トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 紡績糸及びそれを用いた繊維製品
【発明者】 【氏名】大石 清三
【氏名】細川 宏
【氏名】大西 宏明
【氏名】西原 良浩
【課題】溶剤により賦形処理した後も、賦形部分が柔らかい風合を有することができる紡績糸、及びそれを用いた繊維製品を提供する。

【解決手段】25%エチレンカーボネ−ト水溶液中で10℃/分の割合で加熱し、温度t℃における繊維径をd(t)としたときD=d(90)/d(30)で定義されるD値が1.2≦D≦4.0を満たす収縮性原綿と、D値が収縮性原綿よりも少なくとも0.2以上小さい低収縮性原綿で紡績糸を構成し、該収納性原綿を30〜60重量%、該低収縮性原綿を40〜70重量%とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 25%エチレンカーボネ−ト水溶液中で10℃/分の割合で加熱し、温度t℃における繊維径をd(t)としたときD=d(90)/d(30)で定義されるD値が1.2≦D≦4.0を満たす収縮性原綿と、D値が収縮性原綿よりも少なくとも0.2以上小さい低収縮性原綿で構成され、該収縮性原綿を30〜60重量%、該低収縮性原綿を40〜70重量%含有することを特徴とする紡績糸。
【請求項2】 収縮性原綿が、アクリロニトリルを50〜98重量%含有する重合体からなることを特徴とする請求項1記載の紡績糸。
【請求項3】 低収縮性原綿が、アクリロニトリルを90重量%以上含有する重合体からなることを特徴とする請求項1記載の紡績糸。
【請求項4】 収縮性原綿を構成する重合体中のアクリロニトリル含有量が、低収縮性原綿を構成する重合体中のアクリロニトリル含有量よりも1重量%以上少ないことを特徴とする請求項1記載の紡績糸。
【請求項5】 収縮性原綿に0.05〜1.0重量%の親水性油剤が付与されていることを特徴とする請求項1記載の紡績糸。
【請求項6】 請求項1記載の紡績糸を少なくとも50重量%以上含有する繊維製品。
【請求項7】 溶剤で表面を部分的に溶解・収縮させて凹状部分を付与した請求項6記載の繊維製品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紡績糸及びそれを用いた繊維製品に関する。さらには、溶剤で表面を部分的に溶解・収縮させて凹状に賦形加工した後も賦形部分が柔らかい風合いを有するマットの作製に最適な紡績糸及びそれを用いた繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】バスマット等のマットの外観と触感に変化を持たせ、製品としての意匠を凝らすため、表面に凹凸の模様を付与することが一般的に行われている。アクリル系繊維を主要な構成成分とするマットは、溶剤による賦形が可能であるため、この目的に広く使用されている。すなわち、マットを構成するパイルを部分的に溶剤で溶解・収縮させ、凹状を付与するのである。
【0003】この場合、溶剤としては、溶解性や安全性の面から主としてエチレンカーボネート水溶液が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、単ーの繊維あるいは溶剤に対する溶解挙動がほぼ等しい繊維で構成された紡績糸は、エチレンカーボネートで処理した際、繊維が均一に溶解し、繊維同士が融着してしまう。その結果、繊維は剛直な棒状体となり、柔軟性が失われて硬い風合となってしまうため、肌触りの悪い触感となってしまう。こうしたことから、溶剤処理後も賦形部分が柔らかい触感を有するマット用紡績糸が必要とされている。
【0005】そこで本発明は、溶剤により賦形処理した後も、賦形部分が柔らかい風合を有することができる紡績糸、及びそれを用いた繊維製品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、25%エチレンカーボネ−ト水溶液中で10℃/分の割合で加熱し、温度t℃における繊維径をd(t)としたときD=d(90)/d(30)で定義されるD値が1.2≦D≦4.0を満たす収縮性原綿と、D値が収縮性原綿よりも少なくとも0.2以上小さい低収縮性原綿で構成され、該収縮性原綿を30〜60重量%、該低収縮性原綿を40〜70重量%含有することを特徴とする紡績糸に関する。
【0007】また本発明は、上記発明の紡績糸を少なくとも50重量%以上含有する繊維製品に関する。
【0008】本発明の紡績糸で構成されたマット等の繊維製品は、エチレンカーボネートで賦形処理すると、収縮性原綿が溶解・収縮し、その結果、低収縮性原綿はループ状に紡績糸周りに張り出す。収縮して繊維中心部付近に位置した収縮性原綿は、溶剤の揮発とともに硬化するが、ループ状の低収縮性原綿が繊維周辺に存在するため、柔らかい風合を与え、賦形部分が硬くならない。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を挙げて詳細に説明する。
【0010】本発明の繊維製品は紡績糸で作製され、表面に凹凸を付与することのできるものであれば、繊維形態を問わない。
【0011】本発明の紡績糸は、25%エチレンカーボネ−ト水溶液中で10℃/分の割合で加熱し、温度t℃における繊維径をd(t)としたときD=d(90)/d(30)で定義されるD値が1.2≦D≦4.0を満たす収縮性原綿と、D値が収縮性原綿よりも少なくとも0.2以上小さい低収縮性原綿で構成されることを特徴とする。
【0012】収縮性原綿のD値が1.2未満の場合は、収縮が不充分なため、賦形溶剤で処理した際、低収縮性原綿のループ形成が不完全となり、期待されるソフト性の効果が得られない。収縮性原綿のD値が4.0を超える場合は、繊維は溶剤に溶解して膨潤しやすいが、繊維自体の収縮力は低いものとなり、十分な効果が得られない。
【0013】また、本発明の紡績糸は、収縮性原綿を30〜60重量%、低収縮性原綿を40〜70重量%含有することが必要である。
【0014】低収縮性原綿が40重量%未満の場合、紡績糸を取り巻くループ状繊維の有効本数が不足し、柔らかい触感を与えない。また、低収縮性原綿が70重量%を超えると収縮性原綿の有効本数が不足し、紡績糸が十分に収縮しないため、マットに加工して溶剤で賦形処理した際、明確な凹部分が得られない。
【0015】本発明の紡績糸に含まれる収縮性原綿としては、収縮性の発現という観点から、アクリロニトリルを50〜98重量%含有するアクリル系繊維であることが好ましい。アクリロニトリルの含有量が50〜98重量%であると、繊維に十分な収縮力が付与でき、低収縮性繊維が紡績糸の周りに十分なループを形成できるため、賦形処理後の触感がより柔らかいものとなる。アクリロニトリルの含有量が50重量%未満の場合は繊維の収縮力が不十分となる虞がある。一方、アクリロニトリルの含有量が98重量%を超えると、賦形溶剤に対する溶解性が低下し、D値1.2以上の原綿が得られ難くなる。
【0016】本発明における収縮性原綿を構成する重合体としては、アクリロニトリルを50重量%以上含有していれば共重合成分として用いる不飽和単量体は特に限定しない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの誘導体、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデンが挙げられ、さらに目的によっては、ビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、アリルスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、ソディウム−p−スルフォニルメタリルエーテル、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸ソーダ等のイオン性不飽和単量体を用いることができる。
【0017】本発明においては、低収縮性原綿がアクリロニトリルを90重量%以上含有する重合体からなることが好ましい。これは、アクリロニトリルを90重量%以上含有すると、溶剤に対する繊維の形態安定性が良好になるため、低収縮性原綿が得やすいためである。溶剤で賦形処理する際、低収縮性原綿が溶剤に溶解して収縮すると、紡績糸が十分なバルキー性を示さず、期待する効果が得られない。
【0018】低収縮性原綿を構成する重合体は、アクリロニトリルを90重量%以上含有していれば特に限定されず、共重合成分としては、先に挙げた収縮性原綿と同様の不飽和単量体が使用できる。また、アクリロニトリルとの共重合成分は、収縮性原綿と同じでも異なっていてもよい。
【0019】本発明においては、収縮性原綿を構成する重合体中のアクリロニトリル含有量が、低収縮性原綿を構成する重合体中のアクリロニトリル含有量よりも1重量%以上少ないことが好ましい。収縮性原綿と低収縮性原綿のアクリロニトリル含有量の差が2重量%以上であれば、賦形溶剤への溶解挙動の差がより大きくなり、収縮性の差が現れ易くなり、期待される効果がより大きくなる。
【0020】さらに収縮性原綿については、賦形溶剤処理時の収縮性を高めるため、収縮性原綿に0.05〜1.0重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%の親水性油剤を付与することが好ましい。親水性油剤を付与することで繊維へのエチレンカーボネート水溶液の浸透性が高くなり、繊維の溶解・収縮性が向上し、パイル表面に十分な凹状部を付与することができる。ここで油剤の親水性の基準としては、0.05〜1.0重量%の油剤が付着した原綿を0.1g秤取り、室温の水に入れて綿塊が沈むまでの時間が15秒以下であるものをいう。こうした油剤としては例えばアニオン性の油剤が拳げられるが、上記の親水性の基準を満たすものであれば、特に限定されない。
【0021】本発明における収縮性原綿と低収縮性原綿を構成するアクリロニトリル系重合体の分子量は、アクリル繊維の製造に通常用いられる範囲の分子量であれば特に限定しないが、0.5%ジメチルホルムアミド溶液としたとき、25℃における還元粘度が1.5〜3.0の範囲にあることが好ましい。
【0022】紡糸溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤、及び硝酸、ロダン塩水溶液、塩化亜鉛水溶液などを用いることができる。
【0023】本発明における収縮性原綿と低収縮性原綿は、湿式紡糸法、乾式紡糸法、乾湿式紡糸法のいずれを用いてもよく、紡糸も通常の方法で行われる。
【0024】本発明における収縮性原綿は、紡糸原綿を熱緩和処理した後、2次延伸を行うことで収縮性を付与するが、使用するポリマーの組成、紡糸工程における延伸倍率により、熱緩和条件と延伸条件を選ぶ必要がある。すなわち、得られた原綿を25%エチレンカーボネート水溶液中で10℃/分の割合で加熱し、温度t℃における繊維径をd(t)としたときD=d(90)/d(30)で定義されるD値が、1.2≦D≦4.0を満たすように条件を決める。
【0025】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【0026】(実施例1)水系懸濁重合法により、アクリロニトリル/アクリル酸メチル(「AN/MA」と略記する。)=92/8(収縮性繊維用)、及びアクリロニトリル/酢酸ビニル=93/7(低収緒性原綿用)の組成(重量比)を有する2種類の2元共重合ポリマーを得た。得られたポリマーをジメチルアセトアミドに溶解し、重量比でポリマー/ジメチルアセトアミド=25/75の紡糸原液を調製し、湿式紡糸した。クリンプ付与後、紡糸トウを加圧スチーム中で緩和処理した後、収縮性原綿については2次延伸を行い、カットして単繊維繊度3デニール、カット長51mm、D値が2.8の収縮性原綿を得た。
【0027】低収縮性原綿についても同様にして紡糸し、加圧スチーム処理を行うが、続く延伸処理は行わず、カットして単繊維繊度3デニール、繊維長51mm、D値が1.2の低収縮性原綿を得た。
【0028】こうして得られた収縮性原綿と低収縮性原綿を重量比で40対60の比率で混綿し、公知の方法により紡績を行い、2/17の紡績糸を得た。各紡績糸からパイル長10mmのマットを作製した。
【0029】このマットに、25%エチレンカーボネート水溶液を直径1cmの円状に塗布し、5分間スチーム処理を行い、賦形処理した。
【0030】賦形した部分の風合を触感により1(最も柔らかい)から5(最も硬い)までの5段階で評価した。結果を表1に示す。
【0031】(比較例1)表1に示すように紡績糸の組成のみが異なる以外は実施例1と同様なマットを作製し、実施例1と同様にして賦形し、風合を評価した。結果を表1に示す。
【0032】(比較例2)水系懸濁重合法によりアクリロニトリル/アクリル酸メチル=89/11の組成を有する2元共重合ポリマーを得、該ポリマーを用いて実施例1と同様にして単繊維繊度3デニール、カット長51mm、D値が4.3の収縮性原綿を得た。この原綿を実施例1で得られた低収縮性原綿と40対60の重量比で混綿し、紡績糸を作製してマットに加工した。実施例1と同様に25%エチレンカーボネート水溶液で賦形し、賦形部分の風合を5段階で評価した。結果を表1に示す。
【0033】(実施例2)水系懸濁重合法によりアクリロニトリル/酢酸ビニル(「AN/AV」と略記する。)=90/10(収縮性原綿用)の組成を有する2元共重合ポリマーを得た。このポリマーを用い、実施例1と同様に湿式紡糸し、単繊維繊度3デニール、カット長51mm、D値が1.8の収縮性原綿を得た。該原綿と、実施例1で得られた低収縮性原綿を40対60の重量比で混綿し、2/17の紡績糸を作製し、パイル長10mmのマットに加工してエチレンカーボネートによる賦形を行った。賦形処理した部分の風合を、5段階で評価した。結果を表2に示す。
【0034】(実施例3)実施例2の収縮性原綿の紡糸において、親水性油剤を付与する以外は実施例2と同一の条件で原綿を紡糸し、単繊維繊度3デニール、カット長51mm、D値が2.1の収縮性繊維を得た。繊維の親水性を評価するため、綿塊0.1gが水中に沈むまでの時間を測定したところ、9秒であった。
【0035】該収縮性原綿を実施例1で得られた低収縮性原綿と混綿し、2/17の紡績糸を作製し、実施例2と同様のマットに加工して賦形後の風合を評価した。結果を表2に示す。
【0036】(比較例3)実施例2で得られたポリマーを使用し、紡糸原液の吐出量以外は実施例2と同一条件で紡糸した後、加圧スチーム中で緩和処理した。続く延伸処理は行わず、原綿をカットし、単繊維繊度3デニール、カット長51mm、D値が1.3の原綿を得た。該原綿と、実施例1で得られた低収縮性原綿を40対60の重量比で混綿し、2/17の紡績糸を作製し、パイル長10mmのマットに加工してエチレンカーボネートによる賦形を行った。賦形処理した部分の風合を、5段階で評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明によれば、溶剤により賦形処理した後も、賦形部分が柔らかい風合を有することができる。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)3月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】若林 忠
【公開番号】 特開平10−259539
【公開日】 平成10年(1998)9月29日
【出願番号】 特願平9−62829