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【発明の名称】 導電性繊維の製造方法
【発明者】 【氏名】益田 剛
【課題】芯成分に導電性物質を含有する導電性芯鞘型複合繊維であって、その導電性能が繊維の長さ方向に均一な導電性繊維を安定して製造できる方法を提供する。

【解決手段】芯成分に導電性物質を含有し、該芯成分断面形状が2以上の鋭突部を有する異型断面であり、かつ少なくとも一つの鋭突部での最小厚さが5.0μm以下である芯鞘型複合繊維を、放電加工電極との接触長が0.1〜5.0mmとなるように接触させながら放電加工処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性物質を含有する芯成分と、該芯成分を完全に被覆する繊維形成性ポリマーからなる鞘成分とにより構成され、繊維軸と直交する断面における芯成分の形状が2以上の鋭突部を有する異型断面形状であり、且つ該鋭突部と鞘成分外周とにより形成される鞘成分最小厚さVi のうち少なくとも1つが5.0μm以下である芯鞘型複合繊維を高電圧電極間で放電加工処理する導電性繊維の製造方法において、該複合繊維を高電圧電極に接触させて放電加工処理すると共に、該接触長を0.1〜5.0mmとすることを特徴とする導電性繊維の製造方法。
【請求項2】 高電圧電極と繊維との接触面が曲率半径0.1〜50mmの曲面である請求項1記載の導電性繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芯成分に導電性物質を含有する芯鞘型構造の導電性繊維の製造方法に関する。さらに詳しくは、繊維の長さ方向に導電性能が均一な優れた品質を有する芯鞘型構造の導電性繊維を安定に製造することができる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂は、繊維製品として多くの用途に使用されているが、制電性に乏しいため帯電しやすいという欠点があり、そのため、導電性を付与するための多くの研究がなされてきた。
【0003】例えば導電性物質の粉末を熱可塑性樹脂中に分散させて芯成分とし、繊維形成性ポリマーを鞘成分として芯鞘型複合繊維とする方法があるが、この場合、繊維横断面の芯部間の導電性は良好で問題はないが、鞘成分は繊維形成性に優れているが導電性には劣ったポリマーで形成されているため、表面の電気抵抗値が高く、実質導電性不良となる問題がある。したがって、このように芯部に導電性物質を含有する芯鞘型複合繊維であっても、これを使用した布帛の静電気による不快感(着用衣服の身体へのまつわりつき、脱衣時の放電音、空気中のほこり付着等)は依然として残っていた。
【0004】この問題点を解決するために、特開昭62−53416号公報には導電性物質を芯成分に含有する芯鞘型複合繊維を高電圧電極間で放電加工する方法が提案されている。しかしこの方法では、最近の高性能を要求される導電性繊維として使用するには品質の安定性が不十分である。
【0005】また特開昭63−219624号公報には、導電性物質を含有する芯成分の断面形状が2以上の鋭突部を有する芯鞘型複合繊維を放電加工する方法が提案されている。確かにこの方法によれば、繊維表面の電気抵抗を低くでき、且つ導電性能のバラツキも小さくできるものの、まだ高性能を要求される分野では品質の安定性の面で不十分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、この様な現状に鑑みて行われたもので、その目的は、導電性物質を含有する芯成分と、該芯成分を被覆する繊維形成性ポリマーからなる鞘成分とで構成された芯鞘型複合繊維を高電圧電極間で放電加工するに際し、長さ方向の導電性能が均一な繊維を安定性に製造することができる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために次の構成を採用するものである。すなわち、本発明は、「導電性物質を含有する芯成分と、該芯成分を完全に被覆する繊維形成性ポリマーからなる鞘成分とにより構成され、繊維軸と直交する断面における芯成分の形状が2以上の鋭突部を有する異型断面形状であり、且つ該鋭突部と鞘成分外周とにより形成される鞘成分最小厚さVi のうち少なくとも1つが5.0μm以下である芯鞘型複合繊維を高電圧電極間で放電加工処理する導電性繊維の製造方法において、該複合繊維を高電圧電極に接触させて放電加工処理すると共に、該接触長を0.1〜5.0mmとすることを特徴とする導電性繊維の製造方法。」である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において放電加工処理を施す繊維は、導電性物質を含有する芯成分と、該芯成分を完全に被覆する繊維形成性ポリマーからなる鞘成分とにより構成される芯鞘型複合繊維である。ここで芯成分に含有させる導電性物質としては、導電性カーボンブラック、導電性金属化合物等の公知のものが使用できる。カーボンブラックの種類としては、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラック等が例示される。他方導電性金属化合物としては、導電性金属酸化物を主たる対象とし、特に白色性に優れた酸化第二錫および酸化亜鉛が好ましい。ここでいう酸化第二錫には、少量のアンチモン化合物を含む酸化第二錫、酸化チタン粒子の表面に少量のアンチモン化合物を含む酸化第二錫をコーティングして得られる導電性金属複合体も含まれる。また酸化亜鉛には少量の酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化インジウム等を溶解した導電性酸化亜鉛も含まれる。これらは、通常微粉末としてマトリックスポリマーに分散して用いることができる。
【0009】上記のマトリックスポリマーとしては、例えばポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等が挙げられるが、後述の鞘成分として使用されるポリマーとの接着性、分散される導電性物質との親和性、取扱い性などの観点から、最適なものを適宜選択すればよい。
【0010】次に芯成分を完全に取り囲む鞘成分は、繊維形成性ポリマーであれば特に限定されず任意のものが使用でき、例えばポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ポリプロピレン等が挙げられる。なかでも、良好な風合いが得られること、加工工程の取扱い性に優れていること、耐薬品性も良好であることなどからポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0011】かかる成分からなる芯鞘型複合繊維は、繊維横断面における該芯成分の形状が2以上、好ましくは2〜8の鋭突部を有する異型断面形状であることが重要である。なおここでいう鋭突部を有する断面形状とは、凸状ないしは突起状の凸部を有する断面形状をいい、主なものとしては図1(イ)〜(ニ)に示すものを例示することができる。鋭突部が2未満の場合には、後述する放電加工処理の安定性が低下して長さ方向の導電性能が不均一となるので好ましくない。
【0012】また、図1(ロ)に例示したように、鋭突部と鞘成分外周との最小厚さVi の少なくとも一つが5.0μm以下である必要がある。Vi のすべてが5μmを越える場合には、放電加工処理が不十分となって導電性能が低下しやすくなるという問題がある。なお、最小厚さVi はあまりに薄くなりすぎて、いずれか1つが0.5μm未満になると、芯成分が鞘成分により完全に被覆することが困難となり、芯と鞘とが剥離したり、導電性成分が脱落して導電性能が低下したり汚染の原因になる等の問題を生じやすくなるので、すべてのVi は0.5μm以上であることが望ましい。
【0013】本発明の製造方法においては、上記の形状を有する芯鞘型複合繊維は、このままでは表面電気抵抗値が高く導電性能は不十分で依然として帯電しやすいため、後述するような方法で放電加工処理するところに特徴が有り、その結果として、繊維表面の電気抵抗値が1010Ω/cmオーダー以下であり、かつ、繊維断面間の内部電気抵抗値(Ω/cmで測定)と表面電気抵抗値(Ω/cm)との比が103 以下であり、さらにその導電性能が繊維の長さ方向に均一で安定している導電性繊維が得られる。
【0014】通常の導電性芯鞘型複合繊維は、繊維形成性ポリマーからなる鞘部は電気抵抗が大きいため表面電気抵抗値が、例えば1013Ω/cmオーダーというように非常に高く、仮に繊維端面間の内部電気抵抗値が107 Ω/cmオーダーと低くても、表面の電気抵抗値と端面間の内部電気抵抗値との比は106 程度と極めて大きく、繊維の表面にはほとんど導電性が発現しないという問題がある。
【0015】これに対して本発明の方法による導電性繊維は、鞘成分が非導電性の繊維形成性ポリマーから構成されていてもその表面抵抗値は1010Ω/cmオーダー以下と低くなっており、しかも後述する特殊な放電処理が施されているので、その導電性能が繊維の長さ方向で安定したものとなっている。
【0016】ここに電気抵抗値(Ω/cm)は次のようにして測定する。
(イ)繊維端面間内部電気抵抗値繊維軸方向の長さが2.0cmとなるよう両端を横断面方向にカットした繊維の該両断面にAgドウタイト(銀粒子含有の導電性樹脂塗料、藤倉工業製)を付着させた試料を電気絶縁性ポリエチレンテレフタレートフィルム上で、温度20℃相対湿度30%の条件のもとに1kVの直流電圧を該Agドウタイト付着面を使って印加して両断面間に流れる電流値を求め、オームの法則により電気抵抗値(Ω/cm)を算出する。
【0017】(ロ)表面電気抵抗値繊維軸方向の長さ約2.0cmにカットされた繊維の両端付近の表面(繊維側面)に前記のAgドウタイトを付着させたものを試料として、該試料を電気絶縁性ポリエチレンテレフタレートフィルム上で、温度20℃相対湿度30%の条件のもとに1kVの直流電圧を該Agドウタイト間に印加してAgドウタイト間に流れる電流値を求め、かつ、Agドウタイト間の距離を測定して、オームの法則により表面電気抵抗値Ω/cmを算出する。
【0018】本発明の放電加工方法としては、上記のようにして得られた芯鞘型複合繊維を、高電圧電極に接触させて高電圧を印加する通電法を採用する。高電圧放電加工方法としては、この他に放電形状の異なるコロナ放電、火花放電、グロー放電、アーク放電等があるが、これらはいずれも放電加工電極と繊維とが接触していないため、十分な放電加工効果を得るためには非常な高電圧を必要とし、コストがかさむ上に電圧印加時のショックで繊維が断糸しやすい等の工程上のトラブルが多発するしやすいので好ましくない。
【0019】放電加工処理の印加電圧としては、1kVを越える高電圧であって、100kVまでの範囲が適当で、好ましくは2〜50kVの範囲である。電極の極性はプラスでもマイナスでも(直流)、又は交流であってもよい。電極間の距離は0〜100cmの範囲が適当で、繊維が放電加工電極と接触していれば、放電形態と処理速度並びに目標とする導電性能により、該電極間距離は適宜設定することができる。また、導電性物質を含有する芯成分を一方の極とし、他方の極を別に設けて、該両極に高電圧を印加し、この高電圧電極間で放電処理する方法が最適なものとして例示されるが、この方法に限るものではなく、別々に設けた二つの極に高電圧を印加して放電処理する方法であってもよい。
【0020】かかる放電処理によって、表面電気抵抗値を1010Ω/cmオーダー以下とすることができるばかりでなく、表面電気抵抗値と断面間電気抵抗値との比を103 以下、好ましくは102 以下、特に厳しい条件で使用する場合には10以下とすることができる。
【0021】本発明の放電加工処理においては、さらに繊維と放電加工電極との接触長を0.1〜5.0mmにすることが肝要である。該接触長が0.1mm未満の場合には、放電加工処理を均一に行うことが困難になって、繊維の長さ方向における導電性能の均一性が低下するので好ましくない。一方5.0mmを越える場合には、高電圧が印加される距離が長くなりすぎて、放電加工処理のショックで断糸しやすくなるので好ましくない。
【0022】繊維を接触させる放電加工電極の形態は、接触長が前記範囲内にあれば特に限定されるものではないが、接触面が曲率半径0.1〜50mm、好ましくは1〜20mmの範囲にある曲面である場合、長さ方向における導電性能の安定性がさらに向上するので特に好ましい。放電加工電極の曲率半径が0.1mm未満になると、前記の接触長を得るためには放電加工電極に接する前後の繊維が作る角度θ(図2)を小さくすることが必要となり、その結果、繊維に大きな張力を負荷させることとなって断糸しやすくなる。一方50mmを越えると、θが180度に近くなるため、わずかな繊維の揺れなどに起因して接触長が変動しやすくなり、その結果長さ方向における導電性能の不均一を誘発することとなる。
【0023】放電加工電極の形状は、上記の要求を満たす範囲内であれば任意であり、真円、楕円、角型などいずれでもよく、例えば繊維と接触する部分のみを曲面に加工したような形状であっても構わない。また電極の材質も、放電加工処理ができるものであれば任意で、金属、導電性セラミックスなどいずれをも使用できる。
【0024】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、導電性繊維の電気抵抗値の長さ方向でのばらつきは、電気抵抗値を1mおきに10点測定してその最大値と最小値との差で表した。また断糸率は、放電加工処理時の断糸回数を108 m処理時の断糸回数に換算して表した。
【0025】[実施例1]導電性物質として導電性カーボンブラック30重量部と、ポリエステル70重量部とからなる導電性樹脂組成物を芯成分とし、ポリエチレンテレフタレートを鞘成分とし、通常の複合紡糸装置を用いて溶融紡糸し、図1(ロ)に示すような断面形状を有する芯鞘型複合繊維とした後、3.1倍に延伸して25デニール、単糸数5本のマルチフィラメントを得た。この芯鞘型複合繊維を、半径が7mm、断面が真円の放電加工電極を用い、繊維の接触長を1mmとして、300m/分の速度で放電加工処理を行った。得られた導電性繊維の電気抵抗値の平均値および長さ方向でのばらつき、並びに放電加工時の断糸率を表1に示す。
【0026】[実施例2〜5、比較例1〜3]実施例1において,放電処理時の放電加工電極の曲率半径、繊維との接触長およびViを表1に記載のように変更する以外は実施例1と同様にして導電性繊維を得た。結果は表1にまとめて示す。
【0027】[実施例6]酸化チタン粒子の表面に導電性酸化第二錫をコーティングした導電性粉体240重量部と、ポリエチレン75重量部をニーダーに仕込み、180℃で30分間混練した後、流動パラフィン18重量部、親油化剤としてステアリン酸4重量部を加えてさらに5時間混練した。得られた導電性樹脂組成物を芯成分とし、ポリエチレンテレフタレートを鞘成分とする芯鞘型複合繊維(芯/鞘重量比=1/6)を紡糸し、これを4倍に延伸して30デニール単糸数3本のマルチフィランメントを得た。この芯鞘型複合繊維を、半径が7mm、断面が真円の放電加工電極を用い、繊維の接触長を1mmとして、300m/分の速度で放電加工処理を行った。得られた導電性繊維の電気抵抗値の平均値および長さ方向でのばらつき、並びに放電加工時の断糸率を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【発明の効果】以上に説明した本発明の導電性繊維の製造方法によれば、繊維表面の電気抵抗値および断面間の電気抵抗値が共に低く、かつその導電性能の繊維長さ方向における均一性に優れた導電性繊維を安定して製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【出願日】 平成9年(1997)4月2日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開平10−280245
【公開日】 平成10年(1998)10月20日
【出願番号】 特願平9−83712