トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 ホットローラの温度制御装置
【発明者】 【氏名】鴛海 幸一郎
【課題】制御用の温度検出素子の異常を検出すると、他の正常な温度検出素子で温度制御を継続し、機械の全体停止時等に点検を可能にするホットローラの温度制御装置を提供する。

【解決手段】ローラの温度を検出する複数の温度検出素子21、22と、温度検出素子21からの出力により加熱手段4を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記温度検出素子21の異常を検知する異常検知手段32と、前記異常検知手段32が特定温度検出素子21の異常を検知すると、他の温度検出素子22の出力を用いて前記加熱手段4の温度制御を継続させる切換手段32とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 加熱手段が内蔵されたローラの外周に糸を巻き付けて案内し、糸に熱を与えるホットローラの温度制御装置であって、前記ローラの温度を検出する複数の温度検出素子と、前記温度検出素子からの出力により前記加熱手段の温度を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記温度検出素子の異常を検知する異常検知手段と、前記異常検知手段が特定温度検出素子の異常を検知すると、他の温度検出素子の出力を用いて前記加熱手段の温度制御を継続させる切換手段とを備えるホットローラの温度制御装置。
【請求項2】 前記異常検知手段及び前記切換手段は、複数の前記温度検出素子に対して共通に設けられている請求項1記載のホットローラの温度制御装置。
【請求項3】 前記異常検知手段は、複数の温度検出素子の出力を比較することにより前記特定温度検出素子の異常を検知する請求項1記載のホットローラの温度制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、外周に糸を巻き付けて案内し、糸に熱を与えるホットローラの温度制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】紡糸巻取機では、高温のローラからなるホットローラを使用し紡出糸を延伸させて巻き取ることが行われる。複数のローラに紡出糸が掛け渡され、それぞれのローラを回転させることによって紡出糸が送りだされる。同時に紡出糸がローラの外周に巻き付けられることによって加熱される。複数のローラの周速が異なると、紡出糸に張力が加わるために加熱された紡出糸が複数のローラ間で延伸され、複数のローラの周速比が延伸比となる。
【0003】このようなローラとして、内部に加熱手段が内蔵され、ローラの外周が一定の温度になるように制御可能なものが使用される。例えば加熱手段は、ローラの回転筒に接近して配設された固定筒の外周に巻かれたヒータであり、このヒータの回りを回転する回転筒を加熱するものがある。このように加熱されたローラの温度を測定するための温度検出素子がローラに取り付けられ、この温度検出素子の出力に応じて前記加熱手段の加熱の程度を制御する。
【0004】温度検出素子は、ローラ外周の回転部に埋設又はローラ外周の回転部に近接して設けられるため、機械的損傷等による異常発生がありうる。温度検出素子に異常が発生すると、ローラの温度が所定値から外れ、所定品質の延伸糸が得られなくなる。そのため、ホットローラの回転を止めて点検することになるが、加熱ローラであるため、停止後の冷却、点検、加熱後の運転再開までに相当の時間が必要になる。また上流側の紡出機からの糸の押し出しを止めずに、下流側だけを止めて点検するため、大量の樹脂が無駄に押し出されることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、一つの温度検出素子に異常が発生しても、直ちに止めることなく運転を継続することができるように、ローラ外周の回転軸基準の対称位置の2か所に温度検出素子を配置し、2か所の温度検出素子の出力を平均化して制御に使用することが行われる。この場合、一つの温度検出素子の異常で出力がゼロになることはないが、出力レベルが低下するなどして、温度制御が正確に行われなくなるという問題点があった。また、2か所の温度検出素子のうち、一つを温度制御用に使用し、他の一つを異常検知用に使用することも行われるが、二つの温度検出素子が別の制御装置に接続されていたため、制御用の温度検出素子が故障した場合、ローラを停止して点検することには変わりなかった。
【0006】本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制御用の温度検出素子の異常を検出すると、他の正常な温度検出素子で温度制御を継続し、機械の全体停止時等に点検を可能にするホットローラの温度制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成する本発明のうち請求項1にかかる発明は、加熱手段が内蔵されたローラの外周に糸を巻き付けて案内し、糸に熱を与えるホットローラの温度制御装置であって、前記ローラの温度を検出する複数の温度検出素子と、前記温度検出素子からの出力により前記加熱手段の温度を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記温度検出素子の異常を検知する異常検知手段と、前記異常検知手段が特定温度検出素子の異常を検知すると、他の温度検出素子の出力を用いて前記加熱手段の温度制御を継続させる切換手段とを備える。
【0008】請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記異常検知手段及び前記切換手段は、複数の前記温度検出素子に対して共通に設けられている。
【0009】請求項3にかかる発明は、請求項1において、前記異常検知手段は、複数の温度検出素子の出力を比較することにより前記特定温度検出素子の異常を検知する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ホットローラの温度制御装置の詳細を説明するまえに、ホットローラが組み込まれたホットローラシステム及びホットローラの構造を図6及び図7により説明する。
【0011】図7(a)はシステムの正面図、同(b)はシステムの側面図である。図において、ホットローラシステムは、第1加熱ローラGR1と第1セパレータローラSR1の1組と、第2加熱ローラGR2と第2セパレータローラSR2の1組とを有してなるものである。図示されない紡糸機から数本(例えば8本)の紡出糸が紡出され、幅Wの横一列の一群YG1となって第1加熱ローラGR1に入る。そして、第1加熱ローラGR1と第1セパレートローラSR1との間で数回巻回される。このとき、一群の紡出糸YG1が第1加熱ローラGR1に対してスムーズに横移動できるように、第1セパレートローラSR1が斜めに配置されている。また、第1加熱ローラGR1を出た一群の紡出糸YG2は第2加熱ローラGR2に入る。そして、第2加熱ローラGR2と斜め配置の第2セパレートローラSR2との間で数回巻回される。そして、第2加熱ローラGR2を出た一群の紡出糸YG3はローラ軸方向に展開され、紡糸巻取機TKで個々のパッケージに巻き取られる。この加熱ローラGR1,GR2間の紡出糸YG2が延伸される。加熱ローラGR1,GR2の周速比が例えばGR2/GR1=1.5であると、加熱ローラGR1,GR2間で1.5倍延伸される。すなわち、延伸比=GR2の周速/GR1の周速である。ナイロンフィラメントやポリエステルフィラメントの紡出糸は周速の異なる加熱ローラGR1,GR2を有するゴデットローラを経ることによって延伸されFDY(Full Draw Yarn)となる。
【0012】図7(b)に示されるように、一群の紡出糸YG1は第1加熱ローラGR1と第1セパレータSR1との間で数回巻回され、つぎに第2加熱ローラGR2と第2セパレータSR2との間で数回巻回されて駆動力が伝達されると共に加熱され、所定の延伸比を維持しながら図示されない紡糸巻取機に至る。この数回巻回された一群の紡出糸と隣の紡出糸との干渉を避けるために、第1加熱ローラGR1上の一群の紡出糸YG1間に一定の距離L1を必要とする。同様に、第2加熱ローラGR2上の一群の紡出糸YG2間にも一定の距離L2を必要とする。この距離L1,L2と巻回数により、第1加熱ローラGR1,第2加熱ローラGR2は一定の長さM1,M2となっている。
【0013】前述した加熱ローラGR1、GR2の構造を図6により説明する。加熱ローラGR1,GR2を構成するホットローラ1は回転されるローラ側と固定されてる側とからなる。固定されている側には、図面左方向の先端が開放され反対方向の基端がモータ部2に固定された中空円筒上のコア3が設けられている。コア3は、非磁性体からなる中空円筒の外周に周方向に所定間隔で複数のフェライト板11を取り付けたものであり、基端から先端まで所定の長さを有し、その間、コア3の外周に固定コイル4が所定のピッチで巻き付けられている。モータ部2には図示されないモータ回転子を備えた回転軸5が設けられている。
【0014】コア3の内側には、コア中空部内に挿通されたローラ軸部6がモータ部2の回転軸5に連結されて設けられている。コア3の外側には、固定コイル4を覆う円筒状のローラ外筒部7が設けられいる。ローラ軸部6の先端とローラ外筒部7の先端とは円盤状のローラ先端部8を介してつながっている。ローラ外筒部7の内側、即ちコイル4に対向する部分には鉄等の誘導加熱体17が設けられ、その他のローラ軸部6、ローラ外筒部7、及びローラ先端部8は軽量化のためアルミ等により一体的に形成されている。この一体的なローラ9の外周に紡出糸が巻き回される。このローラ9を回転駆動する手段は、モータ部2及び図示されない回転数制御回路からなる。
【0015】ローラ外筒部7にはローラ9の温度を検出する第1温度検出素子としての第1温度センサ21と第2温度検出素子としての第2温度センサ22とが回転軸に対して対称な位置に埋め込まれている。この実施形態では第1、第2温度センサ21、22は、ローラ外筒部7の長さ方向ほぼ中央に180°隔てて設けられいる。2個の温度センサ21、22のうち一個は温度制御用に他の一個は異常検知用に用いられる。また回転軸6とモータ部2との間に設けられている軸受10に対する第3温度検出素子としての第3温度センサ23が回転軸6に埋設されている。この第3温度センサ23は軸受10の温度監視用である。
【0016】ローラ先端部8には、回路モジュール12が取り付けられている。第1、第2、第3温度センサ21、22、23の図示されないリード線は回路モジュール12に接続されている。ローラ軸部6内にも回路モジュールからのリード線13が引き出されており、このリード線13はモータ部2の回転軸5内を通ってローラ9と反対側の回転軸端部5aに達している。この回転軸端部5aには光によりデータ通信を行うローラ側光送受信器14が取り付けられている。ローラ側光送受信器14の光軸は回転軸5の中心に一致している。ローラ側光送受信器14の光軸に合わせて固定光送受信器15が設けられている。固定光送受信器15の出力は、温度調整モジュール16に接続されている。
【0017】つぎに、図1乃至図5により、本発明の温度制御装置の本体を説明する。図1は、本発明のホットローラの温度制御装置の機器ブロック図である。
【0018】図1において、4は固定コイル、9はローラ、12は回路モジュール、16は温度調整モジュールである。ローラ9の前述したような回転部分の適所には第1、第2、第3温度センサ21、22、23が埋設され、それらのリード線が回路モジュール12の切換スイッチ25に接続される。
【0019】回転側の回路モジュール12は、切換スイッチ25、増幅器26、波形整形器27、発光ダイオード14、電源回路28とを備えてなる。切換スイッチ25は、第1、第2、第3温度センサ21、22、23の出力の接続を等間隔のタイミングで切り換える機能を有している。また増幅器25は基準となる電圧値(オフセット値)を第1、第2、第3温度センサ21、22、23毎に変更する抵抗切換部26aを有しており、この抵抗切換部26aは前記切換スイッチ25と連動して作動する。各温度センサ21、22、23毎にオフセット値を異ならせ、時分割で出力されるアナログ出力は波形整形器27によって所定の周波数帯域のデジタル信号に変換する。波形整形器27からのパルス信号は光送受信器14である発光ダイオード14から固定光送受信器15に向かって発信される。
【0020】回転側の回路モジュール12からの出力例が図2に示される。第1温度センサ21であるナンバー1Ptの出力は大きめの周波数帯域であり、波形の間隔で出力の大小が判別できる。第2温度センサ22であるナンバー2Ptの出力は中くらいの周波数帯域であり、波形の間隔で出力の大小が判別できる。第3温度センサ23であるナンバー3Ptの出力は小さめの周波数帯域であり、波形の間隔で出力の大小が判別できる。このように各温度センサ毎に周波数帯域を変えると、時分割による連続した信号であっても、各温度センサの出力を区別することができる。
【0021】回路モジュール12は回転側であるため、電源回路28は電磁誘導コイル28aを介して固定側から電力の供給を受け、前述した各回路を作動させる。ただし、各温度センサ21、22、23からの出力を時分割して所定の周波数帯域で出力する構成であるため、回路モジュール12側にはCPUの如き演算機能を有する必要がなく、複数の温度センサの出力を簡単に処理することが可能になる。
【0022】固定側の温度調整モジュール16は、固定光送受信器であるフォトトランジスタ15と、中央演算器(CPU)32、ゲート回路33、サイリスタ(SCR)34とを備えてなる。フォトトランジスタ15からの出力はCPU32に入力され、CPU32はホストコンピュータとの間のシリアル通信で統括される。このCPU32には所定のプログラムが組み込まれており、各温度センサ21、22、23からの出力を区分して判断し、所定の温度設定値と比較しつつ必要な演算処理を施す。またCPU32は、前記演算処理の結果に基づいて、ゲート回路33を介してサイリスタ34を駆動し、ヒータである固定コイル4に供給する電力の位相制御を行うと同時に、必要なアラーム出力や表示を行う。
【0023】図3及び図4はCPU32に内蔵されたプログラムによる演算処理フローを示す。図3において、第1温度センサ21であるナンバー1Ptの出力を抜き出して正常かどうか判断する(ステップ♯1)。異常であると判断すると(ステップ♯1、NO)、異常検知用の第2温度センサ22であるナンバー2Ptを温度制御用に切り換えると同時に(ステップ♯2)、アラーム・表示などを行って切り換えたことをオペレータに知らせる(ステップ♯3)。第2温度センサ22であるナンバー2Ptを温度制御用に切り換えた後も、この第2温度センサ22の出力を使ってローラの温度制御がそのまま実行される(ステップ♯4)。切換後、第2温度センサ22は、温度制御用と異常検知用とを兼ねることになる。そして、定期点検等のように機械全部停止のタイミングに元々の温度制御用の第1温度センサ21を点検する。このように、温度制御用の第1温度センサ21に異常が発生しても、直ちにホットローラを停止することなく、運転を継続できる。
【0024】図4は第1温度センサ21に異常を検出するためのサブルーチンを示す。第1温度センサ21が断線等のように完全に壊れると、抵抗が無限大になって出力がゼロとなるため、簡単に異常が検出できる。ただし、断線に至らないまでも異常値を出力する場合の検出方法を以下に説明する。異常検知用の第2温度センサ22は第1温度センサ21と同条件の場所に設置されているため、同じ出力になるはずであるので、第1温度センサ21の出力t1 と第2温度センサ22の出力t2 との差であるΔtを演算する(ステップ♯11)。Δtが所定の範囲αを越えるかどうか判断し(ステップ♯12)、Δtがα以内であると(ステップ♯13、NO)、第1温度センサ21は正常であると判断する。Δtがαを越えると(ステップ♯13、YES)、軸受温度検出用の第3温度センサ23と異常検知用の第2温度センサ22との出力の相関を検出し(ステップ♯14)、異常検知用の第2温度センサ22そのものが異常でないかどうか判断する(ステップ♯15)。第2温度センサ22が異常でないと(ステップ♯15、YES)、第1温度センサ21が異常であると判断し(ステップ♯16)、第2温度センサ22が異常であると(ステップ♯15、NO)、第2温度センサ22が異常であることを表示する(ステップ♯17)。
【0025】図5は他のホットローラの温度制御装置のブロック図である。図1と異なる点は、第1、第2、第3温度センサ21、22、23が回転側のロータ6ではなく、固定側に設けられている点である。図6のローラ外周部17の端の円周スリット17a内に温度センサの検出端を差し込むことにより、温度制御用と異常検知用の第1、第2温度センサ21、22を固定側に設け、軸受10の外輪側に軸受温度監視用の第3温度センサ23を設けることにより、各温度センサ21、22、23を固定側に設けることができる。
【0026】この場合、温度制御装置としては、図1の固定側温度調整モジュールに相当する温度調整モジュール41があるだけである。この温度調整モジュール41は、A/D変換器42、CPU43、ゲート回路44、サイリスタ45を備えてなっている。第1、第2、第3温度センサ21、22、23からの出力は、A/D変換器42を経て直接CPU43に取り込まれる。そして、図3及び図4で説明したのと同様の処理をCPU43が行って、ゲート回路33を介してサイリスタ34を駆動し、ヒータである固定コイル4に供給する電力の位相制御を行うと同時に、必要なアラーム出力や表示を行う。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように請求項1にかかる発明によると、制御用の特定温度検出素子に異常が発生しても、他の温度検出素子に切り換えるので、継続した運転が可能になる。したがって、温度検出素子の点検のためにホットローラを一時的に停止させ、上流側からの紡糸を吸い取って、点検後に前記紡糸をホットローラから更に下流の紡糸巻取機に糸通しするという面倒な作業を省く事が可能になる。故障した温度検出素子の点検は機械の全停止時のようなメンテナンス時に行えばよい。
【0028】請求項2の発明によると、異常検知手段及び切換手段が中央演算装置のプログラムとして組み込まれ、複数の温度検出素子に共通のものになっているので、中央演算装置のプログラム次第で、複数の温度検出素子からの信号を自在に組み合わせて、温度検出素子の異常検知や、温度検出素子の他への切換を任意に行うことができる。
【0029】請求項3の発明によると、複数の温度検出素子の出力を比較することにより特定温度検出素子の異常を検知するので、簡単な方法で確実な異常検知を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
【出願日】 平成9年(1997)4月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
【公開番号】 特開平10−292239
【公開日】 平成10年(1998)11月4日
【出願番号】 特願平9−96291