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【発明の名称】 多層複合エアージェット加工糸の製造方法
【発明者】 【氏名】藤原 正幸
【氏名】治田 勝
【課題】布帛にスパン様の毛羽感と膨らみを付与することができ,かつ,多色杢調効果を表現し得る多層複合エアージェット加工糸の製造方法を提供する。

【解決手段】カチオン可染性ポリエステル高配向未延伸糸Aとポリアミド延伸糸Bとを引き揃えて仮撚捲縮加工を施し, 糸長差5%以上の複合捲縮糸Dとする。引き続き,複合捲縮糸Dと単糸繊度3デニール以上のポリエステル系潜在捲縮性複合フィラメント糸Cとを同時にエアージェット加工する。前記エアージェット加工を施すに際し,複合捲縮糸Dの供給量をポリエステル系潜在捲縮性複合フィラメント糸Cの供給量よりも5%以上過供給してエアージェット加工を施し,糸条表面に主として複合捲縮糸Dで構成されたループ毛羽を 100個/m以上形成させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カチオン可染性ポリエステル高配向未延伸糸とポリアミド延伸糸とを引き揃えて仮撚捲縮加工を施し, 糸長差5%以上の複合捲縮糸となし,引き続き,前記複合捲縮糸と単糸繊度3デニール以上のポリエステル系潜在捲縮性複合フィラメント糸とを同時にエアージェット加工するに際し,前記複合捲縮糸の供給量を前記ポリエステル系潜在捲縮性複合フィラメント糸の供給量よりも5%以上過供給してエアージェット加工を施し,糸条表面に主として複合捲縮糸で構成されたループ毛羽を 100個/m以上形成させることを特徴とする多層複合エアージェット加工糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,スパン様の毛羽感と膨らみを有する多層複合エアージェット加工糸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】合成繊維を用いてスパン様の外観,風合を有する嵩高糸を製造する方法は, 数多く提案されている。その中でも,特に梳毛糸の特長とする膨らみ(嵩高)を合成繊維でいかに表現するかという点に重点が置かれ,さまざまな方法が試みられている。
【0003】例えば, 特開平2-99632号公報では,ポリエステル3層構造加工糸の製造方法が提案されており,この方法は,伸度の異なる複数の糸条を流体交絡させた後,仮撚加工を施して伸度差に伴う糸長差を付与し,内層,中層,外層の3層構造を呈する糸条形態とするものである。しかしながら,この方法では,フイラメントが交絡点に拘束されるため,得られる3層構造加工糸に十分な糸長差を付与することができず,膨らみ感が不足しやすいという欠点がある。この欠点を補うために流体交絡を弱くすると,糸長差付与が可能となるが,反面,糸長差付与に伴って内外層糸条間にズレが生じやすくなり,形態堅牢性に欠けるものとなる。
【0004】このように,単に伸度差を利用した同時仮撚加工法で得られる多層構造糸は,糸長差付与が不十分で膨らみ感に欠け,さらに,スパン様のループ毛羽感も付与し得ないものである。
【0005】膨らみを付与する他の方法としては,原糸特性からくる収縮差を利用して膨らみを付与する方法,あるいは流体攪乱処理で糸長差を有効に活かした芯/鞘型の嵩高糸とする方法がある。前者は,布帛にした後の熱処理で収縮差に伴う膨らみを付与するものであり,布帛の組織に拘束されて有効な膨らみ発現が難しい。また,後者の方法は,糸条表面のループ毛羽でスパン様の触感が得られ,さらに,タスラン加工特有の嵩高性を付与し得るので,外観,風合両面から有効な手段であるが,反面,ループやたるみの絡みによって,パッケージからの解舒性や製編織性が低下しやすいという欠点がある。
【0006】このタスラン加工の欠点を解消する方法として,例えば,特開昭60-94636号公報には,熱収縮性の異なる糸条を用い,ループ毛羽を抑えた芯/鞘型のタスラン加工糸とし,この糸を用いて布帛にした後,熱収縮差を発現させて布帛の表面にループ毛羽を起生させ,毛羽感と膨らみ感を付与する方法が提案されている。この方法では,流体攪乱処理時のループ毛羽発生を抑えるため,芯糸及び鞘糸の過供給率をできるだけ低く設定している。したがって,タスラン加工特有の複雑な屈曲混繊が制約され,構成フィラメントは平行状態に近く,空隙の少ない締まった糸条形態となる。
【0007】このように,構成フィラメント間の空隙が少ない糸条形態では,フィラメントの自由な動きが拘束され,さらに,布帛の組織にも拘束されることで,熱収縮差を有効に発現させることが難しく,布帛に毛羽感や膨らみ感を十分に付与することができないものとなる。
【0008】一方,特開昭60−246829号公報では,染色性の異なる3種の熱可塑性合成繊維糸条を合糸して同時仮撚加工を施し,三層構造の複合加工糸を製造する方法が提案されている。この方法で得られる三層構造糸も,前記した特開平2-99632号公報記載の方法と同様に伸度差に伴う糸長差により捲き付き現象を生じさせた形態であるため,糸長差付与に伴って内外層糸条間にズレが生じやすいという欠点を有している。この三層構造糸は,染色性の異なる糸条で構成されているため,異色染めすれば,多色感を付与することができる。しかしながら,その杢形態は単調な粗杢調を呈するものとなり,エアージェット加工特有の混繊交絡糸に見られる緻密な粗感を付与することができなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記した従来の欠点を解消し,布帛にスパン様の毛羽感と膨らみを付与することが可能であり,かつ多色杢調効果を表現し得る多層複合エアージェット加工糸の製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記の課題を解決するために鋭意検討した結果,染色性が異なり,かつ糸長差を有する2種のマルチフィラメントで構成された複合捲縮糸を鞘側に配し,芯側には,鞘側糸条と染色性の異なる潜在捲縮性複合フィラメントを配するようにエアージェット加工すれば,膨らみと多色杢感を表現することが可能であり,しかも表面に微小ループ毛羽が形成された多層構造の加工糸が得られることを知見して本発明に到達した。
【0011】すなわち,本発明は,カチオン可染性ポリエステル高配向未延伸糸とポリアミド延伸糸とを引き揃えて仮撚捲縮加工を施し, 糸長差5%以上の複合捲縮糸となし,引き続き,前記複合捲縮糸と単糸繊度3デニール以上のポリエステル系潜在捲縮性複合フィラメント糸とを同時にエアージェット加工するに際し,前記複合捲縮糸の供給量を前記ポリエステル系潜在捲縮性複合フィラメント糸の供給量よりも5%以上過供給してエアージェット加工を施し,糸条表面に主として複合捲縮糸で構成されたループ毛羽を 100個/m以上形成させることを特徴とする多層複合エアージェット加工糸の製造方法を要旨とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下,本発明について詳細に説明する。
【0013】本発明では,まず,カチオン可染性ポリエステル高配向未延伸糸(以下,糸条Aという。)とポリアミド延伸糸(以下,糸条Bという。)とを引き揃えて仮撚捲縮加工を施し,糸条Aと糸条Bとの糸長差が5%以上の複合捲縮糸とすることが必要である。
【0014】伸度大なる糸条Aと伸度小の糸条Bに同時仮撚加工を施せば,2糸条間の伸度差に伴い糸長差が付与された複合捲縮糸となるが,本発明では,この糸長差を5%以上とするものである。この2糸条間の糸長差は,糸条Aと糸条Bとの伸度差と仮撚数を適宜選定することにより自由に調整することができ,例えば伸度差を50%以上とし,仮撚係数〔仮撚数(T/m)×繊度(デニール)1/2 〕を20,000以上とすればよい。糸条Aと糸条Bとの糸長差を5%以上とすることで,後のエアージェット加工時の交絡性が向上し,膨らみを有する多層複合エアージェット加工糸を得ることができる。この糸長差が5%未満では,エアージェット加工を施しても多層構造の糸条形態が得られず,従来の2層構造的な糸条形態となり,膨らみ感が不足するので好ましくない。
【0015】次いで, 本発明では,上記で得られた複合捲縮糸と単糸繊度3デニール以上のポリエステル系潜在捲縮性複合フィラメント糸(以下,糸条Cという。)とを同一の流体処理装置に供給してエアージェット加工を施す。その際,複合捲縮糸の供給量を糸条Cの供給量よりも5%以上過供給することが必要である。すなわち,糸条Cを芯側に,複合捲縮糸を鞘側に配するコアーアンドエフェクト加工で芯/鞘構造糸を形成させるものである。したがって,複合捲縮糸の供給量が糸条Cの供給量よりも5%未満の過供給では,芯/鞘構造糸となり得ず,本発明の目的とする多層構造で膨らみのある加工糸は得られない。なお,エアージェット加工に供給する複合捲縮糸と糸条Cとの繊度比は特に限定されるものではないが,膨らみのある加工糸を得るためには,3:1〜1:1が好ましい。
【0016】本発明は,複合捲縮糸の供給量を糸条Cの供給量よりも5%以上過供給することで芯/鞘構造糸が形成され,しかも鞘側の糸条となる複合捲縮糸は,前述したように,5%以上の糸長差が付与されているため,鞘側糸条のみで2層構造の糸条形態を呈している。このため,得られる多層複合エアージェット加工糸は,糸条Cが内層,糸条Bが中層,糸条Aが外層を構成した多層構造の糸条形態となり,さらに内層,中層,外層のフィラメントは,互いに複雑な屈曲混繊で交絡しており,フィラメント間の空隙が高まり,膨らみのある糸条となる。
【0017】一般に,エアージェット加工においては,シングル加工よりもコアーアンドエフェクト加工の方が交絡性が向上し,また,トータル繊度が同じであれば,1本の糸条を加工するより,複数本の糸条を加工する方が交絡性がよくなるという特性を有している。本発明では,このエアージェットの加工特性に着目し,鞘側に配する糸条として前記複合捲縮糸を用いるものである。したがって,従来の芯/鞘構造糸の交絡度合よりさらに高い交絡性が付与され,形態堅牢性に優れた糸条となる。
【0018】また,本発明では,芯側に配する糸条として, 単糸繊度3デニール以上の糸条C(ポリエステル系潜在捲縮性複合フィラメント糸)を用いるので,得られる加工糸を布帛にした後, 熱処理すれば潜在捲縮が顕在化し,布帛のボリューム感をより一層高めることができる。さらに,単糸繊度3デニール以上の太繊度糸を用いることで,布帛に張り,腰を付与することが可能となる。単糸繊度が3デニール未満では,布帛に十分な張り,腰を付与することができない。
【0019】さらに,本発明では,前記のエアージェット加工において,糸条表面に主として複合捲縮糸で構成されたループ毛羽を 100個/m以上形成させることが必要である。このためには,芯糸と鞘糸の供給量差を5%以上,好ましくは10%以上とし,芯糸の過供給率を好ましくは10%以下として,芯糸のループ毛羽が糸条表面に浮き出さない範囲に抑えることが重要である。このような条件下でエアージェット加工することで,主として鞘糸で構成されたループ毛羽が 100個/m以上存在するものとなり,製編織して得られる布帛にスパン調の外観,風合を付与することができる。また,鞘糸となる複合捲縮糸の捲縮作用で,ループ毛羽が緻密化し,解舒性,製編織性を損なうことなく,有効な毛羽感を付与することができる。ループ毛羽が 100個/m未満では,十分なスパン感を表現し得ないので好ましくない。
【0020】本発明で得られる多層複合エアージェット加工糸は,上述した効果に加え,次の効果も得られる。すなわち,糸条A,糸条B及び糸条Cの染色性を異にする3種の繊維で構成されているため,染色時に異色に染めれば多色感を表現することができ,エアージェット加工糸特有の杢調効果と相まって,布帛に多色杢調の外観効果を付与することができる。
【0021】次に,本発明の多層複合エアージェット加工糸の製造方法の一実施態様を図面を用いて説明する。
【0022】図1において,糸条Aと糸条Bは,引き揃えられて第1供給ローラ1で仮撚域に供給され,第1引取ローラ5との間でヒータ3と施撚体4によって仮撚捲縮加工が施され,糸長差5%以上の複合捲縮糸Dとなる。複合捲縮糸Dは,引き続き,芯糸となる糸条Cよりも5%以上過供給して流体処理域に供給され,流体交絡ノズル6に導かれる。
【0023】一方,芯糸となる糸条Cは,第2供給ローラ2から流体処理域に供給され,複合捲縮糸Dとともに流体交絡ノズル6に導かれる。
【0024】糸条C,Dは,流体交絡ノズル6内でエアージェット加工を施され,糸条Cが芯糸,糸条Dが鞘糸となる芯/鞘構造を呈し,糸条Cが内層,糸条Bが中層,糸条Aが外層を構成する多層複合エアージェット加工糸となる。しかも,糸条表面に主として糸条D(複合捲縮糸)のフィラメントで構成された微小ループ毛羽を有する糸条となり,第2引取ローラ7を経て捲取ローラ8によりパッケージに捲き取られる。
【0025】本発明において,エアージェット加工で使用する流体交絡ノズルとしては,糸条に交絡とループ毛羽を形成し得るものであれば,何れのノズルでもよい。また,糸長差(%)は,次のようにして求めた。まず,エアージェット加工を施す前の複合捲縮糸を採取して1mにカットした後,複合捲縮糸を糸条A,Bに分離し,各々0.1g/dの初荷重のもとでその長さa,bを測定し, 次の式により糸長差を求める。これを10回繰り返し, その平均値で表す。
糸長差(%)=〔(a−b)/b〕×100さらに,本発明でいうループ毛羽数とは,毛羽測定器F−インデックス(敷島紡績株式会社製)を用いて測定した数値であり,上記毛羽測定器のゲージを0.3mmに設定してカウントした値である。
【0026】
【実施例】次に,本発明を実施例により具体的に説明する。なお,実施例中における極限粘度〔η〕は,フェノールと四塩化エタンとの等重量混合溶媒を用い,温度20℃で測定した。
【0027】実施例1糸条Aとして,エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし,酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.5モル%共重合した共重合ポリエステルからなるカチオン可染性ポリエステル高配向未延伸糸(150d/48f,伸度 110%),糸条Bとして,ポリアミド延伸糸(70d/68f,伸度50%),糸条Cとして,イソフタル酸8モル%と2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン5モル%を共重合した極限粘度〔η〕0.63のポリエチレンテレフタレートを第1成分とし,極限粘度〔η〕0.53のポリエチレンテレフタレートを第2成分として複合紡糸,延伸して得た,沸水処理後の捲縮率が65%となるサイドバイサイド型の潜在捲縮性複合フィラメント(100d/24f,伸度35%)を使用し,図1の工程に従い,表1の加工条件で仮撚捲縮加工とエアージェット加工を行った。得られた多層複合エアージェット加工糸は,糸条表面に複合捲縮糸のフィラメントで形成された微小ループ毛羽を有し,交絡性に優れた芯/鞘多層構造を呈するものであった。
【0028】この多層複合エアージェット加工糸を経糸, 緯糸に用い,経糸密度55本/2.54cm,緯糸密度50本/2.54cmで平織に製織した。次いで,カチオン染料(ブラウン色),分散染料(ベージュ色)及び酸性染料(ピンク色)を使用して染色仕上げを行った。製織性に問題はなく,表面に均一な微小ループ毛羽が形成され,膨らみのあるスパンライクな外観,風合を有し,しかも多色杢調を呈する織物が得られた。
【0029】比較例1仮撚数とエアージェット加工時の過供給率を表1のように変更する以外は, 実施例1と同様にして仮撚捲縮加工とエアージェット加工を行った。
【0030】
【表1】

【0031】表1から明らかなように,複合捲縮糸における糸条Aと糸条Bとの糸長差が4%と少なく,また,エアージェット加工時の過供給率差が3%と少ないので,得られた加工糸は,芯/鞘構造を呈するものの,糸条表面に存在するループ毛羽が少ないものであった。この加工糸を実施例1と同様にして製織と染色仕上げを行ったが,得られた織物は,多色杢調を呈するものの,膨らみ感やスパンライク感に欠けるものであった。
【0032】
【発明の効果】本発明は,高配向未延伸糸と延伸糸を引き揃えて仮撚捲縮加工を施して複合捲縮糸とし,次いで,潜在捲縮性複合フィラメント糸とエアージェット加工を施すに際し,複合捲縮糸を鞘側に配するので,均一な交絡と微小ループ毛羽を形成した多層複合エアージェット加工糸を得ることができる。
【0033】本発明で得られる多層複合エアージェット加工糸は,製編織性がよくて,織物の経糸や緯糸に使用することが可能であり,製編織して得られる布帛に膨らみ感に富み,スパンライクな外観,風合を付与することができる。また,染色性が異なる3種の繊維で構成されているので,異色染を施せば,多色杢調の外観効果を付与することができる。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)4月30日
【代理人】
【公開番号】 特開平10−310946
【公開日】 平成10年(1998)11月24日
【出願番号】 特願平9−112128