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【発明の名称】 特殊仮撚加工方法
【発明者】 【氏名】松本 三男
【氏名】蛇石 秀洋
【課題】広く一般に普及し、技術的に洗練された仮撚加工法を使用して、従来の仮撚加工糸とは違った新規な表面変化のある織編物を与える特殊仮撚加工糸の提供。

【解決手段】60%以上の伸度を有する同一の熱可塑性長繊維糸条を2本以上引揃え各糸条が同じ仮撚張力を受けるようにして延伸仮撚加工を施した後、連続して、該延伸仮撚加工域外で、該引揃えた熱可塑性長繊維糸条を各々分割して巻取る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 60%以上の伸度を有する同一の熱可塑性長繊維糸条を2本以上引揃え各糸条が同じ仮撚張力を受けるようにして延伸仮撚加工を施した後、連続して、該延伸仮撚加工域外で、該引揃えた熱可塑性長繊維糸条を各々分割して巻取ることを特徴とする、特殊仮撚加工方法。
【請求項2】 上記の延伸仮撚加工後、熱可塑性長繊維糸条を分割する方法が、2組のニップローラーの間に糸を走行させながら該走行方向に垂直でかつ走行糸を中心とする円周上に等間隔に配置した糸分割ガイドで分割する方法で、かつ供給側のニップローラーと該糸分割ガイドの距離が上記延伸仮撚加工時の解撚域の長さより長いことを特徴とする特殊仮撚加工方法。
【請求項3】 60%以上の伸度を有する同一のの熱可塑性長繊維糸条を、2本以上ほぼ同じ張力で引揃えて延伸仮撚加工を施す際、延伸仮撚加工を施す以前に、供給する該熱可塑性長繊維糸条の各々に集束処理を施すことを特徴とする特殊仮撚加工方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、布帛に表面変化効果を付与することの出来る粗い捲縮と強い発現トルクを有した特殊仮撚加工糸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】伸度が25〜35%のマルチフィラメント糸条(単糸)いわゆる延伸糸を撚糸し、その撚糸形態を熱セットした後解撚することで捲縮を付与する、いわゆる仮撚加工糸は、その捲縮加工原理から明らかなようにマルチフィラメント糸条の太さによって得られる捲縮の粗さはほぼ決まってしまう。
【0003】即ち、太い糸条程粗い捲縮になるが、衣料用に用いられる糸条は高々30〜200デニール程度の細いものが多いため、他の捲縮加工法による捲縮に比べるとその捲縮サイズは一般にかなり細い。
【0004】従って、このような仮撚加工糸を用いて織編物を造ると、織編物の目のサイズより捲縮サイズの方が細かくなり易く、糸条の構成フィラメント数が多いことも影響して、織編物の目の内で仮撚加工糸の物性や形態が平均化されて均一になる。その結果、織編物の目の形状が均一になり、必然的にフラットでプレーンな織編物表面になる。例え糸条を太くして捲縮を粗くしても、それに伴って織編物の目も粗くなってしまうため上記の関係は変わらない。
【0005】即ち、従来の普通の仮撚加工糸では表面変化に富んだ織編物を造るのは極めて難しい状況にある。
【0006】一方、糸条をメリヤスに編成し、その編目を熱セットし後解いて造る、賦型捲縮法の一種であるいわゆるニットデニット糸は、編目の形状をした非常に粗い捲縮形態を有し、これで織編物を造ると、表面がでこぼこの愉快な趣のある表面変化織編物が得られることは知られている。
【0007】ただ、この加工方法は編成、解編が連続して出来ず、かつ編成速度に限界があって余り速度up出来ないなどのため製造コストが高く、仮撚加工糸に比べるとその生産量は微々たるものにとどまっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、数ある各種捲縮加工法の中でも抜きん出て広く一般に普及し、技術的に洗練された仮撚加工法を使用して、従来の仮撚加工糸とは違った新規な表面変化のある織編物を与える特殊仮撚加工糸を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等の研究によれば、伸度が60%以上の同一の熱可塑性糸条を複数本引揃えてから、延伸仮撚加工に供し、解撚域外で元の糸条に分糸するとき、同一波形で且つ捲縮波形の粗い加工糸が得られることが判明した。
【0010】本発明によれば、60%以上の伸度を有する同一の熱可塑性長繊維糸条を2本以上引揃え各糸条が同じ仮撚張力を受けるようにして延伸仮撚加工を施した後、連続して、該延伸仮撚加工域外で、該引揃えた熱可塑性長繊維糸条を各々分割して巻取ることを特徴とする、特殊仮撚加工方法が提供される。
【0011】ここで、“同一の”の語句は、各糸条が60%以上の伸度を持つことを前提とし、糸条間で同一伸度並びに同一物性の糸条、典型的には同一銘柄の糸条と言う。
【0012】本発明によれば、従来の普通の仮撚加工糸の2倍以上の粗い捲縮が安定して得られ、この効果で表面がでこぼこの従来にない新しい外観の織編物が得られることを見出した。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を説明する。図1は、本発明の、特殊仮撚加工糸の製造工程の一例を示す正面図である。図1において、伸度が60%以上の4本の同一糸条A1 〜A4 を張力調整具1によって張力をほぼ同一に調整した後、第1供給ローラー2と第2供給ローラー4の間でインターレースノズル3によって供給糸条A1 〜A4 の各々に例えば10〜50ケのインターレースを付与し、これらを引揃えて第2供給ローラー4と第1テイクアップローラー7の間でヒーター5および仮撚装置6によっていわゆる延伸仮撚加工を施す、引続き該仮撚加工糸を第1テイクアップローラー7と第2テイクアップローラー8の間でまず第1分割ガイドG1 2 によって供給糸条2本ずつの束に2分割し、次いで第2分割ガイドg1 〜g4 によって更に供給糸条1本ずつになるように2分割し、特殊仮撚加工糸B1 〜B4 としてワインダー9に巻取る。このときの延伸仮撚加工条件としては、繊度120de、フィラメント数36本、伸度120%のポリエステルフィラメントを用いる場合、例えばヒーター5の温度170℃、長さ1.5m、延伸倍率1.6倍、仮撚装置6の種類は外接フリクションセラミックディスクでD/Y=2.0、加工速度(=第1テイクアップローラー7の表面速度)400m/miniに設定すればよい。
【0014】また、仮撚加工後の分割条件としては、仮撚装置6と第1テイクアップローラー7巻の距離L1=20cmに対して、第1テイクアップローラー7と第1分割ガイドG1 2 間の距離L2 =30cm、第1分割ガイドG1 2 と第2分割ガイドg1 〜g4 間の距離L3 =10cm、第1分割ガイドG1 2 間の距離3cm、第2分割ガイドg1 2 間およびg2 3 間の距離3cm設定する。
【0015】上記製造工程においては、(1)伸度60%以上の同一糸条を引揃えて延伸仮撚加工する点および(2)該延伸仮撚加工によって得た糸条を該延伸仮撚域外で分割することが肝要である。
【0016】即ち、供給糸条の伸度が60%未満になると、延伸仮撚加工における撚糸時に、各フィラメント糸内で中心部のフィラメント外側のフィラメント群とが撚糸に伴う張力差から交互に入れ替わる、いわゆるマイグレーション現象が短ピッチで起こる。しかも、その際に発生するフィラメント間の各種歪が十分解消されないまま撚込まれるため、分割後は図2(W)に示すような性状の加工糸が得られない。
【0017】これに対し、本発明では、糸条の伸度が60%以上と大きいため上記撚糸に伴う歪が吸収され易くなり、マイグレーションのピッチも長くなって構成フィラメント同志の絡みが少なくなり、後の図2(b)に示すように粗い捲縮でかつ捲縮形状がほぼ同じものが得られる。また、伸度が60%以上あると、高速加工に適したフリクション仮撚加工が容易となり高生産性が確保される。
【0018】尚、この際供給する2本以上の糸条は同一物性の同一糸条でないと、各糸条のマイグレーションが不均一となり、分割後の各糸条に糸長差や張力差が生じ、分割不良による断糸が多発する。即ち、均一な撚糸構造を得るには、ヒーターによる加熱下での荷伸曲線特に加工延伸倍率以下の形状を近似させることが重要である。その意味から、仮撚加工域に供給する糸条の張力に供給する糸条の張力も張力調整具等を利用して同じにすることが好ましい。
【0019】一方、上記仮撚加工糸の分割は、仮撚加工域内で行うと、(a)仮撚加工とは云うものの仮撚加工域内で完全に0(零)解撚されているとは限らず、安定な分割(分糸)が難しい、(b)分割時の糸張力を適正に調整出来ず、同時に張力は高くなり過ぎ、毛羽や断糸が発生し易い、(c)分割時の張力の変動が仮撚加工斑因になり、分割を更に不安定にする悪循環になり易い、等の問題があるため、仮撚加工域外で行う必要がある。
【0020】尚、この際第1分割ガイドG1 2 は仮撚加工糸の走行方向に対して第1テイクアップローラー7からL2 cmの距離に対称に配置して糸条を2本ずつ均等に分割し、次いで第2分割ガイドg1 2 およびg3 4 で更に均等に2分して巻取るのが好ましい。特に上記L2 の距離を仮撚装置6と第1テイクアップローラー間の距離L1 より長くするのが重要である。L2 の距離を長くすることで、仮撚加工中の撚斑が平均化され、スポット的にも無撚化して分割し易くなり、かつ残留スポット撚が生じた際も分割による力で解撚され易くなるなど、分割が円滑になる。
【0021】また、供給する糸条の本数は上記分割方法では2本、4本、8本…2n本(n=分割回数)等が解撚し易く、分割が容易になる。
【0022】ただし、3本程度なら、分割ガイドをL2 の距離で走行仮撚糸に垂直な円周上に3個均等に配置すればよい。また1対の分割ガイドの間隔としては、1/10L2 〜1/5L2 程度が好ましく、本実施例ではG1 2 間3cm、g1 2 間、g3 4 間共に2cmとした。この間隔が大きい程解撚作用が強くなるが、L2 の距離に対して大きく(過ぎると約)等が生じ易くなるなど好ましくない。
【0023】尚、ガイドの形状は糸条が分割し易ければ良く、独立していても1体でももちろん差しつかえない。
【0024】ところで、仮撚加工域に糸条を供給する以前に各糸条にインターレース等の集束性を付与しておくと、仮撚加工中の糸条同志の絡みが生じ難くなり、後の分割が容易になる。特に、糸条のフィラメント数が多い場合や、単繊維デニールが細い場合には有効となる。
【0025】上記集束性付与手段としては、インターレース以外にタスランや実撚や交互撚等もあるが、交互撚は仮撚加工時の撚糸構造を不均一にし易く、好ましくない。原糸段階でインターレース等を付与しておくと仮撚機が簡素化出来好都合である。
【0026】以上、本発明を実施する上での構成条件について説明したが、これら以外の条件については、従来の延伸仮撚条件が広く適用出来る。即ち、仮撚温度、延伸倍率、仮撚装置(スピンドル方式、フリクション方式、ベルト方式など)仮撚数などは供給糸条の特性に応じて適宜選択出来、供給糸条の種類もデニール/フィラメント数、ポリマーの種類、断面の形状等適宜選択出来る。尚、今回の実施例ではポリエステルの丸断面糸を用いた。
【0027】次に、本発明の特殊仮撚加工糸を、丸編機を使用して天竺に構成し、これをフリー状態で沸水に浸しリラックス処理を施すと、編目が不規則化し、一見目の粗い梨地柄様の凹凸外観が得られる。
【0028】比較用に、同じ銘柄の糸条を単独(単糸)で仮撚加工し、上記と同様に編成リラックス処理したところ編目が均一にきれいに配列した平滑でプレーンな外観しか得られない。
【0029】さらに両糸の捲縮形態を観察したところ、図2に示すように、本発明による特殊仮撚加工糸(b)は、糸の太さに対比して捲縮がかなり粗い以外に捲縮の大きさが比較的揃っている傾向が認められ、一方従来の仮撚加工糸、(W)は、捲縮が細い以外に捲縮の大きさがいろいろ変動している。
【0030】また、両者の糸物性を測定したところ、本発明の加工糸は図3(1)〜(3)に示すように大きな差が認められ、従来糸に比べて、(1)捲縮が粗く、(2)捲縮率が低く、(3)生糸トルクが小さい反面、発現トルクが非常に高いこと、などが判明した。即ち、編目に対比して捲縮が粗く、かつ大きさが比較的揃っていて発現トルクが大きいのが表面変化効果に寄与しているものと推定される。同時に、生糸のトルクが少ないため取扱性は良好である。また、捲縮が粗いため、捲縮率は必然的に低くなるが、仮撚温度を高くしたり、熱セット時間を長くしたり、あるいは単繊維デニールを太くしたりするとある程度高くすることが出来、表面凹凸を更に強くすることが出来る。また、織編物の密度や組織、上記の理由によりルーズな構造で拘束力が少い方がより表面変化効果が発揮される。
【0031】ここで捲縮の粗さ、捲縮率、トルク等に着いての測定は以下の方法により測定した。
【0032】捲縮粗さ捲縮糸をフリーで20分間沸水処理して乾燥後、2mg/dの負荷重下で単繊維のクリンプの1cm当りの山数をカウントする。
【0033】捲縮率検尺機を使用して綛を作り、2mg/dの負荷重下で30分間沸水処理し、自然乾燥後の0.2g/dの負荷重を掛け、1分後の綛長さをL1 とする。引続き2mg/dの負荷重に代え1分後の綛長をL2 とし、次式で捲縮率を算出する。
【0034】
【数1】

【0035】トルク80cmの糸条の中央に2mg/dのV字形荷重を掛け、荷重を支点に糸条を折り曲げ糸条の両端を合わせてループ状にし、荷重を糸条のトルクで自由に回転させ静止してから0.2g/d(単糸)の負荷重下で荷重から5cm離れた点を起点に25cm長当りの撚数を測定し、生糸トルクとする。
【0036】一方、上記V字荷重の回転が静止した状態のループをそのまま20分間沸水処理し、自然乾燥した後、生糸トルク測定と同様に撚数を測定し、発現トルクとする。
【0037】
【実施例】伸度160%の中間配向ポリエステルマルチフィラメント265デニール48フィラメントの糸条2本A1 、A2 を図1に示すような延伸仮撚機を使用して、まず張力調整具1に供給して糸条A1 、A2 の張力を5〜6g内に合わせ、次いで第1フィードローラー2に供給して第2フィードローラー4との間で糸条を1.25%弛緩した状態でインターレースノズル3を使用して圧空圧2kg/cm2 で30ケ/mのインターレースを付与し、2本の糸条を引揃えて第2フィードローラー4と第1テイクアップローラー7との間でヒーター5の温度170℃、ヒーター長2m、延伸倍率1.8倍、フリクション仮撚ディスク6のD/Y2.0、加工速度(=第1テイクアップローラー表面速度)500m/minの条件を使用して延伸仮撚加工を施し、引続き第1テイクアップローラー7と第2テイクアップローラー8の間でL1 20cmに対してL2 30cmの位置に分割ガイドG1 2 を分割前の仮撚糸条の走行軸に対して垂直方向に対称に間隔3cmで配置して2本に分割し、150デニール48フィラメント、捲縮の粗さ19ケ/cm、捲縮率11%、生糸トルク75T/m、発現トルク360T/mの特殊仮撚加工糸B1 、B2 を%Q。
【0038】次いでこの特殊仮撚加工糸を24ゲージのパイル用丸編機のパイル糸に用い、グランド糸に従来の仮撚加工糸100デニール24フィラメントを用いてパイル高さ2.7mmのパイル編地を造り、余り張力がかからないようにしながら普通の染色工程を通し51コース/inch 36ウェール/inchの製品を得た。本製品は従来の仮撚加工糸を用いたものに比べてパイル1本1本の方向、高さ、捩れ、マルチフィラメントの集束状態か不均一でナチュラル化し従来品に見られない新規外観を呈していた。また捲縮が粗いせいか光沢がありかつ低捲縮のせいか表面タッチ風合が非常にソフトなものになった。
【0039】尚、本発明の方法で得られた加工糸は発現トルクが大きいものの生糸トルクがむしろ従来の仮撚加工糸より小さいため編立て時などの糸条の取り扱い性は特に問題もなく良好であった。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、業界に最も多く普及しかつ洗練された延伸仮撚加工機を用いて、今までにない新外観の表面変化織編物を造ることの出来る特殊仮撚加工糸を、効率良く、しかも容易に製造することが出来る。
【出願人】 【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【出願日】 平成9年(1997)3月28日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開平10−273841
【公開日】 平成10年(1998)10月13日
【出願番号】 特願平9−77265