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【発明の名称】 未延伸糸の紡糸巻取り方法
【発明者】 【氏名】中村 和彦
【氏名】若林 文三
【課題】綾振り支点の綾振り角が大きい場合或いは綾振り速度が高速の場合であっても、延伸後の強伸度特性を劣化させない未延伸糸の紡糸巻取り方法を提供する。

【解決手段】紡糸された糸条を最終のゴデットローラ2を離脱させたのち綾振り支点を中心に綾振りガイド4により左右に綾振りしながらドラム5に巻き取る場合、上記綾振り支点ガイドに自由回転ローラ13を配置し、該自由回転ローラ13と綾振りガイド4との間に糸道を横断する方向に延びるガイド14を配置し、該ガイド表面に左右に綾振り運動する糸条を案内させながら巻き上げる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 紡糸された糸条を最終のゴデットローラを離脱させたのち綾振り支点を中心に綾振りガイドで左右に綾振りしながらドラムに巻き取る未延伸糸の紡糸巻取り方法において、前記綾振り支点に自由回転ローラを設け、該自由回転ローラと前記綾振りガイドとの間に糸道を横断する方向に延びるガイドを配置し、該ガイドの表面に左右に綾振り運動する糸条を案内させながら巻き上げる未延伸糸の紡糸巻取り方法。
【請求項2】 前記最終のゴデットローラから離脱した複数本の糸条をそれぞれ個別に設けた自由回転ローラを綾振り支点にして綾振させつつ個別に巻き取る請求項1に記載の未延伸糸の紡糸巻取り方法。
【請求項3】 前記未延伸糸が複屈折40×10-3以下のポリアミド繊維糸条である請求項1または2に記載の未延伸糸の紡糸巻取り方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、未延伸糸の紡糸巻取方法に関し、さらに詳しくは綾振り支点の綾振り角度や綾振り速度の如何にかかわらず、常に安定した強伸度特性を得ることができる未延伸糸の紡糸巻取り方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの合成繊維の生産では、溶融紡糸口金から紡糸した糸条を冷風で冷却し、油剤を付与したのち実質的に延伸することなく未延伸の状態で巻き取るようにする紡糸巻取り方法が古くから実施されてきている。
【0003】図2(A),(B)は、このような従来の紡糸巻取り工程の一例を示し、図示しない溶融紡糸口金から紡糸、冷却されて油剤を付与された糸条Yは、一定の速度で回転する第1ゴデットローラ1と第2ゴデットローラ2を経るように引き取られる。次いで、最終の第2ゴデットローラ2を離脱した4本の糸条fは、それぞれ綾振り支点ガイド3を支点にして、綾振りガイド4により左右に綾振りされつつ、駆動ローラ6により表面駆動されるドラム5に未延伸糸としてそれぞれ巻き上げられる。その未延伸糸は、次いで延伸工程に供され、延伸糸になる。
【0004】しかし、上記のようにして得られた延伸糸は、紡糸巻取り工程における綾振り支点ガイド3の綾振り角θが大きいほど、或いは綾振りガイド4の綾振り速度が高速になるほど強伸度特性が劣化(低下)するという問題があった。この強伸度特性の劣化傾向は、特に図2の紡糸巻取り工程のように、同一の最終ゴデットローラ2を離脱した複数の糸条を別々に巻き取る場合において、その最終ゴデットローラ2と巻取位置のドラム5との間の距離が一定のために、綾振り支点ガイド3の綾振り角θがますます大きくなりやすいことから顕著に発生しやすいという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、綾振り支点ガイドにおける綾振り角が大きい場合或いは綾振り速度が高速の場合であっても、延伸後の強伸度特性を劣化させない未延伸糸の紡糸巻取り方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明は、紡糸された糸条を最終のゴデットローラを離脱させたのち綾振り支点を中心に綾振りガイドで左右に綾振りしながらドラムに巻き取る未延伸糸の紡糸巻取り方法において、前記綾振り支点に自由回転ローラを設け、該自由回転ローラと前記綾振りガイドとの間に糸道を横断する方向に延びるガイドを配置し、該ガイドの表面に左右に綾振り運動する糸条を案内させながら巻き上げることを特徴とするものである。
【0007】本発明者らは、強伸度特性の劣化が発生する原因について詳細を検討した結果、それが綾振り支点ガイドにおいて未延伸糸が大きな擦過抵抗を受けることにあることを突き止め、綾振り角が大きくなるほど、或いは綾振り速度が高速になるほど擦過抵抗が増大するということを知見した。このような知見を踏まえ、上記のように綾振り支点ガイドを自由回転ローラによって構成することにより、綾振り支点における擦過抵抗を低減した。さらに自由回転ローラと綾振りガイドとの間にその糸道を横断するガイドを配置し、このガイドに対して綾振り運動中の糸条を案内させつつ巻き上げるようにすることにより巻取り張力の変動を抑制し、安定な巻き上げを可能にした。そして、この擦過抵抗の低減と巻取り張力の安定化との協同作用により、たとえ綾振り角が大きい場合や或いは綾振り速度が高速の場合であっても、延伸後の強伸度特性の劣化を生じないようにすることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において適用される未延伸糸とは、溶融紡糸或いは乾式紡糸などの紡糸巻取り工程によって分子配向が実質的に無い状態に得られる糸、或いは分子配向が不完全な状態に得られる糸をいう。したがって、この未延伸糸には、高速紡糸によって得られる部分的に分子配向した所謂POYも含まれる。
【0009】未延伸糸を構成する有機重合体は特に限定されないが、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの溶融紡糸可能な重合体が好ましく使用される。なかでも、特にナイロン6,ナイロン66などのポリアミドが好しく使用される。ポリアミド繊維の場合は、複屈折が40×10-3以下の未延伸糸に適用する場合に有効である。
【0010】本発明の紡糸巻取り方法において、綾振り支点に使用される自由回転ローラとしては、回転抵抗を極力を小さくした構造のものが好ましく、例えばベアリングを介して軸支した構造のものが好ましい。自由回転ローラの直径としては、5〜30mmの範囲で使用するのがよい。また、表面は耐摩耗性にするためにクロムメッキを施し、さらに摩擦抵抗を小さくするため梨地加工したものがよい。表面の耐摩耗性の手段としては、クロムメッキを施す方法のほかに、アルミナやセラミックなどのそれ自体が耐摩耗性に優れた材料を使用するようにしてもよい。
【0011】また、自由回転ローラと綾振りガイドとの間で綾振り運動する糸条を案内するために設けるガイドとしては、綾振り支点と綾振りガイドとの間の糸道を横切る方向に延長するものであれば特に形状は限定されない。図1に例示するような複数糸条の糸道を横切るバーガイドのほか、1糸条の糸道の振り幅をカバーする長さをもった広幅ガイドであってもよい。広幅ガイドとしては、図5のようなガイドを例示することができる。また、バーガイドに代えて、板材の縁を円弧状に加工したものであってもよい。
【0012】これらガイドのガイド横断面の曲率半径としては、2〜10mmの範囲にすることが好ましい。また、ガイドが糸道を横断する方向の形状としては、直線状であってもよく、或いは曲線状であってもよい。特に、綾振り運動中の糸条張力は、左右の綾振り域の中央で低く、両端部で高くなるので、糸道横断方向のガイド形状としては、好ましくは曲線状にする方がよい。また、その曲線形状としては、横断方向の中央部ほど綾振りガイド側に向けて凸の曲線になるように形成することが好ましい。
【0013】また、この綾振り運動中の糸条を案内するガイドの材質としては、耐摩耗性に優れたものを使用することが好ましく、特にアルミナやセラミックが好適である。また、表面を梨地加工して摩擦係数を低減したものが好ましい。以下に、本発明を図に示す実施例によって具体的に説明する。図1(A),(B)は、本発明を実施する紡糸巻取り工程の一例を示す。
【0014】図1において、不図示の溶融紡糸口金から紡糸され、冷却チムニーの冷風によって冷却され、油材を付与された糸条Yは、第1ゴデットローラ1を経たのち第2ゴデットローラ2に引き取られる。最終の第2ゴデットローラ2から4本の糸条fが離脱する。最終の第2ゴデットローラ2の下流側には、4本の糸条fに対応してそれぞれ4個の自由回転ローラ13が綾振り支点として設けられ、さらにその下流側にバーガイド14が設けられ、最後の巻取位置に綾振りガイド4、ドラム5、駆動ローラ6が設けられている。
【0015】自由回転ローラ13は、ベアリングで軸支され、殆ど抵抗なく回転するようになっている。また、バーガイド14は、自由回転ローラ13と綾振りガイド4との間の糸道を横断するように設けられており、綾振り運動する糸条Yを綾振りガイド4側へ押し込むように案内しながら糸条張力を一定の安定した張力にするように作用している。バーガイド14以後の綾振りガイド4、ドラム5、表面駆動ローラ6は、従来の工程と同様の構成である。
【0016】第2ゴデットローラ2から離脱した各糸条fは、それぞれ各自由回転ローラ13を綾振り支点として、綾振り角θで左右に綾振り運動しながら走行する。しかし、この綾振り支点は、自由に抵抗なく回転する自由回転ローラ13であるので、糸条fに殆ど擦過抵抗を与えることがない。自由回転ローラ13から離脱した糸条fは、さらにバーガイド14の表面を左右に綾振られながら摺動することにより張力が一定に調整され、ドラム5には安定な巻取り張力になって巻き上げられる。
【0017】このように未延伸糸が綾振り支点で殆ど擦過抵抗を受けることがなく、かつ安定した巻取り張力でドラム上に巻き上げられるので、未延伸糸は実質的に損傷を受けることがなく、延伸後の強伸度特性が劣化すことがない。このような強伸度特性の劣化防止効果は、後述する実施例から明らかなように、綾振り支点の綾振り角θが大きくなっても、或いは綾振りガイド4の綾振り速度が高速になっても殆ど変わらないようにすることができる。
【0018】本発明の紡糸巻取り方法では、このように強伸度特性の劣化防止効果が高いため、本発明において採用可能な綾振り角θとして、5°から最大30°にわたる幅広い範囲を採用することが可能である。また、綾振りガイドの綾振り速度としては、200cpmから600cpmにわたる幅広い範囲が採用可能である。
【0019】
【実施例】
実施例1ナイロン6を紡糸速度900m/分で溶融紡糸し、一旦未延伸糸として巻き取った後、延伸工程で3.5倍に延伸して40D−10Fの延伸糸を製造するに当たり、紡糸巻取り工程として下記構成からなる本発明の工程と従来の工程とをそれぞれ使用し、それぞれの工程において綾振り支点ガイドの綾振り角θを5°〜30°の範囲で変化させて得た各未延伸糸から製造した延伸糸について、綾振り角θ=5°の糸を基準にしたときの強伸度劣化率を調べた。図3にその結果を示す。
【0020】本発明の工程:工程 図1自由回転ローラ(綾振り支点ガイド)
直径21mm,表面にクロムメッキ,梨地加工バーガイド 直径6mm,アルミナ製従来の工程:工程 図2綾振り支点ガイド アルミナ製スネールワイヤ図3の結果から、本発明の工程の場合は、綾振り角θの大きさ如何にかかわらず強伸度特性が殆ど劣化していないが、従来の工程の場合には、綾振り角θが大きくなるほど著しい劣化が見られることがわかる。
【0021】実施例2実施例1において、本発明の工程および従来の工程とも、それぞれ綾振り角θを一定の10°に固定し、綾振り速度だけを450〜500cpmの範囲で変化させて得た未延伸糸から延伸糸を作り、各延伸糸について綾振り速度=450cpmの糸を基準にしたときの強伸度劣化率を調べた。その結果を図4に示す。
【0022】図4の結果から、本発明の工程では、綾振り速度の如何にかかわらず強伸度特性が殆ど劣化していないが、従来の工程では、綾振り速度が高速になるほど著しい劣化が見られることがわかる。
実施例3実施例1において、本発明の工程と従来の工程とにおける綾振り角θを、それぞれ15°と25°にした場合に得られる未延伸糸からの延伸糸の強力,伸度を調べ、その結果を表1に示す。
【0023】表1の結果から、本発明で得られた延伸糸の強力及び伸度は、綾振り角θが15°と25°のいずれの場合にも変わらなかったが、従来の工程では、綾振り角θを25°にしたときの強力及び伸度がいずれも低下していることがわかる。

【0024】
【発明の効果】上述したように、本発明によれば、綾振り支点を自由回転ローラで構成することにより、綾振り支点での擦過抵抗を低減させ、さらに自由回転ローラと綾振りガイドとの間にその糸道を横断するガイドを配置し、このガイドに対して綾振り運動中の糸条を案内させつつ巻き上げることにより、巻取り張力を安定させ、上記両作用の協同により、たとえ綾振り支点の綾振り角が大きかったり、綾振り速度が高速であっても、延伸後の強伸度特性の劣化を殆ど生じないようにすることができる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)3月31日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一 (外2名)
【公開番号】 特開平10−273842
【公開日】 平成10年(1998)10月13日
【出願番号】 特願平9−80663