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糸条用熱処理装置及び同熱処理装置からの汚物除去方法 - 特開平10−317246 | j-tokkyo
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【発明の名称】 糸条用熱処理装置及び同熱処理装置からの汚物除去方法
【発明者】 【氏名】櫻井 良樹
【氏名】鈴木 昌也
【課題】合成繊維を接触させて加熱処理する熱ローラー等の表面に堆積した汚物を、大型の装置を使用せずに効率よく容易に除去することができ、しかも、布地に有機溶剤やカセイソーダ水溶液等の化学物質を含浸させる必要もなく、また高温の加熱状態にある熱ローラー等の拭き取り作業がなく、作業者の危険性が少ない安全に汚物を除去できる糸条用熱処理装置及び同装置から汚物を除去する方法を提供する。

【解決手段】合成繊維に熱延伸や熱固定等の加工を施す際に使用される糸条用熱処理装置において、前記合成繊維を接触加熱する熱ローラー及び/又は加熱板の表面に厚みが0.1μm〜100μmでダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施す。前記熱ローラー等から汚物を除去するには、同熱ローラー等を加熱処理後に加熱処理温度よりも低い温度に冷却し、前記熱ローラー等の表面のダイヤモンドライクカーボン薄膜と汚物との収縮特性の差を利用して前記熱ローラー等の表面に対する汚物の密着力を低下させた後、前記表面を布地等で拭き取り汚物を除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成繊維を接触加熱する熱ローラー及び/又は加熱板を備え、合成繊維に熱延伸や熱固定等の加工を施す糸条用熱処理装置であって、前記熱ローラー及び/又は加熱板の表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施されてなることを特徴とする糸条用熱処理装置。
【請求項2】 前記ダイヤモンドライクカーボン薄膜加工の厚みが0.1μm〜100μmである請求項1記載の糸条用熱処理装置。
【請求項3】 合成繊維を接触加熱する熱ローラー及び/又は加熱板を備え、合成繊維に熱延伸や熱固定等の加工を施す糸条用熱処理装置にあって、前記熱ローラー及び/又は加熱板の表面に付着した汚物を除去する方法において、前記熱ローラー及び/又は加熱板の表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施されてなり、合成繊維の加熱処理後に、その表面を布地等で拭き取り、同表面に付着する汚物を除去することを特徴とする糸条用熱処理装置からの汚物除去方法。
【請求項4】 前記加熱処理後の熱ローラー及び/又は加熱板を加熱処理温度よりも低い温度に冷却した後、その表面を布地等で拭き取り汚物を除去する請求項3記載の汚物除去方法。
【請求項5】 前記熱ローラー及び/又は加熱板を加熱処理温度の7割以下の温度に冷却する請求項4記載の汚物除去方法。
【請求項6】 前記布地等に水分を含浸させて前記熱ローラー及び/又は加熱板の表面を拭き取る請求項3〜5のいずれかに記載の汚物除去方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばポリアミド繊維やポリエステル繊維等の合成繊維に熱延伸や熱固定等の加工を施す際に使用される糸条用の熱処理装置、及び同熱処理装置において前記合成繊維を接触加熱する熱ローラー及び/又は加熱板の表面に付着した汚物を除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えばポリアミド繊維やポリエステル繊維等の合成繊維からなる糸条に熱延伸や熱固定等の加工を施す際に用いられる熱ローラーや加熱板は、硬質クロムメッキ、セラミックコーティング等の表面処理が施され、通常80℃〜240℃に加熱されている。その表面には処理糸条の溶融残留物や各種添加剤等の汚物が付着しやすく、それらの汚物を除去するには、有機溶剤及び/又はカセイソーダ水溶液等の化学物質を含浸させた布地等により、熱ローラーや加熱板を加熱したままの状態で拭き取る方法が用いられてきた。
【0003】この方法によれば、繊維自体及び繊維に付与される油剤に関連した有機系の汚物は分解除去できる。しかしながら、熱ローラーや加熱板の表面に頑固に付着しているポリマーの触媒残渣等に起因する無機系の汚物は、布地に含浸させた上述のような有機溶剤等では分解除去しにくく、確実に且つ効果的に拭き取ることは困難であり除去効果は低い。更には、熱ローラー等を加熱したままの状態でカセイソーダ水溶液を含浸させた布地を使用した場合、カセイソーダ水溶液の水分が蒸発してカセイソーダ粉体が清掃後の熱ローラー等の表面に残り、新たな汚物として繊維の劣化を招くこととなる。
【0004】また、作業環境の清潔さと作業者の安全性の点からも、従来の方法のように熱ローラー等を加熱した高温の状態で、しかも有機溶剤やカセイソーダ水溶液等の化学物質を使用して作業することは危険性を伴い好ましくない。
【0005】これらの問題を解決した汚物除去方法として、チップ状のドライアイスを専用のガンから圧空を用いて熱ローラーや加熱板の清掃面に噴射衝突させ汚物を除去する方法が提案されている。また、特公昭49−48657号公報及び特公平7−111015号公報にはスプレーガンを用いて同スプレーガンの噴射口から微小な水滴を混合した気体を噴射する汚物除去方法が開示されている。これらの汚物除去方法の原理は、ガンから噴射される微小なチップまたは水滴が、加熱された高温の熱ローラー等の表面に衝突する際、瞬時に昇華または気化して熱交換がなされる際に発生されるエネルギーを利用して汚物を除去するものである。
【0006】しかしながら、この程度のエネルギーでは上述したような有機系の汚物は除去できるものの、頑固に付着した無機系の汚物に対しては除去効果が小さく、完全に除去することは困難である。また、この方法を適用するための装置は非常に大掛かりなものとなり、コスト高を招く結果になる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる問題点を解決すべくなされたものであり、その具体的な目的は、合成繊維を接触させて加熱処理する熱ローラーや加熱板の表面に堆積した汚物を、大型の装置を使用せずに効率よく容易に除去することができる糸条用の熱処理装置及び同装置からの汚物除去方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、有機溶剤やカセイソーダ水溶液等の化学物質を使用することなく、また、熱ローラーや加熱板を高温の加熱状態にある環境下での作業をする必要がなく作業者に危険が伴うことがなく、安全に汚物を除去することのできる熱処理装置及び同装置からの汚物除去方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明者らは高価で大掛かりな装置を必要とせず、更には有機溶剤やカセイソーダ水溶液等の化学物質を使用することない糸条用の熱処理装置及び同装置からの汚物除去方法について鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0009】すなわち、本発明は、合成繊維を接触加熱する熱ローラー及び/又は加熱板を備え、合成繊維に熱延伸や熱固定等の加工を施す糸条用熱処理装置であって、前記熱ローラー及び/又は加熱板の表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施されてなることを特徴とする糸条用熱処理装置を主要な構成としている。
【0010】なお、前記熱ローラ等にダイヤモンドライクカーボン薄膜加工を施す方法はCVD(ケミカルべーパーデコンポジション)法による特開平2−243781号公報、特開平2−125864号公報及び特開平8−53769号公報等に記載されている薄膜成形方法を用いて行うことができる。この方法は、1×10-2Torr以下の高真空に保たれたチャンバー内に、プラズマ反応管、炭化水素系ガス供給装置を備え、50Vのバイアス電圧を印加した基材にプラズマ分解された炭化水素ガスを連続蒸着させる方法である。
【0011】前記ダイヤモンドライクカーボン薄膜加工の厚みは、0.1μm〜100μmが好ましい。より好ましくは、前記厚みは0.5μm〜30μm、更には、0.5μm〜30μmであることが好ましい。
【0012】更に本発明は、合成繊維を接触加熱する熱ローラー及び/又は加熱板を備え、合成繊維に熱延伸や熱固定等の加工を施す糸条用熱処理装置にあって、前記熱ローラー及び/又は加熱板の表面に付着した汚物を除去する方法において、前記熱ローラー及び/又は加熱板の表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施されてなり、合成繊維の加熱処理後に、その表面を布地等で拭き取り、同表面に付着する汚物を除去することを特徴とする糸条用熱処理装置からの汚物除去方法を他の主要な構成としている。
【0013】本発明において、加熱処理後とは、糸条等の熱処理工程が完了し、或いは熱処理工程途中の糸条の切断等により、糸条の処理を停止した状態にあることを意味する。本発明によれば、ガンから溶剤を吹き付けるといった作業もなく、高価で大掛かりな格別の汚物除去用装置も不要であるため、コストを増加させることもない。
【0014】なお、本発明は熱ローラー等の表面材質がダイヤモンドライクカーボン薄膜であることが重要であり、熱ローラー等の母材は、ダイヤモンドライクカーボン薄膜をコーティングできる材質であれば特に制限はない。ダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施された熱ローラー等の表面を布地等で拭き取ると、その表面に付着した無機系の汚物をも除去することができる。
【0015】もちろん、熱ローラー等の表面を拭き取る布地等に、有機溶剤やカセイソーダ水溶液等の化学物質を含浸させることもでき、その場合には、より容易に無機系の汚物を除去することが可能である。
【0016】更に本発明は、前記加熱処理後の熱ローラー等を加熱処理温度よりも低い温度に冷却した後、その表面を布地等で拭き取り汚物を除去することが好ましい。熱ローラー等を冷却する場合には、有機溶剤やカセイソーダ水溶液等の化学物質を使用する必要はなく、更には熱ローラー等を冷却することで作業者が火傷等の負傷をする危険性も軽減され、作業の安全性が向上する。
【0017】この場合にも、熱ローラー等の表面材質がダイヤモンドライクカーボン薄膜であることが特に重要である。本発明は、ダイヤモンドライクカーボン薄膜及び汚物の温度による収縮特性の差を利用し、熱ローラー等を冷却することで付着している汚物の前記熱ローラー等の表面に対する密着力を低下させている。そのため、汚物を布地等の柔らかい器具で容易に拭き取ることができる。
【0018】これに対して、従来よく用いられる硬質クロムメッキやセラミックコーティング等の他の材質では、その表面を低温まで冷却しても十分な汚物除去効果を得ることはできない。そのため熱ローラー等の表面に汚物が残り、この汚物残渣が原因して単繊維切れ等の製糸性の悪化や染斑異常等の糸品質の低下を招くこととなる。
【0019】更に、前記熱ローラー等を加熱処理温度の7割以下の温度に冷却することが好ましく、その場合には、冷却された熱ローラー等の表面と汚物との密着力が更に低下し、汚物がより剥がれやすくなる。
【0020】また、汚物を除去する際に使用する布地には水分を含浸させることが好ましい。布地に水分を含浸させると、その水分により汚物の熱ローラー等に対する密着力を更に低下させることができ、より容易に汚物を除去できる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、実施例及び比較例を参照しながら具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例及び比較例における糸条を処理する際の熱ローラーへの適用に限定されるものではなく、ポリアミド繊維や他の合成繊維の熱処理に使用される熱ローラーや加熱板にも適用可能である。
【0022】以下の実施例及び比較例にあっては、糸条用熱処理装置としてポリエチレンテレフタレート繊維の加熱延伸装置を使い、同装置に設置される熱ローラーとしては、それぞれの表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜加工、硬質クロムメッキ加工及びセラミックコーティング加工を施したローラーを使った。
【0023】更に、本実施例及び比較例においては、酸化チタンを0.4%含有したポリエチレンテレフタレート繊維を熱ローラーで加熱延伸した。この加熱延伸を10日間連続運転すると、熱ローラーの表面には繊維及び繊維に付与された油剤の熱分解に起因する有機系汚物、及びポリマーの触媒残渣に起因する無機系汚物が付着した。この熱ローラーの表面をそれぞれ所定の条件に従って、水分を含有する布地を用いて拭き取り汚物除去作業を施した直後に所定の汚物除去作業の直後に延伸熱ローラーを目視で観察した。その結果を汚物除去効果として下記の4段階の判定基準に基づいて評価した。
【0024】(汚物除去効果)
4:延伸熱ローラー上に汚物の残留が全くないもの3:延伸熱ローラー上に汚物の残渣が僅かに認められるもの2:延伸熱ローラー上に汚物が多く見られるもの1:延伸熱ローラー上に汚物が極めて多く見られるもの。
【0025】[実施例1〜6]ダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施された熱ローラーを使用し、この熱ローラーの表面温度を表1に示す温度まで自然放冷した後、汚物除去作業を行った。表1から明らかなように、熱ローラーの表面温度を加熱処理温度の7割以下に冷却すれば、汚物は非常に簡単に除去できた。なお、加熱処理温度の7割の温度に冷却されていれば、略完全に汚物を除去することができる。また、汚物除去直後の前記熱ローラーによる製糸性及び糸品質は非常に安定しており、汚物除去が満足できるレベルにあることが確認できた。
【0026】[比較例1]実施例1〜6と同一のダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施された熱ローラーを使用し、この熱ローラーを冷却せずに熱処理温度のままで、汚物除去作業を行った。熱ローラーの表面温度が加熱処理温度と同一で、全く冷却されていない状態では、汚物除去効果は低く、また、洗浄直後の製糸性および糸品質は不安定であった。なお、実施例5と比較例1とは拭き取り時の熱ローラー温度は殆ど同一であるにもかかわらず、比較例1では汚物除去効果が低い。このことから、汚物除去効果は熱ローラーの加熱処理温度と拭き取り温度との温度差に関係し、熱ローラーの拭き取り時の温度のみに関係するものではないことが確認できる。
【0027】[比較例2]実施例1〜6と同一のダイヤモンドライクカーボン薄膜加工が施された熱ローラーを使用し、この熱ローラーを表1に示す温度まで自然放冷した後、汚物除去作業を行った。比較例1との比較から明らかなように、熱ローラーの表面温度が加熱処理温度よりも低い温度になるまで熱ローラーを冷却することにより、汚物除去効果が高まる。しかしながら、加熱処理温度の7割よりも高い温度であると、汚物は完全には除去することができず、汚物除去効果は十分に満足なものとはいえない。
【0028】[比較例3〜4]硬質クロムメッキ加工が施された熱ローラーを使用して、表1に示す温度まで自然冷却した後、汚物除去作業を行った。加熱冷却温度の7割の温度、更に低い2割の温度まで冷却したが、汚物除去効果は実施例よりも遙かに劣るレベルであった。
【0029】[比較例5〜6]セラミックコーティング加工(Al2 3 /TiO2 =20〜40/80〜60)が施された熱ローラーを使用して、表1に示す温度まで自然冷却した後、汚物除去作業を行った。加熱冷却温度の7割の温度、更に低い2割の温度まで冷却したが、汚物除去効果は不十分であった。
【0030】
【表1】

【0031】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明によれば熱ローラー等の表面にダイヤモンドライクカーボン薄膜加工を施しているため、合成繊維の加熱処理により前記熱ローラー等に付着し堆積した汚物を、従来では除去が困難であった無機系の汚物までをも確実に拭き取ることができる。さらに前記熱ローラー等を冷却することで汚物の除去が容易になり、拭き取り用の布地に有機溶剤やカセイソーダ水溶液等の化学物質を含浸させる必要もなく、また高温の熱ローラーを拭き取る危険な作業もないため、作業者の安全が向上される。また、高価で大掛かりな装置を用いることもなく、コストアップを抑えることができる。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)5月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】野口 武男
【公開番号】 特開平10−317246
【公開日】 平成10年(1998)12月2日
【出願番号】 特願平9−127257