トップ :: E 固定構造物 :: E02 水工;基礎;土砂の移送

【発明の名称】 石詰篭製河川用護岸壁
【発明者】 【氏名】白 井 諄 一
【課題】石詰篭を使用して、水制効果及び自然景観に勝れた河川用護岸壁を形成する。

【解決手段】直方体状をした複数の石詰篭2Aを、水流4に対して斜めに配設することにより、角部6を河川3の中央に向けて突出させた状態で該河川に沿って並設すると共に、上下に複数段重積する。これにより護岸壁1Aの壁面を凹凸状に形成して、水制効果を高めると共に、自然に近い景観を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも一つの角部を有する複数の石詰篭を、それぞれ角部を河川の中央に向けて突出させた状態で該河川に沿って並設すると共に、上下に複数段重積してなることを特徴とする石詰篭製河川用護岸壁。
【請求項2】直方体状をした複数の石詰篭を、それぞれ水流に対して斜めに配設することにより、角部を河川の中央に向けて突出させた状態で該河川に沿って並設すると共に、上下に複数段重積してなることを特徴とする石詰篭製河川用護岸壁。
【請求項3】請求項1又は2に記載の護岸壁において、上下複数段のうちの少なくとも一部の段において、上記石詰篭が、上方のものほど後方に位置するように前後に位置をずらして配設されているもの。
【請求項4】請求項2に記載の護岸壁において、各石詰篭が、軸線を水流に直角な方向より下流側に傾けて配設されているもの。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石詰篭により形成される河川用護岸壁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、河川工事の主眼は、降雨による増水や洪水等による被害を最小限に抑えるため、水流を如何に円滑且つ迅速に海まで導いて排水させるかということに置かれており、このため河川の両岸は、コンクリートやブロック等で築堤することにより、水流の障害となる湾曲部分や凹凸部分が少ない滑らかな護岸とするよう努力が続けられてきた。ところが最近では、人間生活と調和する豊かな自然の保全と創造という考え方が発達し、これに基づく多自然型河川工法が導入されるようになり、河川工事の主眼は、河川が本来有している生物の良好な成育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全あるいは創出することに置かれるようになった。具体的には、河川の曲線部分を過度に短絡化することを避けるとか、川幅については、標準断面を設定したうえで、一律な川幅にするのを避けるとか、護岸工事では、水理特性や背後地の状況等を十分踏まえたうえで、生物の良好な成育環境と自然景観の保全及び創出に配慮した工法を選択するというような方向付けがされた。そして、このような多自然型河川工法に適するものとして、じゃかご等の石詰篭が次第に見直されつつある。この石詰篭は、屈撓性や透水性及び緩衝性に勝れており、しかも自然石を使用するものであるため、生物の良好な成育環境を確保することができると同時に、美しい自然景観を保全あるいは創出することができるという利点を有する。ところが、石詰篭を使用した従来の河川工法は、複数の石詰篭を河川に沿って直線状又は曲線状に滑らかに並設していたため、水の流速を緩和する水制効果に乏しく、従って護岸の侵食防止効果や、生物の生存域又は避難域となる緩流部を形成する効果が、想像以上に低いという問題があった。しかも、自然な堤防とは異なって護岸が単調であり、自然景観の保全及び創出という点においても十分とは言えなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主たる課題は、石詰篭を使用して、水制効果及び自然景観に勝れた河川用護岸壁を形成することにある。本発明の他の課題は、水流により石詰篭が移動したり脱落することのない、強度の大きい護岸壁を形成することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明によれば、少なくとも一つの角部を有する複数の石詰篭を、それぞれ角部を河川の中央に向けて突出させた状態で該河川に沿って並設すると共に、上下に複数段重積してなる石詰篭製河川用護岸壁が提供される。また、本発明によれば、直方体状をした複数の石詰篭を、それぞれ水流に対して斜めに配設することにより、角部を河川の中央に向けて突出させた状態で該河川に沿って並設すると共に、上下に複数段重積してなる石詰篭製河川用護岸壁が提供される。
【0005】上記構成を有する本発明の護岸壁によれば、石詰篭の角部を河川の中央に向けて突出させた状態で各石詰篭を設置することにより、その壁面を凹凸状に形成しているため、川岸近くにおいては、上記壁面の凹凸により水の流れの方向が変えられたり水流が緩和されるなどして勝れた水制効果が得られ、護岸の侵食防止効果が高まるばかりでなく、突出する角部の下流側が生物の生存域又は避難域としての緩流部となるなど、生物の良好な成育環境も確保される。また、護岸壁の壁面を凹凸に形成することにより、滑らかな直線状又は曲線状をした単調な壁面からは得られない、自然に近い変化に富んだ景観を得ることができる。しかも、石詰篭の角部を河川の中央に向けて突出させるという非常に簡単な手段によって、凹凸の壁面を持った護岸壁を確実に形成することができ、その凹凸面の形状も、石詰篭の向きや相互の位置等を調節することによって種々のものに設定することができる。
【0006】本発明の具体的な構成態様によれば、重積した複数段の石詰篭のうち少なくとも一部の段における石詰篭が、上方のものほど後方に位置するように前後に位置をずらして配設されている。本発明において好ましくは、直方体状をした各石詰篭が、軸線を水流に直角な方向より下流側に傾けて配設されていることである。これにより、水流が石詰篭の突出する角部より上流側の側面に衝突すると、この側面には水流による押圧力が作用するが、その分力は石詰篭の軸線方向に作用するため、該石詰篭は軸線方向即ち護岸壁の奥方向に押されることになる。このため、石詰篭は川岸に強く押し付けられて安定状態を保ち、水流に押されて移動したり脱落するようなことがない。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するに、図1乃至図3は本発明の第1実施例を示すもので、この実施例の護岸壁1Aは、直方体状をした角形の石詰篭2Aにより形成されている。上記石詰篭2Aは、菱形金網や熔接金網などの金網素材により形成し、その内部に自然石を充填したもので、複数の石詰篭2Aを、河川3の川岸に、水流4に対して軸線5を斜めに傾けて配設することにより、角部6を河川3の中央に向けて突出させた状態で該河川3に沿って左右に並設すると共に、上下に複数段重積したものである。これにより護岸壁1Aの壁面は、実質的に鋸歯状をした凹凸面に形成される。
【0008】上記各石詰篭2Aは、図2から分かるように、軸線5を水流4に直角な方向より下流側に向けて傾けて配設されており、また、上下の石詰篭2Aは、上段のものが下段のものの真上に位置するように配設されると共に、一部又は全部の段において、上段の石詰篭2Aが下段の石詰篭2Aより軸線5方向後方側に所要距離だけ後退して位置するように配設されており、これによって護岸壁1Aに、必要な傾斜が付けられている。上記各石詰篭2Aは、上下及び左右の隣接するもの同士を適宜手段によって相互に連結しておいても良い。また、上記壁面の鋸歯形状は、隣接する石詰篭2Aの軸線方向の位置を調節することにより、護岸壁1A全体としてほぼ均一な形にすることも、非均一な形にすることもできる。
【0009】上記構成を有する護岸壁1Aは、各石詰篭2Aの角部6を河川3の中央に向けて突出させることにより、その壁面を実質的に鋸歯状をした凹凸面としているため、川岸近くにおいては、上記凹凸によって水の流れの方向が変えられたり、流速が緩和されるなど、勝れた水制効果が得られると共に、水流4が角部6に衝突することによって乱流化し、空気を取り込んで撹拌されることにより、勝れた浄化作用も得られる。特に、突出する角部6の下流側の凹部7は、小さいながらも湾処を形成し、その部分では流速が小さいため、水草や小魚などの生存域又は避難域となるなど、生物の良好な成育環境が確保される。しかも、水制により流速が緩和されることで、護岸の侵食防止効果も高まることになる。
【0010】また、上記石詰篭2Aを、その軸線5を水流4に直角な方向より下流側に傾けて配設してあるため、突出する角部6より上流側の側面に水流4が衝突すると、この側面には水流4による押圧力が作用し、その分力が石詰篭2Aの軸線5方向に作用することになる。このため、該石詰篭2Aは軸線5方向即ち護岸壁1Aの奥方向に押圧され、この結果、該石詰篭2Aは川岸に強く押し付けられて安定状態を保ち、水流4に押されて移動したり脱落するようなことがない。更に、護岸壁1Aの壁面を凹凸に形成することにより、滑らかな直線状又は曲線状をした単調な壁面からは得られない、自然に近い変化に富んだ景観を得ることができる。
【0011】なお、上記実施例では、石詰篭2Aを水流4に直角な方向より下流側に傾けて配設しているが、水流4による押圧効果を特に必要としない場所等においては、上流側に傾けて配設しても良い。また、石詰篭を上流側又は下流側に傾ける角度も、45度である必要はなく、それ以上であってもそれ以下であっても良い。更に、上下段の石詰篭2Aは、上段のものが下段のものの真上に位置するように配設しているが、上段の石詰篭2Aを下段の石詰篭2Aの隣接する2つに跨がって位置するように配設することもできる。
【0012】図4は本発明の第2実施例を示すもので、この実施例では、長方形の短辺を外方に向けて山形に突出させたような変則6角形の平面形状をした石詰篭2Bを使用して、護岸壁1Bを形成している。この場合、各石詰篭2Bは、軸線を水流4とほぼ直角に向けて配設すると共に、上段の石詰篭2Bを、下段の石詰篭2Bの隣接する2つに跨がって載置するように配設している。もちろん、この第2実施例においても、各石詰篭2Bを、第1実施例のように水流4に対して上流側又は下流側に傾けて設置することもでき、あるいは、上段の石詰篭を下段の石詰篭の真上に載置しても良い。
【0013】なお、本発明において使用し得る石詰篭の形状は、上記各実施例に示されたものに限定される訳ではなく、平面視正方形や三角形など、他の任意の角形をした石詰篭を使用することができる。要するに、少なくとも1つの角部を有する石詰篭であれば良いのである。また、上記各実施例の石詰篭は、金属素材からなる金網を使用して形成しているが、例えば強化プラスチックのような非金属製素材からなるネットを使用して形成することもできる。勿論、金属線条をプラスチックで被覆した被覆線条を使用して形成することもできる。更に、必ずしも同一形状及び同一規格の石詰篭を使用して護岸壁を形成する必要はなく、異種形状又は異種規格の石詰篭を混用することもできる。
【0014】
【発明の効果】このように本発明によれば、少なくとも一つの角部を有する複数の石詰篭を、角部を河川の中央に向けて突出させた状態で該河川に沿って左右に並設すると共に、上下に複数段重積するという簡単な工法により、水制効果及び自然景観に勝れた河川用護岸壁を形成することができ、これにより、護岸の侵食防止効果を高め得ると同時に、生物の良好な成育環境も確実に確保することができる。また、直方体状をした各石詰篭を、軸線を水流に直角な方向より下流側に傾けて配設することにより、水流による押圧力を有効に利用して該石詰篭を安定的に設置することができる。
【出願人】 【識別番号】390006116
【氏名又は名称】瀬戸内金網商工株式会社
【出願日】 平成8年(1996)6月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏 (外1名)
【公開番号】 特開平10−1925
【公開日】 平成10年(1998)1月6日
【出願番号】 特願平8−172937