位置に特定されるのに対し、従来の防舷材はこの座屈周ラインPが特定されていないケ−スがあり、このため製品ロットによって或いは同一の製品でも圧縮する度に座屈周ラインPの位置が異なり反力特性がばらつくことがある。本発明のゴム肉盛部9の形成はこの欠点をなくしたものであり、反力のばらつきも小さくするものである。
【0010】又、本発明の防舷材にあっては、ゴム支承部の外面にゴム肉盛部9を形成して積極的に座屈周ラインPを設けたものであるが、岸壁面への取付に供されるゴム中に埋設された鉄板の埋設部位よりも遠隔部にこの座屈周ラインPを形成することにより、ゴム中に埋設された鉄板に応力が集中するのを防止でき、鉄板とゴムとの接着面の剥離やゴム切れが防止され耐久性の向上が図られることとなる。
【0011】尚、ゴム肉盛部9の起点(即ち座屈周ラインPとなる部位)は、ゴム支承部の傾き角度やゴム受衝部の高さ等によって異なるが、通常はh1 =0.6H〜0.95Hの範囲が好ましい。又、ゴム肉盛部9の長さl1 を余り長くすると、変位量が多く取れなくなり、反力が早く増加に転ずるので好ましくなく、通常はl1<0.5Hの範囲である。ゴム肉盛部9の高さは防舷材の大きさ、ゴム肉盛部9の長さ、ゴム支承部の厚さ等によって適宜選択されることとなる。一方、ゴム支承部内面の座屈周ラインLに肉盛部を形成する場合にはこの座屈周ラインLの取付部からの位置h2 は、h2 =0.2H〜0.6Hであり、この部位の肉盛部の長さl2 はl2 <0.75Hとされるのがよい。
【0012】
【実施例】以下、本発明のゴム製の筒型防舷材を図面をもって更に詳細に説明する。図5は本発明の実施例をなす筒型防舷材1の半裁断面図であって、2は内外面共に円錐台形をなす防舷材の本体であるゴム支承部、3は岸壁等へ固定するためのゴム取付部、4は船舶の方へ突き出すゴム受衝部である。そして、このゴム受衝部4には直接船舶の接舷を受ける受衝板(図示せず)を固定するものである。又、ゴム受衝部4には補強をなす円環状の鉄板5が埋設されており、これに図示しない雌ねじが刻設され、これを利用して受衝板が固着されることとなる。そして、前記ゴム取付部3にはこれを補強する円環状の鉄板7が埋設されており、これには岸壁等へ固定されるボルト或いはアンカ−(図示せず)が貫通するためのして固定に供されるボルト孔8が設けられている。
【0013】ゴム支承部2の外面に形成した座屈周ラインPは、受衝板に接舷等の負荷がかかった際の座屈部であり、この例における防舷材1の寸法的に言えば、防舷材1の高さをHとすると、座屈周ラインPの位置h1 は取付部3よりほぼ0.8Hの部位にあって、この座屈周ラインPが座屈の起点となりゴム支承部2が外方に大きく膨らみ、座屈を起こして負荷を吸収することとなる。尚、座屈周ラインPは上下に2個所発生する。
【0014】さて、かかる防舷材1にあって、この座屈周ラインPに隣接した領域の片側にゴム肉盛部9(l1 =1/3・H)を設けたものである。従って、かかる防舷材1が接舷等の荷重を受けて圧縮変形し、この座屈周ラインPにて折れ曲がる如く変形した場合、ゴム肉盛部9が設けられているため、座屈周ラインPをはさんだ両側の面が従来の防舷材では接触し得なかった部分で前記した図4にて示したように接触し、有効な反力を発生することとなる。即ち、図2に示した歪−反力曲線において、本発明の防舷材1は歪A、B間での反力の落ち込みが少なく、これがほぼ水平に推移(破線)するので、吸収エネルギ−の増大が図れることとなったのである。尚、この例では上方に位置する座屈周ラインPの片側に肉盛部9を形成したが、下方に位置する座屈周ラインPにも同様に肉盛部を形成することができることは当然であるし、場合によっては、これらの座屈周ラインPをはさんで両側に肉盛部9を形成することもできる。
【0015】尚、この座屈周ラインPは補強のための鉄板5、7が埋設された部位よりやゝ内側に形成したもので、座屈周ラインPはゴム支承部2の内面の座屈周ラインLと共働して防舷材1の座屈起点をなし、埋設された鉄板5、7とゴムとの接触面の剥離やゴム切れの防止能が発揮されるものである。
【0016】図6は本発明の第2の実施例をなす筒型防舷材1の半裁断面図であって、符号1〜9、P等は上記例と同じ意味を示すためここでは省略する。さて、ゴム支承部2の内面には座屈周ラインLが生じるが、この座屈周ラインLをはさんで前記の肉盛部9と同様に肉盛部90 を形成した例である。尚、この座屈周ラインLにおけるh2 は1/3・H、肉盛部90 におけるl2 は0.5Hであった。
【0017】この実施例の防舷材にあっては、受衝時に図7に示すように各座屈周ラインP、Lにおける座屈に対しても空間を生じることがなくほぼ全面で接触することとなり、図2で言う面積Sが極めて小さくなり、エネルギ−ロスが著しく改良されたものとなった。
【0018】
【発明の効果】本発明にあって、座屈時の座屈周ラインP近傍における空域部を積極的になくすものであって、このため、反力−歪曲線にあって反力の低下を生ずることもなくなりすぐれた防舷材が提供できることとなったものである。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成8年(1996)6月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 悦郎
【公開番号】 特開平10−1927
【公開日】 平成10年(1998)1月6日
【出願番号】 特願平8−174145